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2005年10月15日 (土)

ハッピー・フューネラル

2001年 中国・アメリカkouteipanda
【スタッフ】
脚本:フォン・シャオガン、リ・シャオミン、シー・カン
監督:フォン・シャオガン
音楽:サン・パオ
撮影:チャン・リー
【出演】
 グォ・ヨウ、ロザムンド・クワン、ドナルド・サザーランド
   イン・ダ、ポール・マザースキー

 ホウ・シャオシェンの「ミレニアム・マンボ」があまりにもつまらなかったので、口直しに観た映画。ホウ・シャオシェンは「珈琲時光」(2003)でもずいぶん作風が変わったと思ったが、この映画は小津へのオマージュなので、作風の変化はそのせいだろうと思っていた。しかし「ミレニアム・マンボ」(2001)を観るともっと前から作風が変わっていたことが分かる。ほとんど香港映画の作りだ。いつの間にウォン・カーウァイに弟子入りしたんだ?かつての台湾映画の旗手は擬似香港映画の三流監督になってしまった。

 そんなわけで夜中に「ハッピー・フューネラル」を見たのだが、こちらは逆に期待以上に楽しめた。中国の本格的コメディを観たのは「キープ・クール」が最初で、その時は当然中国のコメディの作風や傾向がどんなものか知らなかった。もちろん「ハッピー・フューネラル」を加えてもまだ2本目だから中国のコメディ全体については分からないが、この2本に共通する要素があることに気付いた。難しい理屈も、鋭い風刺や皮肉も、ブラックな笑いもいらない、とにかくとことん笑えればそれでいいという作りだ。この映画のレビューの中にはいろいろなことを読み取ろうとしているものがあるが、恐らくそれは見当違いだ。この映画には何もこめられていない。あるのはただ笑いだけだ。何も考えずただ面白がればいい。中国の大衆が求めているのはどうやらそういう笑いだ。

 両方に共通するのは、まず基本的なアイデアを決め(「ハッピー・フューネラル」の場合はアメリカ人映画監督の「笑える葬式」を企画するということ)、それをとことんありえないところまで突き詰めて行くことから生まれる笑いを創造することである。 

 「ラスト・エンペラー」のリメイクを撮るために、中国の紫禁城へ来ていた監督のタイラー(ドナルド・サザーランド)は、かけられた予算は膨大なものであったが、くだらない企画に飽き飽きしていた。アイデアに詰まり、撮影にもさっぱり身が入らない。撮影の合間に、中国には70歳以上生きた人間にはその大往生を祝って“喜葬”を行うという習慣があるのを、メイキングを撮っている中国人カメラマンのヨーヨー(グォ・ヨウ)から聞いて強い関心を持つ。彼はそれを「笑える葬式」と理解し(この段階で既に誤解がある)、自分が死んだときも葬式は「笑える葬式」にしてほしいとにヨーヨーにもらす。その直後本当にタイラーは倒れ、意識不明に陥ってしまう。 「笑える葬式」がタイラーの遺言と信じたヨーヨーは友人のイベントプロモーターのルイス(イン・ダ)と協力して「笑える葬式」の実現のために奔走する。チャン・イーモウ演出で『トゥーランドット』を上映するとか、人気漫才コンビに「タイラーを笑い飛ばせ」を演じさせるとか、さらには人気歌手のコンサート、アフリカの子どもに生まれ変わったタイラーのCG上映など、次々にとんでもない派手な企画をぶち上げる。他にもチェン・カイコーなど有名人の名前が次々に挙がる。金はないが意表をつくとんでもない企画を考え出す才能にたけたルイス(短髪で髪を金色に染めている)が可笑しい。

 しかしヨーヨーはタイラー監督のアシスタント兼通訳を務める中国系アメリカ人のルーシー(ロザムンド・クワン)から、葬儀の資金が全くないと聞かされ愕然とする。だがすぐ立ち直るのが中国人。ルイスと相談するうちに、資金がないのならこの葬式を世界でTV放映し、その広告費で資金を集めてしまえという究極のアイデアをひねり出す。世界に知られる大監督の「喜葬」を一大エンタテインメントとして大々的に宣伝し、世界中から群がるスポンSD-cl-rom05サー相手に広告枠を競売にかけることにする。これが大成功。広大な紫禁城がたちまち巨大な広告展示場と化してしまう。棺はいつの間にか巨額の広告費を出したイタリアの家具会社の家具に変わり、遺体の換わりの人形(本番では本物の遺体になるのか?)には、それぞれ別々のスポンサーがついている時計、衣服、靴(片方はスニーカー、もう片方は革靴)が付けられ、苦肉の策で口にはティーバッグをくわえ、頭の横にはふけ取りシャンプーが置かれている。もう滅茶苦茶だ。あたり一面スポンサーの名前だらけ、紫禁城が広告で埋めつくされる。車のボディでも何でも、とにかく空いているスペースがあれば全部広告が貼られている。このように、よくまあそこまでというくらい、とことん話を大げさにしてゆくのが中国流コメディだ(少なくとも上記の2作はそうである)。

 ところが、肝心なタイラーが奇跡的に回復してしまう。ルーシーからヨーヨーの奮闘ぶりを聞いたタイラーは、自分が回復したことを黙っているようルーシーに言い聞かせる。どうやら彼には何か考えがあるようだ。しかし、あまりの事態の進展ぶりに、ついにルーシーは真実をヨーヨーに話してしまう(その頃までには二人の間に微妙な感情が芽生えていた)。

 その後急に画面は「数ヵ月後」まで飛んでしまう。ルーシーが悩めるヨーヨーをしきりに慰めている。どうやら葬式はキャンセルになったようだ。どこにいるのかはっきりしなかったが、どうやら精神病院にいるらしい。やがて気持ちの整理がついたヨーヨーはルーシーにキスをする。となるはずだが、なかなかキスをしない。離れたところで二人を見ていたタイラーはしばらくたってから「カット」と叫ぶ。しかしどうやらヨーヨーがキスをやめないらしい、何度も「カット」を繰り返す。そして崩れるようにして倒れてしまう。

 タイラーの考えがどんなものだったかはこれで想像がつくだろう。倒れたタイラーはどうなったのか。それは実際に見てのお楽しみ。とにかくはちゃめちゃで面白い。難しいことは言わずにとにかく楽しめばいい、この手の映画はそうするのが一番。  ヨーヨーを演じたのは「活きる」で主演したグォ・ヨウ。コン・リーを上回る名演で、あのきつい顔が記憶に残っている人は多いだろう。ここではあのきつさはないが、まじめなヨーヨーを生真面目に演じている。ばかげた振る舞いをしたりおどけたりしていないから笑いを誘うのである。おどけ役は相棒のルイスを演じるイン・ダが務めている。終始まじめに演じているからこそ、このでこぼこコンビの取り合わせの妙が生きてくるのである。

 しかし僕が一番魅力を感じたのは紅一点のロザムンド・クワン。初めてみた女優である。白石美帆似で、白石美帆よりも美人だ。すっかりほれ込んでしまった。10代のコギャルや20代の女優にはない魅力。いやあ、参りました。ゴブリン沈没。

 監督のフォン・シャオガンは「ハッピー・フューネラル」が日本初紹介作品となる。中国一の売れっ子監督だそうである。97年の「甲方乙方(未)」が大ヒットして以来、中国を代表するヒットメーカーとなる。98年からは寅さんばりに毎年正月映画作品を送り出しているそうだ。恐らくコメディが持ち味なのだろう。チャン・イーモウやチェン・カイコーなどの陰に隠れてこれまで見えなかったが、フォン・シャオガンを始めとしてもっと中国製コメディの輸入が増えてもいいと思った。

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コメント

 beartomaさん コメントありがとうございます。
 僕も満点をつけるつもりはありません。あのとことんやってしまう感覚はやはり大陸的感覚なんでしょうか。紫禁城を始めやることがでかい。ちまちまして、互いに遠慮しながら生きてきた日本人にはちょっとついてゆけないところがあるのは確かですね。
 中国に行ってみると、とにかく何でもありの世界。こういう途方もない発想もそこから生まれてくるのでしょう。
 「キープ・クール」もご覧になってください。これも相当きついです。

TBありがとうございました。

中国風(?)のユーモア感覚にはついていけないところもありましたが、笑わせようとする執念を感じる映画でした。中国映画のコメディはこれしか見ていませんので、また挑戦してみようと思っています。

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