涙女
2002年 中国・韓国・カナダ・フランス
監督:リュウ・ビンジェン
出演:リャオ・チン、ウェイ・シンクン、リ・ロンジュン
ウェン・ジン、チョウ・イフイ
いい映画だと知り合いから聞かされていたので期待して観た。確かに傑作だった。「ションヤンの酒家」のヒロインとはまた違った意味でたくましいヒロインだ。ヒロインのグイはマージャンに明け暮れているぐうたらな夫と北京で暮らしている。あるときその夫がマージャンをやっている時に、金を払えず、相手がその時はお前の女房と寝させてもらうと言ったので、かっとして相手を殴ってしまう。夫は傷害罪で監獄に入れられグイは故郷に強制送還され、殴られた男から治療費9000元を請求される。金のないグイは思わず嘘泣きをするが、それを見ていた元恋人がそんなに泣くのがうまいなら泣き女になれば金が稼げるとアドバイスする。元劇団員でもあったグイはたちまち人気泣き女になる。
やくざの親分の葬儀の直前に、グイは夫が脱走して抵抗の挙句死んだと警察に告げられる。あんな夫はいなくなった方がいいと言って家を飛び出したグイだが、葬儀の場で夫を思い出して真の涙を流す。葬儀に参加していた客たちが次々にグイにご祝儀を手渡してゆく。
中国の泣き女がイタリアのように喪服を着て大声で泣くのではなく、くるくると歌い踊る習慣なのには驚いた。歌によって料金を変え、入り口に料金表が貼ってあるのが可笑しい。中にはフォーク調の歌もある。色々な風習があるものだ。それにしてもグイのたくましさはどうだ。話し方、歩き方、身のこなし。どれをとっても蓮っ葉な女だが、夫が刑務所に入ると妻のある元恋人と堂々と浮気し、その妻に淫売だと怒鳴られても負けずに怒鳴り返す。客に涙を流していなかったと料金を値切られたときには、相手の女房をひっぱたいたりする。周りから白い目で見られているが一向に気にしない。そこにいやらしさではなくたくましさを感じる。
泣き女になる前はDVDを非合法に売っていた。ポルノ作品は服の中に隠している。しかし警察に見つかって品物を取り上げられてしまう。同情を引くためか商売の時には他人の子供を借りてつれてゆくのだが、警察に捕まった後子供を返しに行くと親が夜逃げしていた。女の子だからいらなかったのだろう、子供は置きっぱなしだ。しかたなくグイはその女の子を自分で世話をする。後で人に預けるが、放っておかない所は人間味がある。ところがその子は何を差し出しても飲まないし食べようとしない。これがまたおかしい。グイは散々怒鳴り散らすがたたいたりはしない。夫のために最後に流した涙も本物だ。破格だがなんとも魅力的なヒロインである(余談だが、ヒロインは松田聖子そっくりだ)。また一つ優れた女性映画が生まれた。
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