「紙屋悦子の青春」を観てきました
今日上田の電気館で「紙屋悦子の青春」を観てきた。これで黒木和雄監督の「戦争4部作」を全部観たことになる。4部作の中では「父と暮らせば」が一番優れていると思う。2位がこの「紙屋悦子の青春」、以下「TOMORROW明日」、「美しい夏キリシマ」というのが僕の評価。
「紙屋悦子の青春」は病院の屋上のシーンを除けばほとんど屋内の撮影。大きな動きは
なく、ほとんどが会話で構成されている。そのせいか小津の世界を感じた。黒木監督は遺作で小津の世界に還ったのだ。出演者も限られている。たったの5人。何度か話にだけ出てくるおしゃべりな駅長さんを入れても6人。年老いた悦子と夫の長政の現在から始まり終戦の年昭和20年の回顧に移る展開。5人の出演者すべてがいい演技をしている。特に長瀬正敏と原田知世が素晴らしい。原田知世の老け顔はいまひとつだが、回想の中の若い時が実に美しい。髪をひっつめにしているせいか「博士の愛した数式」の深津絵里によく似ていた。これまで一度もいいと思ったことのない女優だが、この映画での彼女は繊細で清楚で非常に心を引かれた。そう言えば、田中裕子も「いつか読書する日」を観て初めていい女優だと思った。俳優は素晴らしい作品に出会った時輝くのだと改めて思う。すぐにレビューを描きます。
「トランスアメリカ」のレビューが遅れていますが、何とか今日か明日には書き上げたい。21日に観た「隠された記憶」もその後に控えている。デヴィッド・リンチの「ロスト・ハイウェイ」そっくりの出だしで始まるサスペンス映画。終わり方も「ロスト・ハイウェイ」同様謎が謎のまま最後まで残る。何も説明されずにあっけなく終わってしまう。しかしそこはミヒャエル・ハネケ、デヴィッド・リンチのように非現実的な要素を持ち込んだりはしない(「ロスト・ハイウェイ」も「ツイン・ピークス」ほど荒唐無稽ではないが)。観客一人ひとりに心当たりはないかと問いかける終り方は悪くないと思った。
「紙屋悦子の青春」★★★★☆
「隠された記憶」 ★★★★☆
どうもこのところなかなかレビューに集中できなくて観る映画の数にレビューが追いつかない。昨年の11月に入院する前は、レビューを書き終えないうちは新しい映画を観ないようにしていた。そのため観る本数が減ってしまった。今年は観る本数を増やして、長めのレビューを減らし短評を増やそうと考えたのだが、書き出すと長くなってしまうのが悩み。以前のような長大なレビューはなくなったが、集中力が減ったせいかアイデアが浮かばなくなり、自分で満足のいくレビューが書けなくなってきた。以前より短いレビューなのに書きあぐんでいる。「ジャーヘッド」以降はどん底。どうやらスランプの時期がやってきたようだ。
いかん、また愚痴になってしまった。ようやく忙しい時期も脱したのでこれからまたどんどん書いてゆきたい。今レンタルいるのは「タイヨウのうた」。あと「ゆれる」と「明日の記憶」を観ればキネ旬の日本映画ベストテンを全部観たことになる。これらと「トンマッコルへようこそ」を観た後は新作DVDを一時棚上げして、たまりたまった手元のDVDを集中的に観てみたい。今年に入ってからも続々とDVDを手に入れた。「フープ・ドリームス」、「心の香り」、「春にして君を想う」、「スプリング春へ」、「イジィ・トルンカ作品集4、5」、「愛と宿命の泉」、「恐怖省」、「M」、「川本喜八郎作品集」等々。どれも今すぐ観たい。去年買った「夫婦善哉」、「芙蓉鎮」、「貸間あり」、それから「タヴィアーニ兄弟傑作選 BOX」、「溝口健二 BOX」、「成瀬巳喜男 BOX」など観たい映画は山ほどある。まあ、あせらず一本ずつ観て行くしかないか。
ちなみに現在までの「2006年日本映画マイ・ランク」を最後に付けておきます。6位まではほとんど横一線。甲乙つけがたい傑作が並ぶ。
1 博士の愛した数式(小泉堯史監督)
2 かもめ食堂(荻上直子監督)
3 フラガール(李相日監督)
4 嫌われ松子の一生(中島哲也監督)
5 武士の一分(山田洋次監督)
6 紙屋悦子の青春(黒木和雄監督)
7 THE有頂天ホテル(三谷幸喜監督)
8 雪に願うこと(根岸吉太郎監督)
9 カミュなんて知らない(柳町光男監督)
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