Golden Tomato Awards発表
アメリカの有名な映画批評サイトRotten Tomatoesが2006年の映画ランキングを発表した(サイドバーの「お気に入りホームページ」にリンクがあります)。全米の500館を越える劇場で公開された映画を対象とするWide Release部門、500館以下のLimited Release部門、これが主要2部門である。それぞれにベスト50が挙げられている。ヒット作とそうでないものに分けるあたりはいかにもアメリカらしい。この他にジャンル別(アクション、アニメ、コメディー、ドキュメンタリー、外国語映画、ドラマ、ホラー、ファミリー、ロマンス、SF、スリラー)ベスト10もある。とても全部は紹介しきれないので主要2部門はベスト10まで、ジャンル別はベスト3まで紹介しよう。
今回は Wide Release部門とLimited Release部門を取り上げる。
Wide Release部門
1位 「007/カジノ・ロワイヤル」
マーティン・キャンベル監督、ダニエル・クレイグ、エヴァ・グリーン主演
2位 「ディパーテッド」
マーティン・スコセッシ監督、レオナルド・ディカプリオ、マット・デイモン主演
3位 Borat
ラリー・チャールズ監督、サシャ・バロン・コーエン、パメラ・アンダーソン主演
イギリス人コメディアン、サシャ・バロン・コーエンがカザフスタン人TVレポーターに扮し、アメリカでドキュメンタリーをとるという設定。彼のインタビューは行く先々でアメリカ人の激烈な反応を誘い、アメリカの恥部をさらけ出させてゆく。一種の挑発的「ショックメンタリー」映画であり、単なるおバカムービーではないと見た。
4位 「ユナイテッド93」
ポール・グリーングラス監督、コーリイ・ジョンソン 、デニー・ディロン他出演
5位 「インサイド・マン」
スパイク・リー監督、クライヴ・オーウェン、デンゼル・ワシントン主演
6位 「ブロック・パーティー」
ミシェル・ゴンドリー監督、デイヴ・シャペル、ローリン・ヒル主演
ブルックリンで開催された無料のシークレット・ライブのドキュメンタリー。カニエ・ウエスト、モス・デフ、フュージーズ、ローリン・ヒルなどブラック・ヒップホップ・ミュージシャンが総出演。観たいです。
7位 「ディセント」
ニール・マーシャル監督、シャウナ・マクドナルド、ナタリー・メンドーサ主演
8位 Slither
ジェームズ・ガン監督、ネイサン・フィリオン、エリザベス・バンクス主演
「ドーン・オブ・ザ・デッド」の脚本家ジェームズ・ガンが初めてメガホンを取った低予算B級ホラー。ヌルヌル、ベトベトのナメクジ映画。お好きな方はどうぞ。
9位 Akeelah and the Bee
ダグ・アチソン監督、ローレンス・フィッシュバーン、アンジェラ・バセット主演
Spelling beeと呼ばれるスペリング・コンテストを通じて成長してゆく黒人の女の子を描く感動編。型どおりのストーリーだが、ヒロインに共感を禁じえないファミリー・ドラマとの評判。
10位 「今宵、フィッツジェラルド劇場で」 3月3日公開予定
ロバート・アルトマン監督、ウディ・ハレルソン、ジョン・C・ライリー主演
ロバート・アルトマン監督の遺作。アメリカを代表するラジオ番組「プレイリー・ホーム・コンパニオン」最後のオンエアの一夜における出演者の人生模様を、ちょっぴり辛口なウィットと粋なユーモアで包んだ別れと再生の物語。これまたアルトマンお得意の群像劇。
Limited Release部門
1位 The Queen
スティーヴン・フリアーズ監督、ヘレン・ミレン、マイケル・シーン主演
イギリス映画の傑作。ダイアナ妃事故死直後のイギリス王室の舞台裏を描く内幕物。ヘレン・ミレンが女王エリザベス2世を演じ、マイケル・シーンがブレア首相に扮している。二人の名演はヴェネチア映画祭など各地で絶賛されている。これは必見!
2位 「リトル・ミス・サンシャイン」
ジョナサン・デイトン、ヴァレリー・ファリス監督、トニ・コレット、スティーヴ・カレル主演
3位 「トゥモロー・ワールド」
アルフォンソ・キュアロン監督、クライヴ・オーウェン、ジュリアン・ムーア主演
4位 Wordplay
パトリック・クリードン監督、マイク・ムシーナ、ウィル・ショーツ主演
クロスワードパズルをテーマにしたドキュメンタリー映画。「ニューヨーク・タイムズ」のクロスワードパズル編集者ウィル・ショーツはその筋ではカリスマ的存在。彼には多くの信奉者がいるらしい。眉間にしわを寄せて新聞のパズルを食い入るように見つめているパズル・ファンの姿はまさにオタクの世界。毎年行われるクロスワードパズルのトーナメント大会があるなんて知らなかった。スペリング・コンテストを描いたAkeelah and the Beeといい、アメリカ人はコンテストが好きだ。
5位 「不都合な真実」
デイヴィス・グッゲンハイム監督、アル・ゴア主演
6位 Pan's Labyrinth
ギレルモ・デル・トロ監督、セルジ・ロペス、アリアドナ・ギル主演
英語のタイトルを直訳すれば「牧羊神の迷宮」。1人の少女の眼を通して、彼女の想像の世界を描くダーク・ファンタジー。悪夢のような彼女の想像世界には怪異な生き物が棲息している。大人向けの「不思議の国のアリス」といった感じの作品。その恐怖の世界はファンタジー的であるが、同時に彼女が第2次世界大戦中のスペインで経験した恐怖のアレゴリーでもあるらしい。非常に心を惹かれる作品。
7位 Half Nelson
ライアン・フレック監督、ライアン・ゴズリング、シャリーカ・エプス主演
人生の岐路に立った孤独な人々をセンチメンタルになることなく描いた作品。内なる悪魔と葛藤している白人の教師とイノセンスを失いかけている黒人の少女。ライアン・ゴズリングとシャリーカ・エプスの演技が心に沁みる映画のようだ。
8位 ボルベール<帰郷>
ペドロ・アルモドヴァル監督、ペネロペ・クルス、カルメン・マウラ主演
「オール・アバウト・マイ・マザー」のペドロ・アルモドヴァル監督がペネロペ・クルスと組んだ悲喜劇。ペネロペ・クルスは失業中の夫と幼い娘を抱えていくつも仕事を掛け持ちしている若い主婦を演じている。伯母の死をきっかけに故郷を訪れた彼女はそこに亡き母の面影を感じる。祖母・母・娘三世代の人生を綴ったドラマ。これも期待大!
9位 Deliver Us From Evil
エイミー・バーグ監督
ロサンゼルス映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞を受賞した作品。小児愛の性癖を持った元聖職者オリヴァー・オグレイディと彼を守ろうとするカソリック教会の隠蔽体質を暴露したドキュメンタリー。タブーに挑んだショッキングな作品。最近のドキュメンタリーの勢いは今や奔流となって否応なくわれわれを巻き込んでゆく。これも必見だ。
10位 Tristram Shandy: A Cock and Bull Story
マイケル・ウィンターボトム監督、スティーヴ・クーガン、ロブ・ブライドン主演
な、な、何と、あの英文学の古典、ロレンス・スターンの『トリストラム・シャンディ』をマイケル・ウィンターボトム監督が映画化した!18世紀に書かれた奇書ともいえる破格の小説をどう映像化したのか?解説によると映画の製作過程を映画にするという方法を採ったようだ。カルロス・サウラが名作「カルメン」で採った方法である。ポストモダン的大はしゃぎ映画。う~ん観たい。
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