これから観たい&おすすめ映画・BD(15年4月)
【新作映画】公開日
3月21日
「陽だまりハウスでマラソンを」(キリアン・リートホーフ監督、ドイツ)
「神々のたそがれ」(アレクセイ・ゲルマン監督、ロシア)
3月28日
「ジュピター」(ラナ・ウォシャウスキー監督、米・英)
「カフェ・ド・フロール」(ジャン・マルク・バレ監督、カナダ・フランス)
「人の望みの喜びよ」(杉田真一監督、日本)
「縄文号とパクール号の航海」(水本博之監督、日本)
4月1日
「エイプリルフールズ」(石川淳一監督、日本)
4月1日
「エイプリルフールズ」(石川淳一監督、日本)
4月4日
「間奏曲はパリで」(マルク・フィトゥシ監督、フランス)
「ラブバトル」(ジャック・ドワイヨン監督、フランス)
「パレードへようこそ」(マシュー・ウォーキャス監督、イギリス)
「ジヌよさらば かむろば村へ」(松尾スズキ監督、日本)
「パプーシャの黒い瞳」(ヨアンナ・コス・クラウゼ監督、ポーランド)
「案山子とラケット」(井上春生監督、日本)
「案山子とラケット」(井上春生監督、日本)
4月10日
「バードマン」(アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督、アメリカ)
4月11日
「JIMI:栄光への軌跡」(ジョン・リドリー監督、英・アイルランド・米)
「ソロモンの偽証 後編・裁判」(成島出監督、日本)
「ギリシャに消えた嘘」(ホセイン・アミニ監督、英・仏・米)
「カイト KITE」(ラルフ・ジマン監督、南アフリカ・メキシコ)
「ロード」(ダーモット・ラベリー、他、監督、イギリス)
4月17日
「セッション」(デイミアン・チャゼル監督、アメリカ)
「ワイルド・スピード SKY MISSION」(ジェイムズ・ワン監督、米・日)
「グッド・ライ いちばん優しい嘘」(フィリップ・ファラルドー監督、アメリカ)
「マジック・イン・ムーンライト」(ウディ・アレン監督、米・英)
4月18日
「インヒアレント・ヴァイス」(ポール・トーマス・アンダーソン監督、アメリカ)
「ザ・トライブ」(ミロスラブ・スラボシュビツキー監督、ウクライナ)
5月30日
「ジェームズ・ブラウン 最高の魂を持つ男」(テイト・テイラー監督、米・英)
【新作DVD・BD】レンタル開始日
4月2日
「NOノー」(パブロ・ラライン監督(チリ・米・メキシコ)
「レッド・ファミリー」(イ・ジュヒョン監督、韓国)
「チスル」(オ・ミヨル監督、韓国)
「ランナーランナー」(ブラッド・ファーマン監督、アメリカ)
「泣く男」(イ・ジョンボム監督、韓国)
「リスボンに誘われて」(ビレ・アウグスト監督、独・スイス・ポルトガル)
「刺さった男」(アレックス・デ・ラ・イグレシア監督、スペイン・フランス)
「スガラムルディの魔女」(アレックス・デ・ラ・イグレシア監督、スペイン)
4月3日
「ゴーン・ガール」(デビッド・フィンチャー監督、アメリカ)
「誰よりも狙われた男」(アントン・コービン監督、米・英・独)
「ローマの教室で 我らの佳き日々」(ジュゼッペ・ピッチョーニ監督、イタリア)
「物語る私たち」(サラ・ポーリー監督、カナダ)
「柘榴坂の仇討」(若松節朗監督、日本)
「ブライトン・ロック」(ローワン・ジョフィ監督、イギリス)
4月8日
「ドラキュラ ZERO」(ゲイリー・ショア監督、アメリカ)
「マダム・マロリーと魔法のスパイス」(ラッセ・ハルストレム監督、アメリカ)
「パラダイス:トリロジー DVD-BOX+1」(ウルリヒ・ザイドル監督、オーストリア・独・仏)
「インターステラー」(クリストファー・ノーラン監督、アメリカ・イギリス)
「ブラック・ハッカー」(ナチョ・ビガロンド監督、アメリカ・スペイン)
「ふしぎな岬の物語」(成島出監督、日本)
「蜩ノ記」(小泉堯史監督、日本)
「荒野はつらいよ アリゾナより愛をこめて」(セス・マクファーレン監督、米)
4月15日
「まほろ駅前狂騒曲」(大森立嗣監督、日本)
「イフ・アイ・ステイ 愛が還る場所」(R.J.カトラー監督、アメリカ)
4月17日
「美女と野獣」(クリストフ・ガンズ監督、フランス・ドイツ)
4月20日
「わたしの、終わらない旅」(坂田雅子監督、日本)
4月22日
「ホビット 決戦のゆくえ」(ピーター・ジャクソン監督、ニュージーランド・米)
「幸せのバランス」(イヴァーノ・デ・マッテオ監督、伊・仏)
「トワイライト ささらさや」(深川栄洋監督、日本)
4月24日
「100歳の華麗なる冒険」(フェリックス・ハーングレン監督、スウェーデン)
「アバウト・タイム 愛おしい時間について」(リチャード・カーティス監督、イギリス)
「祝宴!シェフ」(チェン・ユージュン監督、台湾)
「グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札」(オリビエ・ダアン監督、フランス)
「アルゲリッチ 私こそ、音楽!」(ステファニー・アルゲリッチ監督、仏・スイス)
「ベイマックス」(ドン・ホール監督、アメリカ)
4月29日
「寄生獣」(山崎貴監督、日本)
5月2日
「トム・アット・ザ・ファーム」(グザビエ・ドラン監督、カナダ・フランス)
「シャトーブリアンからの手紙」(フォルカー・シュレンドルフ監督、仏・独)
「パワー・ゲーム」(ロバート・ルケティック監督、アメリカ)
「フランシス・ハ」(ノア・バームバック監督、アメリカ)
「薄氷の殺人」(ディアオ・イーナン監督、中国・香港)
「ある優しき殺人者の記録」(白石晃士監督、日本・韓国)
5月8日
「ジェラシー」(フィリップ・ガレル監督、フランス)
「マップ・トゥ・ザ・スターズ」(デビッド・クローネンバーグ監督、カナダ・米・独・仏)
「暮れ逢い」(パトリス・ルコント監督、フランス・ベルギー)
5月13日
「最後の命」(松本准平監督、日本)
5月20日
「ANNIEアニー」(ウイル・グラック監督、アメリカ)
[ウィークエンドはパリで」(ロジャー・ミッシェル監督、イギリス)
「紙の月」(吉田大八監督、日本)
「想いのこし」(平川雄一朗監督、日本)
【旧作DVD・BD】発売日
3月4日
「フィルム・ノワール ベスト・コレクション フランス映画篇DVD-BOX1」
収録作品:「パニック」「ランジュ氏の犯罪」「最後の切り札」「真夜中まで」、他、全8作品
3月27日
「戦争のない20日間」(76、アレクセイ・ゲルマン監督、ソ連)DVD
「道中の点検」(71、アレクセイ・ゲルマン監督、ソ連)DVD
4月2日
「読書する女」(88、ミシェル・ドビル監督、フランス)
4月3日
「ツァイ・ミンリャン初期三部作+引退作『郊遊』」(92~13、ツァイ・ミンリャン監督、台湾)
収録作品:「青春神話」「愛情萬歳」「河」「郊遊(ピクニック)」
4月8日
「パリは燃えているか」(66、ルネ・クレマン監督、フランス)
「山」(56、エドワード・ドミトリク監督、アメリカ)
「カリフォルニア・ドールズ」(81、ロバート・アルドリッチ監督、アメリカ)
「バンド・ワゴン」(53、ビンセント・ミネリ監督、アメリカ)
4月22日
「ハリーとトント」(74、ポール・マザースキー監督、アメリカ)
4月24日
「若者のすべて」(60、ルキノ・ビスコンティ監督、イタリア・フランス)
5月8日
「遥かなる山の呼び声」(80、山田洋次監督、日本)
5月13日
「ヒポクラテスたち」(80、大森一樹監督、日本)
「ピーター・グリーナウェイ 爛熟期 Blu-ray BOX」(88,91,93、英・オランダ・他)
収録作品:「数に溺れて」「プロスペローの本」「ベイビー・オブ・マコン」
今月の劇場新作は全体に注目作が少ないというのが正直な印象。その中で話題になりそうなのは「セッション」と「ジュピター」あたりか。「セッション」は名門音楽院に入学し、ジャズ・バンドのドラマーに抜擢された若者が、鬼の様な教授にしごかれるというストーリー。メルキオールにしごきぬかれるジャン・クリストフを思わず連想してしまったが、この鬼教授のしごきは新兵訓練の鬼軍曹以上らしい。う~ん、こんな音楽映画観たことないかも。だからこそ是が非でも観てみたい。
「ジュピター」はSFアドベンチャー大作。「ゼロ・グラビティ」、「インターステラー」など、このところ良質のSF映画が続いているが、こちらはどうか。監督は「マトリックス」3部作のウォシャウスキー姉弟。う~ん、その系統か。「マトリックス」は観た翌日には全く内容が思い出せなかったからなあ。ともかく独創的なストーリーらしいので、楽しませてもらおう。
他に取り上げたいのは比較的地味な作品だ。「陽だまりハウスでマラソンを」は近頃めっきり公開数が減ったドイツ映画。老人施設に入居したパウル夫妻。パウルは元マラソン選手で、メルボルン・オリンピックの金メダリスト。窮屈な施設に嫌気がさし、70代にして再びフルマラソンに挑戦する。アイスランド映画「春にして君を想う」のシチュエーションにドイツ映画「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」の前向きさとユーモアを足したような味わいか。からっとした老人力を味わえそうだ。
「間奏曲はパリで」はイザベル・ユペール主演の恋愛ドラマ。安定した結婚生活に何か物足りなさを感じた熟年女性が、ある青年に惹かれてノルマンディからパリへ旅立つ。オタール・イオセリアーニ監督「月曜日に乾杯!」の主人公は仕事と家庭に飽きて、ある日突然工場をサボってヴェニスへ行ってしまう。しばらくゆっくり羽を伸ばして、家に帰ってくる。一方、女性が主人公だと同じようなシチュエーションでも恋愛が絡むところが面白い。そう言えば、ここしばらくフランス映画らしいしっとりとした、あるいは洒落た、あるいは危険な香りのする恋愛ドラマを観ていない。この映画にちょっと期待してみよう。
イギリスの80年代はまるまるサッチャーの時代だった。「鉄の女」サッチャーは妥協せずに福祉国家をアメリカの様な競争社会に作り変えた。イギリスは「英国病」と呼ばれた深刻な経済的停滞から抜け出すが、一方で貧富の差が拡大する。極端な上昇志向や拝金主義が蔓延し、弱者は切り捨てられることになった。サッチャー時代の自助努力による立身出世というイデオロギーは、上昇志向の個人がひじを張る社会を生み、そのあおりでかつてのコミュニティという人のつながりは解体されてゆく。這い上がる余地のない失業者や社会の最底辺にいる者たちは、出口のない閉塞した社会の中に捕らわれて抜け出せない。社会が人々を外から蝕み、酒とドラッグが内側から蝕んでゆく。
サッチャーがイギリスをこのような社会に変える際に、乗り越えなければならなかった最大の障害は強大な労働組合である。アーサー・スカーギル率いるイギリスの炭坑労組はかつて最強を誇った組合だった。1984年4月から85年3月まで丸1年間続いた炭鉱ストは結局組合側の敗北で終わるが、この大闘争はまさにサッチャー時代の象徴的出来事だったのである。イギリス世論を二分したこの大闘争は「リトル・ダンサー」や「ブラス!」にも描かれている。
前置きが長くなったが、イギリス映画「パレードへようこそ」はまさにこの1年間にわたる炭鉱労働者の大ストライキを正面から描いた映画だ。いつかこのような映画が作られるだろうと思っていたが、やっと現れたか。しかしいかにもイギリスらしくブラックなひねりが加えられている。炭鉱労働者たちを支持するロンドンのゲイとレズの若者たちが主人公なのである。しかし彼らの募金活動は炭鉱労働者たちからもウェールズの小さな炭鉱町の人々からも相手にされない。それでも若者たちは諦めず、彼らの前に立ちはだかる壁を乗り越えようとする。ケン・ローチ的テーマに「キンキー・ブーツ」のひねりを付け加えたような映画。はっきり宣言しよう、今月一番観たい映画だ。
ジプシーと言えばトニー・ガトリフ監督作品がすぐ思い浮かぶが、「パプーシャの黒い瞳」はポーランド映画。ジプシー女性詩人の伝記映画である。公式サイトを見て上映館が岩波ホールだと分かった。確かにいかにも岩波ホール向きの映画だ。書き文字を持たないジプシーの女性が言葉と文字に惹かれ、やがてジプシー女性として最初の詩人になって行く。その苦難の人生をポーランド現代史・ジプシー迫害の歴史と絡めながら描く。白黒の骨太の映画の様だ。これもぜひ観たい。
「ギリシャに消えた嘘」はパトリシア・ハイスミスの『殺意の迷宮』を映画化した心理サスペンス。「マジック・イン・ムーンライト」はウディ・アレン監督のロマンティック・コメディ。主演はコリン・ファースと「ヘルプ ~心がつなぐストーリー~」のエマ・ストーン。日本映画は心惹かれるものが少ない。「ソロモンの偽証」(前篇・後編)はだいぶ宣伝に力が入っているようだが、原作が面白かっただけに映画は観る気がしない。見劣りするにきまっているからだ。むしろ日本映画で名前を挙げるとすれば、ドキュメンタリー映画「縄文号とパクール号の航海」と東日本大震災で孤児になった子どもたちを描いた「人の望みの喜びよ」あたりか。
一方、新作BD・DVDは充実している。「NOノー」、「レッド・ファミリー」、「チスル」、「リスボンに誘われて」、「スガラムルディの魔女」、「ゴーン・ガール」、「誰よりも狙われた男」、「マダム・マロリーと魔法のスパイス」、「インターステラー」、「ふしぎな岬の物語」、「蜩ノ記」、「美女と野獣」、「幸せのバランス」、「100歳の華麗なる冒険」、「アバウト・タイム 愛おしい時間について」、「祝宴!シェフ」、「シャトーブリアンからの手紙」、「パワー・ゲーム」、「フランシス・ハ」、「薄氷の殺人」、「マップ・トゥ・ザ・スターズ」、「暮れ逢い」、「紙の月」、等々。
旧作BD・DVDはまずまず。だいぶ色々と出てくるようになった。フィルム・ノワールを語る上でフレンチ・ノワールは外せない。「フィルム・ノワール ベスト・コレクション フランス映画篇DVD-BOX1」収録の8本はどれも未見だが、それだけ貴重な作品ばかりだということ。中でもジュリアン・デュヴィヴィエ監督の「パニック」はぜひ観てみたい。「モンパルナスの夜」もいつかは発売されるのだろうか。
アレクセイ・ゲルマン監督作品は以前4作入りのBOXを買ったが、今度はバラで出る。87年に三百人劇場で観た「道中の点検」が実に印象的だった。長らく幻の作品だった映画である。そのヒューマンな視点に共感した。しかし89年に銀座シネパトス1で観た「わが友イワン・ラプシン」にはがっかり。ひたすら退屈な映画だった。BOXで買うよりもバラで買う方が良いでしょう。