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2009年8月

2009年8月30日 (日)

2008年公開映画マイ・ベストテン

2008年外国映画マイ・ベスト20

1 「この自由な世界で」(ケン・ローチ監督、英・伊・独・スペイン)
2 「未来を写した子どもたち」(ロス・カウフマン、ザナ・ブリスキ監督、米)
3 「ヤング@ハート」(スティーヴン・ウォーカー監督、イギリス)
4 「トゥヤーの結婚」(ワン・チュアンアン監督、中国)
5 「胡同の理髪師」(ハスチョロー監督、中国)
6 「イースタン・プロミス」(デビッド・クローネンバーグ監督、英・米・加)
7 「その土曜日、7時58分」(シドニー・ルメット監督、英・米)
8 「ウォーリー」(アンドリュー・スタントン監督、米)
9 「告発のとき」(ポール・ハギス監督、米)
10「ジプシー・キャラバン」(ジャスミン・デラル監督、米)
11「シークレット・サンシャイン」(イ・チャンドン監督、韓国)
12「12人の怒れる男」(ニキータ・ミハルコフ監督、ロシア)
13「ダークナイト」(クリストファー・ノーラン監督、米)
14「赤い風船」(アルベール・ラモリス監督、フランス)
15「ダージリン急行」(ウェス・アンダーソン監督、米)
16「アメリカン・ギャングスター」(リドリー・スコット監督、米)
17「ノー・カントリー」(ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン監督、米)
18「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」(ポール・トーマス・アンダーソン監督、米)
19「イントゥ・ザ・ワイルド」(ショーン・ペン監督、米)
20「モンテーニュ通りのカフェ」(ダニエル・トンプソン監督、仏)
次点「4ヶ月、3週と2日」(クリスティアン・ムンジウ監督、ルーマニア)

「マルタのやさしい刺繍」(ベティナ・オベルリ監督、スイス)
「ボーダータウン 報道されない殺人者たち」(グレゴリー・ナヴァ監督、米)
「リダクテッド」(ブライアン・デ・パルマ監督、米・カナダ)
「つぐない」(ジョー・ライト監督、イギリス)
「幻影師アイゼンハイム」(ニール・バーガー監督、米・チェコ)
「ブロードウェイ♪ブロードウェイ」(ジェイムズ・D・スターン、他監督、米)
「最高の人生の見つけ方」(ロブ・ライナー監督、米)
「ジェイン・オースティンの読書会」(ロビン・スウィコード監督、米)
「潜水服は蝶の夢を見る」(ジュリアン・シュナーベル監督、仏・米)
「ラスト・コーション」(アン・リー監督、米・中国・台湾・香港)

2008年日本映画マイ・ベスト10

1 「ぐるりのこと。」(橋口亮輔監督)
2 「おくりびと」(滝田洋二郎監督)
3 「ハッピーフライト」(矢口史靖監督)
4 「歩いても 歩いても」(是枝裕和監督)
5 「クライマーズ・ハイ」(原田眞人監督)
6 「闇の子供たち」(坂本順治監督)
7 「ザ・マジックアワー」(三谷幸喜監督)
8 「百万円と苦虫女」(タケダユキ監督)
9 「西の魔女が死んだ」(長崎俊一監督)
10「人のセックスを笑うな」(井口奈己監督)
次点「崖の上のポニョ」(宮崎駿監督)

「長い長い殺人」(麻生学監督)

 年間ベストテンを示すのが昨年よりも1月ほど遅くなってしまった。7月下旬から8月にかけてアニメを中心に観ていたので、新作DVDをあまり観られなかったせいだろうと今振り返ってみて思う。こんな時期に昨年のベストテンを挙げるのは全く時期外れで恥ずかしいが、DVDを中心に観ているので仕方がない。

 この時期まで遅らせてもまだまだ気になる作品で観ていないものは多い。外国映画では「アウェイ・フロム・ハー 君を想う」、「イースタン・プロミス」、「敵こそ、我が友 戦犯クラウス・バルビーの3つの人生」、「ヤング@ハート」、「懺悔」、「チェチェンへ アレクサンドラの旅」、「そして、私たちは愛に帰る」、「ランジェ公爵夫人」、「ぜんぶ、フィデルのせい」、「英国王 給仕人に乾杯!」など。日本映画では「母べえ」、「トウキョウソナタ」、「ブタがいた教室」、「石内尋常高等小学校 花は散れども」など。順次観てゆくつもりだが、そのつど必要なら順位を入れ替えることになる。

 昨年は全体にとびぬけた傑作が少なかったと思う。満点の五つ星を付けたのは洋画・邦画を通じて「この自由な世界で」のみ。ここ10年で一番少ないかもしれない。代わりに四つ星半を付けた作品が増えた。ひょっとしたら自分の採点基準が厳しくなったのかと少々不安になるほどだ。

 まず外国映画から見てゆくと、今年の顕著な特徴はアメリカ映画が大量にランクインしていること。名前を挙げた27本を国別に分けてみると、アメリカ16本、中国3本、フランス3本、イギリス、韓国、ロシア、ルーマニア、スイスが各1本。昨年は上位22本のうちアメリカ映画はわずか4本だった。9.11後落ち込みが目立ったアメリカ映画に復調の兆しが見えてきたということだろう。確かに昨年は力作がそろった。

 逆に言えばアメリカ映画以外の国に傑作が少なかったということになる。例年ベストテンの半数からそれ以上をアメリカ映画以外が占めるのが僕のベストテンの特徴である。

 2008年も上位10本ではアメリカ映画は4本しかないが、11位から20位では7本を占める。名前を挙げた27本中、アメリカ映画以外で複数ランクインしているのは中国とフランスだけ。昨年2本入っていたスペインはゼロ。ロシア、ルーマニア、スイスが入っているが、全体として例年に比べてバラエティが乏しい。

 日本映画も全体に小粒になった気がする。「おくりびと」がアカデミー外国語映画賞を取ったことが話題になったが、今年の特徴は「ぐるりのこと。」、「歩いても 歩いても」、「人のセックスを笑うな」といった、日常を異様なほどリアルに描く作品が目立ったこと。もうひとつ「ハッピーフライト」や「クライマーズ・ハイ」といったこれまであまりなかったタイプの映画が作られるようになったことである。この手の映画は大味になることがほとんどだったが、この2本は力作だった。

 昨年はアメリカ映画の大ヒット作品が減った。一方日本映画の公開数はかなり増えた。観る気にならない志の低い映画が相変わらず多いが、小粒ながら良作も一定数作られている。若者の映画館離れという新たな課題も抱えているが、2000年代以降続いている日本映画の勢いはまだしばらく続くだろう。しかし作品の質が全体にもっと上がらなければまた観客から見放されてゆくことになる。すっかり一時の勢いが消え去った韓国映画のようにならなければいいが。  

 参考までに、マイ・ベストテンを付け始めた85年以降の年間ベスト3を下に掲げておきます。日本映画のベストテンを付け始めたのは2005年から。それまではベストテンが作れるほど観ていなかった。いや、そもそもベストテンと呼べるほどの作品を10本そろえられなかったからである。

【1985年】
1 「路」(ユルマズ・ギュネイ監督、トルコ・スイス)
2 「カオス・シチリア物語」(パオロ&ヴィットリオ・タビアーニ監督、イタリア)
3 「ミツバチのささやき」(ビクトル・エリセ監督、スペイン)

【1986年】
1 「パパは、出張中!」(エミール・クストリッツァ監督、ユーゴスラビア)
2 「黄色い大地」(チェン・カイコー監督、中国)
3 「未来世紀ブラジル」(テリー・ギリアム監督、英・米)

【1987年】
1 「オフィシャル・ストーリー」(ルイス・プエンソ監督、アルゼンチン)
2 「サルバドル 遥かなる日々」(オリバー・ストーン監督、アメリカ)
3 「戒厳令下チリ潜入記」(ミゲル・リティン監督、スペイン)

【1988年】
1 「芙蓉鎮」(シェ・チン監督、中国)
2 「エル・ノルテ 約束の地」(グレゴリー・ナヴァ監督、アメリカ)
3 「さよなら子供たち」(ルイ・マル監督、フランス)

【1989年】
1 「紅いコーリャン」(チャン・イーモウ監督、中国)
2 「マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ」(ラッセ・ハルストレム監督、スウェーデン)
3 「ニュー・シネマ・パラダイス」(ジョゼッペ・トルナトーレ監督、イタリア)

【1990年】
1 「ドライビング・ミス・デイジー」(ブルース・ベレスフォード監督、アメリカ)
2 「略奪の大地」(リュドミル・スタイコフ監督、ブルガリア)
3 「ロジャー&ミー」(マイケル・ムーア監督、アメリカ)

【1991年】
1 「マルセルの夏」(イブ・ロベール監督、フランス)
2 「エンジェル・アット・マイ・テーブル」(ジェーン・カンピオン監督、ニュージーランド)
3 「わが心のボルチモア」(バリー・レビンソン監督、アメリカ)

【1992年】
1 「ナイト・オン・ザ・プラネット」(ジム・ジャームッシュ監督、アメリカ)
2 「心の香り」(スン・チョウ監督、中国)
3 「フォー・ザ・ボーイズ」(マーク・ライデル監督、アメリカ)

【1993年】
1 「ザ・プレイヤー」(ロバート・アルトマン監督、アメリカ)
2 「銀馬将軍は来なかった」(チャン・ギルス監督、韓国)
3 「セント・オブ・ウーマン」(マーチン・ブレスト監督、アメリカ)

【1994年】
1 「さらば、わが愛覇王別姫」(チェン・カイコー監督、中国)
2 「風の丘を越えて」(イム・グォンテク監督、韓国)
3 「ジョイ・ラック・クラブ」(ウェイン・ワン監督、アメリカ)

【1995年】
1 「ショーシャンクの空に」(フランク・ダラボン監督、アメリカ)
2 「告発」(マーク・ロッコ監督、アメリカ)
3 「太陽に灼かれて」(ニキータ・ミハルコフ監督、ロシア・フランス)

【1996年】
1 「レディバード・レディバード」(ケン・ローチ監督、イギリス)
2 「明日を夢見て」(ジュゼッペ・トルナトーレ監督、イタリア)
3 「ウェールズの山」(クリストファー・マンガー監督、イギリス)

【1997年】
1 「秘密と嘘」(マイク・リー監督、イギリス)
2 「シャイン」(スコット・ヒックス監督、オーストラリア)
3 「ブコバルに手紙は届かない」(ボーロ・ドラシュコヴィッチ監督、ユーゴスラビア他)

【1998年】
1 「プライベート・ライアン」(スティーブン・スピルバーグ監督、アメリカ)
2 「床家の三姉妹」(メイベル・チャン監督、香港・日本)
3 「ブラス!」(マーク・ハーマン監督、イギリス)

【1999年】
1 「セントラル・ステーション」(ヴァルテル・サレス監督、ブラジル)
2 「運動靴と赤い金魚」(マジッド・マジディ監督、イラン)
3 「恋におちたシェイクスピア」(ジョン・マッデン監督、イギリス)

【2000年】
1 「太陽は、ぼくの瞳」(マジッド・マジディ監督、イラン)
2 「オール・アバウト・マイ・マザー」(ペドロ・アルモドヴァル監督、スペイン)
3 「海の上のピアニスト」(ジュゼッペ・トルナトーレ監督、伊・米)

【2001年】
1 「JSA」(パク・チャヌク監督、韓国)
2 「山の郵便配達」(フォ・ジェンチイ監督、中国)
3 「アメリ」(ジャン・ピエール・ジュネ監督、フランス)

【2002年】
1 「活きる」(チャン・イーモウ監督、中国)
  「酔っ払った馬の時間」(バフマン・ゴバディ監督、イラン)
2 「この素晴らしき世界」(ヤン・フジェベイク監督、チェコ)
  「ノーマンズ・ランド」(ダニス・タノヴィッチ監督、仏・伊・スロヴェニア他)
3 「遥かなるクルディスタン」(イエスィム・ウスタオウル監督、トルコ・他)
  「鬼が来た!」(チアン・ウェ監督、中国)

【2003年】
1 「ボウリング・フォー・コロンバイン」(マイケル・ムーア監督、アメリカ)
  「裸足の1500マイル」(フィリップ・ノイス監督、オーストラリア)
2 「トーク・トゥ・ハー」(ペドロ・アルモドヴァル監督、スペイン)
  「戦場のピアニスト」(ロマン・ポランスキー監督、ポーランド・仏)
3 「クジラの島の少女」( ニキ・カーロ監督、ニュージーランド)
  「猟奇的な彼女」( クァク・ジェヨン監督、韓国)

【2004年】
1 「モーターサイクル・ダイアリーズ」(ヴァルテル・サレス監督、アルゼンチン・他)  
  「キッチン・ストーリー」(ベント・ハーメル監督、ノルウェー・スウェーデン)
2 「アマンドラ!希望の歌」(リー・ハーシュ監督、米)
  「カレンダー・ガールズ」(ナイジェル・コール監督、イギリス)
3 「ションヤンの酒家」( フォ・ジェンチイ監督、中国)
  「華氏911」( マイケル・ムーア監督、アメリカ)

【2005年】
<外国映画>
1 「亀も空を飛ぶ」(バフマン・ゴバディ監督、イラン)
2 「大統領の理髪師」(イム・チャンサン監督、韓国)
3 「ヒトラー 最期の12日間」(オリヴァー・ヒルシュビーゲル監督、ドイツ)

<日本映画>
1 「メゾン・ド・ヒミコ」(犬童一心監督)
2 「運命じゃない人」(内田けんじ監督)
3 「ALWAYS三丁目の夕日」(山崎貴監督)

【2006年】
<外国映画>
1 「麦の穂をゆらす風」(ケン・ローチ監督、イギリス、アイルランド、他)
2 「母たちの村」(ウスマン・センベーヌ監督、フランス・セネガル)
3 「ココシリ」(ルー・チュ-アン監督、中国)

<日本映画>
1 「博士の愛した数式」(小泉堯史監督)
2 「フラガール」(李相日監督)
3 「かもめ食堂」(荻上直子監督)

【2007年】
<外国映画>
1 「ボルベール<帰郷>」(ペドロ・アルモドバル監督、スペイン)
  「パンズ・ラビリンス」(ギレルモ・デル・トロ監督、メキシコ・スペイン・他)
2 「世界最速のインディアン」(ロジャー・ドナルドソン監督、ニュージーランド)  
  「今宵フィッツジェラルド劇場で」(ロバート・アルトマン監督、アメリカ)
3 「長江哀歌」(ジャ・ジャンクー監督、中国)   
  「約束の旅路」(ラデュ・ミヘイレアニュ監督、フランス)

<日本映画>
1 「それでもボクはやってない」(周防正行監督)
2 「めがね」(荻上直子監督)
3 「夕凪の街 桜の国」(佐々部清監督)

2009年8月20日 (木)

これから観たい&おすすめ映画・DVD(09年9月)

【新作映画】
8月21日公開
 「宇宙へ」(リチャード・デイル監督、イギリス)
8月22日公開
 「96時間」(ピエール・モレル監督、フランス)
 「ノーボーイズ・ノークライ」(キム・ヨンナム監督、日本)
 「里山」(菊池哲理ディレクター、日本)
8月29日公開
 「女の子ものがたり」(森岡利行監督、日本)
 「九月に降る風」(トム・リン監督、台湾・香港)
9月5日公開
 「幸せはシャンソニア劇場から」(クリストフ・バラティエ監督、仏・独・チェコ)
 「孫文 100年先を見た男」(デレク・チウ監督、中国) 
 「BALLAD 名もなき恋のうた」(山崎貴監督、日本)
9月12日公開
 「火天の城」(田中光敏監督、日本)
 「プール」(大森美香監督、日本)
9月18日公開
 「ココ・アヴァン・シャネル」(アンヌ・フォンテーヌ監督、フランス)
9月19日公開
 「正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官」(ウェイン・クラマー監督、米)
9月26日公開
 「あの日、欲望の大地で」(ギジェルモ・アリアガ監督、米・アルゼンチン)

【新作DVD】
8月28日
 「悲夢」(キム・ギドク監督、韓国)
9月2日
 「ディファイアンス」(エドワード・ズウィック監督、米)
 「7つの贈り物」(ガブリエレ・ムッチーノ監督、米)
 「痛いほどきみが好きなのに」(イーサン・ホーク監督、米)
 「誰も守ってくれない」(君塚良一監督、日本)
9月4日
 「インストーラー」(ジュリアン・ルクレール監督、フランス)
 「リリィ、はちみつ色の秘密」(ジーナ・プリンス・バイスウッド監督、米)
 「ワン・デイ・イン・ヨーロッパ」(ハネス・シューテア監督、独・スペイン)
 「変身」(ワレーリイ・ファーキン監督、ロシア)
9月9日
 「パッセンジャーズ」(ロドリゴ・ガルシア監督、米・加)
 「いとしい人」(ヘレン・ハント監督、米)
 「ジェネラル・ルージュの凱旋」(中村義洋監督、日本)
9月11日
 「バーン・アフター・リーディング」(コーエン兄弟監督、米・英・仏)
 「ブッシュ」(オリバー・ストーン監督、米・他)
9月16日
 「グラン・トリノ」(クリント・イーストウッド監督、米・独・豪)
 「そして、私たちは愛に帰る」(ファティ・アキン監督、トルコ・独・伊)
 「映画は映画だ」(チャン・フン監督、韓国)
 「ホノカアボーイ」(真田敦監督、日本)
9月18日
 「デュプリシティ」(トニー・ギルロイ監督、米・独)
 「ウォーロード 男たちの誓い」(ピーター・チャン監督、中国・香港)
 「トワイライト 初恋」(キャサリン・ハードウィック監督、米)
9月25日
 「マリア・カラスの真実」(フィリップ・コーリー監督、ギリシャ・仏・豪)
10月2日
 「シリアの花嫁」(エラン・リクリス監督、仏・独・イスラエル)

【旧作DVD】
8月22日
 「黒衣の花嫁」(68、フランソワ・トリュフォー監督、仏・伊)
8月25日
 「殺人狂想曲」(48、プレストン・スタージェス監督、米)
9月9日
 「パニック・イン・スタジアム」(76、ラリー・ピアース監督、米)

 劇場新作ではこれといって特に惹かれる作品はない。あえて挙げれば、「幸せはシャンソニア劇場から」、「孫文 100年先を見た男」、「プール」あたりか。

 新作DVDでは待望の「グラン・トリノ」が出る。これは早く観たい。他に期待できそうなのは「悲夢」、「ディファイアンス」、「リリィ、はちみつ色の秘密」、「そして、私たちは愛に帰る」、「シリアの花嫁」あたりか。

 旧作DVDは再発ものがほとんど。初DVD化作品があまり見当たらないのが物足りない。

2009年8月 8日 (土)

ゴブリンのこれがおすすめ 39 世界のユニークなアニメ映画

【おすすめ長編アニメ】
「君たちはどう生きるか」(2023)宮崎駿監督、日本
「FLY!フライ!」(2023)バンジャマン・レネール監督、アメリカ・フランス
「BLUE GIANT」(2023)立川譲監督、日本
「オッドタクシー・イン・ザ・ウッズ」(2022)木下麦監督、日本
「すずめの戸締まり」(2022)新海誠監督、日本
「イヌとイタリア人、お断り!」(2022)アラン・ウゲット監督、仏・伊・ベルギー・スイス・他
「犬王」(2021)湯浅政明監督、日本
「プックラポッタと森の時間」(2021)八代健志監督、日本
「FLEE フリー」(2021)ヨナス・ポヘール・ラスムセン監督、デンマーク・スウェーデン・ノルウェー・仏
「映画大好きポンポさん」(2020)平尾隆之監督、日本
「劇場版 メイドインアビス 深き魂の黎明」(2020)小島正幸監督、日本
「ジュゼップ」(2020)オーレル監督、フランス
「Away」(2019)ギンツ・ジルバロディス監督、ラトビア
「海獣の子供」(2019)渡辺歩監督、日本
「劇場版 ごん GON, THE LITTLE FOX」(2019)八代健志監督、日本
「劇場版総集編 メイドインアビス 前編・後編」(2019)小島正幸監督、日本
「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」(2019)片渕須直監督、日本
「ザ・クロッシング」(2021)フローランス・ミアイユ監督、仏・チェコ・独
「ヒックとドラゴン 聖地への冒険」(2019)ディーン・デュボア監督、アメリカ
「羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来」(2019)MTJJ監督、中国
「ディリリとパリの時間旅行」(2018)ミッシェル・オスロ監督、仏・独・ベルギー
「ペンギン・ハイウェイ」(2018)石田祐康監督、日本
「JUNK HEAD」(2017)堀貴秀監督、日本
「ブレッドウィナー」(2017)ノラ・トゥーミー監督、アイルランド・カナダ・ルクセンブルク
「メアリと魔女の花」(2017)米林宏昌監督、日本
「夜明け告げるルーのうた」(2017)湯浅政明監督、日本
「リメンバー・ミー」(2017)リー・アンクリッチ監督、アメリカ
「エセルとアーネスト ふたりの物語」(2016)ロジャー・メインウッド監督、英・他
「この世界の片隅に」(2016)片渕須直監督、日本
「SING/シング」(2016)ガース・ジェニングス監督、アメリカ
「ズートピア」(2016)バイロン・ハワード、リッチ・ムーア監督、アメリカ
「ノーマン・ザ・スノーマン 流れ星のふる夜に」(2016)八代健志監督、日本
「ぼくの名前はズッキーニ」(2016)クロード・バラス監督、スイス・フランス
「アヴリルと奇妙な世界」(2015)クリスティアン・デマール、他監督、仏・ベルギー・加
「眠れない夜の月」(2015)八代健志監督、日本
「バケモノの子」(2015)細田守監督、日本
「ロング・ウェイ・ノース地球のてっぺん」(2015)レミ・シャイエ監督、仏・デンマーク
「思い出のマーニー」(2014)米林宏昌監督、日本
「ソング・オブ・ザ・シー 海のうた」(2014)トム・ムーア監督、アイルランド、他
「ボックストロール」(2014)グレアム・アナブル、アンソニー・スタッキ監督、アメリカ
「ミューン 月の守護者の伝説」(2014)アレクサンドル・エボヤン、他、監督、フランス
「預言者」(2014)ロジャー・アラーズ監督、米・仏。・カナダ・レバノン・カタール
「かぐや姫の物語」(2013)高畑勲監督、日本
「父を探して」(2013)アレ・アブレウ監督、ブラジル
「ノーマン・ザ・スノーマン 北の国のオーロラ」(2013)八代健志監督、日本
「おおかみこどもの雨と雪」(2012)細田守監督、日本)
「くまのアーネストおじさんとセレスティーヌ」(2012)ステファヌ・オビエ、他、監督
「伏 鉄砲娘の捕物帳」(2012)宮地昌幸監督、日本
「メリダとおそろしの森」(2012)マーク・アンドリュース、他監督、米
「ロラックスおじさんの秘密の種」(2012)クリス・ルノー、カイル・バルダ監督
「しわ」(2011)イグナシオ・フェレーラス監督、スペイン
「夜のとばりの物語 ―醒めない夢―」(2011)ミッシェル・オスロ監督、フランス
「ランゴ」(2011)ゴア・ヴァービンスキー監督、アメリカ
「落としもの」(2010)ショーン・タン&アンドリュー・ラーマン監督、豪・英
「パリ猫ディノの夜」(2010)アラン・ガニョル、ジャン=ルー・フェリシオリ監督、フランス
「ヒックとドラゴン」(2010)ディーン・デュボア、クリス・サンダース監督、アメリカ
「夜のとばりの物語」(2010)ミッシェル・オスロ監督、フランス
「借りぐらしのアリエッティ」(2010)米林宏昌監督、日本
「コクリコ坂から」(2010)宮崎吾朗監督、日本
「トイ・ストーリー3」(2010)リー・アンクリッチ監督、米
「コララインとボタンの魔女」(2009)ヘンリー・セリック監督、アメリカ
「9<ナイン>」(2009)シェーン・アッカー監督、米
「ブレンダンとケルズの秘密」(2009)トム・ムーア監督、仏・ベルギー・アイルランド
「ウォーリー」(2008)アンドリュー・スタントン監督、アメリカ
「ウォレスとグルミット/ベーカリー街の悪夢」(2008)ニック・パーク監督、英
「崖の上のポニョ」(2008)宮崎駿監督、日本
「戦場でワルツを」(2008)アリ・フォルマン監督、イスラエル・仏・独・米
「カールじいさんの空飛ぶ家」(2008)ピート・ドクター監督、米
「ストレンヂア 無皇刃譚」(2007)安藤真裕監督、日本
「メアリー&マックス」(2008)アダム・エリオット監督、オーストラリア
「ストレンヂア 無皇刃譚」(2007)安藤真裕監督、日本
「アズールとアスマール」(2006)ミッシェル・オスロ監督、フランス
「パプリカ」(2006)今敏監督、日本
「死者の書」(2005)川本喜八郎監督、日本)
「コープス・ブライド」(2005)ティム・バートン、マイク・ジョンソン監督、英
「ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!」(2005)ニック・パーク監督、英・米
「シュレック2」(2004) アンドリュー・アダムソン監督、アメリカ
「東京ゴッドファーザーズ」(2003)今敏監督、日本
「ハウルの動く城」(2004、宮崎駿監督、日本)
「ベルヴィル・ランデブー」(2002)シルヴァン・ショメ監督、仏・他
「キリクと魔女」(2002)ミッシェル・オスロ監督、仏・他
「千と千尋の神隠し」(2001)宮崎駿監督、日本
「シュレック」(2001)アンドリュー・アダムソン監督、アメリカ
「千年女優」(2001)今敏監督、日本
「モンスターズ・インク」(2001)ピート・ドクター監督
「アイアン・ジャイアント」(1999)ブラッド・バード監督
「プリンス&プリンセス」(1999) ミッシェル・オスロ監督、フランス
「PERFECT BLUE パーフェクト ブルー」(1998)今敏監督
「もののけ姫」(1997)宮崎駿監督、日本
「大いなる河の流れ」(1993)フレデリック・バック監督、カナダ
「ナイトメア・ビフォー・クリスマス」(1993)ヘンリー・セレック監督)
「紅の豚」(1992) 宮崎駿監督、日本
「キリクと魔女」(1990、ミッシェル・オスロ監督、フランス
「魔女の宅急便」(1989) 宮崎駿監督、日本
「リトル・ニモ」(1989) ウィリアム・T・ハーツ監督、アメリカ・日本
「火垂るの墓」(1988) 高畑勲監督、日本
「となりのトトロ」(1988) 宮崎駿監督、日本
「風が吹くとき」(1986) ジミー・T・ムラカミ監督、イギリス
「木を植えた男」(1987) フレデリック・バック監督、カナダ
「天空の城ラピュタ」(1986) 宮崎駿監督、日本
「銀河鉄道の夜」(1985) 杉井ギサブロー監督、日本
「風の谷のナウシカ」(1984) 宮崎駿監督、日本
「時の支配者」(1982)ルネ・ラルー監督、仏・スイス・西独・英・ハンガリー
「王と鳥」(1980) ポール・グリモー監督、フランス
「未来少年コナン」(1978) 宮崎駿監督、日本 TVアニメ
「長靴をはいた猫」(1969)矢吹公郎監督、日本
「真夏の夜の夢」(1954) イジィ・トルンカ監督
「ファンタジア」(1940) ベン・シャープスティーン監督、米
「アクメッド王子の冒険」(1926) ロッテ・ライニガー監督、ドイツ

【おすすめ短編アニメ/作品集】
「落としもの」 (2010) アンドリュー・ラーマン、ショーン・タン監督、オーストラリア・イギリス
「つみきのいえ」(2008) 加藤久仁生監督、日本
「老人と海」(1999) アレクサンドル・ペトロフ監督、ロシア・他
「ウォレスとグルミット 危機一髪」(1995) ニック・パーク監督、イギリス
「ウォレスとグルミット ペンギンに気をつけろ!」(1993) ニック・パーク監督、英
「ウォレスとグルミット チーズ・ホリデー」(1989) ニック・パーク監督、英
「NFB傑作選」
「山村浩二作品集」
「川本喜八郎作品集」
「カレル・ゼーマン作品集」
「フレデリック・バック作品集」
「ユーリ・ノルシュテイン作品集」
「ルネ・ラルー傑作短編集」

【こちらも要チェック】
「君の名は。」(2016)新海誠監督、日本
「ガールズ&パンツァー 劇場版」(2015)水島努監督、日本
「百日紅~Miss HOKUSAI~」(2015)原恵一監督、日本
「グスコーブドリの伝記」(2012)杉井ギサブロー監督、日本
「フランケン・ウィニー」(2012)ティム・バートン監督、アメリカ
「怪盗グルーの月泥棒」(2010)クリス・ルノー、ピエール・コフィン監督、米
「コララインとボタンの魔女」(2009)ヘンリー・セリック監督、アメリカ
「メアリー&マックス」(2008) アダム・エリオット監督、オーストラリア
「河童のクゥと夏休み」(2007) 原恵一監督、日本
「レミーのおいしいレストラン」(2007) ブラッド・バード監督、米
「シュレック2」(2001) アンドリュー・アダムソン、他監督、アメリカ
「ポーラー・エクスプレス」(2004) ロバート・ゼメキス監督、アメリカ
「Mr.インクレディブル」(2004) ブラッド・バード監督、米
「チキンラン」(2000) ニック・パーク監督
「トイ・ストーリー2」(1999)ジョン・ラセター、他、監督、アメリカ
「おもいでぽろぽろ」(1991、高畑勲監督、日本
「セロ弾きのゴーシュ」(1980) 高畑勲監督、日本
「ルパン三世 カリオストロの城」(1979) 宮崎駿監督、日本
「彗星に乗って」(1970)カレル・ゼマン監督、チェコスロヴァキア
「悪魔の発明」(1957) カレル・ゼマン監督、チェコスロヴァキア
「雪の女王」(1957) レフ・アタマーノフ監督、ソ連
「イワンと仔馬」(1947) A・スネシュコ・ブロツカヤ、他監督、ソ連

【気になる未見作品】
「屋根裏のポムネンカ」(2009) イジー・バルタ監督、チェコ・スロヴァキア・日本
「カフカ田舎医者」(2007) 山村浩二監督、日本
「ペルセポリス」(2007) マルジャン・サトラピ、ヴァンサン・パロノー監督、仏
「春のめざめ」(2006) アレクサンドル・ペトロフ監督、ロシア
「ネオ・ファンタジア」(1976) ブルーノ・ボゼット監督、イタリア
「彗星に乗って」(1970)カレル・ゼマン監督、チェコスロヴァキア
「森は生きている」(1956) イワン・イワノフ=ワノ監督、ソ連
「動物農場」(1954) ジョン・ハラス、ジョイ・バチェラー監督、英
「イジィ・トルンカ作品集」(1~5)
「イジィ・トルンカの世界」(1~3)
「チェコ・アニメ傑作選」(1~2)
「チェコアニメ新世代」(vol.1~2)
「フレデリック・バック作品集」
「NFB コ・ホードマン作品集」
「ロシア・アニメーション傑作選集」(1~4)
「岡本忠成全作品集」
「ノーマン・マクラレン傑作集」

 

Unicorn  1974年に後楽園シネマでソ連映画を大量に観た。当時後楽園で大シベリア博覧会が開かれており、それにあわせて大シベリア博記念特別番組と銘打ち、「ソビエト名作映画月間」として23本のソ連映画が上映されたのである。1回に2~3本を上映するのだが、その合間に短編アニメを上映していた。プログラムに載っていないので、作品名も本数も今では分からないのだが、そのレベルの高さに驚いたものである。今のアニメに比べると動きはぎこちないのだが、ウィットに富んだ、独特の世界を作っていた。不確かな記憶ながら、大人が見て楽しむ作品が多かったように思う。宮崎駿が現れるはるか前で、アニメといえばディズニーという時代だっただけに、大人のユーモアがたっぷり盛り込まれたア ニメにすっかり感心したものだ。

 ソ連がアニメ大国だと知ったのはだいぶ後である。なにしろ当時はアニメそのものに大して興味がなかった。大人の鑑賞に堪えるものではないと思っていたのである。例外的に意識していたのは名作と言われていたディズニーの「ファンタジア」と幻の名作としてつとに知られていた「やぶにらみの暴君」(80年に「王と鳥」というタイトルで改訂版が出された)である。「やぶにらみの暴君」は84年3月に高田馬場のACTでやっと観ることができた。「ファンタジア」を観たのはさらに下って91年である。どちらも期待通りの傑作だと思った。「やぶにらみの暴君」はフランスらしい風刺のきいたテーマと絵の素晴らしさ、特に空に高く伸びる王宮の造形に驚嘆した。「ファンタジア」は音楽を中心にしたのが成功している。ミッキーを中心にすればお子様向けの映画にならざるを得ないが、クラシック音楽に合わせてアニメーションを付けるというアイディアが卓抜だった。より大人向けの作品になっているという「ネオ・ファンタジア」も観たいが、高値が付いていて未だ入手できていない。

 「やぶにらみの暴君」には感心したが、まだアニメそのものを認めるには至らなかった。「やぶにらみの暴君」はあくまでも例外だった。「やぶにらみの暴君」を観た一月後、84年4月にユーリ・ノルシュテインの「話の話」を観たが、さほど強い印象を受けなかった。アニメが劇映画に匹敵するジャンルだと初めて思ったのは86年2月に飯田橋の佳作座で「風の谷のナウシカ」を観た時である。これは衝撃的な作品だった。それまでのアニメに対する僕の認識を根底から覆した作品である。劇映画に匹敵するどころか、劇映画を超える可能性があるとまで思った。同年9月に「天空の城ラピュタ」を観てそれは確信に変わった。

Kmhsm1  翌87年の3月、もう一つの衝撃的作品と出合った。イジィ・トルンカの人形アニメ「真夏の夜の夢」を観たのである。チェコが人形アニメで有名なことは知っていたが、シェイクスピアの作品を人形アニメで再現したこの作品には心底感動した。同月、池袋の文芸地下で「風の谷のナウシカ」と「ルパン三世 カリオストロの城」を観た。88年1月には高畑勲監督の記録映画「柳川掘割物語」を文芸坐ル・ピリエで観ている。それを経て同年4月に長野市の東宝中劇で「火垂るの墓」と「となりのトトロ」を観た(88年に東京から上田市に移った)。同年10月にはビデオで高畑勲の「太陽の王子 ホルスの大冒険」(1968)を観たが、これはさすがに古色蒼然としていると感じた。

 このように、80年代の後半に宮崎駿と高畑勲を発見し、アニメに対する認識が劇的に変わったのである。もはや「やぶにらみの暴君」のような例外ではなく、アニメが劇映画を超える時代が来たことを実感したのである。

 その後ティム・バートン、ニック・パーク、ミッシェル・オスロ、川本喜八郎などを次々と発見してゆく。今や年間ベストテンにアニメ映画が入ることは珍しいことではなくなった。短編アニメが上映される機会も増え、世界のユニークなアニメ作品のDVDも簡単に手に入るようになった。80年代前半までと比べると隔世の感がある。

 最後にアメリカのアニメに触れておこう。アメリカのアニメでは「モンスターズ・インク」、「バグズ・ライフ」、「トイ・ストーリー」、「Mr.インクレディブル」、「レミーのおいしいレストラン」、「ウォーリー」などのピクサー/ディズニー系、「アンツ」、「チキンラン」、「シュレック」、「シュレック2」、などのドリームワークス系がいい。こちらはティム・バートンのような個性は比較的希薄で、むしろ制作会社の姿勢のほうが目立つ。ピクサー系はディズニー色が強いのでどちらかというと子供向けの作風で、ドリームワークス系は皮肉や風刺の利いた大人も楽しめるアニメという印象だ。これらの作品の登場によって、アメリカのアニメはかつてのお子様向けディズニーアニメのレベルから飛躍的に向上したと言っていい。

 最後に世界にどんなユニークなアニメがあるかを知る最適の入門書を紹介しておこう。『世界と日本のアニメーション ベスト150』(2003年、ふゅーじょんぷろだくと発行)という本である。ちなみに、そのベスト150の1位と2位を占めているのはユーリ・ノルシュテイン監督の「霧につつまれたハリネズミ」(1975)と「話の話」(1979)である。

<追記>
 朝日新聞の2021年6月17日付文化欄に「日本アニメ 中国で揺らぐ地位」という記事が載っていた。それによると中国各地に設置された「動漫(アニメ)産業基地」などの取り組みが成果を上げており、その結果近年中国アニメが急成長しているという。先日初めての中国アニメ「羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来」を観たが、確かに良く出来た傑作だった。日本はアニメ・クリエイターの待遇をいつまでも改善しないままでいると、本当に中国アニメに追い抜かれてしまうかもしれない。

 

 

先月観た映画(09年7月)

「ユーリ・ノルシュテイン作品集」★★★★☆
「シークレット・サンシャイン」(07年、イ・チャンドン監督、韓国)★★★★☆
「死者の書」(05年、川本喜八郎監督、日本)★★★★☆
「ハッピーフライト」(08、矢口史靖監督、日本)★★★★☆
「永遠のこどもたち」(07、J・A・バヨナ監督、スペイン・メキシコ)★★★★
「カレル・ゼーマン作品集」★★★★
「人のセックスを笑うな」(07、井口奈己監督、日本)★★★★
「クレイジー・ストーン」(06、ニンハオ監督、中国)★★★★
「NFB傑作選」★★★★
「山村浩二作品集」★★★★
「サマーウォーズ」(09年、細田守監督、日本)★★★☆

 7月の下旬はアニメ三昧の日々。こう書くと楽しそうだが(いや、実際楽しかったのは確かだ)、実は原稿を書く必要に迫られて忙しい中必死で観たという方が実態に近い。

 地元上田を舞台にした「サマーウォーズ」を特集した「幻灯舎通信」(松尾町の「キネマギャラリー幻灯舎」が不定期で出している通信)を出すことになり、原稿を依頼されたのをきっかけにアニメ作品を一気に観ることにしたのである。「サマーウォーズ」に関しては他の執筆者に任せ、僕は世界のユニークなアニメを紹介することにした。

 新たに何枚もDVDを注文したので、手元にありながらまだ観ていないものがまだたくさんあるが、いい機会なので、この記事と相前後して作品リストを中心にした「ゴブリンのこれがおすすめ39 アニメ映画」も書く予定。

 アニメ以外では「シークレット・サンシャイン」と「ハッピーフライト」が出色の出来。久々に観た中国のドタバタ調犯罪コメディ「クレイジー・ストーン」も面白かった。

「シークレット・サンシャイン」
 久々に観る韓国映画の力作だった。度重なる不幸で精神が壊れてゆく女性を冷徹に見つめてゆく。一時宗教に救いを見出すが、その宗教にも矛盾を感じ反感を持つようになる。最後は不安定のまま、何の未来も予感させずに終わる。

 監督は「グリーンフィッシュ」、「ペパーミント・キャンディ」、「オアシス」などを撮ってきたイ・チャンドン。上記の3本に続いて観るのはこれが4本目。韓国映画を代表する傑作である「ペパーミント・キャンディ」がやはり一番いい。「オアシス」はムン・ソリの迫真の演技にもかかわらず、人間と社会に対する描き方がどこか平板だと感じた。

033798  「シークレット・サンシャイン」は何となく「オアシス」のようなタイプの映画ではないかと予想していたが、むしろ「ぐるりのこと。」と多くの共通点を持つ映画だった。息子を誘拐されて殺され、次第に精神の平衡を失ってゆくチョン・ドヨンは木村多江、その彼女を見守り続ける不器用な男ソン・ガンホはリリー・フランキーに相当する。「ぐるりのこと。」はリリー・フランキーに焦点が当てられ、彼の視点で描かれているが、「シークレット・サンシャイン」はチョン・ドヨンの苦悩に焦点が当てられている。「ぐるりのこと。」では明確に描かれていなかったヒロインの精神の彷徨をつぶさに描こうと努めている。

 木村多江は夫と正面から向き合い、思いのたけをぶちまけ、そして絵を描くことで夫との絆を結び直し自分を取り戻した。一方、チョン・ドヨンは宗教に救いを見出そうとした。一時精神の平衡を取り戻したかに見えたが、自分が救おうとした誘拐犯の男も宗教によって既に「救われていた」ことを知り宗教に幻滅する。「もう許されている人をどうやって許すの?私がその男を許す前になぜ神は許したの?私が苦しんでいる時、あの男は神に許され救われていたわ。なぜこんなことが?なぜ。なぜなの?」チョン・ドヨンは自分が属していた宗教団体の集会で、「みんな嘘よ」と叫ぶロック音楽を大音響で流して妨害する。

 彼女の精神的彷徨はさらに続く。精神病院にも入院した。退院して髪を切ろうと美容院へ行けば、息子を誘拐して殺した男の娘が美容師になっていて彼女の髪を切ろうとする。耐えきれず彼女は途中で美容院を飛び出す。彼女の精神は落ち着くところを見いだせぬまま漂い続ける。「ぐるりのこと。」のような明確な救いは描かれない。

 チョン・ドヨンは家に帰り、庭に出て自分で髪を切り始める。心配してやってきたソン・ガンホが前に立って鏡を持っている。切り落とされた髪束が風に吹かれてゆく。映画は庭の片隅を意味ありげに映して終わる。

  「ぐるりのこと。」に比べてはるかに重苦しい映画だ。ラストで髪を切るチョン・ドヨンは鏡に映る自分を観ている。そこにはどんな自分がいたのか?彼女の視野にソン・ガンホは入っているのか?2人の関係はその後どうなってゆくのか(ソン・ガンホは彼女の夫ではなく、彼女の車を修理したのが縁で何かと世話を焼いている近所の男である)。絶望と救いと幻滅をくぐりぬけてきた彼女の壮絶な精神的葛藤を中心に描き、明確な未来を示さずに終わる。そういう映画だ。

 「ぐるりのこと。」と「シークレット・サンシャイン」、さらには「キムチを売る女」を並べてみると、抱えきれないほどの精神的苦悩を背負った女性の生き方を描くさまざまなタイプの映画があることが分かる。終始淡々とヒロインを描いた「キムチを売る女」では、ヒロインが怒鳴る姿も涙を見せるシーンも描かれない。それでいて淡々とした無表情な画面の奥から孤独感や悲しみや喪失感がにじみ出てくる映画だった。彼女も事故で最愛の息子を失うが、ラストで彼女は自分の住んでいた町を出てゆく。線路を踏み越え(丁度列車が通りかかっていて、そこに飛び込むのではないかと観客を一瞬不安にさせるが)、彼女を閉じ込めていた世界から歩み出ようとした。

 「ぐるりのこと。」と「シークレット・サンシャイン」そして「キムチを売る女」。いずれもヒロインたちは耐えきれないほどの重荷を背負い、絶望に打ちひしがれ、苦悩し、死ぬことさえ考えただろうが、最後まで生きようとした。描き方のタッチの違い、ラストの描き方の違い、苦悩の描き方の違いはあれ、いずれも観客の共感を得てしまうのは彼女たちが最後まで生きる意欲を失わなかったからだ。

 チョン・ドヨンを観るのは「接続 ザ・コンタクト」に続いて2本目。こちらはハン・ソッキュの印象ばかり強くて、彼女の方はほとんど記憶に残っていない。今後はチョン・ドヨンといえば「シークレット・サンシャイン」を思い浮かべることになるだろう。

  名優ソン・ガンホは「グリーンフィッシュ」、「シュリ」、「JSA」、「反則王」、「復讐者に憐れみを」、「殺人の追憶」、「大統領の理髪師」、「グエムル 漢江の怪物」に続いて9本目。どんな映画に出ても存在感を示してしまうのはさすがだ。

「ハッピーフライト」
 最初はテレビドラマのようなお気軽映画のように思えたが、飛行機が事故のため空港に引き返すことになってから俄然緊張感が高まってきた。その後は息も継がせぬ展開。その緊張感を最後まで持続できているところが見事。日本ではこの種の大掛かりな映画は大味になってしまうことが多いが、これはその数少ない例外となった。「クライマーズ・ハイ」と並ぶ出色の出来。

Artumi1501bw  アメリカ映画が得意とするタイプの映画だが、日本でもこれだけの水準のものが作れるようになったことを素直に喜びたい。単なるパニック映画にするのではなく、新米パイロット(田辺誠一)の試練を軸にしているところにドラマとしての工夫がある。ただそれと並行して描かれる新米フライトアテンダント(綾瀬はるか)のエピソードは、テレビドラマ並みのお手軽演出が目立っていただけない。

 スリル満点の演出も素晴らしいが、この映画の一番の価値は飛行機を安全に飛ばすのにどれだけ多くの人がかかわっているか、また一旦危機的状況が発生した時に様々な部署がどのように対応するのかをしっかり描いたことにある。飛行機の乗務員や管制塔のスタッフだけではない、整備員や滑走路から鳥を追い散らす係員、窓口対応のスタッフまで、空と地上のすべてのスタッフが1機の飛行機の安全を支えていることが手に取るように分かる。それぞれのスタッフがそれぞれの持ち場で同じ危機に対処する。一人の英雄の超人的活躍によって乗り切るのではなく、組織体として力を合わせて事に当たる。そういう描き方になっているところが素晴らしい。

 有名俳優を多数起用しているが、新人パイロットを脇で支えるベテランパイロット役の時任三郎、新しいシステムについて行けず、普段は邪魔もののように思われていたが、いざとなると有能な指揮官ぶりを発揮する岸部一徳がとりわけ素晴らしい。

「永遠のこどもたち」
 本格的なホラー映画の作りだが、最後はファンタジーのように終わる。ホラー映画ではあるが後味は悪くない。スペインの(あるいはスペイン人の監督による)ホラー映画はそれほど観ていない。アレハンドロ・アメナーバル監督の「アザーズ」、ギレルモ・デル・トロ監督(「永遠のこどもたち」の製作総指揮も務めている)の「デビルズ・バックボーン」くらいか。そもそもホラー映画自体あまり観ないのだから、少なくて当然である。それでも「永遠のこどもたち」をあえて観ようと思ったのはギレルモ・デル・トロ監督のからみである。「パンズ・ラビリンス」が素晴らしかったので、彼に関連する作品はぜひ観ておきたかった。「デビルズ・バックボーン」を観たのも彼の監督作品だったからだ(観てがっかりしたが)。

  「アザーズ」や「デビルズ・バックボーン」もそうだが、まず舞台となる建物がいかにもそれらしい不気味な雰囲気を持っている。「デビルズ・バックボーン」は孤児院、「永遠のこどもたち」元孤児院が舞台だ。どうも孤児院というのは暗く気味の悪い印象があるようだ。そしてその孤児院には過去に何か秘密があるというお決まりの設定。次々と起こるオカルト的現象。一体過去に何があったのか。こうしてサスペンス的要素を含んで展開してゆく。

 まあ、内容については詳しく触れないでおこう。ともったいをつけてみるが、あまり覚えていないというのが正直なところ。どうもこの手の映画はその時楽しんでもすぐ忘れてしまう(汗)。しかし映画としてはよくできていたと思うので観て損はない。

  主演のベレン・ルエダは「海を飛ぶ夢」(アレハンドロ・アメナーバル監督)で女性弁護士フリアを演じた人だと後でわかった。監督のJ・A・バヨナはこれが長編デビュー。アレハンドロ・アメナーバルやギレルモ・デル・トロ並みの大物になるかは分からないが、十分才能はあると見た。

「人のセックスを笑うな」
 最近また増えてきた妙にリアルな映画の一つ。「歩いても歩いても」や「ぐるりのこと」と似たタイプの映画だが、映画の出来としては「歩いても歩いても」や「ぐるりのこと」の方が上だと感じた。

L3g1   この映画の魅力は謎の女を演じた永作博美の魅力、彼女の不思議な存在感にあると言えるだろう。彼女自身はそれほど魅力的な女優とは思えないのだが、やはり謎の女という設定が彼女を魅力的にしていると思われる。捕まえたと思ったらするりと手からすり抜けてゆく女。サスペンス映画によく登場するタイプのヒロインだが、日常描写をリアルに描く私小説的映画にそれを登場させた所に新味があるといえる。

  何でもないシーンをさも意味ありげに長写しするのがこのタイプの映画の特徴だ。美術学校に非常勤講師としてやってきた彼女は学生の松山ケンイチに絵のモデルになってほしいと頼み、彼を自分のアトリエに誘う。彼女はすでに結婚しているのだが、松山ケンイチはそのことを知らない。やがて二人は関係を持ってしまう。永作博美は別に自宅がある。アトリエは彼女にとって一種の解放区だったのである。アトリエで二人が過ごす濃厚な時間。松山ケンイチはすっかり彼女の魅力のとりこになる。アトリエは彼にとって二人だけの甘い時間を過ごす逢瀬の場所だった。しかしある日突然彼女は姿を消す。

 ストーブをめぐるなんでもないエピソードが妙に記憶に残る。なんでもないごく日常的なエピソードを何か特別な意味を持ったものに変えてしまうのが、日常描写を得意とする井口奈己監督の特徴である。監督の井口奈己は「犬猫」(2004)の監督。「犬猫」も日常的描写を重ねた映画だった。どこかシュールな味付けがしてあって、それがとても魅力的だった。「人のセックスを笑うな」では謎の女という非日常的なヒロインを登場させることで新しい試みをしていると言えるかもしれない。

 アトリエでのエピソードはなかなか秀逸なのだが、しかしこの映画全体としてみるといろいろと不満が残る。日常のこまごまとしたことをリアルに描いてはいるのだが、観終わった時にどこかリアルというよりはヴァーチャルなものだったという印象が残ってしまう。謎の女という設定は謎めいていて魅力的でもあるが、ちょっとさじ加減を間違えるとリアリティに欠けると感じられてくる。

 恐らくその微妙なさじ加減に問題があるのだ。映画の視点は松山ケンイチの視点である。これは必然的にそうならざるを得ない。謎の女というのは男の視点から見て謎ということなのである。サスペンス映画に登場する謎の女もそういう描かれ方をしている。その松山ケンイチの描き方にもう一つ不満が残る。だらだらでれでれしていてどうも煮え切らない。謎めいた女性に振り回されながらもずるずる付きまとうあきらめの悪い男をねちねち描かれてもねえ。蒼井優も出ているが、損な役回りで彼女の魅力が十分発揮できる設定ではない(松山ケンイチに思いを寄せているが、彼は永作博美ばかり追いかけている)。

 永作博美自身の描き方にも疑問が残る。あまりにも自分勝手すぎる。あんな勝手な理由で大学の非常勤の仕事を突然辞めていいものか。そのあたりから映画にリアリティがなくなってくる。とらえどころのない女として描きたかったのかもしれないが、ご都合主義的な描き方と言えなくもない。現実から生まれたドラマではなく、頭でひねり出した「こんなだったら面白いかも」的夢想ドラマ、そんな作りだという気がする。つまり、どこか基本の設定にリアリティが欠けているので、ドラマの展開もヴァーチャルなものに映るのだろう。どうも違和感の原因はそのあたりにありそうだ。

「クレイジー・ストーン」
 いかにも中国らしいハチャメチャなギャング・ストーリー。結構楽しめた。香港映画は別として、中国映画のコメディは日本ではあまり公開されない。本国ではおそらくたくさん作られていると思われるが、なぜか日本にはあまり入ってこないのだ。

 香港の大スター、アンディ・ラウが製作指揮を務めているので香港映画お得意のドタバタ調になっているが、大陸のコメディもそうとうハチャメチャである。チャン・イーモウ監督の「キープ・クール」(1998)やフォン・シャオガン監督の「ハッピー・フューネラル」(2001)を観れば、そこまでやるかと呆れるほど話がとんでもない方向にエスカレートしてゆく。最近の日本のコメディはばかばかしいことをやって見せて無理やり笑いをとるものが多いが、中国のコメディはねじれにねじれたシチュエーションを設定して笑わせる。ハチャメチャだが笑のつぼをしっかりと押さえている。本人たちはいたってまじめで真剣なのだが、彼らの意図を越えて話がとんでもない方向へねじれてゆくので、登場人物たちは脂汗をかいているのに観ているわれわれは腹を抱えて笑ってしまうのである。コメディとしてたいていの日本映画より上質である。

 ドタバタ調ではないが笑いの要素を巧みに入れ込んだ映画、例えばルー・シュエチャン監督の「わが家の犬は世界一」(2002)、チャン・イーモウ監督の「至福のとき」(2002)、リュウ・ビンジェン監督の「涙女」(2002)などを観れば、中国の映画人がいかに笑いのつぼをうまく抑えているか分かるだろう。日本や韓国のコメディ映画よりはるかに良くできている。

Crystal0601191  さて、「クレイジー・ストーン」は倒産目前の工芸品工場のガラクタの中から大きな翡翠の原石が見つかる。この翡翠をめぐって会社の社長のどら息子、工場を買収しようとたくらんでいた大企業の手先、空き巣連中が収奪合戦を演じる。そうはさせじと奮闘する工場のセキュリティ担当員。会社の社長のどら息子が女に貢ぐために翡翠を盗み、代わりに偽物を置いておいた(この工場の翡翠が評判になって、出店ができて本物そっくりの土産物が売られていた)ために、混乱はさらに深まる。偶然手に入れた本物の翡翠を本物とは気づかず、チンピラ空き巣たちが苦労して会場に忍び込んで展示されていた偽物とわざわざ置き換えたりする混乱ぶり。

 まあ、これ以上内容に触れるのは野暮というもの。詳しくは観てもらいましょう。十分楽しめます。

「ユーリ・ノルシュテイン作品集」
 いやあ、素晴らしかった。有名な「話の話」を最初に観たのは1984年の4月。当時4月から5月にかけて三百人劇場で「ソビエト映画の全貌PART2」という特集が組まれていたのである。ただ、その時はさほど感心しなかった。どんな内容だったかもすっかり忘れていた。しかし今回見直して素晴らしい作品だと思いなおした。収録された作品はどれも素晴らしいのだが、やはり代表作とされる「霧につつまれたハリネズミ」と「話の話」がいい。もう一本挙げるとすれば「あおさぎと鶴」だろうか。これは絵が素晴らしい。19世紀の小説の挿絵のような絵。ギュスターヴ・ドレを想わせる。人間の建築物に棲む鳥たちが不思議と違和感なくマッチしている。

 「霧につつまれたハリネズミ」の民話的、幻想的映像は実に魅力的だ。霧の中の世界が幻想的でぞくぞくさせる。輪郭をぼかした絵のタッチが優しい雰囲気を出している。ハリネズミのヨージックが実にかわいい。巨大なフクロウも印象的。これはキャラクターの魅力で魅せるアニメでもある。チェブラーシカよりかわいいぞ。

 「霧につつまれたハリネズミ」は動物たちだけが登場する幻想的な作品だが、「話の話」には人間が登場する。自動車やミシンがオオカミや様々な生き物の世界と入り混じっている。それでいて違和感がない。シュールでありながら、親しみやすくてどこか愛らしい。不思議な奇想の数々が次々と展開される。全く脈絡のないエピソードの連続。それがまた実に詩的なのだ。まさに映像詩。

Chameleon_2  ある程度テーマもある。花火が写されるが、これは後でもう一度写された時に戦争の爆撃とコラボされる。「あなたのご主人は勇敢にたたかいましたが負傷し、その傷がもとで死亡しました。」女の子が縄とびし、母親がゆりかごを揺らし、父と息子が食事をしているところを若者が通り過ぎてゆく。哀愁を帯びた美しいメロディが流れる。いったん通り過ぎた若者は一緒にテーブルに着く。しかしまた丘の向こうへ去ってゆく。おそらくこの若者は戦争へ行ったまま帰らなかったのだ。そう暗示されている。

 おっぱいを飲む赤ん坊。それを見つめるオオカミ。「おねんねしないと灰色オオカミがやってくるよ。オオカミは脇腹をつかまえる。そして森の中に引きずってゆく。」とオオカミが人間の赤ん坊をあやして歌う。

 繰り返し出てくる印象的な映像。青いリンゴ、リンゴを食べる少年、縄跳びをする巨大な牛、白い光があふれるドア。いくつものストーリーが並行し、交錯し、混じり合う。「話の話」はさまざまなストーリーのコラージュ。まさにストーリーの点描画である。

「死者の書」
  黒子のいない人形浄瑠璃。それに能の世界を加味し、さらに伝奇的、民俗的要素を加えたのが川本喜八郎の世界。人形の力、絵の力、人間の思いの激しさが観る者の胸を打つ。ピクサーやジブリのアニメを見慣れた目にはぎこちないと映った人形の動きも、「死者の書」ではほとんど気にならない。建物、塀、機織り機など、リアルな造形がリアリティを格段に高めている。その点ではニック・パークの世界にも通じる。

 原作は折口信夫の小説『死者の書』。奈良當麻寺(たいまでら)に伝わる蓮糸曼荼羅の伝説と大津皇子(おおつのみこ)の史実をモチーフに、奈良時代藤原南家の郎女(いらつめ)の一途な信仰が若くして非業の死を遂げた大津皇子のさまよう魂を鎮める物語である。

 有名な「道成寺」で川本喜八郎の人形アニメはほぼ独自のスタイルを作り上げた。「死者の書」は70分の大作。川本喜八郎の集大成的な作品である。いつもながらのゆったりとしたテンポだが、それがこの時代設定と主題によくマッチしている。人形の表情の豊かさもいつもと変わらない。多数の人形が同時に様々な動きをするダイナミックな演出もさすがだ。

 非業の死を遂げた大津皇子の怨念が終始作品の中に漂っているが、情念の中にからめとられてゆく作品ではない。無念さを残したまま地上をさまよっている大津皇子の魂を敏感に感じ取る郎女の心。彼女の目には二上山の上に立つ巨大な大津皇子がたびたび見え、その裸の姿は常に菩薩の姿と重なる。彼のさまよえる魂を鎮めようと一心に祈る彼女の心には篤い信仰心だけではなくほのかな愛情が感じ取れる。だからついに大津皇子の魂が鎮められた時、そこに開放感を感じるのだろう。

「カレル・ゼーマン作品集」
  これは期待以上に面白かった。特にジュール・ヴェルヌを原作にした「盗まれた飛行船」が素晴らしい。カレル・ゼマンはチェコスロバキアのモラヴィア生まれ。子供の頃からジュール・ヴェルヌの世界に惹かれていた。同じジュールヴェルヌ原作の「月世界旅行」(1902)を撮ったジョルジュ・メリエスを思わせる映像世界。メリエスの世界を引き継ぐ位置にある映像作家だ。

Barun_mizu_03  もう一つの収録作品、短編の「水玉の幻想」(1948)はチェコスロバキアの伝統工芸であるボヘミアンガラスに代表されるガラス細工の人形を動かし、生命を与えるという世界でも珍しいアニメ。アイディアに詰まったガラス細工師が、製作の手を休めて窓越しに外を眺め、幻想に耽るという設定。外は雨が降っており、その水滴がガラスになり、ガラスの魚やバレリーナたちが自由に動き回り始める。台詞はなく、BGMが流れるのみ。動きはややぎこちないが実にユニークな作品だ。

 「盗まれた飛行船」(1966)はヴェルヌの 『二年間のバカンス』(『十五少年漂流記』というタイトルの方が一般には馴染み深いだろう)と『神秘の島』を素材にし、自由奔放に脚色している。5人の少年たちが載った飛行船が不時着したのはネモ船長がノーチラス号とともに隠れ住んでいた謎の無人島だったという展開。

 アニメと実写を組み合わせたユニークな作風。子供たちが乗った飛行船の行方を追って、新聞記者や謎の人物に派遣されたスパイや海賊たちが入り乱れて参入してくるという、予想もつかない展開になってゆく。19世紀末の建物や風俗を描いた絵が独特の雰囲気を作り出し、さまざまなタイプの飛行船や潜水艦などの魅力的な造形がそれに加わる。ユーモラスな場面を多く取り入れているのもいい。特にとんでもない珍妙な小道具を操るスパイが何とも滑稽だ。モンティパイソン版007といった趣で、これが実に愉快。子供たちにコテンパンにやっつけられた海賊どもが「しつけの悪いガキどもだ。俺たちの子供のころとは違う。」と嘆く場面も愉快だ。

 空を飛び交う飛行船の形がユニークで魅力的だ。子供たちが乗った飛行船は後のツェッペリン飛行艇やヒンデンブルク飛行艇を想わせるし、新聞記者やスパイの乗った飛行船はヴェルヌの小説の挿絵から抜け出てきたかのようだ。後者の二つは推進装置がなく、大きな2枚の羽根を櫂のように使って空を漕いで進むというのがばかばかしくてかえって面白い。

 カレル・ゼーマンは他にも「悪魔の発明」(原作は『悪魔の発明』 )と「彗星に乗って」(原作は『彗星飛行』 )という、ジュール・ヴェルヌ原作のアニメを2本撮っている。ジュール・ヴェルヌ以外にも、オトフリート・プロイスラーの有名な児童文学『クラバート』(ハリー・ポッター・シリーズよりずっと前に書かれた魔法使い物語、学生時代に読んで大いに気に入った)を原作とした「クラバート」も撮っている。こちらは未見・未入手だが、原作が好きなのでこれもぜひ観たい。

「NFB傑作選」
  NFBとは「カナダ国立映画制作庁」のこと。劇映画だけではなく、アニメ作品の制作にも力を入れている。世界でもまれなユニークな創作方法から生まれたユニークな作品の数々で知られる。「NFB傑作選」にはイシュ・パテル、キャロライン・リーフ、ジャック・ドゥルーアンの3人の作家の作品が収められている。3人とも実にユニークな作風だ。

  中でも才能と魅力を感じたのはインド出身のイシュ・パテル。例えば「パースペクトラム」という短編では、正方形と幾何学模様という無機質なものが音楽とシンクロして様々に変容し、次々に形を変えて展開してゆく(2次元だけではなく3次元へと広がってゆく)。驚異的な表現の豊かさ、多彩さ、色彩のコラボレーション、変幻自在の変化を楽しめる。観ていてミロの幾何学模様を多用した絵画を連想した。「ビーズ・ゲーム」では音楽に合わせてビーズが虫のように動き出す。さまざまなものに変容し、次々に思いもよらないイメージが繰り出される。音楽に合わせて自在に絵を描く感覚だ。抽象的な世界のようでいて、生物の進化と人類の闘争の歴史が巧みに織り込まれている。

Mameruriha   代表作の「パラダイス」は名作「王と鳥」を想わせる短編。白と黒を多用することでむしろ色彩が強調される。真っ黒な自分の体に不満を持つカラスが、光り輝く王宮へ飛んでゆく。まばゆいばかりの宮殿。そこには1羽の白い鳥が飼われていた。王の鳥は自在に王宮の中を飛び回りながら次々に変身してゆく。変身するたびに色合いを変え、まばゆいばかりの輝きを帯びる。 色彩にあこがれるカラスはいろんな色の羽根を身に付けて変装し、王宮に入り込む。王の前であの白い鳥のように踊ってみせるが、つまみだされてしまう。我に返ったカラスは自分の周りの自然の中にこそ様々な色があふれていることに気づく。そういう話なのだが、ストーリーよりもむしろ、あふれんばかりの色彩と鳥の自在な変容ぶりを楽しむアニメだ。

 「天国の門」では2人の死人の醜い欲望が描かれる。そのテーマに原爆と死のイメージが重ねられる。抽象的なイメージの連鎖を紡ぐ作品から隠し味のテーマを持ったものまで。実に多彩な作風だ。もっとこの人のアニメを観てみたい、そう思わせる力がある。

 実に独特ではあるが、正直疑問を感じたのはキャロライン・リーフの作品。ガラスの上に砂を置いて影絵のような画像を撮るというテクニックはユニークで、その素朴な輪郭のはっきりしない絵と淡い色調はうまく使えば魅力にもなりえるが、どうも独りよがりの「アート」作品になりがち。今一つ魅力を感じなかった。

 キャロライン・リーフの作品に比べると、ピン・スクリーンというこれまたユニークな手法を用いるジャック・ドゥルーアンはシュールではあるがまだ分かりやすい。ピン・スクリーンとはボードにびっしり刺さった何万本ものピンに光をあてて、その影の長さで濃淡を出す技法である。これを使ってアニメを作るのは気が遠くなるような作業だろう。収録された2本ともいいが、特に絵の中に入り込み、絵の中の不思議な風景を次々に観た後、最後にまた絵の外に出てくる「心象風景」が良かった。

「山村浩二作品集」
 こちらもとりとめもないイメージの連鎖を描く作風。アニメの手法は多彩ではあるがNFBに比べるとむしろ標準的だ。有名な「頭山」はまさに奇想のオンパレード。シュールなイメージの連鎖。印象的だが、好き嫌いがはっきり分かれそうな作品だ。だが、他は意外にほのぼのした作品が多い。子供を意識しているからだろう。独りよがりにならないのはおそらくそのためだ。「キップリングJR」、「カロとピヨブフト サンドイッチ」、「バベルの本」などが印象に残った。

「サマーウォーズ」
 7月20日の特別試写会で一足早く鑑賞。地元上田市が舞台となっているので、以前このブログでも応援記事を書いた。しかしこう言っては身も蓋もないが、アニメ自体にはさほど期待はしていなかった。細田守監督の評判になった前作「時をかける少女」は平凡な出来だと思ったからだ。

 「サマーウォーズ」はやはり物足りなかった。絵はしっかりしている。たくさん出てくる登場人物も良く描き分けられていると思う。しかし残念なことに、ドラマの中心部分にリアリティがない。終始ヴァーチャルな内容なのだ。戦いはコンピューターの中で展開されている。まるで他人がやっているテレビゲームを脇で眺めているようなもの。従って切迫感も緊張感もない。

 後日「デジモンアドベンチャー/ぼくらのウォーゲーム!」(2000)を観たが、シチュエーションは「サマーウォーズ」そっくり。要するに「サマーウォーズ」は「デジモンアドベンチャー/ぼくらのウォーゲーム!」の舞台を上田に置き換え、40分を114分に拡大したようなものだ。タイムリミットぎりぎりで世界が救われるという、ハリウッド映画で見慣れた展開も同じ。「サマーウォーズ」では家族の絆が強調されているが、しばしば韓国映画並みの泣かせの演出に走ってしまうのでしらけてしまう。

 それにしても、ポケモンは知っていたが、デジモンは知らなかった。と振っておいて、先日テレビで偶然観た「劇場版ポケットモンスター ダイヤモンド&パール」に少し触れておこう。正直驚いた。子供だましの映画だろうと思っていたが、その画像の質の高さにびっくりした。「ルパン三世 カリオストロの城」や「天空の城ラピュタ」並みの迫力ある画面。建物の巨大さが感覚的に伝わってくる構図、その質感、風景描写の壮大さ、その点を見れば宮崎駿のアニメにも引けを取らない。日本アニメの質の高さはテレビアニメの劇場版にまで及んでいる!相当有能な人材がアニメ界に流れ込んでいるのだろう。内容的には相変わらずバイオレンス描写が多いことや、製作環境やスタッフの待遇面などに大きな課題を残しているが、少なくとも水準の高い作品を少なからず生み出し続けていることには敬意を表したい。

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