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2022年9月15日 (木)

イレーネ・パパス追悼

 イレーネ・パパス(1928年、ギリシャのコリント生まれ)が9月14日に93歳で亡くなったとの報道があった。イレーネ・パパスと言えば「日曜はダメよ」のメリナ・メルクーリと並ぶギリシャを代表する大女優である。この二人の女優は僕らの世代の映画ファンならだれでも知っている有名女優だった。

 

 イレーネ・パパスはコスタ・ガヴラスやマイケル・カコヤニスといったギリシャ(出身)の巨匠の映画ばかりではなく、イタリア社会派の巨匠フランチェスコ・ロージ監督作品やアメリカ映画などに出演し幅広く活躍した。一般には「その男ゾルバ」でアンソニー・クインと共演した女優として知られているが、「トロイアの女」と「イフゲニア」のようなギリシャの古典劇やギリシャ神話を映画化した作品、政治映画の傑作「Z」、フランチェスコ・ロージ監督の傑作「エボリ」と「予告された殺人の記録」への出演も忘れてはならない。僕がこれまでに見た彼女の出演作は下記の9本だが、作品的に平凡だと思ったのは「砂漠のライオン」くらいだ。

 

 マイケル・カコヤニス監督作品の中でDVDが手に入るのは「その男ゾルバ」だけというのも残念だが、何と言っても「Z」と「エボリ」という名作が出ていないことには怒りすら覚える(「Z」はあることはあるが、廃盤になっているのでとんでもない値が付いている)。どうでもいい売れ筋作品ばかり何度も再発しているくせに、こういう名画を発売しないという姿勢は何とかならないものか。

 

 眉が太く濃い顔立ちということもあって、古典劇や重厚なドラマがよく似合う。ジャン・コクトーがまるでギリシャ彫刻から抜け出てきたようだというような意味のことを言ってジャン・マレーを好んで起用したが、同じことを女優で当てはめればやはりイレーネ・パパスということになろうか。それでいてギリシャやギリシャ以外を舞台にした現代劇でも活躍できるのだから、正真正銘の国際的大女優である。

 

<これまでに観賞したイレーネ・パパス出演作>
「ナバロンの要塞」(1961)J・リー・トンプソン監督、アメリカ
「その男ゾルバ」(1964)マイケル・カコヤニス監督、ギリシャ・米・英
「1000日のアン」(1969)チャールズ・ジャロット監督、アメリカ
「Z」(1969)コスタ・ガヴラス監督、フランス・アルジェリア
「トロイアの女」(1971)マイケル・カコヤニス監督、ギリシャ・イギリス
「イフゲニア」(1978)マイケル・カコヤニス監督、ギリシャ
「エボリ」(1979)フランチェスコ・ロージ監督、フランス・イタリア
「砂漠のライオン」(1981)ムスタファ・アッカード監督、アメリカ
「予告された殺人の記録」(1987)フランチェスコ・ロージ監督、イタリア・フランス

 

【おすすめのギリシャ映画】
「日曜はダメよ」(1960) ジュールス・ダッシン監督
「その男ゾルバ」(1964) マイケル・カコヤニス監督
「トロイアの女」(1971) マイケル・カコヤニス監督
「旅芸人の記録」(1975) テオ・アンゲロプロス監督
「イフゲニア」(1978) マイケル・カコヤニス監督
「女の叫び」(1978) ジュールス・ダッシン監督
「アレクサンダー大王」(1980) テオ・アンゲロプロス監督
「シテール島への船出」(1984) テオ・アンゲロプロス監督
「霧の中の風景」(1988) テオ・アンゲロプロス監督
「ユリシーズの瞳」(1995) テオ・アンゲロプロス監督、伊・仏・ギリシャ
「永遠と一日」(1998) テオ・アンゲロプロス監督
「タッチ・オブ・スパイス」(2003)タソス・ブルメティス監督、ギリシャ・トルコ

 

 

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