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2008年5月 3日 (土)

先月観た映画(08年4月)

「子供たちの王様」(チェン・カイコー監督、中国)★★★★★
「パンズ・ラビリンス」(ギレルモ・デル・トロ監督、スペイン・他)★★★★★
「エディット・ピアフ 愛の讃歌」(オリヴィエ・ダアン監督)★★★★☆
「アスファルト・ジャングル」(50、ジョン・ヒューストン監督、米)★★★★
「サッド・ヴァケイション」(青山真治監督、日本)★★★☆
「フライトプラン」(ロベルト・シュヴェンケ監督、米)★★★☆
「デビルズ・バックボーン」(ギレルモ・デル・トロ監督、スペイン)★★★☆
「魔笛」(ケネス・ブラナー監督、イギリス)★★★
「パーフェクト・ストレンジャー」(ジェームズ・フォーリー監督、米) ★★☆

 4月は忙しかった。映画の鑑賞数もぐっと減ってしまった。「子供たちの王様」「パンズ・ラビリンス」「エディット・ピアフ 愛の讃歌」についてはそれぞれのレビューを参照してください。「子供たちの王様」は映画の会で鑑賞。個人的には3度目の鑑賞でした。
 「アスファルト・ジャングル」を最初に観たのは73年11月。実に35年ぶりの鑑賞。当時個人的につけていた「月間ベストテン」の2位に選んだ作品。本館HPに当時の「月間ベストテン」(つけていたのは1972年9月から1974年12月まで)リストを掲載した時に、名前の挙がっていた作品を廉価版DVDでいくつか購入したのです。その中から選んでみたのがこの映画。レビューを書こうと思いつつ未だ手がつけられずにいます。

「アスファルト・ジャングル」
Sky_window  ストーリーの展開はジュールス・ダッシンの「男の争い」やジャン=ピエール・メルヴィルの「仁義」に似ている。強盗には成功するが、結局最後はみんな捕まるか殺される。「男の争い」や「仁義」には劣るものの、映画の出来としてはなかなかのものだ。
 この映画をフィルム・ノワールに入れるかどうかは人によるが(フィルム・ノワールの定義自体が未だに未確定のままだ)、犯罪というものに対する考え方に関していくつか示唆に富むせりふがある。悪徳弁護士のエマリックが、犯罪者が怖いという妻に言った言葉。「彼らも別に変わった人間ではない。犯罪とは人間の努力の裏面に過ぎない(left-handed form of human endeavor)。」犯罪は人間の本性の一面である。人間の行動の明と暗は切り離しがたく結びついており、しばしば境界があやふやになると言いたげだ。
 ラスト近くで警察のコミッショナーが記者のインタビューに答えている言葉もこれに呼応している。腐敗した警官は100人に1人だ。99人は日夜町を守っている。「よくもわるくも警察がいなければどうなる。戦いは終り、ジャングルが勝ち、猛獣のみが横行し始める。」善と悪は互いにせめぎ合っており、善(警察を指している)の側が戦いをやめればたちまち悪がのさばると。映画は出所したばかりのドックがノミ屋のコビーに50万ドルのもうけ仕事を持ちかけるところから始まる。はじめから悪は悪として登場する。当然の前提として描かれ何の疑問も差し挟まれない。強盗団が壊滅するのは水も漏らさぬ計画に偶然の要素が入り込んできたからだ。ドック「何時間もかけて細部まで計算しつくした。それがだ、警報装置が理由もなく鳴り始め、暴発した弾がルイに命中、能無しパトロールまで私のバッグに目を付けた。こんな偶然には打つ手がない。」
 昨今の暗い事件の報道を見れば、犯罪が人間の性に深く食い込んだ抜きがたい要素であることは簡単に否定できない。警察のコミッショナーの宣言にもかかわらず、警察までもが腐敗していると聞いて今更驚くものはいないだろう。しかし単に犯罪を人間の性だというだけでは単純すぎる。なぜ犯罪が生まれるのかをどこまで深く追求しているかが問われねばならない。
 その点で面白いのがディックス(スターリング・ヘイドン)という人物である。コミッショナーは彼こそが一番のワルだと記者会見で断言したが、人間的陰影が一番描かれているのはディックスなのである。彼の先祖はアメリカに初めてサラブレッドを輸入した人物である。大きな牧場を持っていたが全部失った。それ以来強盗で金を稼いではレースにつぎ込んでいるという落ちぶれ男。彼は手に入れた金で故郷の牧場を買い戻そうと思っていた。ラストで瀕死のディックスは故郷の牧場にたどり着く。そのまま牧場で倒れ、仰向けに横たわる。虚しさが後を引くラストだ。
 ただこれとて深い人間監察というわけではない。単純化を防ぐちょっとした工夫というに留まる。スターリング・ヘイドンも今観ると大根だ。エマリックを演じたルイス・カルハーンやドック役のサム・ジャッフェには及ばない。エマリックとドックの人物像をもっと掘り下げ、ディックスにもっとうまい役者を当てていれば文句なしの傑作になっていただろう。

「サッド・ヴァケイション」
 キネ旬のベストテンで4位にはいった作品だが、僕はこの手の作品は評価しない。いわゆる評論家連中が誉めそやすタイプの映画だ。浅野忠信、オダギリジョー、宮崎あおい、石田えり、中村嘉葎雄、板谷由夏と豪華な顔ぶれ。間宮運送という小さな運送会社がストーリーの中心にあり、その会社の社長である間宮(中村嘉葎雄)はいろんな傷を持った人々を受け入れる心の広い人物として描かれている。しかし話の展開はそれぞれの心の傷に焦点を当てる。
 一見温かみのある小さなコミュニティの裏側にはひりひりする心の傷や満たされない思いが充満しているという描き方。それはそれでいいのだが、どうも人間描写が薄っぺらなのだ。冒頭に出てくる中国からの密航者のエピソードがその典型で、単なる背景として描かれるだけである。せっかくオダギリジョーを起用しながら全く彼の存在は活かされていない。一癖ある流れ者たちの吹き溜まりという設定なのだが、それぞれの人物像の掘り下げが浅すぎる。
 この種の映画は結局社会と人間の関係を掘り下げない。社会は単なる背景に遠のき、つまるところ人間個人の感情や情念を描くに留まる。人間の内面を掘り下げることが重要だという考えなのだろうが、その際に安易に人間の社会性を切り離してしまう。だから薄っぺらな映画が出来上がる。これは先進国の映画にほぼ共通した傾向で、上滑りした中空で遊んでいるだけである。アフリカを舞台にした映画やイラン映画、あるいはボスニア紛争を描いた映画などに比べると、どうしても底の浅さが露呈してしまう。主人公である浅野忠信の心の迷いを描く執拗さには異様な迫力があるのだが、どこかやくざな視点が入り込んでいて(時々浅野忠信の顔が白竜そっくりになる)空回りしてしまう。そのあたりが残念だ。

「デビルズ・バックボーン」
 「パンズ・ラビリンス」のギレルモ・デル・トロ作品だということで観た映画。「パンズ・ラビリンス」と同じスペイン内戦時代を描いているというので多少の期待をしていたが、残念ながらスペイン内戦はほとんど関係ない。舞台はある孤児院をほとんど出ない。だからどこであってもいつの時代であってもいいようなものだ。作品としては純粋なホラーというよりはホラー・サスペンスといったところか。人間の怨念やゾンビのようなものが出てこないことには好感を持ったが、サスペンスとしてはありきたり。謎めいた孤児院の雰囲気はよく出来ていて、リンボの水に浸けられた「悪魔の背骨」を持った赤ん坊の死骸も不気味だ。

「魔笛」
 ケネス・ブラナー監督作品なので借りてみたが、正直がっかりした。第一回東京国際映画祭で観たフランチェスコ・ロージの「カルメン」同様本格的なオペラで、初めから終りまで朗々たる歌を聞かされたのではもううんざりである。どうも僕にはオペラは合わない。せりふを全部歌で言うというのはどうしても違和感がある。まだるっこくて仕方がない。古いミュージカル映画が好きでないのも同じ理由だ。
Haikyotohana  ただ、冒頭の導入部分、演奏がなり続ける中、大平原に幾筋もの塹壕が掘られている光景をキャメラが映し出すシーンには迫力があった。複葉機が空を飛びまわるシーンも恐らくCGだろうがなかなかリアルだった。あるいは中ほどで、巨大な墓地が映し出されるシーンも圧巻だった。演説するザラストロの姿からキャメラが引いて行くと、画面手前に墓標が延々と続いている。さらに引くと全く緑のない荒れ果てた茶色の台地が続く。むき出しの土と枯れ木しかない。これらのシーンは見せるのだが、どうも間延びした演出で面白みに欠ける。

 テレビで鑑賞した「フライトプラン」はサスペンス映画としては水準程度の出来か。「パーフェクト・ストレンジャー」にいたってはもうすっかり内容を忘れている。あらすじを読んでも思い出せない。その程度の作品だということだろう。

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