浦野川散策
天気がいいのでミニ・ドライブに行くことにした。143号線をしばらく走る。いつものよう に、特にどこへ行くというあてがあったわけではない。仁古田の信号を越えたところで浦野川に架かる橋を渡った。左側の浦野川の眺めがなかなかいいので急遽左折して橋の近くに車をとめた。橋は古郷橋。143号線の橋より一つ上流にある橋だ。古郷橋とは面白い字だ。橋のたもとで一瞬何と読むのか迷ったが、日記に書いてみてその理由が分かった。故郷でも古里でもなく、両方を掛け合わせた古郷なのだ。「ふるさと」と読むのか。それとも「こきょう」か。あるいは「こさと」だろうか。上田には古里と書いて「こさと」と読む地名もあるが。いずれにしてもユニークな組み合わせだ。(追記:読み方は「こきょうはし」でした。何のことはない、橋の反対側にひらがなで書いてありました。この時はまだ知りませんでしたが、橋の欄干の両端にある合計4つの柱にはそれぞれ橋の名前と川の名前が漢字とひらがなで書かれています)。
橋の上から川を眺めてみる。水は薄茶色に濁っているが、なかなか眺めがいい。もう一 つ上流の橋の横に「浦里保育園」の建物が見える。143号線の(青木方面に向かって)右側には何度か「裏道探索」に行ったことはあるが、左側にはまだ行ったことがない。ずっと気になっていたのだが、とっさの判断で図らずも初めて足を踏み入れることになった。川の両側の堤の上に道がある。草に覆われているが、車のわだちができている。そこをたどれば歩けるだろう。まだ日が高いし、上流の眺めがよさそうなので、上流に向かって歩いてみることにした。
デジカメを持ってこなかったことを後悔する。出がけに迷ったのだが、置いてきてしまった。まあ、また来週の土曜か日曜にもう一度来ればいい。川の左右に山があり、正面あたりでつながっている。左側はすぐ山。右側は広い平地。ちょうど広い扇状地の左寄りにいる感じか。正面のずっと奥の方に水源があるようだ。川の近くには人家が少なく、木立が多い。ほとんど人を見かけない。実にのんびりした場所だ。歩いていて気持ちがいい。数は 少ないとはいえ人家が絶えず視界に入るのは興ざめだが、よく絵に描かれるような美しい田園風景の中に自分がいる。2週間前に書いた「不思議な空間のゴブリン」で分け入ったのは山の中だったが、今回は川沿いの道。気持ちがいいのはそのせいだ。
97年の12月に「川沿いを自転車で」というエッセイを書いた(本館HP「緑の杜のゴブリン」のエッセイ・コーナー所収)。千葉県の流山市や東京の調布市に住んでいた頃、そして上田市に来てからも、僕はよく自転車で川沿い(江戸川と野川そして千曲川)を散歩していた。僕はなぜか海、川、湖、池などの水辺が大好きなのだ。塩田に家を建ててからは千曲川から遠くなってしまい、以前のように川沿いの散歩をしなくなった。だから今日の浦野川散策はとても楽しかったし、懐かしい気がした。
向川原橋、梅之坪橋、越戸橋と次々に橋を越えてゆく。橋と橋の間隔が短い。それだけ生活空間に近いということだろう。上流に行くにつれて家の数が減ってくる。堤防道のわだちもだんだん草に覆い隠されてくる。川がどんどん野性的になってきて、川の表情も良くなってくる。淀みができているところでは親子が釣りをしていた。なんて長閑なんだ。上田市も青木村のすぐ近くまで来るとこんな所があるんだ。川の横に赤い色の洋風の建物がある。ここは必ず写真に撮ろう。あちこち歩きながら、いくつも必写ポイントを見つける。無意識のうちにアングルまで考えている。ああ、本当にカメラを持ってこなかったのが残念。
越戸橋まで来たところで引き返す。40分くらい歩いただろうか。もう少し近辺を見てみたかったので、車で川から少し離れた道を上流の方向に向かって走ってみる。道の右側には比較的新し家が立ち並んでいる。分譲地だったのだろうか、どれもしゃれた感じの家だ。ほとんど対向車もなく、走っていて気持ちがいい。だいぶ走って右折したらなんとすぐ143 号線に出た。道の向い側は青木の道の駅だった。何だここに出るのか。自分ではもっと沓掛温泉の方に向かっているのかと思っていたので、いささか拍子抜けした。家に戻る。忘れないようにすぐフリー・ソフト「そら日記」に書き込む。地図で調べてみると、何と浦野川はほぼ143号線と並行して流れていた。古郷橋近くで143と交差するところではほぼ直角に交わっていたので錯覚したのだ。そういえば向川原橋の先あたりから川は右にカーブしていたなと今更ながら合点した。
地図を見ていて面白いことに気づいた。浦野川をさかのぼってゆくと青木村役場のあたりで二股に分かれている。というよりも、沓掛温泉の方から流れてくる沓掛川と田沢の方から流れてくる田沢川が青木村役場のあたりで合流しているのである。こうして川は1本になるが、青木村役場のすぐ下流は田沢川と書いてある。それが途中から突然浦野川になるのだ。ちょうどその境目あたりで道路地図のページが変わっているので一瞬面食らった。同じ川が33ページでは田沢川と書いてあり、34ページでは浦野川になっている。理由はすぐ分った。青木村を流れている間は田沢川と呼ばれ、上田市に入ると浦野川と呼ばれているのである。ちょうど長野県内では千曲川と呼ばれている同じ川が新潟県に入ると信濃川と呼ばれるように。県境だけではなく、市と村の間でもこういうことがあるとは知らなかった。探せば他にもあるかもしれない。実に興味深い現象だ。
日記を書いている間フランシス・ブラックの「トーク・トゥー・ミー」のCDを流す。このCD、不思議なことにステレオに入れると「no disc」と表示されて音が出ない。不良品をつかまされたかと思ったが、試しにDVDプレーヤーに入れたら音が出た。一体どうなってるの?キツネにつままれた感じだったが、音楽は良かった。フランシス・ブラックは有名なメアリー・ブラックの妹。「トーク・トゥー・ミー」は94年製作のソロ第1作。メアリーよりももっとフォーク寄りで、聞きやすい曲が多い。アイリッシュ色が薄い代わりに幅広い人が楽しめるだろう。いい曲がそろっていて素晴らしいアルバムだ。
「ゴブリンのこれがおすすめ 38」でアイリッシュ/ケルト・ミュージックを特集した直後に、アマゾンでCDを一気に20枚も注文してしまった。これもその中の1枚。「追加」のコーナーに入っている、チェリッシュ・ザ・レイディーズの「スレッズ・オブ・タイム」、デフ・シェパードの「シナジィ」、ベグリー&クーニーの「アイルランドの絆」、ミジャドイロの「ガリシアの誘惑」はみなその時注文したもの。フランシス・ブラックの「トーク・トゥー・ミー」も追加しておきます。 ジャンルが違うので入れなかったが、クラース・ドルテの「イン・マイ・ネーム」も傑作だった。こちらはスウェーデン出身のシンガー・ソングライター。ずっとマークしていたのだが、やっと今頃になって手に入った。フォーク調の静かで滋味深い歌を聞かせてくれる。僕はフォークが大好きだ。もちろん、これもおすすめです。
<写真の説明・上から>
古郷橋
向川原橋
梅之坪橋
梅之坪橋上流の河原
赤い家
越戸橋
越戸橋上流の河原
浦野川と堤防道
(注)
写真は6月2日に撮ったものです。
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» 妹、フランシス・ブラック [遅ればせながら衝動的]
メアリー・ブラックの妹、フランシス・ブラックFrances Blackもアイルランドで人気のシンガーだ。
メアリーよりも線が細く、やや頼りなげなヴォーカルだが、やはり姉妹。時々聞き違えそうになるほどだ。初期のメアリ... [続きを読む]
シャケさん 今晩は。TB&コメントありがとうございます。
お言葉に甘えて先ほどTBを送らせていただきました。
メアリー・ブラック本人と会ったのですか。業界の方でしょうか、うらやましい。きっと素敵な方だったでしょうね。
CDの不調はやはり相性なのでしょうか。数千枚持っていますが、こんなことは初めてで驚きました。まあ聞けないわけではないので買い替えようとは思いませんが、ちょっと気にはなります。
あまり音楽のことは書かないのですが、また機会があれば覗いてみてください。
投稿: ゴブリン | 2007年6月17日 (日) 00:53
先ほどは拙ブログにコメントいただき、有難うございました。
CDはたまにプレーヤーとの相性によって、読み取り不能になることがあるみたいですね。
メアリー・ブラックとは直接、何度かお会いしてきましたが、とても溌剌とした美しい女性でした。こちらのお薦めCDも参考にしたいです。
TBの件、よろしければお待ちしていますのでお送り下さい。それでは・・。
投稿: シャケ | 2007年6月16日 (土) 23:28