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2022年8月

2022年8月30日 (火)

これから観たい&おすすめ映画・BD(22年9月)

【新作映画】公開日
8月19日
 「ハウ」(2022)犬童一心監督、日本
 「ワタシタチハニンゲンダ!」(2022)高賛侑監督、日本
 「セイント・フランシス」(2019)アレックス・トンプソン監督、アメリカ
 「サバカン SABAKAN」(2022)金沢知樹監督、日本
8月20日
 「失われた時の中で」(2022)坂田雅子監督、日本
8月26日
 「サハラのカフェのマリカ」(2019)ハッセン・フェルハーニ監督、アルジェリア・仏・カタール
 「スワンソング」(2021)トッド・スティーヴンズ監督、アメリカ
 「激怒 RAGEAHOLIC」高橋ヨシキ監督、日本
 「シーフォーミー」(2021)ランドール・オキタ監督、カナダ
 「Zola ゾラ」ジャニクサ・ブラヴォー監督、アメリカ
 「DC がんばれ!スーパーペット」(2022)ジャレッド・スターン監督、アメリカ
 「アキラとあきら」(2022)三木孝浩監督、日本
 「グッバイ・クルエル・ワールド」(2022)大森立嗣監督、日本
 「移動辞令は音楽隊!」(2022)内田英治監督、日本
 「百花」(2022)川村元気監督、日本
 「でくの空」(2022)島春迦監督、日本
 「彼女のいない部屋」(2021)マチュー・アマルリック監督、フランス
9月1日
 「さかなのこ」(2022)沖田修一監督、日本
 「この子は邪悪」(2022)片岡翔監督、日本
 「ブレット・トレイン」(2022)デヴィッド・リーチ監督、アメリカ
9月2日
 「デリシュ!」エリック・ベナール監督、フランス・ベルギー
9月3日
 「重力の光 : 祈りの記録篇」(2022)石原海監督、日本
 「オルガの翼」(2021)エリ・グラップ監督、フランス・スイス・ウクライナ
9月9日
 「人質 韓国トップスター誘拐事件」(2000)ビル・カムソン監督、アメリカ
 「靴ひものロンド」(2020)ダニエーレ・ルケッティ監督、イタリア
 「LOVE LIFE」(2022)深田晃司監督、日本
9月16日
 「沈黙のパレード」(2022)西谷弘監督、日本
 「川っぺりムコリッタ」(2022)荻上直子監督、日本
 「ヘルドッグス」(2022)原田眞人監督、日本
 「3つの鍵」(2021)ナンニ・モレッティ監督、フランス・イタリア
 「よだかの片思い」(2022)安川有果監督、日本
9月23日
 「秘密の森の、その向こう」(2021)セリーヌ・シアマ監督、フランス

 

【新作DVD・BD】レンタル開始日
9月2日
 「オートクチュール」(2021)シルヴィ・オハヨン監督、フランス
 「コーダ あいのうた」(2021)シアン・ヘダー監督、アメリカ・フランス・カナダ
 「国境の夜想曲」(2020)ジャンフランコ・ロージ監督、イタリア・フランス・ドイツ
 「ニトラム/NITRAM」(2021)ジャスティン・カーゼル監督、オーストラリア
 「パーフェクト・ノーマル・ファミリー」(2020)マルー・ライマン監督、デンマーク
 「MEMORIA メモリア」(2021)アピチャッポン・ウィーラセタクン監督、タイ・仏・独、他
 「ヒットマンズ・ワイフズ・ボディガード」(2020)パトリック・ヒューズ監督、アメリカ
 「アンネ・フランクと旅する日記」(2021)アリ・フォルマン監督、ベルギー・仏・イスラエル・他
9月9日
 「とんび」(2022)瀬々敬久監督、日本
9月14日
 「世の中にたえて桜のなかりせば」(2021)三宅伸行監督、日本
9月28日
 「ツユクサ」(2021)平山秀幸監督、日本
 「ハケンアニメ!」(2022)吉野耕平監督、日本
10月5日
 「アンラッキー・セックス またはイカれたポルノ」(2021)ラドュ・ジューデ監督、ルーマニア、他
 「チェルノブイリ1986」(2020)ダニーラ・コズロフスキー監督、ロシア
 「TITANE/チタン」ジュリア・デュクルノー監督、フランス
 「林檎とポラロイド」(2020)クリストス・ニク監督、ギリシャ・ポーランド・スロベニア
 「大河への道」(2022)中西健二監督、日本
 「ホリック xxxHOLiC」(2022)蜷川実花監督、日本
 「やがて海へと届く」(2022)中川龍太郎監督、日本
10月12日
 「ハッチング ―孵化―」(2022)ハンナ・ベルイホルム監督、フィンランド
 「太陽とボレロ」(2022)水谷豊監督、日本

 

【旧作DVD・BD】発売日
9月2日
 「子猫をお願い」(2001)チョン・ジェウン監督、韓国
 「クラム」(1994)テリー・ツワイゴフ監督、アメリカ
9月14日
 「潮騒」(1974)フィリップ・ラブロ監督、フランス
10月5日
 「ヴァレンチン・ヴァシャノヴィッチ監督BOX ウクライナの過去と未来」(2019, 21)
  収録作品:「アトランティス」「リフレクション」

 

*色がついているのは特に注目している作品です。

 

 

2022年8月 8日 (月)

「出没!アド街ック天国」の魅力

 朝日新聞の2022年6月18日付の「テレビ時評」欄で「アド街」が紹介されていた。実はこの番組についてはだいぶ前に記事を書いてあったのだが、どうやらブログには載せていなかったらしい。どうして掲載しなかったのか理由は覚えていないが、一つ理由として考えられるのはいつのころからか上田では観られなくなったからということである。衛星放送に入っていれば観られたのかどうかわからないが、僕は衛星放送の契約はしていないので、地上波で放送していなければ観られないのである。

 それがなぜか今年に入って再び「出没!アド街ック天国」が長野放送で放送されるようになったのである。放送が始まって以来ずっと録画しているが、以前観ていた頃とはだいぶ変わっていた。まず司会の愛川欽也とアシスタントの女性アナウンサーがいなくなった。「あなたの街の宣伝本部長」愛川欽也は亡くなったので出ていないのは当然だが、進行役がいなくなったため、取り上げた街の「ベスト20」からいきなり始まる。これだって以前は「ベスト30」だったのが「ベスト20」に減っている。さらに、かつてはゲストトークの時間がたっぷりとってあったが、今は「ベスト20」紹介の合間にちょっとさしはさまれるだけ。「薬丸印の新名物」や最後に地域のコマーシャルを作るという楽しみもなくなっていた。以前の充実した番組と比べると何とも味気ない番組になっていた。何しろ10数年ぶりに観たのだから、ずっと観ていた人よりその激変ぶりを如実に感じるわけだ。その一方で変わらないものもある。女性コレクションのコーナーだ。しかも音楽も昔と一緒。これには逆にびっくりした。

 僕はあまり旅行をしないが、旅行番組は割と好きだ。実際に出かけるという面倒なことを省略して、家で美味しいところだけいただく。長野で冬季オリンピックが行われた時も一度も見に行かなかったし、行ってみたいとも思わなかった。わざわざ寒いところでしかも人垣の頭越しに遠くから見るよりも家のテレビでぬくぬくと温まりながらアップや解説も交えて観る方がずっと良い。大きなコンサート・ホールで聴くよりもCDでライヴ版を聞く方が楽だし、実際に聞きに行くなら小さなライブハウスの方が良い。東京にいたころは新宿の「ルイード」や渋谷の「エッグマン」などのライブハウスによく通った。すぐ間近で見られるのでもっぱら若い女性歌手ばかり選んで聞きに行っていた(というか見に行っていた)。

 閑話休題。ともかく旅行番組は結構好きだ。もうだいぶ昔だが「兼高かおる世界の旅」なんかもよく観ていた。今お気に入りの旅行番組、あるいは地域紹介番組は「出没!アド街ック天国」のほかに、「ブラタモリ」、「世界遺産」、「世界ふれあい街歩き」などである。この4つは番組としての水準は相当に高い。有名人が大騒ぎしながら行列ができる店や観光名所などを紹介する番組はどれもつまらない。「出没!アド街ック天国」は昔に比べたらずいぶんやせ細った感じではあるが、それでもまだ十分面白い。

 始まったころの「出没!アド街ック天国」がどんな感じだったかを最近見始めたばかりの人たちに紹介する意味もあると思うので、昔書いた文章をこの後に載せておきます。最初からずっと観てきた人たちには懐かしいかもしれません。

 

 

 最近はテレビを観ることも少なくなった。テレビをつけるのはDVDを観るためである事が多い。そんな状態でも毎週録画している(注:録画したものの大部分はVHSビデオだったので今は全部捨ててしまった)番組が1つだけある。「出没!アド街ック天国」である。

 「アド街ック天国」はいつ頃から始まった番組かはっきりとは分からないが、もう10年はたっているのではないか(注:上記朝日新聞の記事で1995年4月スタートと判明)。現在長野朝日放送で日曜日の12時から放送されている。ただ、残念なことにまだ完全なレギュラー番組にはなっていない。つまり、必ず毎週放送されるわけではなく、何か特別な番組が入るとそちらに差し替えられてしまうのだ。今の時期だと高校野球の地方大会の放送でこの2週間「アド街ック天国」はお休みである。要するにほとんど埋め草的扱いを受けているのだ。それどころか、毎年のように放送局や放送曜日が変わる。ひどいときにはまったく放送されなかった年もある。今年はほぼ毎週放送されているが、ただ放送される内容は東京12チャンネルより数週間遅れている。何年か前、お盆で実家に帰っていたときに「アド街」を見ていて、その1月後くらいに上田で同じ放送を見たことがある。実家で見たことはすっかり忘れていて、どうして見覚えがあるのだろうかとキツネにつままれたような気分になったことがあった。

 この番組は「地域密着型エンターテインメント」という極めて珍しいタイプの番組であり、番組構成と出演者の魅力という点で出色のスグレモノ番組である。番組の構成はいたって単純である。東京の諸地域(例えば千歳烏山、戸越銀座、本所吾妻橋、東浅草、自由が丘のような単位)や時には地方都市(例えば大阪新世界、横浜本牧、逗子など)を毎回取り上げ、その地域のシンボル的名所、その地域を代表する名店などのベスト30を紹介してゆき、最後に番組がその地域のコマーシャルを作るというものである。これだけでも楽しいのだが、司会の愛川欽也(自称「あなたの街の宣伝本部長」)と大江麻理子(初代は八塩圭子)、レギュラー・メンバーの薬丸裕英、峰竜太、毎回変わるその地域ゆかりのゲスト、そしてコメンテイターの山田五郎(初代は泉麻人)の間のやり取りが実に面白い。

 毎回同じパターンなのだが、少しも飽きないのはレギュラーとゲストの魅力を見事に引き出しているからである。特にレギュラー陣がいい。山田五郎には尊敬すら感じる。その知識の豊富さ、マニアックさ、発想の柔軟さがすごい。地域のコマーシャルを作る時にキーワードを皆で考え出すのだが、彼の発想は抜群である。横浜の「港未来」をテーマに取り上げたときは、港に群がる恋人たちが互いに見詰め合っている絵をバックに流れるキーワードが「港見ない」だった!薬丸君はいつも駄洒落路線だが、彼もすっかりこれにはお株を取られた感じだった。ゲストもまた多彩だ。特になぎら健壱がそのすっとぼけた持ち味を出していて実にいい。彼は準レギュラー的存在で、下町を取り上げたときには必ず出てくる。毎回最後の地域コマーシャルには彼自身が出演し、そのいずれもが傑作である。ギターの弾き語りで珍妙な歌を歌いながらその地域を歩き回るパターンが多いが、彼の人柄がうまく生かされていていつも感心する。いつか是非下町コマーシャル特集をやってほしい。ちょっとしたコーナーも充実していて、中でも「薬丸印の新名物」にはいつも笑わされる。レギュラーの薬丸裕英がテーマの地域に行ってそこの名物を探してきて紹介するのだが、いつもしょぼくてかえって面白いのである。時々掘り出し物があって感心することもある。

 このようにメンバーのやり取りが魅力なのだが、やはり何と言っても僕がこの番組に感じる一番の魅力は東京という街そのものの魅力である。東京以外の都市を取り上げることもあるが、ほとんどは東京の一角を取り上げている。東京という巨大な街のさまざまな地域を、拡大鏡を通してみたように微視的に取り上げている番組は他にない。いや雑誌などでもないだろう。雑誌の特集は取り上げる地域もテーマも限られている。普通の住宅街が取り上げられることはない。東京は人形町、経堂、谷中、王子、渋谷、日本橋、どこをとってもきわめて個性のある町で、それぞれに違った顔を持っている。それが東京の魅力である。東京を離れて長いが、まだまだ知らない東京がある。知っていると思っていた地域でも意外な顔があったりする。東京というメガシティの持つ多彩な顔、ここに一番惹かれるのだ。

 その地域の歴史や地名のいわれなども間単に紹介されている。ベスト30に選ばれるものも、最近のグルメブームの反映でレストラン等の食べ物屋が多く選ばれているきらいはあるが、誰でも知っている名所や有名な老舗などももれなく入っていて、極端な偏りがないところもいい。食べ物も、グルメ番組などで有名人やアナウンサーが食べに行って大仰に「うまい」などと叫んでいると、かえって本当かと疑いたくなるが、この番組では実際に行ったことのある出演者が「そうそう、あのタレが本当にうまいんだよねえ」などと言い合いながら進めてゆくので、その点いやみや宣伝臭がない。

 青年時代の12年間を過ごしたせいだろうか、いまだに東京には惹かれるものがある。なかなか実際に東京の街をゆっくりと歩いている時間は取れないのだが、東京の街歩きを主題にした本はよく読む。四方田犬彦の『月島物語』、なぎら健壱の『下町小僧』や『東京酒場漂流記』、『東京の江戸を遊ぶ』、『ぼくらは下町探検隊』、川本三郎の『私の東京万華鏡』や『私の東京町歩き』、森まゆみの『不思議の町根津』や『谷中スケッチブック』などのいわゆる「谷根千」ものなど、他にもいろいろ読んだ。また、東京の地名がついた小説にもなぜかひかれる所があって、つい何冊も買ってしまう。森田誠吾の『魚河岸ものがたり』(築地が舞台)と『銀座八邦亭』を読んだのもそのせいで、藤沢周平の『本所しぐれ町物語』は実在しない町だが、これも同じ関心から手を出したものである。買ったまま読んでいない本も多いのだが、これからも東京の地名のつく本を買い続けるだろう。

 「アド街ック天国」のビデオやDVDは出ないのだろうか。こういう番組こそDVDがほしい。つまらないドラマなど出すよりもっと教養系の番組をDVDにすべきだ。NHKの番組にはDVDにしてほしいものがたくさんある。海外でもBBC製作のものは出色の出来である。一部ビデオやDVDも出てはいるが、教養系のビデオやDVDは本数が少ないせいだろうが、値段が高い。でも、「アド街ック天国ベスト30」などというDVDがあったら高くても買いたい。せめてテレビで連日3日くらいかけてベスト版総集編でもやってくれないものか。
(2005年7月26日)

 長いこと上田では観られない状態が続いていたが、2022年4月から長野放送で放送されるようになった。久しぶりに観るとだいぶ変わっていた。ベスト30からベスト20に減り、ラストでコマーシャルを作るという企画を始め、いろんな企画がなくなっていた。しかしやや形態が変わったとしても相変わらず面白い。さらに幸いなことに、今ではユーネクストで観ることができる。録画はできないが、これまで見落としていた分を大量に観ることができた。ただしテレビで放送されているものは録画できるので、毎週せっせと録画している。

 

私家版 Who’s Who その3 クリント・イーストウッド

【クリント・イーストウッド】1930年、カリフォルニア州サンフランシスコ生まれ

 クリント・イーストウッド。数々のスターを輩出したハリウッドでもこれほど長い間第一線で活躍し続けている人物は珍しいだろう。なにしろ彼は僕が子供のころ既にスターだったのだ。テレビの「ローハイド」。当時の大人気番組だった。「ローン・レンジャー」、「コンバット」、「パパ大好き」、「名犬ラッシー」、「名犬リンチンチン」、「奥様は魔女」、「突撃マッキーバー」、「トムとジェリー」等々、おっと「ララミー牧場」と「ライフルマン」も忘れちゃいけない。今の世界中の子供たちが日本製アニメで育ったように、あの頃の日本の子供はみんなアメリカのテレビ番組を観て育ったのである。ところで「ローハイド」とはカウボーイたちがズボンの上に着ける革製のカバーのことだが、いったい何のためにあのバサバサしたものを着けているのかいまだによく分からない(ドラマではそこから転じてカウボーイ自体を指しているようだが)。

 そしてマカロニ・ウエスタン時代。高校生から大学生の頃はジョン・ウェイン、ゲーリー・クーパー、バート・ランカスター、グレゴリー・ペック、ジェームズ・スチュワート、ヘンリー・フォンダ、グレン・フォード、アラン・ラッドなどが活躍する正統派西部劇も好きだったが、どちらかというとマカロニ・ウエスタンの乾いた感じの方が好きだった。ジュリアーノ・ジェンマ、リー・ヴァン・クリーフ、ジャン・マリア・ヴォロンテ、フランコ・ネロ、そしてクリント・イーストウッド。マカロニ・ウエスタン時代のイーストウッドは、ひげ面に葉巻をくわえた苦みばしった顔が実に格好よかった。

 そして何といっても「ダーティハリー」(1971年)。これで一気にスターから大スターになった。その後しばらく80年代ぐらいまでは「ダーティハリー」シリーズの印象が強く、ややマンネリの印象を持っていた。90年代はさらに印象が薄かった。ただし、この記事を書くためにこの間70年代から90年代の作品を集中的に観たが、どれも悪くない。88年の「バード」でジャズの世界を描き、方向転換をした感じを受けた。ただし「バード」は映画としては今一つという印象で、むしろ製作総指揮を務めたドキュメンタリー「セロニアス・モンク/ストレート・ノー・チェイサー」の方が個人的には好きだ。監督業にも手を出していると意識し始めたのもこの頃か。実は既に1971年の「恐怖のメロディ」から監督をやっていたのだが、まだこの頃までは俳優のイメージが強かった。本格的に監督になったと感じたのは1992年の「許されざる者」あたりからだが、「マディソン郡の橋」(1995年)、「スペース・カウボーイ」(2000年)、「ミスティック・リバー」(2003年)などはどれも評判ほど優れた作品だとは思えなかった。この頃のイーストウッドはだいぶ枯れてきて、俳優としては昔とはまた別の味が出てきてよかったのだが、監督としてはまだたいしたことはないという認識だった。

 僕が彼を監督としても一流だと初めて認めたのは「ミリオンダラー・ベイビー」(2004年)だった。これは群を抜く傑作で、監督としても俳優としても素晴らしいと思った。細い体形は昔のままだが、髪はすっかり白くなって後退し、顔には深い皺が何本も刻まれている。すっかりじい様だ。昔の苦みばしった顔もいいがこの枯れた味わいもいい。演出も今様のめまぐるしいアクション映画とは一線を画し、悠揚迫らぬ落ち着いた展開。モ-ガン・フリーマンとの老優二人のコンビがまた抜群だった。

 この画期的作品で吹っ切れたかのように、その後は破竹の勢いで傑作を送り出し続けていることはご存じの通りだ。彼の作品は(監督、俳優両方含めて)40本以上観てきたが、真に驚くべきことは全く駄作がないことだ。60年以上映画にかかわってきて、つまらないと思う作品が1本もない(少なくともこれまで観てきた範囲では)。まさに奇跡のような存在。今やアメリカ映画界を代表する、いや世界の映画界を代表する巨匠である。

 

<クリント・イーストウッド出演作・監督作 おすすめの25本>
「ローハイド」(1959~1966)TVドラマ
「荒野の用心棒」(1964)セルジオ・レオーネ監督、イタリア・スペイン・西ドイツ
「夕陽のガンマン」(1965)セルジオ・レオーネ監督、イタリア・スペイン
「恐怖のメロディ」(1971)クリント・イーストウッド監督、アメリカ
「ダーティハリー」(1971)ドン・シーゲル監督、アメリカ
「荒野のストレンジャー」(1972)クリント・イーストウッド監督、アメリカ
「アイガー・サンクション」(1975)クリント・イーストウッド監督、アメリカ
「アウトロー」(1976)クリント・イーストウッド監督、アメリカ
「ガントレット」(1977)クリント・イーストウッド監督、アメリカ
「アルカトラズからの脱出」(1979)ドン・シーゲル監督、アメリカ
「ペイル・ライダー」(1985)クリント・イーストウッド監督、アメリカ
「ザ・シークレット・サービス」(1993)ウォルフガング・ペーターゼン監督、アメリカ
「パーフェクト ワールド」(1993)クリント・イーストウッド監督、アメリカ
「目撃」(1997)クリント・イーストウッド監督、アメリカ
「スペース・カウボーイ」(2000)クリント・イーストウッド監督、アメリカ
「ブラッド・ワーク」(2002)クリント・イーストウッド監督、アメリカ
「ミリオンダラー・ベイビー」(2004)クリント・イーストウッド監督、アメリカ
「父親たちの星条旗」(2006)クリント・イーストウッド監督、アメリカ
「グラン・トリノ」(2008)クリント・イーストウッド監督、アメリカ
「チェンジリング」(2008)クリント・イーストウッド監督、アメリカ
「インビクタス/負けざる者たち」(2009)クリント・イーストウッド監督
「アメリカン・スナイパー」(2014)クリント・イーストウッド監督、アメリカ
「ジャージー・ボーイズ」(2014)クリント・イーストウッド監督、アメリカ
「運び屋」(2018)クリント・イーストウッド監督、アメリカ
「クライ・マッチョ」(2021)クリント・イーストウッド監督、アメリカ

<こちらも要チェック>
「リチャード・ジュエル」(2019)クリント・イーストウッド監督、アメリカ
「ヒアアフター」(2010)クリント・イーストウッド監督、アメリカ
「硫黄島からの手紙」(2006)クリント・イーストウッド監督、アメリカ
「トゥルー・クライム」(1999)クリント・イーストウッド監督、アメリカ
「ダーティハリー5」(1988)バディ・ヴァン・ホーン監督、アメリカ
「ブロンコ・ビリー」(1980)クリント・イーストウッド監督、アメリカ
「戦略大作戦」(1970)ブライアン・G・ハットン監督、アメリカ
「荒鷲の要塞」(1968)ブライアン・G・ハットン監督、アメリカ。イギリス
「マンハッタン無宿」(1968)ドン・シーゲル監督、アメリカ
「奴らを高く吊るせ!」(1968)テッド・ポスト監督、アメリカ

 

 

2022年8月 1日 (月)

先月観た映画 採点表(2022年7月)

「砂の女」(1984)勅使河原宏監督、日本 ★★★★☆△
「鉄道員」(1956)ピエトロ・ジェルミ監督、イタリア ★★★★☆
「あなただけ今晩は」(1963)ビリー・ワイルダー監督、アメリカ ★★★★☆
「ブラディ・サンデー」(2002)ポール・グリーングラス監督、イギリス・アイルランド ★★★★☆
「タレンタイム=優しい歌」(2009)ヤスミン・アフマド監督、マレーシア ★★★★☆
「おとなの事情」(2016)パオロ・ジェノヴェーゼ監督、イタリア ★★★★☆
「大地と白い雲」(2019)ワン・ルイ監督、中国 ★★★★△
「料理は冷たくして」(1979)ベルトラン・ブリエ監督、フランス ★★★★△
「あなたの名前を呼べたなら」(2018)ロヘナ・ゲラ監督、インド・フランス ★★★★△
「コンドル」(1939)ハワード・ホークス監督、アメリカ ★★★★△
「裸足のイサドラ」(1968)カレル・ライス監督、イギリス ★★★★△
「ペトルーニャに祝福を」(2019)テオナ・ストゥルガル・ミテフスカ監督、北マケドニア・仏・ベルギー・クロアチア・スロヴェニア ★★★★△
「怒り」(2016)李相日監督、日本 ★★★★△
「東京アンタッチャブル」(1962)村山新治監督、日本 ★★★★△
「しゃぼん玉」(2016)東伸児監督、日本 ★★★★△
「警視庁物語 遺留品なし」(1959)村山新治監督、日本 ★★★★△
「空港の魔女」(1959)佐伯清監督、日本 ★★★★
「ローズメイカー 奇跡のバラ」(2020)ピエール・ピノー監督、フランス ★★★★
「あの日の指輪を待つきみへ」(2007)リチャード・アッテンボロー監督、英・カナダ・米 ★★★★
「イーグル・アイ」(2008)D・J・カルーソー監督、アメリカ ★★★★
「地中海殺人事件」(1982)ガイ・ハミルトン監督、イギリス ★★★★
「イップ・マン 完結」(2019)ウィルソン・イップ監督、中国・香港 ★★★★
「警視庁物語 七人の追跡者」(1958)村山新治監督、日本 ★★★★
「警視庁物語 追跡七十三時間」(1956)関川秀雄監督、日本 ★★★★
「危険な航海」(1953)ジョセフ・M・ニューマン監督、アメリカ ★★★★
「警視庁物語 白昼魔」(1957)関川秀雄監督、日本 ★★★★
「警視庁物語 十代の足どり」(1963)佐藤肇監督、日本 ★★★★
「クリスタル殺人事件」(1980)ガイ・ハミルトン監督、イギリス ★★★★▽
「火口のふたり」(2019)荒井晴彦監督、日本 ★★★★▽
「プレイモービル マーラとチャーリーの大冒険」(2019)リノ・ディサルヴォ監督、米 ★★★★▽
「操作された都市」(2017)パク・クァンヒョン監督、韓国 ★★★★▽
「動乱」(1980)森谷司郎監督、日本 ★★★★▽
「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」(2021)江口カン監督、日本 ★★★☆
「劇場版コードブルー ドクターヘリ救急救命」(2018)西浦正記監督、日本 ★★★☆
「クライシス」(2021)ニコラス・ジャレッキー監督、アメリカ ★★★

 

主演男優
 5 ピエトロ・ジェルミ「鉄道員」
   ジャック・レモン「あなただけ今晩は」
   ケイリー・グラント「コンドル」
   森山未來「怒り」
   モハマド・シャフィー・ナスウィップ「タレンタイム=優しい歌」
   林遣都「しゃぼん玉」
   三國連太郎「東京アンタッチャブル」
   マヘシュ・ジュガル・キショール「タレンタイム=優しい歌」
   ドニー・イェン「イップ・マン 完結」
   マルコ・ジャリーニ「おとなの事情」
   丹波哲郎「東京アンタッチャブル」
 4 高倉健「空港の魔女」
   高倉健「東京アンタッチャブル」
   チ・チャンウク「操作された都市」
   岡田英次「砂の女」
   柄本佑「火口のふたり」
   山下智久「劇場版コードブルー ドクターヘリ救急救命」

 

主演女優
 5 シャーリー・マクレーン「あなただけ今晩は」
   ヴァネッサ・レッドグレーヴ「裸足のイサドラ」
   シャーリー・マクレーン「あの日の指輪を待つきみへ」
   ジーン・アーサー「コンドル」
   パメラ・チョン「タレンタイム=優しい歌」
   タナ「大地と白い雲」
   久保菜穂子「空港の魔女」
   ティロタマ・ショーム「あなたの名前を呼べたなら」
 4 カトリーヌ・フロ「ローズメイカー 奇跡のバラ」
   ゾリツァ・ヌシェヴァ「ペトルーニャに祝福を」
   岸田今日子「砂の女」
   アンナ・フォリエッタ「おとなの事情」
   カシア・スムートニアック「おとなの事情」
   瀧内公美「火口のふたり」

 

助演男優
 5 クリストファー・プラマー「あの日の指輪を待つきみへ」
   ピート・ポスルスウェイト「あの日の指輪を待つきみへ」
   綿引勝彦「しゃぼん玉」
   加藤嘉「空港の魔女」
   花澤徳衛「空港の魔女」
 4 ベルナール・ブリエ「料理は冷たくして」
   小沢栄太郎「警視庁物語 七人の追跡者」
   リチャード・バーセルメス「コンドル」

 

助演女優
 5 市原悦子「しゃぼん玉」
   渡辺美佐子「東京アンタッチャブル」
 4 藤井美菜「しゃぼん玉」
   戸田恵梨香「劇場版コードブルー ドクターヘリ救急救命」
   小宮光江「警視庁物語 七人の追跡者」
   リタ・ヘイワース「コンドル」

 

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