2021年に観た映画 マイ・ベスト① 新作編
2021年という年は僕にとって(あるいは僕の映画人生にとって)記念すべき年だった。僕が本格的に映画を集中して観始めたのは1971年からである。高校2年生だった。この年を僕の映画人生元年とすると、2021年はちょうど50周年に当たる。映画を観始めたきっかけは、たまたま深夜にテレビでヒッチコックの「白い恐怖」を観たことだ。この作品を観て映画の面白さに開眼し、それ以降ほぼ毎日テレビで映画を観るようになった(当時は夜9時から11時と深夜の12時か1時ごろから映画が放送されていた)。映画ノートによればこの年、1971年には156本観たことになっているが、これがすべてではない。この映画ノートに「白い恐怖」は載っていない(もちろんもっと後に載ってはいるが)。まだ観始めたころは記録を取っていなかったからだ。映画ノートに最初に記録されているのはビリー・ワイルダー監督の「サンセット大通り」である。日付は1971年8月1日。この名作を観て初めて観た映画を記録しようと思い立ったものと推測される。監督や俳優などの名前を忘れないように、あるいは覚えられるようにするためだったと思われる。そう思わせたのが「サンセット大通り」だったわけである。その意味で、「白い恐怖」と「サンセット大通り」は僕にとって重要な、そして画期的な作品である。
記録されなかった部分、つまり「白い恐怖」と「サンセット大通り」の間に観た映画の本数がどれくらいあるのか記録がないので分からない。「白い恐怖」の放送日が分かればある程度推測可能なのだが、深夜に放送された映画は今では把握できない。水野晴郎ならぬ氷野晴郎という方の「テレビの洋画劇場で放送された作品リスト」という便利なブログがあるが、これにも深夜に放送された映画は載っていない。今となってはこの間にどのくらいの映画を観ていたのかもはや調べようもないが、少なくとも20本前後は観ていたのではないか。となると少なくとも年間で170本くらいは観ていたことになる。
ほぼ毎日テレビで映画を観るという習慣は翌年の1972年も続いた。このころには(まだ本数は少ないが)映画館で映画を観るようにもなっていた。1972年は高校の3年生に当たるが、このころは映画を観ていなければ本を読んでいる、本を読んでいなければ映画を観ているという生活をしていた。無意味な受験勉強など目もくれなかった。このほぼ毎日映画を観ていた1972年に観た映画の本数は345本。1年間に観た映画の数としては、これがこれまでの最高記録だった。ほぼ半世紀近くこの本数は最長不倒記録として破られなかったが、ついに2021年にこれを超えた。このことが二つ目の記念すべき事柄である。2021年に観た映画の本数は371本。平均1日1本を超えている。年間総数だけではない。何と5月には64本観ている。ひと月で64本観るというのも新記録だ。ここまで本数が増えたのはコロナ禍で在宅時間が長くなったこともあるが、定年を過ぎ再雇用になったので仕事量がぐっと減ったこともある。
というわけで、毎年作っている「昨年観た映画マイ・ベスト」シリーズも2021年はとんでもなく大変な作業になってしまった。とにかく本数が多すぎて収拾がつかない。もうとても順番を付けられる状況ではないので、作品については同じ評価点は全て横並び、製作年代順に並べることにした。俳優に関しては5点を付けたものだけに絞り、かつ名前の順にした。しかしまあ、これだけ名優の名前が並ぶと壮観である。リストを眺めているだけで感銘を覚えざるを得ない。これから毎年こんな状況になるのだろうか。とてつもない作業量で、想像しただけで恐ろしい。
あまりに数が多いので、新作編(2020年~21年公開・制作作品)、旧作編、俳優編の3つに分けて掲載します。
新作 マイ・ベスト50
「マルモイ ことばあつめ」(2019)オム・ユナ監督、韓国 ★★★★★
「巡礼の約束」(2018)ソンタルジャ監督、中国 ★★★★☆△
「ジュゼップ」(2020)オーレル監督、フランス ★★★★☆
「ファーザー」(2020)フロリアン・ゼレール監督、イギリス・フランス ★★★★☆
「Away」(2019)ギンツ・ジルバロディス監督、ラトビア ★★★★☆
「異端の鳥」(2019)ヴァーツラフ・マルホウル監督、チェコ・他 ★★★★☆
「ジャスト6.5 闘いの証」(2019)サイード・ルスタイ監督、イラン ★★★★☆
「シェイクスピアの庭」(2018)ケネス・ブラナー監督、イギリス ★★★★☆
「Yokosuka 1953」(2021)木川剛志監督、日本 ★★★★△
「海辺の彼女たち」(2020)藤元明緒監督、日本 ★★★★△
「サンドラの小さな家」(2020)フィリダ・ロイド監督、アイルランド・イギリス ★★★★△
「罪の声」(2020)土井裕泰監督、日本 ★★★★△
「ターコイズの空の下で」(2020)KENTARO監督、日本・モンゴル・フランス ★★★★△
「にしきたショパン」(2020)竹本祥乃監督、日本 ★★★★△
「ノマドランド」(2020)クロエ・ジャオ監督、アメリカ ★★★★△
「秘密への招待状」(2020)バート・フレインドリッチ監督、アメリカ ★★★★△
「米軍が最も恐れた男 カメジロー 不屈の生涯」(2019)佐古忠彦監督、日本 ★★★★△
「ウォーデン 消えた死刑囚」(2019)ニマ・ジャヴィディ監督、イラン ★★★★△
「カセットテープ・ダイアリーズ」(2019)グリンダ・チャーダ監督、イギリス ★★★★△
「春江水暖」(2019)グー・シャオガン監督、中国 ★★★★△
「ジョジョ・ラビット」(2019)タイカ・ワイティティ監督、アメリカ・ドイツ ★★★★△
「世界で一番しあわせな食堂」(2019)ミカ・カウリスマキ監督、フィンランド・英・中国 ★★★★△
「雪暴 白頭山の死闘」(2019)ツイ・シウェイ監督、中国 ★★★★△
「82年生まれ、キム・ジヨン」(2019)キム・ドヨン監督、韓国 ★★★★△
「ハリエット」(2019)ケイシー・レモンズ監督、アメリカ ★★★★△
「羊飼いと風船」(2019)ペマ・ツェテン監督、中国 ★★★★△
「ブータン 山の教室」(2019)パオ・チョニン・ドルジ監督、ブータン ★★★★△
「リチャード・ジュエル」(2019)クリント・イーストウッド監督、アメリカ ★★★★△
「ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒」(2019)クリス・バトラー監督、カナダ・米 ★★★★△
「ロケットマン」(2019)デクスター・フレッチャー監督、イギリス ★★★★△
「羅小黒(ろしゃおへい)戦記 ぼくが選ぶ未来」(2019)MTJJ監督、中国 ★★★★△
「キーパー ある兵士の奇跡」(2018)マルクス・H・ローゼンミュラー監督、英・独 ★★★★△
「靴ひも」(2018)ヤコブ・ゴールドヴァッサー監督、イスラエル ★★★★△
「博士と狂人」(2018)P・B・シェムラン監督、英・アイルランド・仏・アイスランド ★★★★△
「はちどり」(2018)キム・ボラ監督、韓国 ★★★★△
「私は確信する」(2018)アントワーヌ・ランボー監督、フランス・ベルギー ★★★★△
「朝が来る」(2020)河瀬直美監督、日本 ★★★★
「スパイの妻」(2020)黒沢清監督、日本 ★★★★
「グッドライアー 偽りのゲーム」(2019)ビル・コンドン監督、アメリカ ★★★★
「長いお別れ」(2019)中野量太監督、日本 ★★★★
「夏時間」(2019)ユン・ダンビ監督、韓国 ★★★★
「閉鎖病棟 -それぞれの朝-」(2019)平山秀幸監督、日本 ★★★★
「マスカレード・ホテル」(2019)鈴木雅之監督、日本 ★★★★
「メイキング・オブ・モータウン」(2019)ベンジャミン&ゲイブ・ターナー監督、英・米 ★★★★
「燃ゆる女の肖像」(2019)セリーヌ・シアマ監督、フランス ★★★★
「ラモとガベ」(2019)ソンタルジャ監督、中国 ★★★★
「ある画家の数奇な運命」(2018)フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督、独 ★★★★
「グンダーマン 優しき裏切り者の歌」(2018)アンドレアス・ドレーゼン監督、ドイツ ★★★★
「ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像」(2018)クラウス・ハロ監督、フィンランド ★★★★
「海辺の家族たち」(2016)ロベール・ゲディギャン監督、フランス ★★★★
次点「最初の晩餐」(2019)常盤司郎監督、日本 ★★★★
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