私家版 Who’s Who その4 エイミー・グラント
【エイミー・グラント】Amy Grant、1960年、アメリカジョージア州生まれ
先日「アイ・キャン・オンリー・イマジン 明日へつなぐうた」という映画を観た。ジャンルとしては音楽映画に属する映画で、映画のタイトルにもなっている「アイ・キャン・オンリー・イマジン」は史上最も売れたクリチャン・ソングである。マーシーミーというグループの代表作だが、映画はマーシーミーのリーダー的存在であるバート・ミラードの半生を描いたもの。したがって伝記映画のジャンルにも入る作品だ。映画の中ではほかにジェフ・バックリィの「ハレルヤ」(教会の聖歌隊が歌っている)や有名な「アメイジング・グレイス」などが流れる。しかし今回取り上げるのはその映画の中で重要な役割を果たしている実在の歌手エイミー・グラントである。
そもそもバートがクリチャン・ソングに関心を持ったきっかけは、恋人のシャノンがこれを聞いてほしいと渡したエイミー・グラントのカセットテープである。以来エイミー・グラントはバートのあこがれの存在となる。バンド活動を続けるうちにバートはエイミー・グラントと直接会う機会を得て感動する。彼女も彼の才能を認め、直接彼女から電話がかかってきたりする。ついには映画のタイトルにもなった「アイ・キャン・オンリー・イマジン」という曲をエイミー・グラントに歌ってもらうことになる。しかし、歌う直前エイミー・グラントが思い直して、この曲を作曲したバートをステージに上げ、彼に歌わせることになる。
映画の出来も悪くないが、僕が一番感動したのは、エイミー・グラントが重要な存在として描かれていることである。エイミー・グラントは僕の大好きなミュージシャンの一人で、「ゴブリンのこれがおすすめ 47 シンガー・ソングライター(外国編)」でも名前を挙げている。映画には本人が出演しているのかと思ったが、実際に演じていたのはニコール・デュポートという女優さんだった。エイミー・グラントはCDのジャケットなど写真でしか観たことはないが、なんとなく似ているので本人かと期待していたのだが、違うと分かってちょっとがっかり。
日本ではあまり知られていないが、アメリカにはクリスチャン・ミュージックというジャンルがある。確かクリスチャン・ミュージック独自のチャートもあったはず。そのジャンルの代表的歌手の一人がエイミー・グラントである。おそらく僕が最初に買った彼女のアルバムは「ビハインド・ザ・アイズ」で、これが名曲ぞろいの傑作だった。特に気に入ったのが「ライク・アイ・ラヴ・ユー」で、これは何度も聞いた。名曲だと思う。「ターン・ディス・ワールド」も良い。それ以後次々に買い集めて今や彼女のCDは10枚を超えてしまった。
クリスチャン・ミュージック、あるいはコンテンポラリー・クリスチャン・ミュージックというジャンルは定義としてはキリスト教の布教を目的とした音楽ということになるが、エイミー・グラントの場合どうしてこれがクリスチャン・ミュージックなのかと首をひねったくらい宗教臭さがない。実際、自分の感覚としてはシンガー・ソングライターとして聞いている。おそらくほとんど国内版が出ていない初期の数枚のアルバムがこのジャンルに当てはまるので、クリスチャン・ミュージックの枠内で扱われているのではないか。しかし80年代の半ばごろから彼女はかなりポップな曲を歌うようになった。ただ、日本編集のベスト盤「ザ・コレクション」は1986年発売なので初期のアルバムから集められているが、ポップな曲が結構ある。80年代前半を代表する名盤「Age to Age」にも同じことが言える。つまり彼女の曲はデビューしたての頃からすでにポップな要素を持っていたのだ。クリスチャン・ミュージックと言っても、何かゴスペルのようなイメージを持っていたならそれは捨ててもらった方が良い。マーシーミーのベスト盤も買ったが、これを聴くとこちらはジャンルとしてはむしろロックと呼ぶ方がぴったりだと感じる。
エイミー・グラントは残念ながら日本ではほとんど知られていないが、グラミー賞を10回以上受賞した大歌手である。生まれはジョージア州だが、後にテネシー州のナッシュビルに移住している。しばしばカントリーのチャートにも登場するのはやはりナッシュビルという土地柄の影響もあるだろう。素晴らしい歌手なので、ぜひ一度は聞いてみてほしい。
【エイミー・グラント おすすめのアルバム、ベスト6】
「Age to Age」 (1982年)
「自由の歌」Lead Me On (1988年)
「ハート・イン・モーション」Heart in Motion (1991年)
「ビハインド・ザ・アイズ」Behind the Eyes (1997年)
「ロック・オブ・エイジズ ヒムズ&フェイス」Rock of Ages... Hymns and Faith (2005年)
「ビー・スティル・アンド・ノウ」Be Still and Know (2015年)
【こちらも要チェック】
「初めての誘惑」 Unguarded (1985年)
「ザ・コレクション」日本編集のベスト版 (1986年)
「ハウス・オブ・ラヴ」 House of Love (1994年)
「レガシー」 Legacy... Hymns and Faith (2002年)
「ハウ・マーシー・ルックス・フロム・ヒア」How Mercy Looks from Here (2013年)
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