先月観た映画(08年5月)
「長江哀歌」(ジャ・ジャンクー監督、中国) ★★★★★
「オフサイド・ガールズ」(ジャファル・パナヒ監督、イラン)★★★★
「ヒロシマナガサキ」(スティーブン・オカザキ監督、アメリカ)★★★★
「タロットカード殺人事件」(ウディ・アレン監督、イギリス) ★★★★
「過去を逃れて」(1947、ジャック・ターナー監督、米) ★★★★
「淑女は何を忘れたか」(1937、小津安二郎監督、日本) ★★★☆
(1~5月の合計52本)
5月は6本しか映画を観ていなかった。自分でも「えっ、これだけ?」と驚いたほど少ない。家に帰ってくると疲れ切っていて、レビューを書くどころか映画を観る気力もない日が確かに多かったかもしれない。
「長江哀歌」と「オフサイド・ガールズ」、および「ヒロシマナガサキ」についてはそれぞれのレビューと短評を参照してください。「ヒロシマナガサキ」は本格レビューを書きたいのですが、なかなか時間が許しません。
「タロットカード殺人事件」はそこそこ楽しめた。しかし、「マッチポイント」もそうだが、どうも最近のウディ・アレンの映画は観終わってしばらくたつと内容を思い出せない。後に残らないのが問題だ。ウディ・アレンはいつもの調子だが、スカーレット・ヨハンソンがいまひとつ物足りない。ヒュー・ジャックマンも悪くはないが、何かが足りない感じ。「ブロードウェイと銃弾」、「世界中がアイ・ラヴ・ユー」、「マンハッタン殺人ミステリー」の頃の輝きが戻ってこないものか。
「過去を逃れて」はフィルム・ノワールの代表作の一つ。さすがに出来は悪くない。ずいぶん久しぶりに観たロバート・ミッチャムがクールなタフガイを演じていい味を出している。まだスターになる前のカーク・ダグラスも登場シーンは少ないながら存在感を示している。ファム・ファタール役のジェーン・グリアは当時の典型的な美人タイプ。無難に演じているが毒気が足りない。
平穏に暮らしている男にある日彼の過去を知っている男が尋ねてくる。そこから話は現在と過去の回想が入り混じり、複雑な展開になる。ダークなライティングが効果的だ。一般にはあまり知られていないが、ノワールが好きな人にはぜひ一見をすすめたい。
ある上映会で観た「淑女は何を忘れたか」は小津の初期の作品。正直言って出来は良くない。初めて観たと思っていたが、後で調べてみたら87年にパモス青芸館で観ていた。観ていたことすら忘れていた作品。設定は悪くない。当時としてはかなりの豪邸に住んでいる大学教授の斉藤達雄はいつもの飄々とした演技を見せている。何かと口うるさい妻役が栗島すみ子(サイレント時代からの名女優である)。あの独特のメガネ顔がぴりぴりした女性役に合っている。彼女の親友が飯田蝶子と吉川満子。この3人の会話が実に面白い。
そんなちょい上流家庭に栗島すみ子の姪である桑野通子が京都からやって来る。これがかなりのじゃじゃ馬で、たちまち平穏な一家に波風が立ち始める。うるさい女房に頭が上がらない斉藤達雄がゴルフに行くといって実は桑野通子と酒を飲んでいるというシーンが滑稽だ。その嘘が後でばれて・・・。これだけ味のある俳優をそろえて、話の設定と展開もコメディとしては悪くないし、愉快なシーンもいくつかあるのだが、全体としてみるとあまり面白くない。「落第はしたけれど」や「大学は出たけれど」などもそれほど笑えない。小津はコメディの名手とも言われるが、いかにも作ったコメディ作品よりはほんのりコミカルな味をまぶした「生まれてはみたけれど」、「出来ごころ」、「長屋紳士録」あたりの方が僕は好きだ。
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