これから観たい&おすすめ映画・BD(15年7月)
【新作映画】公開日
6月20日
「沖縄 うりずんの雨」(ジャン・ユンカーマン監督、日本)
6月24日
「ストレイヤーズ・クロニクル」(瀬々敬久監督、日本)
6月27日
「アリスのままで」(リチャード・グラッツァー、他、監督、アメリカ)
「悪党に粛清を」(クリスチャン・レヴリング監督、デンマーク・英・南アフリカ)
「レフト・ビハインド」(ヴィク・アームストロング監督、アメリカ)
「雪の轍」(ヌリ・ビルゲ・ジェイサン監督、トルコ・仏・独)
「オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分」(スティーヴン・ナイト監督、英・米)
「ハッピーエンドが書けるまで」(ジョシュ・ブーン監督、アメリカ)
「ただひとりの父親」(ルカ・ルチーニ監督、イタリア)
「夫婦の危機」(ナンニ・モレッティ監督、イタリア)
「フェデリコという不思議な存在」(エットレ・スコーラ監督、イタリア)
「天の茶助」(SABU監督、日本)
「きみはいい子」(呉美保監督、日本)
7月3日
「チャイルド44 森に消えた子どもたち」(ダニエル・エスピノーサ監督、アメリカ)
7月4日
「フレンチアルプスで起きたこと」(リューベン・オストルンド監督、スウェーデン・他)
「ルック・オブ・サイレンス」(ジョシュア・オッペンハイマー監督、デンマーク・他)
「ひつじのショーン バック・トゥ・ザ・ホーム」(マーク・バートン、他、監督、イギリス)
「“記憶”と生きる」(土井敏邦監督、日本)
7月10日
「踊るアイラブユー♪」(マックス・ギーワ、他、監督、イギリス)
7月11日
「バケモノの子」(細田守監督、日本)
「サイの季節」(バフマン・ゴバディ監督、イラク・トルコ)
「ボヴァリー夫人とパン屋」(アンヌ・フォンテーヌ監督、フランス)
「アリのままでいたい」(鴨下潔監督、日本)
「群青色の、とおり道」(佐々部清監督、日本)
7月18日
「インサイド・ヘッド」(ピート・ドクター監督、アメリカ)
「HERO」(鈴木雅之監督、日本)
「パージ」(ジェームズ・デモナコ監督、アメリカ)
「チャップリンからの贈りもの」(グザヴィエ・ボーボワ監督、フランス)
「奇跡の2000マイル」(ジョン・カラン監督、オーストラリア)
「犬どろぼう完全計画」(キム・ソンホ監督、韓国)
「ルンタ」(池谷薫監督、日本)
「海のふた」(豊島圭介監督、日本)
【新作DVD・BD】レンタル開始日
6月19日
「激戦 ハート・オブ・ファイト」(ダンテ・ラム監督、香港)
6月24日
「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」(ジョン・ファブロー監督、アメリカ)
7月2日
「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」(サム・テイラー・ジョンソン監督、米)
「サンバ」(エリック・トレダノ、オリビエ・ナカシュ監督、フランス)
「毛皮のヴィーナス」(ロマン・ポランスキー監督、フランス・ポーランド)
「嗤う分身」(リチャード・アイオアディ監督、イギリス)
「K2 初登頂の真実」(ロバート・ドーンヘルム監督、イタリア)
「シン・シティ 復讐の女神」(ロバート・ロドリゲス、他、監督、アメリカ)
「海月姫」(川村泰祐監督、日本)
7月3日
「ベル――ある伯爵令嬢の恋――」(アマ・アサンテ監督、イギリス)
「あと1センチの恋」(クリスチャン・ディッター監督、イギリス・ドイツ)
「ドラフト・デイ」(アイバン・ライトマン監督、アメリカ)
「おやすみなさいを言いたくて」(エーリク・ポッペ監督、ノルウェー・スウェーデン・他)
「シン・シティ 復讐の女神」(フランク・ミラー監督、アメリカ)
「トレヴィの泉で二度目の恋を」(マイケル・ラドフォード監督、アメリカ)
「マエストロ!」(小林聖太郎監督、日本)
7月8日
「ゴッド・ギャンブラー・レジェンド」(バリー・ウォン監督、中国・香港)
「アメリカン・スナイパー」(クリント・イーストウッド監督、アメリカ)
「バンクーバーの朝日」(石井裕也監督、日本)
「アゲイン 28年目の甲子園」(大森寿美男監督、日本)
7月15日
「プリデスティネーション」(ピーター・スピエリッグ監督、オーストリア)
7月17日
「イントゥ・ザ・ウッズ」(ロブ・マーシャル監督、アメリカ・イギリス・カナダ)
「海がきこえる」(望月智充監督、日本)
7月24日
「ジミー、野を駆ける伝説」(ケン・ローチ監督、イギリス・アイルランド・フランス)
7月25日
「白夜のタンゴ」(ビビアン・ブルーメンシェイン監督、独・フィンランド・アルゼンチン)
7月29日
「深夜食堂」(松岡錠司監督、日本)
7月31日
「みつばちの大地」(マークス・イムホーフ監督、独・オーストリア・スイス)
8月4日
「ビッグ・アイズ」(ティム・バートン監督、アメリカ)
「ブルックリンの恋人たち」(ケイト・バーカー・フロイランド監督、アメリカ)
「さよなら歌舞伎町」(廣木隆一監督、日本)
「祖谷物語 おくのひと」(蔦哲一朗監督、日本)
「君が生きた証」(ウィリアム・H・メイシー監督、アメリカ)
8月5日
「君に泳げ!」(チョ・ヨンソン監督、韓国)
「6才のボクが、大人になるまで。」(リチャード・リンクレイター監督、米)
「KANO 1931海の向こうの甲子園」(マー・ジーシアン監督、台湾)
「ナショナル・ギャラリー 英国の至宝」(フレデリック・ワイズマン監督、仏・米・英)
「きっと、星のせいじゃない。」(ジョシュ・ブーン監督、アメリカ)
「ジュピター」(ラナ・ウォシャウスキー監督、米・英)
「幕が上がる」(本広克行監督、日本)
「劇場版ムーミン 南の海で楽しいバカンス」(グザビエ・ピカルド監督、フィンランド)
「ダブリンの時計職人」(ダラ・バーン監督、アイルランド・フィンランド)
「唐山大地震」(フォン・シャオガン監督、中国)
8月12日
「パーフェクト・プラン」(ヘンリク・ルーベン・ゲンツ監督、アメリカ)
「ジョーカー・ゲーム」(入江悠監督、日本)
「花とアリス殺人事件」(岩井俊二監督、日本)
8月19日
「インヒアレント・ヴァイス」(ポール・トーマス・アンダーソン監督、アメリカ)
「味園ユニバース」(山下敦弘監督、日本)
「ソロモンの偽証 後編・裁判」(成島出監督、日本)
【旧作DVD・BD】発売日
6月24日
「アポロ13」(95、ロン・ハワード監督、アメリカ)
「マンハッタン無宿」(68、ドン・シーゲル監督、アメリカ)
6月25日
「西部戦線一九一八年」(30、G.W.パプスト、ドイツ)DVD
「炭鉱」(31、G.W.パプスト、ドイツ・フランス)DVD
7月2日
「ソドムの市」(75、ピエル・パオロ・パゾリーニ監督、イタリア・フランス)
「ピエル・パオロ・パゾリーニ監督“生の三部作”」(71,72,74、ピエル・パオロ・パゾリーニ監督)
収録作品:「デカメロン」、「カンタベリー物語」、「アラビアンナイト」
「地の群れ」(70、熊井啓監督、日本)
7月3日
「張込み」(58、野村芳太郎監督、日本)
8月4日
「デューン/砂の惑星」(84、デヴィッド・リンチ監督、アメリカ)
「戦争と人間 ブルーレイ・ボックス」(70、71、73、山本薩夫監督、日本)
8月5日
「ザ・ドライバー」(78、ウォルター・ヒル監督、米・英)
8月7日
「アポロンの地獄」(67、ピエル・パオロ・パゾリーニ監督、イタリア・モロッコ)
「奇跡の丘」(64、ピエル・パオロ・パゾリーニ監督、イタリア・フランス)
今月はなかなか充実している。劇場新作ではまずジュリアン・ムーアにアカデミー主演女優賞をもたらした「アリスのままで」が何と言っても話題作だろう。若年性アルツハイマーにかかった言語学者アリスが主人公。日々記憶を失ってゆく女性の苦悩をジュリアン・ムーアが熱演。原題を活かしたタイトルが切ない。リチャード・グラッツァー監督自身もALSを患っており、その進行性の病気と闘いながらの撮影だったという。
トルコからも重いテーマの映画が2本届いた。トルコ映画と言えば80年代に次々と紹介され衝撃を与えたユルマズ・ギュネイ監督の作品群がまず思い浮かぶが、他にも「ハッカリの季節」、「遥かなるクルディスタン」、「少女ヘジャル」など忘れがたい作品がある。「雪の轍」はカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した作品。奇岩が並ぶカッパドキアが舞台。元俳優の初老の男アイドゥンとその妻は洞窟ホテルや借家を経営しているが、そこへ男の妹が出戻ってきて同居することになる。一見穏やかな3人の暮らしは、ある日アイドゥンの車に少年が石を投げつけたのをきっかけに3人は互いに本音をぶつけ合い批判し合うぎすぎすした関係になって行く。人間の偽善や傲慢さなど醜さがあぶり出されてゆく。そのまま沈んでゆくだけなら3時間を超える長尺に耐えられないだろうが、崩壊しそうな関係を突き抜けることで誇りある生き方への模索が描かれるようだ。
「サイの季節」は亡命中のイラン人監督バフマン・ゴバディがトルコで撮った作品。「ブラックボード 背負う人」(2000)は作品として今一つだったが、「酔っ払った馬の時間」(2000)と「亀も空を飛ぶ」(2004)はイラン映画を代表する傑作だと言って良い。バフマン・ゴバディはユルマズ・ギュネイ同様クルド人で(クルド人はトルコ、イラン、イラクなどにまたがって住んでいる)、トルコでもクルド系イラン人を描いている。詩人のサヘルは彼の妻ミナにひそかに恋心を抱く運転手のたくらみにより反体制派として訴えられ投獄された。30年後に釈放されたサヘルは自分が死んだことになっており、妻のミナは元運転手と暮らしていた。こういう展開の作品は他にもあったが、再会後のサヘルとミナをゴバディはどう描いたのか。恐らくここからの展開がこの映画の真骨頂なのだろう。早く観てみたい。
2本のフランス映画にも大いに興味を引かれる。「チャップリンからの贈りもの」は喰いつめた移民2人組がチャップリンの遺体を奪って身代金を受け取ろうと画策する。しかしその計画はとんでもなく杜撰であっさり崩壊しそうに。実際にあった事件を元にしているが、コミカルな演出の背後には何をやってもうまく行かない人たちへのヒューマンな視線があるようだ。台湾映画にやはり誘拐事件を描いた「熱帯魚」というシュールでコミカルな傑作があったが、恐らくそんなタイプの映画だろう。こりゃ楽しみだ。
「ボヴァリー夫人とパン屋」はフローベールの『ボヴァリー夫人』を下敷きにしたコミックの映画化。パン屋のマルタンの隣にイギリス人のボヴァリー夫妻が越してくる。マルタンは愛読書『ボヴァリー夫人』の主人公エマ・ボヴァリーと良く似た名前のジェマ・ボヴァリーに心惹かれる。しかしジェマが美しい青年と浮気をしていると知ったマルタンは、彼女が小説と同じ結末をたどることを恐れてある行動に出る。とこんな展開らしい。覗き見るような男の視線と官能性はパトリス・ルコント監督の「仕立て屋の恋」を連想させる。ルコント作品と肩を並べる水準であることを期待したい。
日本のドキュメンタリー映画2本にも注目したい。「沖縄 うりずんの雨」の監督はアメリカ人のジャン・ユンカーマン。全く知らなかった人だが、80年代から日本を撮り続けてきた人らしい。「沖縄 うりずんの雨」は第二次世界大戦時の沖縄戦から辺野古への米軍基地移転反対運動までを19人の証言で綴った作品。沖縄が経験してきた苦渋の歴史と現在抱える問題を正面から見据えた作品で、いかにも岩波ホールにふさわしい作品である。
「“記憶”と生きる」の土井敏邦監督も全く知らなかったが、「沈黙を破る」「異国に生きる 日本の中のビルマ人」など優れた文化映画を作ってきた人の様だ。「“記憶”と生きる」は太平洋戦争下で「慰安婦」にされた朝鮮人女性たちの証言を通じて彼女たちの日常をとらえたドキュメンタリー。第1部「ナヌムの家」は94年から2年かけて撮ったもので、95年にNHKで放送されている。第2部「姜徳景」はハルモニたちのリーダーだった姜徳景さんの記録。今の剣呑な時代だからこそ観ておかなくてはならない作品だ。
大虐殺の加害者たちを記録した「アクト・オブ・キリング」もまだ観ていないのに、今度は被害者遺族に密着した「ルック・オブ・サイレンス」が公開されることに。殺人部隊のリーダーや司令官も登場する。何と被害者の遺族と殺人者たちは同じ地域で暮らしているのだ!被害者の弟が虐殺の指揮をした人物と直接対面する場面も写されている。なだめすかそうとしたり、脅そうとしたり、加害者たちの素顔がフィルムにしっかりととらえられている。インドネシア軍による東ティモール人虐殺を背景にした「カンタ!ティモール」は音楽という媒介を通して虐殺の記憶を描いていたが、こちらは虐殺そのものをえぐり出そうとしており、しかもその当事者がまだのうのうと生きているのだ!観たら気が滅入るに違いないが、やはり観なくてはなるまい。フィクションはドキュメンタリーを越えられるのか。僕が80年代から問い続けてきたテーマがまた突きつけられることになるだろう。
韓国映画「犬どろぼう完全計画」も誘拐ものだが、こちらは何と犬の誘拐!最近の韓国映画はやたらと犯罪映画が多い気がするが(確かに出来は良いのだが)、たまにはこんなコメディも観てみたい。事業に失敗した父親が失踪し、母親と車で生活しているジソはある時「尋ね人」ならぬ「尋ね犬」の張り紙を見かける。ちょっとした誤解もあるが、ジソは家を手に入れるために裕福な家から犬を誘拐しようと計画を練る。犬を運ぶためにピザ屋の配達員が計画に巻き込まれるが、この男は常にやる気がないというドタバタ的展開。原作はアメリカのベストセラー小説。そういえば、中国映画に「わが家の犬は世界一」という傑作があったが、こちらは犬の一斉取締りで取り上げられた愛犬を何とか取り戻そうとして飼い主が涙ぐましい努力をする逆の展開。犬ものに傑作多し。この映画も楽しめそうだ。
新作BD・DVDは非常に充実している。「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」、「サンバ」、「毛皮のヴィーナス」、「おやすみなさいを言いたくて」、「アメリカン・スナイパー」、「バンクーバーの朝日」、「イントゥ・ザ・ウッズ」、「ジミー、野を駆ける伝説」、「白夜のタンゴ」、「みつばちの大地」、「君が生きた証」、「6才のボクが、大人になるまで。」、「KANO 1931海の向こうの甲子園」、「きっと、星のせいじゃない。」、「ジュピター」、「ダブリンの時計職人」、「唐山大地震」などに注目!
旧作BD・DVDは山本薩夫監督の代表作「戦争と人間 ブルーレイ・ボックス」の発売がうれしい。未見だが、G.W.パプスト監督の「西部戦線一九一八年」と「炭鉱」も気になる。ピエル・パオロ・パゾリーニ監督作品が次々にBD化されるのも歓迎したい。