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2005年8月28日 (日)

韓国映画の流れ

 2004年5月4日付けの朝日新聞に「韓国産映像アジアを覆う」という記事が載っていた。「冬のソナタ」の大ヒットをきっかけに韓国ドラマは日本でも大人気だが、その人気は日本だけにとどまらず中国、台湾、東南アジア各国などアジア全域に広がっているという。記事はテレビドラマ中心だが、映画も広くアジアに浸透しているようだ。韓国の映像文化が勢いを得ている背景には、韓国政府の積極的な映像文化振興政策がある。97年のアジア金融危機をきっかけに韓国政府は文化産業へのてこ入れを強めてきた。98年から2003年の間に韓国映画の輸出額は実に11倍に伸びている。これは驚異的な数字だ。

1980年 新しい出発
 しかし政府の支援策だけではこれだけの急成長を説明できない。実は韓国映画の水準はもともと高かったのだ。2000年の末に、「長雨」、「森浦への道」、「帰らざる海兵」、「朴さん」、「誤発弾」、「ノダジ」、「荷馬車」、「ハンネの昇天」など、60、70年代の作品8本が一気にビデオ化された。「ノダジ」は今ひとつだったが、それ以外はすべて傑作である。1950年代末から60年代半ばにかけての第二期黄金時代以後、韓国映画は軍事政権の下で長い停滞期が続いていた。その停滞期とされる時期にこれほどの水準の作品を作っていたとは、ただただ驚嘆するばかりだ。1980年以降ようやく韓国映画は停滞から脱した。イ・チャンホ、ペ・チャンホ、イム・グォンテクの三大巨匠が次々と傑作を放ち始めた。これらの作品を日本はずっと無視してきたのだ。
 そのあたりを自分の体験を交えて振り返ってみたい。僕が韓国映画を意識し始めたのは80年代末ごろだ。もっとも、当時は「鯨とり コレサニヤン」、「達磨はなぜ東へ行ったのか」、「旅人は休まない」といった、かわった題名の映画が入ってきたなという程度の認識だった。80年代末から90年代初めごろビデオ屋にあった韓国映画はほとんどがエロチックな映画で、僕が最初に見た韓国映画も「桑の葉」だった(^-^;。同年に「シバジ」、「旅人は休まない」、「ディープ・ブルー・ナイト」も見てはいるが、その後数年は空白。東京映画祭でグランプリを取った「ホワイト・バッジ」と米兵に体を売りながらもしぶとく生き抜いてゆく一人の母親を描いた「銀馬将軍は来なかった」という力作2本が93年に公開されたが、当時はまだ関心は持たなかった。
 そこへ突然94年に登場したのが「風の丘を越えて」という傑作である。多くの人が韓国映画の最高傑作と称えるこの作品の登場は、韓国映画に対する僕の認識を一夜にして変えてしまった。だがその後またしばらく空白の時期が続いた。96年公開の元従軍慰安婦を取り上げたドキュメンタリー「ナヌムの家」、97年公開の社会風刺映画「われらの歪んだ英雄」、99年公開の傑作ラブ・ストーリー「八月のクリスマス」等が注目された程度だ。

「シュリ」から始まった韓国映画ブーム
 何といっても日本で韓国映画ブームの原点になったのは、2000年に公開された「シュリ」の大ヒットである。さらに「シュリ」より作品的に高く評価されたのは、同年公開の「ペパーミント・キャンディ」だ。韓国映画得意のラブ・ロマンスの佳作「美術館の隣の動物園」も同じ年に公開されている。
 その後はまるで堰を切ったように韓国映画が流れ込んできた。翌年の「JSA」、「イルマーレ」、「リメンバー・ミー」、「リベラ・メ」、「魚と寝る女」、「反則王」、「ユリョン」、2002年の「ラスト・プレゼント」、「友へ・チング」、「春の日は過ぎ行く」、そして2003年には「おばあちゃんの家」、「二重スパイ」、「猟奇的な彼女」、「吠える犬は噛まない」と傑作、話題作が目白押し。2004年に入っても「殺人の追憶」、本国での観客動員数の記録を塗り替えた大作「ブラザーフッド」と「シルミド」が相次いで公開され着実にファンを増やした。他にも「MUSA」、「オールド・ボーイ」、「SSU」(日本の「海猿」はほとんどこのまね)、「春夏秋冬、そして春」、「永遠の片想い」、「子猫をお願い」と傑作・話題作が続々と公開された。「大統領の理髪師」と「オアシス」は未見だが、傑作に違いない。「風の丘を越えて」のイム・グォンテク監督の主要な作品も次々に公開された。
 ただその反面、「冬ソナ」ブームのあおりで大量にラブ・ロマンスものが入り込み、質的に大したことがない作品までレンタル店の棚にあふれている状況が出現した。ほとんど迷惑だ。また「カル」、「H」などのサスペンス・ホラー、「4人の食卓」「箪笥」などのホラーも大量に輸入されたが、どれも大したことはない。サスペンス・ホラーはアメリカにかなわないし、ホラーなら日本のほうが上だ。
 独自の映画文化を築き上げてきた中国映画に対し、韓国映画は、ラブ・ロマンスに独自の境地を切り開いてはいるが、全体としてアメリカ映画路線に近づいている。韓国映画は今後どのような方向に向かうのか。韓国映画の方向を決定するのは韓国社会の発展方向だろう。当分韓国と韓国映画から目が離せない。  

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