心に残る言葉たち その3 トレヴェニアン、その他の小説より
トレヴェニアン「ワイオミングの惨劇」(2004年、新潮文庫)
「戦争ってどんなでした?すごい冒険だったでしょう?」
「戦争が?戦争なんてだいたいが退屈だ。兵隊はいつも濡れて凍えてる。それにくたびれてる。虫に刺されてかゆい。そのうち突然みんなが銃を撃ちだし、怒鳴ったり、走りまわったりする。ものすごく恐ろしくて唾も飲めないくらいだ。闘いはやがて終わり、仲間が何人か死んで、けが人もでる。無傷な者はまたかゆいところを掻いたり、あくびをしたりする毎日に戻る。それが戦争だ。」(75-76)
「盗むなら、でっかく盗め。子供に食わそうとパンを盗んだやつは鎖をつけられ、大きな岩を砕かせられる。しかし、でっかく盗んだら――ほんとにでっかくだぞ――そいつは称賛され、真似までされる。ロックフェラーしかり、モルガンしかり、カーネギーしかり。もちろんそういうやつらは法律を破らない。法律をつくるんだ。“企業”とか“大型融資”とか名前をくっつけて、盗みを合法的にするためにな。だから、盗みや悪党を志すならでっかく考えることだ。そうすれば一目置いてもらえるよ」(254)
コリン・デクスター「ウッドストック行最終バス」(1988年、早川文庫)
「自殺は非常に多くの他の人々の生活にかかわることだ。重荷は捨てられたのではなく、一人の肩から他の人の肩に移されただけだ」(269)
ケン・フォレット『大聖堂』下巻(2005年、ソフトバンク文庫)
フィリップが学んできたのはもっと地に足のついたやり方である。最初の修道院の院長だったファーザー・ピーターは、常々こう言っていた――「心では奇跡を祈れ、しかし手ではキャベツを植えよ」と。(12-13)
取り上げた3冊はいずれも文学作品ではなく、ミステリーなどのいわゆる娯楽小説から引用したものである。文学作品と大衆小説との境目があいまいになって久しいが、一般に大衆小説とよばれるものにもハッとするような名言や警句が含まれているものだ。こういう小説を多く読んでおくことは例えば映画の理解などにも結構役に立つものである。トレヴェニアンの最初の引用文はドイツ映画歴代1位に選ばれたこともある名作「Uボート」の映画評で引用したことがある。
まあ、いろいろ書きたいことはあるが、下手なコメントを長々とつけるのは野暮というものだろう。読んだ人がそれぞれに味わい、あれこれ考えをめぐらすのが一番良いだろう。
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