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2005年9月 2日 (金)

本日休診

31su1952年
監督:渋谷実
出演:柳永二郎、三國連太郎、岸恵子、淡島千景、鶴田浩二
長岡輝子、佐田啓二

 見るのは二度目だ。三國連太郎の切れた演技が一番記憶に残っていた。題名通り病院が舞台。医者と患者の間で展開される人情喜劇である。

 八春先生の病院は、せっかくの休日にも次々に患者が押しかけて来ててんやわんやである。戦争後遺症で時々発作を起こしては大声で騒ぎ出す青年(三國連太郎)、小指を詰めるので麻酔をかけてくれと迫るやくざ(鶴田浩二)とその愛人(淡島千景)、男に暴行され警官(十朱久雄)に連れてこられた若い女(角梨枝子)、難産で苦しむ妊婦。昼と夜とを問わず次々と玄関のベルがなり、電話が鳴る。散々振り回されながらも、患者のために先生は奔走する。

 金に困るものには支払いは後でいいと笑って話す。医は仁術を地で行く、医者の鏡のような先生だ。それでも説教臭くならないのは、戦後の混乱した世相を背景に(リヤカーが盗まれるといったエピソードが出てくる)コメディタッチで描いたからだ。ばくち打ちや泥棒が登場するが、根っからの悪党はいない。病院が舞台ではあるが、「警察日記」と同じ人情コメディだ。日本映画黄金期の傑作の一つ。

 主演の柳永二郎が豪放でかつ磊落な味わいのある演技をしている。並み居るスター達を向こうに回して、群を抜く存在感だ。主役として映画の土台をがっちり引き締めている。「朴さん」で主演した韓国のキム・スンホを思い出した。昔はこういう役者がたくさんいた。ドラマの中心に地味だが存在感のある役者をどっしりと据え、その周りにスターを配するという見事なキャスティングだ。三國連太郎はまだ若いが、戦争で精神を病んだ青年をオーバーになりすぎずに演じている。それに比べると佐田啓二はまだまだ青二才で、台詞回しの下手なこと!鶴田浩二も後年の落ち着いた味わいはまだない。忘れてならないのは望月優子や田村秋子、あるいは中村伸郎や十朱久雄といった名脇役だ。地味な存在ながら作品をしっかりと脇で支えている。こういう俳優が今はほとんどいなくなってしまった。スターばかりでは人間ドラマは成り立たないのだが。

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