メアリ・ローズ・ガーデン
イギリス映画に「グリーンフィンガーズ」という作品がある。「グリーンフィンガーズ」とは「庭弄りが好きな人」という意味である。囚人たちがガーデニングを始め、やがて"ハンプトン・コート・パレス・フラワーショウ"にまで出場するという映画だ。いかにもガーデニング王国イギリスらしい映画である。そう いえば、「大脱走」にもイギリス人のガーデニング好きが活かされた場面が出てくる。連合軍の捕虜たちは脱走のためにトンネルを掘るのだが、そこで彼らは頭の痛い問題に直面した。掘り出した土をどう処理するかという難問である。そこで思いついたのが畑作り。イギリス人捕虜がドイツ兵に畑を作らせてくれと頼み込んで了解を得る。その畑に何食わぬ顔をして掘った土をばら撒いてゆくのである。頼みに行ったのがアメリカ人の捕虜だったら逆に怪しまれたかもしれない。イギリス人だったから成り立った話である。
別にこの映画に影響を受けたわけではないが、2001年に本格的に庭を造った。家を建てて3年目だ。それまでは庭というより荒地で、石がごろごろしていてコンクリートの破片や太い鉄線などが地面から顔を出していた。庭を造って以来、散歩のときも他の家の庭をよく眺めるようになった。ああ、あの塀の作りはいいなあ、あのかたちのいい木は何の木だろう、ああいう花の色 の配色は参考になるなどと思いながら眺めるのである。ガーデンデザインの本などを見ると見事な庭の写真が載っているが、素人にはとてもまねが出来ない。せいぜいそこからヒントを得て、自分の庭に応用する程度である。しかしそれが楽しい。
そのうち本格的なガーデンも観たくなる。上田にはこれといったものはないが、佐久にはメアリ・ローズ・ガーデンがあり、茅野市にはバラクラ・イングリッシュ・ガーデンがある。バラクラ(「薔薇のある暮らし」をもじった名前らしい)には行ったことはないが、メアリ・ローズ・ガーデンには一度行ったことがある。その時の日記を引用しておこう。
駐車場から見上げた建物は素晴らしかった。期待が膨らむ。美しい英国風の建物で、そこがガーデンの入り口と書いてある。中に入ると売店のようになっていて、すぐ左にレストランがある。奥に切符売り場があり、その横のドアを通るとガーデンに出た。見事なガーデンだった。自然庭園風ではなく、幾何学的な庭園 だった。丘の斜面に作られているので段々畑のようになって続いている。それぞれを塀で囲い、狭い門のような入り口でつないでいる構造がいい。ローズ・ガーデンとなっているが、薔薇以外にも様々な花が咲いていた。写真でしか見たことがなかったものもたくさんあり、勉強になった。写真では実際の大きさが分からないからだ。花の配置の仕方、芝生と花壇の配置もよくできていた。芝生が随分短く刈ってあって、こんなに短くするものかと驚く。家の芝生は長すぎる。と言うより、ほとんど手入れしていないから伸び放題である。確かにこのくらい短いと歩きやすい。しかし手入れが大変だろう。
ガーデン全体が段々状になっているのですぐには全貌がつかめないのもいい。あちこち歩き回りながら、まだこの先にもあるのかと楽しみが長く続く。ちょっと奥の方にシークレット・ガーデンと名がついている一角もあった。ブランコがあったので乗ってみた。ブランコに乗るのは久しぶりだ。こういう隠れ家の様なスペースは前から欲しかった。ちょっとしたこの遊び心がいい。庭が広ければシークレット・ガーデンを作って見たいものだ。ガゼボのある一角も素晴らしい。同じものがほしいと思ったほどだ。うちじゃ置くとこもないが。
一通り回った後、塔に登ってみた。結構面白い作りで、両脇に螺旋状の階段がつき、その間に小ぶりな部屋が二部屋続きで配置してあるという作りだ。屋上からは回りが見渡せ、眺めはいい。下を見下ろすと、庭園の全貌が見て取れる。意外に小さいスペースだった。中にいるとかなり広い気がするが、実際にはたいしたスペースではない。その狭い空間を、いくつものパートに区切って、それぞれ違った個性を持たせ、びっしりと花が植えてあるために狭さを感じないのだ。見事な工夫である。
塔から降りて、レストランの横のテントを張ったテラスでコーヒーを飲む。コーヒーはサービスだ。楽しいひと時だった。
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