永遠のマリア・カラス
2002年 伊・仏・英・ルーマニア・スペイン
監督:フランコ・ゼフィレッリ
出演:ファニーアルダン、ジェレミー・アイアンズ
ジョーン・プローライト、ガブリエル・ガルコ
ジェイ・ローダン
この映画の成功は大部分マリア役を演じたファニー・アルダンに負っていると言ってよい。ゼフィレッリ監督もマリア・カラスにそっくりだと激賞している。もっとも監督はそっくりさんを描くことではなく、彼女の魂を描くことに狙いがあると言っているが。その狙い通りの映画が出来たということだろう。往年の美声を失い失意のまま引退生活を送っていたにしては美しすぎるが、そこまでリアリズムを突き詰めることはないだろう。プロモーター役のジェレミー・アイアンズもさっそうとして格好いい。
かつて栄光を極めた歌手の誇り、絶頂期の自分を取り戻したいという欲望、まだやれるという執念、そして人生の最後に偽りの自分をさらしたくないという芸術家としての、そして人間としての誇り。これらの間でゆれる人間的葛藤を見事に描き出している。そしてその苦悩の末に、自らも傑作と認める映画を破棄することを決断する。
フィクションではあるが人間としてのマリア・カラスを描こうとしている。その苦悩を十分描き切ったとは言えないかも知れない。だから、それまで満足していた映画を彼女が突然拒否するのが唐突に感じられるのである。それでもやはりすぐれた映画だと言える。絶頂期のマリア・カラスと自信をなくし失意に沈む彼女を同時に描くことに成功しているからである。この映画が「シカゴ」に勝っている理由はこの点にあるといえる。パゾリーニの「王女メディア」で本物のマリア・カラスを見てはいるものの、彼女には何の思い入れもない。全編に流れる彼女の歌はさすがに素晴らしいが、他の名歌手よりどう優れているのか分からない。それでもこの映画に共感させられたのは、やはりこの映画に力があるからだ。
「ロミオとジュリエット」で世界中の女性の涙を絞ったフランコ・ゼフィレッリ監督も(1923年生まれだから)この作品を撮った時は79歳!99年の「ムッソリーニとお茶を」も傑作だった。最晩年に傑作を2本も生み出している。マノエル・ド・オリヴェイラもびっくり!?驚くべきじいさんだ。
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