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2008年6月16日 (月)

「迷子の警察音楽隊」を観ました

Tuki_gura_250_03  様々な国の映画が観られる日本でもイスラエルの映画は珍しい。上映されることがあってもイスラエル映画祭、東京国際映画祭、東京フィルメックスなどの映画祭がせいぜい。ほとんどDVDも発売されていないので、一般には全く知られていないと言ってもいいだろう。一般公開された映画は2001年公開の「キプールの記憶」(未見)、2007年公開の「ジェイムズ聖地へ行く」(未見)とこの「迷子の警察音楽隊」くらいしか思い当たらない。他に、他国製作だがイスラエルを舞台とした映画には「ガリレアの婚礼」(87年、ベルギー・フランス映画)や「約束の旅路」(05年、フランス映画)などがある。

 また、迷子になった警察音楽隊はエジプトから来たが、エジプト映画もこれまた馴染みの薄い映画だ。僕はユーセフ・シャヒーン監督の3作しか観ていない。岩波ホールで観た「放蕩息子の帰還」(76年)と「アレクサンドリアWHY?」(79年)、第1回東京映画祭(於NHKホール)で観た「アデュー・ボナパルト」(84年)。他にあげられるのはオムニバス映画「セプテンバー11」(02年)の1篇くらい。これもユーセフ・シャヒーン監督だ。残念ながらユーセフ・シャヒーン監督作品で唯一DVDが発売されている「炎のアンダルシア」(98年)は未見。ユーセフ・シャヒーン監督以外のエジプト映画ともなれば05年から始まった「アラブ映画祭」など、各種映画祭での限定上映で観るしかない。

 「迷子の警察音楽隊」はイスラエルで道に迷ったエジプトの警察音楽隊の1日を描いた映画。まことにもってとんでもない組み合わせで、これほど珍しい映画もないだろう。にもかかわらず単なる珍品という作品ではない。映画のタッチや味わいはむしろ「前にも似たような感じの映画を観たことがあるな」という、どこか懐かしささえ感じさせるのだ。せりふが少なく、間を充分に取った、ゆったりとしたテンポとストーリー展開は北欧映画に近い感覚がある。アキ・カウリスマキ監督の「レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ」(89年)や「過去のない男」(02年)にジャック・タチ監督の「ぼくの伯父さん」(52年)を足したような味わいの映画。

 他国民同士がともに過ごすことによって心を通い合わせるというほのぼのタッチはベント・ハーメル監督の傑作「キッチン・ストーリー」(03年、ノルウェー・スウェーデン)にも通じる。もっともこちらは1日限りの出会い。短い出会いと別れ、そして思い出だけが残る。何ともとぼけた軽い笑いで始まり、次第にしんみりしたムードになり、人生の陰りをにじませて終わる。明るい間は笑いが支配し、日が落ちて夜になると人生の陰りが濃くなる、そういう展開になっている。

 道と街灯以外何もない光景。そんな何もない田舎町で展開される可笑しくて、侘しくて、そして温かみのある人間讃歌。楽団を描いた映画らしく、「サマータイム」や「マイ・ファニー・バレンタイン」といった名曲がいいところで使われている。初めてなのにどこか懐かしい味わいの映画だ。この映画はレビューを書きます。

「迷子の警察音楽隊」(07年、エラン・コリリン監督、イスラエル・フランス)
  評価:★★★★☆

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コメント

kimion20002000さん コメントありがとうございます。
このところ忙しくてレビューを書く時間がとれません。だいぶ記憶が褪せてしまいましたが、それでもあれこれいろんな場面がよみがえってきます。
こういうタイプの映画は好きですね。意表をついた設定ですが、単なる思い付きに終わっていないところがいい。笑いの中にぬくもりがある。大人の味わいの映画でした。

こんにちは。
僕もDVDですが、見たので、一言。
本当は、ゴブリンさんのように映画そのものの細部も丹念に追いかけたい気もしましたが、あまりにも、語るべきあるいは印象深いシーンが多くて、ともあれ、「脱帽しました」という子供のようなレヴューになってしまいました(笑)
こんなシンプルな表現で、深く本質的なものを感じさせる映画という魔法は、まだまだ捨てたものじゃないな、と改めて思った次第です。

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