依田川探索 その1 馬坂橋を撮る
川のある生活は幸いなるかな。今日依田川探索に出かけて改めてそう思った。上田に来 て6年目くらいまでは千曲川のほとりにあるアパートに住んでいた。ちょっと時間があれば自転車でよく川沿いを散歩(散輪?)したものだ。その後引っ越してからは千曲川が遠くなり、川が身近ではなくなってしまった。今でも千曲川の近くに住んでいたころが懐かしい。
今回探索の対象に依田川を選んだのは、一つには先週醤油久保橋の写真を撮ったからである。上小地区にあるもう一つの木橋、馬坂橋の写真を撮りたいと思ったのである。だが、依田川は前々からずっと気になっていた川である。千曲川をこよなく愛していた割には、ちょっと前まで浦野川や産川などの中小河川は全く眼中になかった。しかし依田川は大屋駅近くで千曲川に注ぎ込む千曲川の支流であるが、結構大きな川なので流域に
よって様々な顔を持っている。中丸子から下丸子あたりでは千曲川に匹敵する川幅を持っている。何より、腰越橋近くの大渕・中渕あたりでは渓谷のような様相を呈していて、野趣があって素晴らしい景観を呈している。これまで車を停めてじっくり眺めたことはなかったのだが、ずっと気になる川だったのだ。
今日は日差しがきつかったので、2時ごろから探索に出発する。道路地図に馬坂橋の名前が載っていないので、ネットで調べた地名から大体の位置を予想した。とにかく行ってみよう。分からなければ誰かに聞けばいい。そんな覚悟で行った。腰越橋あたりで一旦川の 写真を撮ろうと思って、橋の手前にある信号を左折した。その方が川に下りる道がありそうな気がしたからだ。曲がってすぐ前方に橋が見えた。何と写真で見た馬坂橋そっくりではないか。こんなにあっさり見つかっていいのか、といささか拍子抜けしたほどである。とにかく川沿いに駐車できるスペースがあったので車を停める。
河原に下りて橋の方へ歩いて行った。間違いない、馬坂橋だ。新しく付け替えられたば かりなので、写真で見ると見るからに人工的な色で味気ない印象だった。しかしさすがに間近で観ると太い木材の迫力を感じた。どっしりとした重量感がある。河原からまず上向きに写真を撮った。橋の横に支えのような形の木組みがあるが、不思議なことに橋とはつながっていない。これは一体何のためにあるのか?上流側にだけにあるのも不思議だ。
(注)後日馬坂橋が沈下橋だと気が付きます。そのことは「馬坂橋は沈下橋だった」という記事で書いていますので、興味があればそちらもご覧になってください。
堤をのぼって上にあがる。上から見ると何とも不思議な橋だ。欄干がない。橋の両端に手すりのようなものがあるにはあるが、何せやっと足首の上に届く程度の高さなのでほとんどないのと同じだ。かがまなければ触れないので「手すり」ではなく「足すり」である。なんでこんなに欄干が低いのか。見れば見るほど不思議な橋である。もっともそれなりに幅が 広く、川面からの高さがそれほどないので、欄干がなくても不安は感じない。橋の中ほどから川の上流と下流の写真を撮り、橋の向こう側からも橋の写真を撮る。まだ真新しい感じだが、時間を経て古びてくると味わいが出てくるだろう。
一通り写真を撮って車のところに引き返す。そのまままた車に乗ろうと思っていたが、腰越橋がすぐ近くなのでそのあたりの写真も撮ろうと思い直した。そもそもそれが当初の目的だった。橋を越えると風景が一変する。川底が深くなって渓谷のような様相を帯び、川床には巨岩がごろごろと横たわっている。まるで木曽川にある景勝地 「寝覚ノ床」のようだ(ちょっと大げさか)。狭い階段を下りて写真をバシバシ撮った。石が岩を削って岩に穴があいている場所もある(屋久島の或る川を源流までさかのぼるドキュメンタリー番組で、石がうがったもっと大きな穴を見たことがある)。う~ん、写真ではこの渓谷(「大渕・中渕」と呼ばれているのは後で道路地図を見て知った)の迫力が出るかどうか。対岸の巨大な岩の一つは柱状節理(ただし縦ではなく横向き)のようになっている。
しかし腰越橋をはさんで、どうして川の表情がこれほど一変するのか?依田川は腰越橋を越えるとすぐ山にぶつかり、右にカーブしている。この巨大な岩はその山から落ちてきた
のだろうか。上流部分は山からそれて平坦な部分を流れているので、上流からここまで運ばれてきたとは考えにくい。いや、上流が平たんなのは川に削られたからであって、削られ残った巨石が上流から押し流されてきたのかもしれない。川がカーブしているので流れが緩くなり、そこに巨岩がたまったとも考えられる。まあ、そんな推理は専門家に任せるとして、ともかくここは知られざる不思議スポットとして認定しよう(僕が認定したところで、何ほどの権威もないが)。
さて、今度こそまた車に乗ってさらに上流へ向かう。「おお、まだ攻める気か」と感心するかもしれないが、実は武石沖のジャスコでトイレを借りたかっただけ。そこで家に引き返す つもりだった。しかしトイレから出ると ”追い立てられる気分” が抜け、もっと写真を撮りたくなった。上流方向に向かい、和紙の里横の下立岩の信号を左折する。適当なスペースに車を停め、そこから歩くことにした。すぐ横に ”立岩下の橋” があった。写真を撮り上流に向かう。すぐ隣の橋はなんと ”立岩上の橋” となっていた。う~ん、わかりやすい。このあたりの風景も独特の情緒があっていい。何となく金沢の浅野川(ひがし茶屋街あたり)を連想した(これまた大げさか)。さらに上流まで歩くと駒形橋があった。これは先の二つの橋より大きな橋で、形もいい。橋の向い側に鐘楼らしきものが見えるので、橋を渡ってみた。来福寺という小さなお寺だった。門と鐘楼の 写真を撮った。川を探索しているといろいろな出会いがあって面白い。こんなところまで入り込まなければ決して出会うことのないお寺だ。
もっと下流のジャスコ近くの川を撮りたかったので、道を引き返して和紙の里横のコンビニの駐車場に車を停めた。ものすごく広い駐車場で、その奥はすぐ川に面している。川まで降りて写真を撮った。ほんのわずかな距離だが、ここも立岩下の橋あたりとは全く川の表情が違う。川の向い側は山だ。岩山で、木の間からごつごつした岩肌が所々むき出しになっている。立岩下の橋あたりは町中を流れる川だったのに、ここでは森の木立の中を流れる野性的な川になっている。これほどわずか な距離で表情が変わる川も珍しいのではないか。正面の山も突然目の前にそそり立つ感じで、たいして高くない山なのに視界を完全にさえぎってものすごく大きく感じる。このあたりの川床は巨岩も一つ二つあるが、小さな石が一面に敷き詰められたように重なっている。川の景色がきれいなので何枚も写真を撮る。駐車させてもらったので、コンビニでジュースを買ってまた下流に向かう。
すぐまた車を停めるスペースがあったのでそこに乗り入れる。ちょうど152号線に架かる武石橋の横だった。よく見ると武石橋のすぐ10メートルほど先で武石川が依田川に流れ込んでいる。ここは合流地点だった(武石橋は武石川に架かっている)。このあたりは先ほ どのコンビニからほんのわずか走っただけなのだが、また川の表情が違う。巨岩がごろごろしている。瀬もあって表情が豊かだ。ここでも何枚か写真を撮った。
もう5時頃になっていたので、今日の探索はここまでとして家に向かう。ところが、依田川橋を渡っている時に、ついでにもう1か所寄って行こうという気持ちになった。依田川を渡ってすぐ先に信号がある。そこを左折してすぐ左側に喫茶「リバーサイド」がある。そこに寄ってみたかった。車を停めて、まず依田川 の写真を撮る。このあたりは相当に川幅が広い。もう渓流の趣はなく、とうぜん野性味も全くない。千曲川のように悠々と流れる川である。これはこれでまたいい眺めだ。「リバーサイド」でアイスコーヒーを飲む。ここは確か普通の民家を喫茶店に改造したものだったと思う。店内が明るく清潔な感じで、ここも好きな喫茶店の一つである。確か目立つ看板が出ていなかったと思うので、知らないと通り過ぎてしまう。結構穴場的な店だ。20分ほど休んで店を出る。今度こそ家に帰った。
しかし、依田川はすごい。浦野川はおとなしい感じの川だが、依田川には白波が立つ瀬あり、巨岩がごろごろと転がる渓谷あり、ゆったりとした情緒を伴って町中を流れる個所もある。さながら川の「怪人20面相」だ(例えが古すぎる!)。いやはや、こんな川に出会っ
たのではもうやみつきですな。明日も出かけちゃおうか(おいおい、「王の男」のレビューはどうなったんだ!?)。
<写真の説明(上から順に)>
馬坂橋(4枚)
腰越橋
駒形橋
来福寺の門
コンビニ裏の依田川
武石橋下の依田川
来福寺の鐘楼
武石橋(左下、橋のすぐ左側が合流点)
立岩下の橋(中)
立岩上の橋(右下)
「リバーサイド」から撮った依田川橋(右上)
大渕・中渕(右下)
武石橋から見た依田川と岩肌の露出した山(右下)
和紙の里(左下)
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