これから観たい&おすすめ映画・BD(14年4月)
【新作映画】
3月21日公開
「ローン・サバイバー」(ピーター・バーグ監督、アメリカ)
「ウォルト・ディズニーの約束」(ジョン・リー・ハンコック監督、アメリカ)
「ワン チャンス」(デビッド・フランケル監督、イギリス)
「フルートベール駅で」(ライアン・クーグラー監督、アメリカ)
「LEGOムービー」(フィル・ロード、他監督、アメリカ)
「神様のカルテ2」(深川栄洋監督、日本)
「ドラゴン・コップス 微笑捜査線」(ウォン・ジーミン監督、中国)
3月22日公開
「オーバー・ザ・ブルースカイ」(フェリックス・バン・ヒュルーニンゲン監督、ベルギー・他)
「友だちと歩こう」(緒方明監督、日本)
3月29日公開
「セインツ 約束の果て」(デビッド・ロウリー監督、アメリカ)
「チーム・バチスタFINAL ケルベロスの肖像」(星野和成監督、日本)
「白ゆき姫殺人事件」(中村義洋監督、日本)
「ダブリンの時計職人」(ダラ・バーン監督、アイルランド・フィンランド)
「チスル」(オ・ミヨル監督、韓国)
4月4日公開
「リベンジ・マッチ」(ピーター・シーガル監督、アメリカ)
「大人ドロップ」(飯塚健監督、日本)
4月5日公開
「アデル、ブルーは熱い色」(アブテラティフ・ケンシュ監督、フランス)
「サイレント・ウォー」(アラン・マック監督、中国・香港)
「ワレサ 連帯の男」(アンジェイ・ワイダ監督、ポーランド)
「サクラサク」(田中光敏監督、日本)
4月12日公開
「ワールズ・エンド 酔っ払いがアメリカ横断チン道中」(ジェフ・トレメイン監督、米)
「アクト・オブ・キリング」(ジョシュア・オッペンハイマー監督、デンマーク・ノルウェー)
「世界の果ての通学路」(パスカル・フリッソン監督、フランス)
「ネルソン・マンデラ釈放の真実」(マンディ・ジェイコブソン監督、南アフリカ)
4月18日公開
「8月の家族たち」(ジョン・ウェルズ監督、アメリカ)
4月19日公開
「レイルウェイ 運命の旅路」(ジョナサン・デプリツキー監督、オーストラリア・英)
「チョコレートドーナツ」(トラビス・ファイン監督、アメリカ)
「ある過去の行方」(アスガー・ファルハディ監督、仏・伊)
「神聖ローマ、運命の日 オスマン帝国の進撃」(レンツォ・マルチネリ監督、伊・ポーランド)
【新作DVD・BD】
4月2日
「ムード・インディゴ うたかたの日々」(ミシェル・ゴンドリー監督、フランス)
「飛べ!ダコタ」(油谷誠至監督、日本)
「凶悪」(白石和彌監督、日本)
「殺人漫画」(キム・ヨンギュン監督、韓国)
「ダイアナ」(オリバー・ヒルシュピーゲル監督、イギリス)
「悪の法則」(リドリー・スコット監督、米・英)
「黒いスーツを着た男」(カトリーヌ・コルシニ監督、仏・モルドヴァ)
「デッドマン・ダウン」(ニールス・アルデン・オブレブ監督、米)
「危険なプロット」(フランソワ・オゾン監督、フランス)
「ノンストップ!」(ローラン・ネグレ監督、スイス・加・仏)
4月8日
「この空の花 長岡花火物語」(大林宣彦監督、日本)、レンタルは7月8日
4月9日
「コールド・ウォー 香港警察二つの正義」(リョン・ロクマン、他、監督、香港)
「47RONIN」(カール・リンシュ監督、アメリカ)
「コン・ティキ」(ヨアヒム・ローニング監督、英・独・ノルウェー・デンマーク)
4月15日
「42 世界を変えた男」(ブライアン・ヘルゲランド監督、米)
4月16日
「陽だまりの彼女」(三木孝浩監督、日本)
「四十九日のレシピ」(タナダユキ監督、日本)
「大統領の料理人」(クリスチャン・バンサン監督、フランス)
4月18日
「ハンガー・ゲーム2」(フランシス・ローレンス監督、アメリカ)
4月23日
「ゼロ・グラビティ」(アルフォンソ・キュアロン監督、アメリカ)
「そして父になる」(是枝裕和監督、日本)
4月25日
「わたしはロランス」(グザビエ・ドラン監督、カナダ・仏)
「ブッダ・マウンテン 希望と祈りの旅」(リー・ユー監督、中国)
4月26日
「楽園からの旅人」(エルマンノ・オルミ監督、イタリア)
「ある海辺の詩人~小さなヴェニスで」(アンドレア・セグレ監督、イタリア・フランス)
「終わり行く一日」(トーマス・イムバッハ監督、スイス)
5月2日
「椿姫ができるまで」(フィリップ・ベジア監督、フランス)
「今日子と修一の場合」(奥田瑛二監督、日本)
「カイロ・タイム~異邦人~」(ルバ・ナッダ監督、カナダ・アイルランド)
「セイフ ヘイヴン」(ラッセ・ハルストレム監督、米)
「セブン・サイコパス」(マーティン・マクドナー監督、イギリス)
「REDリターンズ」(ディーン・パリソット監督、米・仏・加)
「トラブゾン狂騒曲 小さな村の大きなゴミ騒動」(ファティ・アキン監督・ドイツ)
「ウォーキングwithダイナソー」(ニール・ナイチンゲイル・他、監督、英・米・豪)
「人類資金」(坂本順治監督、日本)
「オーバードライヴ」(リック・ローマン・ウォー監督、米・アラブ首長国連邦)
5月14日
「清須会議」(三谷幸喜監督、日本)
「遥かなる勝利へ」(ニキータ・ミハルコフ監督、ロシア)
【旧作DVD・BD】
3月22日
「大理石の男」(77、アンジェイ・ワイダ監督、ポーランド)
「鉄の男」(81、アンジェイ・ワイダ監督、ポーランド)
「マタギ」(82、後藤俊夫監督、日本)
3月26日
「モーターサイクル・ダイアリーズ」(ウォルター・サレス監督、アルゼンチン・チリ・他)
「キートス!!カウリスマキ Blu-ray BOX ①」
収録作品:「レニングラード・カウボーイ・ゴー・アメリカ」「白い花びら」他、全8作
「キートス!!カウリスマキ Blu-ray BOX ②」
収録作品:「愛しのタチアナ」「浮雲」「過去のない男」「街のあかり」他、全8作
4月2日
「ボルサリーノ」(70、ジャック・ドレー監督、仏・伊)
4月25日
「アンネの日記」(59、ジョージ・スティーブンス監督、アメリカ)
「ベスト戦争映画 ブルーレイ・コレクション」
収録作品:「頭上の敵機」「眼下の敵」「史上最大の作戦」「大脱走」他、全10作
5月14日
「アミスタッド」(04、スティーブン・スピルバーグ監督、アメリカ)
「ジョン・カサベテス Blu-ray BOX」
収録作品:「アメリカの影」「こわれゆく女」「オープニング・ナイト」他、全5作
劇場新作は地味だが充実した作品がそろっている。スーザン・ボイルを一躍有名にしたことで知られるオーディション番組「ブリテンズ・ゴット・タレント」。その2年前、2007年の第1回シーズンで優勝したのがポール・ポッツ。「ワン チャンス」はそのポール・ポッツの半生を描いた伝記映画。サッチャーの80年代を経た90年代と2000年代初めのイギリス映画には、サッチャー時代の悪夢を振り払うかのように成功物語がたくさん作られた。「ブラス!」「フル・モンティ」「リトル・ヴォイス」「グリーン・フィンガーズ」「シーズン・チケット」「リトル・ダンサー」「シャンプー台のむこうに」「ベッカムに恋して」「カレンダー・ガールズ」等々。その後の「ミリオンズ」や「キンキー・ブーツ」も含めた流れの中にこの作品を置いてみると、現代イギリス映画の一つの系譜が見えてくるだろう。
サンフランシスコのフルートベール駅のホームで黒人青年が鉄道警官に射殺された。「フルートベール駅で」は人種差別問題をしっかりと見据えたうえで、一人の人間の死が持つ意味を深く掘り下げた作品。先月紹介した劇場未公開作品「ミッシング・ポイント」もそうだが、アメリカ映画はこういう社会派映画も多数制作している。その点日本映画の近視眼的、視野狭窄的作品ばかりが山の様に作られている現状には強い不安と不満を覚える。
「チョコレートドーナツ」は70年代にあった実話をもとにしている。同性愛のカップルであるショー・バーのダンサーと弁護士がひょんなことからダウン症の子供を引き取ることに。しかし二人が同性愛者であることが発覚し、子供は福祉局に無理やり送られてしまう。二人は裁判に訴えるという展開。「ツイン・フォールズ・アイダホ」(1999)に通じるヒューマンな映画のようだ。ケン・ローチ監督の傑作「レディバード・レディバード」(1994)と見比べてみるのも面白いだろう。
カントリー・ミュージックは日本ではあまり人気がないが、よく似たブルーグラスともなればほとんど存在すら知られていないと言って良い。スコットランドとアイルランドをルーツとする移民たちがアメリカで発展させた音楽だが、この音楽が何と「オーバー・ザ・ブルースカイ」というベルギー・オランダ製作の映画で重要な役割を果たしている。ヨーロッパで大ヒットした映画。これは早く観てみたい。サントラ盤もぜひ手に入れたい。
「ダブリンの時計職人」はタイトルに惹かれたが、地味ながら人生の滋味にあふれる作品のようだ。失業してアイルランドに戻ってきた失意の時計職人が青年と美しいピアノ教師に出会って立ち直ってゆく。この手の作品にはずれは少ない。主演はコルム・ミーニー。悪役も多いが、何と言っても「ウェールズの山」(1996)の“好色”モーガン役が印象的。脇役を務めてきた名優が主役を張る。心から応援したくなる映画だ。
自主管理労働組合「連帯」のワレサ委員長。80年代初頭に何度も話題に上り、ポーランド民主化運動のリーダーとして一躍名を知られた人物。髭のワレサは後にポーランドの大統領にまでなった。アンジェイ・ワイダ監督の「大理石の男」(1977)は「連帯」の結成を予言したといわれ、「鉄の男」(1981)はグダニスク(懐かしい地名だ!)の造船所で起ったストライキを題材にして「連帯」への共感を示した。ワレサ氏本人も作中に顔を出している。アンジェイ・ワイダ監督は「地下水道」(1956)と「灰とダイヤモンド」(1958)を作り、ポーランドを代表する監督として知られていた。しかしその後さっぱり名前を聞くこともなく、とっくに引退したと思っていた。そのアンジェイ・ワイダが「大理石の男」と「鉄の男」で復活したのである。処女作の「世代」 (1954)の初公開を始め、80年代には70年代から80年代にかけて撮られた彼の作品が岩波ホールなどで次々と公開された。だから正しくは「復活」したのではなく、再発見されたのである。しかし「大理石の男」と「鉄の男」はやはりアンジェイ・ワイダにとってターニング・ポイントになる作品だったのではないか。「ワレサ 連帯の男」はこれら2作の延長線上にある作品だろう。30余年を経ての三部作完結。今なぜワレサなのか。この作品を通してじっくりと考えてみたい。
「世界の果ての通学路」はドキュメンタリー作品。ケニア、アルゼンチン、モロッコ、インド。いずれも長く過酷な通学路を超えて登校する子供たちを描く。なぜ子どもたちはそんなに苦労してまで学校に通うのか。学校で彼らは何を得たいのか。野村芳太郎監督の名作「拝啓天皇陛下様」(1963)の中に、中隊長(加藤嘉)が山田正助(渥美清)に言う印象的な台詞がある。「お前は文字を知らん。それは人生において甚だ損。学を修めるということは人間が正しく生きる道を学ぶことである。」時代が時代だけに「人間が正しく生きる道」などという修身の教科書にでも用いられているような表現が使われているが、文字を知ることで人は初めてまっとうな人間になれるという考え方には共感できる。無学だったものが必死で字を覚える感動的なシーンはいろんな作品で描かれている。たとえばNHKの名作ドラマ「大地の子」(1995)、「小さな中国のお針子」(2002)、「サン・ジャックへの道」(2005)、「おじいさんと草原の小学校」(2010)など。教育の原点などというありきたりの表現ではなく、「夢をかなえたいから」という子どもたち自身の言葉に胸が震える。
韓国映画「チスル」は1948年4月3日に済州島で起きた武装蜂起と島民に対する無差別の虐殺を正面から描いた初めての劇映画。この事件に関しては何度も耳にしたことがあるが、その詳しい実情に関してはほとんど知らない。「チスル」は長い間タブー視されてきた事実にようやく光を当てた勇気ある作品なのである。インディペンデント映画のようだが、韓国内では異例の大ヒットとなったという。韓国映画は大量の美男美女映画を作っているが、こうした歴史に埋もれた事実を掘り起こす作品も少なからず作ってきた。その点は日本ももっと見習うべきだろう。
アスガー・ファルハディ監督の「別離」は衝撃的作品だった。「友だちのうちはどこ?」(1987)と「そして人生はつづく」(1992)を観てイラン映画のレベルの高さに驚愕して以来、意識的にイラン映画を観てきたが、こんなタイプのイラン映画が出現するとは思ってもいなかったからだ。「ある過去の行方」はそのアスガー・ファルハディ監督によるサスペンス映画だ。イラン人のアフマドは別れたフランス人の妻と正式に離婚手続きをするためにパリに戻る。そこで妻の娘からある衝撃的な事実を知らされる。そしてそれぞれが抱えていた思いも寄らなかった秘密を知ることになる。そんな展開らしい。「別離」の印象を引きずったまま観に行ってもがっかりすることはなさそうだ。
「8月の家族たち」はメリル・ストリープ、ジュリア・ロバーツ、ユアン・マクレガー、ジュリエット・ルイスなどが織りなす家族の危機ドラマ。見応えがありそうだ。「LEGOムービー」はレゴブロックで組み立てられた人物がやはりレゴブロックで組み立てられたメカや建物を背景に、管理された世界の中で平凡に生きてきた青年が悪の権化の如き社長と戦い世界を救うというアニメ。まあ楽しめるでしょう。
新作BD・DVDもにぎやかだ。「凶悪」、「黒いスーツを着た男」、「この空の花 長岡花火物語」、「コン・ティキ」、「42 世界を変えた男」、「四十九日のレシピ」、「大統領の料理人」、「ゼロ・グラビティ」、「そして父になる」、「ブッダ・マウンテン 希望と祈りの旅」、「ある海辺の詩人~小さなヴェニスで」、「清須会議」、「遥かなる勝利へ」などに注目。
旧作BD・DVDはまあまあというところか。「ワレサ 連帯の男」の公開に合わせて「大理石の男」と「鉄の男」が発売される。未見の方はこの機会にどうぞ。初めてデジタル化される作品がないのは寂しい。だいぶ発掘は進んだが、まだまだ掘り起こすべき名作は残っている。リストに挙げた作品から「モーターサイクル・ダイアリーズ」を取り上げておこう。中南米映画を代表する名作「セントラル・ステーション」のウォルター・サレス監督作品である(「セントラル・ステーション」公開当時はヴァルテル・サレスと表記されていたが、「モーターサイクル・ダイアリーズ」公開時には英語発音表記になっている)。若い頃のチェ・ゲバラが南米大陸を縦断しようという壮大な計画に基づく旅に出る話である。そこで見た現実がゲバラを革命家に変えた。「セントラル・ステーション」と並ぶウォルター・サレス監督の代表作。見落とした方はぜひ観てほしい。
なお、アキ・カウリスマキ作品がブルーレイBOXで2セットに分けて発売されるが、各セットに収録された作品がDVDで分売される。特におすすめなのは「愛しのタチアナ」・「浮雲」の組み合わせと「過去のない男」・「街のあかり」の組み合わせ。持っていなければこの機会にどうぞ。