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2005年9月28日 (水)

茶の味

2003年reath1
監督、脚本:石井克人
出演:坂野真弥、佐藤貴広、浅野忠信、手塚理美
    三浦友和、我修院達也、土屋アンナ、中嶋朋子

 一風変わった映画だがなかなかいい映画だ。どこが変わっているのか。まず、シュールな映像がふんだんに出てくる。男の子(佐藤貴広)の額から列車が出てきて、空を飛んでゆく。男の子の頭には穴が開き向こうが見通せる。その妹の幸子(坂野真弥)には時々巨大な自分が見える。庭や教室やグランドに突然巨大な女の子が出現する。おじいちゃん(我修院達也)はどう見ても老人には見えないし、その行動も奇怪だ。幸子のおじさん(浅野忠信)が子どもの頃、卵の上に野糞をしたと思ったら、それは卵ではなくしゃれこうべだった。その後刺青をした血だらけの男が野糞をした男の子に付きまとう。また別の男が土の中から出てくる。色々なエピソードが唐突に挟まれ、ストーリーも素直につながっていない。

 しかしそれでも支離滅裂にならないのはどこかつながりがあるからである。列車が額から出てきた男の子は丁度好きだった女の子が列車に乗って転校していくのを見送っていた。列車が頭から出てくるのはいかにもシュールな映像だが、去ってゆく女の子を思う男の子の気持ちをとっぴな形で描いただけだ。なぜ巨大な女の子が出てくるのかはよく分からないが、いずれにしても女の子のもう一つの意識だろうと想像できる。血まみれの男は頭蓋骨に糞をしてしまった男のこの罪の意識の表れだろう。土から出てきた男はよく分からないが、罪の意識が消えたとき血まみれの男が消えたので、その男が生き返ったのかもしれない。しかし訳が分からなくてもこれだけシュールな映像があふれていれば、これぐらいのことは大して違和感を感じない。

 突然関係ないと思える映像が出てくるのは、この映画が特定の人物に焦点を絞っているのではなく、家族一人一人をほぼ等分に描いていることから来るものでもある。同じ家族でも家にいるとき以外はそれぞれ学校に行ったり職場に行ったり別々にすごしている。それを等分に描こうとすれば、ばらばらのエピソードの積み重ねにならざるを得ない。女の子を演じた坂野真弥がキャストの一番最初に名前が出てくるのがそれを象徴している。他にもビッグネームが何人もいるのに、必ずしも一番多く出演していたわけではない坂野真弥の名前が先頭にあるのだ。佐藤貴広の名前が2番目に出てくるのも同じ考えに基づいている。奇怪な行動をとるおじいちゃんも、最後に家族みんなの絵をかいていたことが死後に分かり、残された家族や観客をほろりとさせる。と、こんな風に説明してしまうのも野暮だ。要するに、観ながらどこか辻褄が合っていると思えるからシュールな映像や展開が頻繁に出てきても違和感を覚えないのである。奇抜な映像を好む監督は得てして人生や社会をひねてみていることが多いが、この監督が人間を見る目は温かい。おじいちゃんが残した絵や家族みんなが一斉に(それぞれ別の場所で)同じ夕焼けを眺めるラストシーンにそれが現れている。

 父親(三浦友和)と母親(手塚理美)はまともに描かれている。一時的に厄介になっている伯父さんの浅野忠信もまともだ。彼が突然昔振られた中嶋朋子と出会い、言葉を交わすシーンは実にリアルだ。互いにばつが悪そうに、そわそわしながら話す。話はまったく弾まない。言葉を交わしたいが、どこか気まずくて言葉が出てこない、そんな空気が場面にあふれていて、見ているこちらまでそわそわしてしまう。「下妻物語」に先立って出演していた土屋アンナも魅力的だ。佐藤貴広が一目ぼれしてしまうのも無理はない。

 監督は石井克人。他の作品も観てみたくなった。ここ数年の日本映画は見逃しているのが多いが、少し意識してみてみる必要があると考え直した。日本映画はかなり上向きになってきているという印象は間違っていなかった。韓国映画や中国映画の活躍が日本映画人に刺激を与えているのかもしれない。                              

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» 茶の味 [なめらか杏仁]
も〜良かった!ほんと、よかったっす。面白かったっ! 前からみたいなって思ってたんだけど、こんな映画とは知らなんだ!(いつもストーリー読まずにパッケージだけで借りるので・・・お金いらないし。。)単なるほのぼの映画かなって思ってたら、結構笑えてはちゃめちゃ映画....... [続きを読む]

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