嫌われ松子の一生
2006年 東宝 06年5月27日公開
監督、脚本:中島哲也
原作:山田宗樹『嫌われ松子の一生』(幻冬舎)
撮影:阿藤正一
出演:中谷美紀、瑛太、伊勢谷友介、香川照之
市川美日子、黒沢あすか、柄本明
、宮藤官九郎
木村カエラ、柴崎コウ、片平なぎさ、ゴリ
竹山隆範、谷原章介、劇団ひとり、谷中敦
BONNIE PINK、武田真治、荒川良々、土屋アンナ
AI、甲本雅裕、角野卓造、阿井莉沙、山田花子
久々に映画館で観てきた。「嫌われ松子の一生」は現代版『女の一生』である。いや、モーパッサンを持ち出すまでもなく、女の不幸な一生を綴った小説や映画は他にも結構ある。映画を観た後、松本清張の「絵はがきの少女」を思い出した。『憎悪の依頼』(新潮文庫)に収録されている短編で、文学の香りがする忘れがたい傑作である。語り手が子供のころ集めていた古い絵葉書を整理していると、ふと1枚の絵葉書が目に留まる。ある観光地の写真が写っているなんでもない絵葉書だが、たまたまそこに写っていた一人の少女が気になる。この子は今どうしているのだろうか。気になって仕方がない語り手はその写真がとられた場所へ行ってみる。こうしてその女の子の消息を訪ね歩いてゆくという話だ。調べてみると彼女は実に悲惨な人生を歩んだことが分かる。各地を転々とし、その度により悲惨な生活になってゆく。最後は山口県で亡くなっていた。そこまで訪ねて行った語り手は、しかし、そこで絵葉書の少女に出会う。死んだ女性の一人娘だった。なんとも悲惨な話だが、一枚の絵葉書から、そこに写った少女のその後の運命をたどるという発想が見事だった。
英文科を出た人ならジョージ・ムアの『エスター・ウォーターズ』を思い浮かべるかもしれない。19世紀末の長編小説だが、子供を抱えた女性が一人で生きてゆこうとする先には過酷な運命が待ち受けていた。当時の女性がいかに無権利状態に置かれていたかがいやというほど伝わってくる。映画では今村昌平監督の「にっぽん昆虫記」(63年)が女の一生を映画いた映画としては一番強烈ではないか。皮肉な運命に踏まれても、踏まれてもしぶとくたくましく生き延びてゆく虫けらのような女の人生。主人公松本とめを演じた左幸子の存在感が圧倒的だった。彼女はまた内田吐夢監督の「飢餓海峡」(水上勉原作、64年)でも薄幸の女杉戸八重を演じている。日本映画史上屈指の名作、今井正監督「にごりえ」(53年)は樋口一葉原作の「十三夜」、「大つごもり」、「にごりえ」を収めたオムニバスだが、第3話「にごりえ」のお力も哀れだった。貧しい家に生まれ小料理屋の酌婦となったお力は、幸福をつかみかけた矢先に男に無理心中させられてしまう。
これらの作品はいずれも暗い印象が付きまとうが(それは白黒映画であるせいではない)、「嫌われ松子の一生」は一転してミュージカル的要素も取り込んだ極彩色の映画である。「下妻物語」の中島哲也監督作品だから当然一筋縄ではいかない。しかしそれでも共通する要素はある。女の不幸の原因は常に男であるという点である。松子の人生とは男に頼り、男に裏切られた人生だった。作品によっては戦争などが不幸の直接的な原因だったりする場合もあるが、その場合でも例えば夫の戦死という形で女に影響を及ぼす。魯迅は「ノラは家出してからどうなったか」と題した講演で、ノラには実際二つの道しかなかったと論じた。堕落するか、そうでなければ家に帰るかである。「人生にいちばん苦痛なことは、夢から醒めて、行くべき道がないこと」であると。たとえ「人形の家」を出ても当時の女性には経済力がない。女性がつける職業は限られていた。つまり女性が自立するにはそれを支える経済力が必要なのである。だから男に頼らざるを得ない。ジェーン・オースティンの女性登場人物たちが結婚相手探しに血眼になるのはそうしなければ生きられないからである。
その点では松子も同じだった。松子が最も輝いているのは何らかの仕事をしているときだ。たとえそれがトルコ嬢としてであっても。19世紀までや20世紀でも戦前とは違い、20世紀の後半を生きた松子はさすがにそう簡単には社会の最底辺までは落ちない。女性も何とか一人で生きてゆくことができる。それでも彼女が男に頼ったのは愛情に飢えていたからである。彼女の人生はまた愛という幻想に惑わされた人生だったともいえる。だから彼女が不幸になるときは必ず男が絡むのである。最後の男に裏切られたとき彼女は生きる気力を失ってしまう。 無気力に取り付かれた彼女はかつての美貌も容姿も失いぶくぶくに太った中年女に成り下がってしまう。しかし松子は最後の最後にもう一度立ち直ろうとする。それまで散々辛酸をなめてきた彼女は今度は男を求めようとはしなかった。もう一度美容師として働こうと決めたのである。自分のもっとも得意な技術を生かしてまた立ち直ろうと。だが皮肉にもそう思ったとたん殺されてしまう。
彼女の人生の最後は惨めだった。にもかかわらず、悲惨さ一色の印象が残らないのは、言うまでもなくうまくいっていた時期があるからであり、その時期が派手で明るくカラフルに彩られているからである。彼女の人生で一番明るく描かれているのは刑務所に入っているときと美容師やトルコ嬢として働いていたときである。BONNIE PINKやAIの歌にのって楽しそうに歌い踊る。そこにこの映画の新味があるわけだ。才能がある松子は美容師としてもトルコ嬢としてもNO.1に上り詰めてしまう。そのあたりはファンタジックなつくりなのでたとえ殺人を犯してもあまり現実味はない。彼女の運命が変わるための単なる変数に過ぎない。
映画のストーリーは「絵はがきの少女」と同じような枠組みの中で展開するにもかかわらず、映画の中には活力と夢があふれている。不幸と幸福、惨めさと楽しさがないまぜになっている。明るい笑いと涙がともに味わえる、さらにCGを駆使した映像と音楽まで楽し める。グリコ顔負けの一粒で四度おいしい作り(たとえが古いなあ)になっている。この演出法はそれなりに成功している。「メゾン・ド・ヒミコ」で踊る柴崎コウにかなり引き付けられたが(「嫌われ松子の一生」を中谷美紀以外に演じられるのは恐らく彼女だけだろう)、まるで何かのCMかと思うような生きのいいダンスを披露する中谷美紀の魅力はそれ以上だった。
この楽しい映像はただ単に悲惨な話を和らげるためだけに使われているわけではないだろう。もちろんそれもあるが、あのCGを使った現実離れした映像はある意味で松子の夢でもある。実際は刑務所の中なのにそこには悲惨さはまったく描かれていない。むしろ明るく、悲惨さなど笑い飛ばして、いや、「踊り飛ばし」、「歌い飛ばして」いる。あれは松子の夢であり、願望だ。明らかにそうだと分かる演出にしなかったところが成功している。そしてそんな明るい夢を見られるのは松子に生きようとする強い力、したたかなまでの気力があるからだ。同棲していた作家志望の八女川徹也(宮藤官九郎)が太宰治ばりに「生まれてきてすみません」と書き残して自殺したとき、松子は「そのとき私の人生は終わった」と思った。しかし彼女は生きた。映画の最初のあたりで「火曜サスペンス劇場」をもじった片平なぎさ主演のテレビ・ドラマが何度か映される。毎回犯人はがけっぷちに追い込まれ、観念して崖から飛び降りる。松子も何度もそうなりかかりながら驚くほどの粘り腰で「運命」を土俵際で打っちゃってしまう。彼女はがけっぷちに強い女だった。
八女川徹也に始まり、彼のライバル作家だった岡野健夫(劇団ひとり)、雄琴で松子がトルコ嬢として働いていたときのヒモ小野寺(武田真治)、床屋の主人(荒川良々)、松子が教員を辞職する原因を作ったかつての教え子龍洋一(伊勢谷友介)。彼女が選んだ男はことごとくはずれだった。それでも彼女は夢を持ち続けた。最後の男に裏切られるまで。そこにこの映画の明るさを支える要素がある。彼女が見上げる空にはいつも星が輝いていた。そしてあの印象的な「曲げて、伸ばして、お星様をつかもう」という歌が何度も流れる。星空を眺めるシーンはスウェーデンの名作「マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ」を連想させられる。イングマル少年は悲しいことがあると星を見上げ、自分よりもっと惨めな存在を思い浮かべた。あのライカ犬に比べたら自分はまだましだ。そう思って自分を慰めた。松子は星を見て何を思ったのだろうか。どんなに手を伸ばしてもあの星には届かない。決して自分には手が届かない幸福。それでも彼女は手を伸ばすことをやめなかった。「子供たちが空に向かい両手をひろげ、鳥や雲や夢までもつかもうとしている。」久保田早紀の名曲「異邦人」のように、幼い松子も星に向かって手を伸ばしていたのだろうか。
松子は単に男運が悪かったのだろうか。彼女は男に愛されていないと自分の存在を感じられない、あるいは、自分が生きていると実感できない女だったのだろう。僕は上で「彼女の人生はまた愛という幻想に惑わされた人生だったともいえる」と書いた。「例え、行き先が地獄であったとしても龍について行けるなら幸せ」、どんなにひどい仕打ちを受けても「それでも一人でいるよりまし」という彼女の思い込みは幻想だったと思うからだ。「人の価値とは、人に何をどれだけしてもらったかではなく、人のために何をどれだけしたか」だというせりふが出てくるが、松子の愛は龍が最後に到達した「神の愛」とも違う。彼女は確かに人に尽くし人に愛を与えたが、それ以上に彼女は愛を欲していた。
彼女が最後にたどり着いたのは何だったのか。彼女が最後に帰りつく場所、長い天に向かって続く階段の先にあった場所、それは家庭だった。天国への階段はいつの間にか家の階段に変わる。彼女があれほど飢えたように求め続けたものは家族の愛だった。彼女をはじめて「お帰りなさい」と迎えてくれたのは、松子があれほど嫉妬し邪険に扱ってきた妹だった。男の愛ではなく家族の愛だった。だからどの男も彼女の愛に応えられなかったのである。どの男にも満足できなかったのである。「放蕩息子の帰還」の女性版。放蕩娘はやっと帰ってきたのだ。天国にある家庭に。階段の先は光にあふれている。松子が何度も仰いだ星空は実家の階段の上にあった。
この映画のテーマは「家庭」、あるいは「家族」だった。松子の甥笙が電話で父に、松子がいつも荒川を眺めていたのはふるさとの川に似ているからだと伝えたとき、あれほど松子を嫌っていた父(松子の弟)が初めて涙ぐむ。このエピソードもこの映画の主題がどこにあったかを暗示している。松子が妹の久美(市川実日子)にいつも辛くあたるのは父親の愛が病弱な妹にばかり注がれているからである。そう思うとあの変な顔をすると父親が笑うので何度もそれを繰り返し、それがいつの間にか癖になってしまったというのも悲しいエピソードなのである。
松子は最初から「嫌われ松子」だったわけではない。最後に裏切られるまではむしろ輝いているときのほうが多かった。すべてをあきらめ、投げ出してしまって初めて「嫌われ松子」になった。だらしなく太り、悪臭を放つホームレスのような女の死体から始まり、その女にいったいどんな人生があったのかを逆にたどってゆく展開。何がこの女の人生の躓きになったのか。そういう関心からこの映画を観ることも可能だ。「絵はがきの少女」とちょうど逆の展開。それだけに、松子の最初の躓き、学校を追われるエピソードがあまりにもいい加減なのが惜しまれる。ありえない話だ。
この映画はまた、「カーテンコール」や「ALWAYS三丁目の夕日」などに通じる懐かしさも併せ持っている。松子の人生の展開に合わせて、当時の時代風潮が描き出されてゆく。オイルショックでトイレットペーパーを買占めたり、ソープではなくトルコ風呂と呼ばれていたり、光ゲンジが出てきたり。中山千夏の「あなたの心に」、天地真理の「水色の恋」そして和田アキ子の「古い日記」など、劇中に流れる曲も懐かしい。中でも「あなたの心に」は本当に懐かしかった、涙もの。一方いまどきの木村カエラ、BONNIE PINK、AIの曲もよかった。特に何度か流れる「LOVE IS BUBBLE」がいい。豪華配役以上に堪能できた。
もちろんキャストもなかなかのもの。特に香川照之、柄本明、市川美日子、黒沢あすか、そして劇団ひとりは出色。だが何といってもすごいのは主演の中谷美紀。演技力の点では宮沢りえがダントツだが、歌って踊れて演技もできるという点では柴崎コウと双璧。だいぶ監督に泣かされたそうだが、その甲斐あってこれは彼女の代表作になるだろう。「博士の好きな数式」の深津絵里と並ぶ今年の収穫。年末にはいろいろな賞を争うことになるだろう。そうそう、忘れてはいけない。彼女自身が歌っている主題曲「まげてのばして」も実にいい曲だ。映画を観終わった後しばらくは頭からこのメロディが離れなかった。サントラ盤の曲目リストを見ていたら欲しくなった。サントラ盤は滅多に買わないが、これは欲しい。
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カゴメさん TB&コメントありがとうございます。
僕も「ナイロビの蜂」を観て今レビューを書いているところです。「ヒストリー・オブ・バイオレンス」もいい出来なのですか。いずれ観てみましょう。
市川実日子が演じた妹の久美の存在は大きいですね。表面上は派手な踊りや音楽に包まれてにぎやかで明るいのですが、松子の人生には絶えず愛を求める飢餓感と妹への仕打ちに対する悔悟が澱のように沈殿していたのでしょう。そこまで理解する必用があるのだと僕も思います。
投稿: ゴブリン | 2006年12月19日 (火) 18:02
お久しぶりです、ゴブリンさん♪♪♪
ここの所、これや「メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬」や、
「ヒストリー・オブ・バイオレンス」や「ナイロビの蜂」など、
かなり具合の良い作品を立て続けに観て、至福の一時を味わっておりますです。
カゴメもこの映画の本当に美味しい肝は、
死んだ後、松子さんが河を辿って家に帰るシーンあると思うですね。
あの薄幸のままに死んだ妹と松子さんはワンセットの半身同士であります。
どちらも死ぬまで自身の必要とする人とは一緒になれなかった。
いや、どっちかというと妹の方がずっと孤独だったかも知れませんし、
それについては松子さんに過半の責があるですね。
松子さんが死の寸前に生きる事の希望を取り戻した契機も、
眼前に現れた妹の幻影だったし。
あの作品の本当のキーパーソン、無償の愛が具現化された人物は妹の久美。
そこを上手く見出し得れば、とても優れた作品だったと納得出来るです。
投稿: カゴメ | 2006年12月19日 (火) 09:53
はなこさん コメント&TBありがとうございます。
かなり評判がいいので期待して観に行った映画です。最初のあたり、松子が教師をやめさせられるあたりはめちゃくちゃで、これははずれかと思いました。しかしその後はぐいぐい画面に引き込まれましたね。
僕の分析は、一見派手な演出が目立つ映画だけれども、底に流れているのは家族愛の問題だというものです。そしてそこがまた泣かせるポイントなんですね。そういう意味ではオーソドックスなテーマの映画だと思います。
また時々お寄りください。
投稿: ゴブリン | 2006年6月28日 (水) 23:54
ごぶりんさん、TBありがとうございました。
私もTBさせていただきました。
ごぶりんさんのレビューは読み応えがあり、
「なるほど~、こういう解釈もあるのか」と
勉強になりました。
また、うかがわせていただきますね。
投稿: はなこ | 2006年6月27日 (火) 23:22