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2007年7月30日 (月)

路地へ

 路地、あるいは路地裏。人が集まる大通りとは違って、裏通りという印象を持つかもしれない。道によっては便利な抜け道として利用されているものもあるだろう。確かに、路地は大通りから大通りに抜ける枝道としての役割が多いかもしれない。一方住民にとって路地は生活道路である。もう30年くらい前になるが、初めて東京の世田谷線に乗った時ずいぶん驚いたものだ。普通の電車とは全く違う。何と電車の窓から手を伸ばせば届きそうな距離に家々が迫っているのだ。電車は家並のすぐ裏側を通っていた。家々は電車に背中を向けているので、生活が見えてしまう。所どころ洗濯物が干してあったりする。それはまさに路地裏を歩く感覚だった。

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 路地裏には生活のにおいがある。外向けではない本来の生活の顔が路地裏にはある。ふと足を踏み入れたよそ者に無防備な素顔をチラリと覗かせる。表通りにはない路地裏の魅力とは案外こういうものではないか。もちろんそれだけではない。路地、あるいは小路や横丁という言葉には独特のノスタルジックな響きがある。普段足を踏み入れたことのない細い道の奥には何か思いがけない出会いが待っていそうな気がする。僕が脇道探索に惹かれるのもそういう理由だ。路地裏、それは何か期待を持たせる未知の領域なのである。

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 有名な観光名所をめぐる旅も楽しいが、時間があれば名もない路地をゆっくり散策してみるのもいい。僕が大事にしている雑誌がある。『芸術新潮』2003年8月号、「イギリスの歓び」と題した特集号だ。イギリス全土を網羅し、かつ写真が豊富なのもうれしいが、なにより、できるだけ有名な観光名所を外した編集方針がいい。たとえばエジンバラを担当した記者は、エジンバラ城よりも旧市街の路地に心を引かれると書いている。あまり知られていない場所を積極的に見て回ろうという姿勢に共感を覚えた。藤田洋三著『世間遺産放浪記』(石風社)もいい。世界ではなく「世間」である。どこかあか抜けない奇妙奇天烈なものから「う~ん」と感心するものまで、地元の人でもうっかり見落としそうなものがこれでもかと並んでいる。どうかと思うものも少なくないが、基本的な姿勢には共感できる。

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 このところ川や橋にばかり目を向けていたが、久しぶりに今日は「脇道探索」に出かけた。今日のテーマは「路地裏探索」。探索地は上田の旧市街。当然ながら路地裏は市街地に多い。家が建て込んでいるほど裏通りも多いわけだ。上田は城下町ということもあるのだろう、細い路地が多い。道が通りやすいということは、すなわち攻め込まれやすいということである。まっすぐな道もほとんどない。迷路のようになっていて、何度通っても道に迷う地区もある。と言うことは探索すべき場所も多いということだ。水辺シリーズに続いて、「路地裏探索」もシリーズ化する予定である。

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 海野町の駐車場に車を停め、いざ出発。まず鍛冶町の方へ行く。蛭沢川に架かる柳橋、伊勢神社などを撮る。そこから蛭沢川にそって中央2丁目あたりを歩く。このあたりは蛭沢川の上に鉄板などを渡して橋をかけ、その上に車を駐車させていることが多い。家が建て込んでいて駐車場が作れないので、こんな苦肉の策を編み出したわけだ。このあたりでよく見かける風景である。路地も多い。その後元の所に引き返し、映劇と電気館という二つの映画館で上映予定作品を確認。「ブラックブック」が来月、「サン・ジャックへの道」が9月に上映予定。半年も前の作品だ。DVDの発売日とさして変わらないのが悲しい。

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<写真>
(左から)柳橋、弁天橋(以上蛭沢川)、幸町橋(矢出沢川)

 袋町の一角を通ってみる。袋町はスナックなどの飲み屋が集中している地域。上田一のネオン街だ。不景気でだいぶ寂れていると聞いたことがあるが、今はどうなのか。少なくとも昼間は人通りもなく閑散としている。そこから北にあがって馬場町、房山あたりを歩いてみた。このあたりはお寺や神社が多い。本陽寺、月窓寺、金昌寺、浄念寺、浄楽寺。袋町にも妙光寺、弁財天があった。本陽寺は黒澤明監督の「姿三四郎」のロケ地になった所。三四郎が池に浸かったところだ。池は埋められてしまったので今はない。門の前の井戸も映画に出てくるが、ここも今はその痕跡だけがある。ついでに付け加えておくと、この寺のお墓には面白い納骨堂(?)がある。これは一見の価値あり。

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<写真>
本陽寺、本陽寺のお墓(2枚)

  房山あたりは古い民家や倉、白壁の土蔵が多い。壁に緑の蔦をびっしり這わせている家も多いことに気づいた。そして何といっても路地の宝庫だ。とにかくデジカメの電源を切っている間がない。電源を切ってはまた何か路地や古い建物などを見つけてすぐ電銀を入れる、この繰り返しだった。普段何気なく通り過ぎるところでも、カメラを持っているとやたらと気になる被写体が見つかる。関心を持つことがいかに大事か改めて認識させられた。

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  矢出沢川を渡って国道18号に出たところで引き返す。歩いた範囲を流れている川は蛭沢川と矢出沢川だけだが、当然橋の写真もふんだんに撮った。中でも袋町を流れる蛭沢川に架かる橋(柳橋、弁天橋など)はどれもいい感じだ。石造りの小さな橋だが、形が良く、欄干に工夫がされている。蛭沢川(矢出沢川の支流)はどちらかというと水路という感じだが、矢出沢川は草が生い茂って野性的な顔をしている。街中のオアシスという感じである。ちなみに、矢出沢川のもっと下流に高橋という所がある。映画「たそがれ清兵衛」の真田広之と 大杉漣が決闘するシーンはそこの河原で撮影された。いずれこのシリーズで紹介したい。

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 今日回ったところは、いくつかお寺はあるものの、観光客がほとんど足を踏み入れないところである。そこで70枚以上の写真を撮った。今まで気にも留めていなかった何でもない所がほとんどだ。ある路地を撮っていた時、近所の子供に声をかけられた。「今何を撮ったの?」「そこの路地だよ」と答えたら、ふ~んという感じで怪訝そうな顔をした。彼にとっては普段見慣れた場所にすぎない。きっと「変なおじさんだ」と思ったことだろう。でも見慣れたものに新鮮な目を向けてみることは大切だと思う。生活の匂いがしみこんだ街並み、それに魅力を感じる感性を大事にしたい。日本の街並みは統一性がなく、全く雑然としている。西洋の街並みのような美しさを持った通りは少ない。西洋画にはなんでもない街角を描いた絵が多い。街並みそのものが美しい。アルフレッド・スティーグリッツの撮った街角の写真(「五番街」)に吸い込まれそうになるほど引き付けられたこともあった。しかし日本にはまた日本の街並みや建物の美しさがあるはずだ。それはゆっくり歩きながら街を見ることで発見できるだろう。街に出てみよう。そしてゆっくり歩いてみよう。

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<写真>
(上の3枚、左から)電気館、伊勢神社(中に馬が!)、金昌寺
(下の右の写真)これも川の上の駐車場

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