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2005年10月 2日 (日)

列車に乗った男

night22002、仏・独・英・スイス
監督:パトリス・ルコント
出演:ジャン・ロシュフォール、ジョニー・アリディ
    ジャン・フランソワ・ステヴナン、イザベル・プチ・ジャック
   シャルリー・ネルソン、パスカル・パルマンティエ

   パトリス・ルコント監督作品だが、これまでとはかなり作風が違うので驚く。初老の男マネスキエを演じるジャン・ロシュフォールはおなじみのキャストだが、銀行強盗のミラン役にジョニー・アリディが出演。ルコント監督にあこがれて、出演を直訴したそうだ。この寡黙な男の存在が今までとは違う雰囲気を画面にもたらしている。ルコントの映画といえばやたらと喋り捲る印象がある。マネスキエも最初のうちはよくしゃべっていたが、寡黙なミラン相手に勝手が違うのか、彼までも寡黙になる。ミラン役のジョニー・アリディは、体は以外に貧弱な感じがしたが、顔に凄みがある。ふらりと列車を降りてある町にやってくるのだが、頭痛に悩まされて薬局に入り、そこでマネスキエと出会う。それから奇妙な同居が始まる。

   やがてミランは他の仲間と銀行強盗をたくらんでいることが観客に分かってくる。そのうちマネスキエ気付く。しかし止めるわけでもなく、むしろ手伝わせてほしいと言い出す。このあたりはロシュフォールらしい持ち味だ。最後には一応止めるのだが。マネスキエは元国語の教師で詩が好きだ。週に一度生徒を教えているが、たまたま彼が留守中に来た生徒をミランが指導する場面がある。すぐに終わってしまうのだが、生徒に色々質問をして考えさせようとする。テキストはバルザックの「ウジェニー・グランデ」。ウジェニーは男を待ち続けるのだが、電話のない時代に彼女はどうするか生徒に考えさせようとする。わずかな場面だが、印象的なシーンだ。

 マネスキエは土曜日に心臓のバイパス手術を受ける。同じ日にミランたちは銀行を襲った。なぜか機動隊が待ち伏せていた。誰かが裏切ったのか。結局ミランは撃たれて死ぬ。ほぼ同時刻にマネスキエも手術中に心臓が止まる。しかしその後蘇生する。このあたりがシュールな演出で、何が真実なのかはっきりしない。よく意味の分からない場面も出てくる。ミランが死ぬ間際に見た幻想なのか。観客の解釈に任せるというよくある演出だろうが、終わり方は余韻があって悪くない。

 ルコント監督には珍しく暗くて重たい作品だ。途中少し飽きてくるところもあるが、全体としては悪くない。佳作と言えよう。

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コメント

noritanさん いらっしゃいませ コメントありがとうございます。
 「列車に乗った男」は渋くていい映画です。ぜひご覧になってください。おそらく「ゴブリンのこれがおすすめ 7」からたどってこられたのだと思いますが、多少でもお役に立てたのならうれしい限りです。
 ルコント作品はまだ「列車に乗った男」しか取り上げていませんが、いずれまた他の作品もレビューしていきたいと考えています。
 今後ともよろしくお願いいたします。

ルコント監督作品は3作くらい観ているでしょうか。
今度レンタルか廉価な販売を探して「列車に乗った男」を観てみたいです。
今後共、ゴブリンさんの記事を参考にさせて頂きます。

晴薫さん コメントありがとうございます。

「名人に定跡なし」というご指摘、確かにその通りですね。何本か観ているうちにある程度固定したイメージが出来てしまいますが、優れた表現者であれば次々にそのイメージを破っていきます。

90年代前半頃にルコントの初期作品がまとまってビデオになりましたが、銀行強盗をスタイリッシュに描いた「プロフェッショナル」など、こんな作品も作っていたのかと驚いた覚えがあります。ルコント監督、まだまだ驚かせてくれそうですね。

不思議な余韻が、凡庸を超える出来にしている映画だと思いました。
名人に定跡なし、って感じでしたね、ルコント監督。

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