不思議な空間のゴブリン
日曜日。晴天。昼食の後、陽気に誘われてミニ・ドライブに行きたくなった。BGMは小野リサの「コレソン~ザ・コレクション」。ドライブにはボサノバが合う。浅間サンライ ンに出る。久しぶりにサンライン脇道探検に行こう。道の駅「雷電くるみの里」を越えた次の脇道あたりで左折。何となく見覚えがあるので前にも来た道のようだ。山の方に向かってしばらく進むと左側の奥の方に東屋が見える。気になるが左に曲がる道がないので帰りに寄ることにする。さらにしばらく行くと右側に入る細い砂利道が見えた。何となく面白そうなところに出る気配。迷わず車を乗り入れる。小さな橋を渡ったところで車を止める。橋の下にはコンクリートで囲った水路のようなものが走っている。水は流れていない。車を降りて道の先の方へ行ってみる。細い道が続いていて、あちこち枝道がある。車が1台やっと通れる幅だが、舗装されている。日曜日のせいかあたりに全く人気がない。畑もあちこちにあるから平日なら人もいるのだろうか。40分ほど歩 きまわってみたが、車1台通らないし、人っ子一人見かけなかった。遠くの方からモーターのような音や人の声が風に運ばれて時々聞こえてくるだけだ。どこかの木にウグイスがとまっているのだろう、しきりに「ホーホケキョ」と鳴いてくる。街中ではまず聞かない鳴き声だ。
道に迷わないよう気をつけながらも、あちこち脇道に入ってみる。廃車にされた車が林の中に放置されているのを何台も見かけた。写真を何枚か撮った。道の先も後ろもただ道があるだけ。人気はない。遠くの音とウグイスの鳴き声だけが聞こ えるし~んとした不思議な空間。遠くの山がきれいだ。この数カ月何かと気忙しくて、ゆったりと過ごす時間がなかなかとれなかった。人気のない不思議空間と何物にも邪魔されず思いを巡らせる自由な時間。久々に味わう開放感だった。暑い日差しにうっすらと汗をかくが、そんなことは気にならない。
作家はこんなところをぶらつきながら小説の着想を練るのだろうか。たとえばサスペンス小説。こんな人気のないところなら死体の遺棄場所にふさわしいかもしれない。主人公は 五分林太郎。「不思議空間探検家」を自称する写真家。今日もいつものように人気のない山の中を歩き回っていた。おや、遠くの丘の上にポツンと1軒だけ家が建っている。あんなところに誰が住んでいるのだろう。なぜあんなところに家を建てたのか・・・。
突然頭の上から「ホーホケキョ」という鳴き声が降ってきてはっと我に返る。またいつもの空想癖が出ていた。気がつくと道の分岐点に立っていた。右に行けば下り道で、道のずっと先に千曲川沿いの緑の山々が見える。左に行くと登り道。細い道は右にカーブしていて、その先は木立ちに隠れて見えない。左に行くことにした。体の向きを変えようとした瞬間、眼の隅にそんなところにあるはずのないものがちらっと見えた。何だろう。林の下をびっしりと覆っている草の間から何かが突き出ている。少し近寄ってみ るとそれが靴だとわかった。しかもその先には白っぽい足が見える。ぎょっとして2、3歩後じさった。とんでもないものを「発見」してしまった。パニックに陥り車に引き返そうとして数歩前に歩きだして、ふと足が止まった。何か変だ。早くこの場を離れたいという衝動を無理に抑えて、もう一度林の方を見る。靴はやはりそこにあった。消えていてほしいという期待はあっけなく打ち砕かれた。幻でも錯覚でもない。靴を履いた白い足が草の下から突き出ている。それを確認した林太郎は、不自然な印象の「原因」にも気づいた。二本の足があり得ない角度で並んでいるのだ・・・。
失礼。この辺でやめておきましょう。まあ、こんなことを想像させる空間だったわけです。車に戻り、道を引き返す。しばらく道を下ってから、上がってくるときに気になった東屋の方 へ行くために右折する。さっきの道よりさらに狭い道。林の中を少し進むと急に視界が開ける。目の前に田んぼが広がっている。棚田というほどではないが、緩やかな斜面に何枚も田が並んでいるので階段状になっている。車を停めて写真を撮った。右に曲がりまた坂を上る。正面に丸い建物が見える。何の建物が分らないが、フロントガラス越しにこれも写真に撮った。さらに細い道を上ると来る時に見えた東屋が現れた。道の右側にはため池もある。上田とその周辺は全国でも3本の指に入るほど雨の少ないところである。したがっていたるところにため池がある。だからため池自 体は珍しくないが、ここはため池然としていない。小さな湖のような趣があった。眺めがいいので東屋の横に車を停め、写真を撮った。しばらく池を眺めてから帰ってきた。帰ってから地図で調べてみた。恐らく弁天池だと思われる。
« 「春にして君を想う」を観ました | トップページ | 母たちの村 »
コメント
この記事へのコメントは終了しました。
のほほんさん コメントありがとうございます。
気味悪くなかったですか?済みません、ちょっとしたいたずらでした。
僕はまだ車の免許がなく自転車で走り回っていた頃から、小さな脇道や路地を見つけると無性に入ってみたくなる性分でした。どんな道なのだろう。どこに出るのだろうか。あるいは、塀の向こうや山の向こう、川の対岸には何があるのか。そういう見えないものに興味を惹かれました。
たいていはどうということはないのですが、意外なものを見つけることもあります。脇道探検、結構楽しいですよ。
投稿: ゴブリン | 2007年5月14日 (月) 01:27
まぁ、ゴブリンさんたら
とってもお茶目な方なのですね♪
主人公、五分林太郎!!!
つい、引き込まれてしまいました。(笑)
とてもよいお天気で脇道探検&不思議空間探検
できてよかったですね♪(*^。^*)ポッ!!
投稿: のほほん | 2007年5月13日 (日) 22:00