カレンダー・ガールズ
2003年 イギリス映画
監督:ナイジェル・コール
出演:ヘレン・ミレン、ジュリー・ウォルターズ、ペネロープ・ウィルトン
アネット・クロスビー、シーリア・イムリー、リンダ・バセット
シアラン・ハインズ、ジョン・アンダートン
フィリップ・フレニスター
このところイギリス映画は元気がなかったが、これは久々の快作である。「ブラス!」や「フル・モンティ」のスカッと突き抜けた明るさが戻ってきた。婦人会のつまらない催しに飽き飽きしていた一部の会員たちが、毎年作っている会のカレンダーに自分たちのヌードを使おうと奮闘する話だ。皆中年以上の女性ばかり。ありえないような話だが、これは実話に基づいている。男達からは特に強い反対はなく、むしろ婦人会の幹部の抵抗が一番の障害だった。しかし全体はコメディタッチであれよあれよという間に話が実現し、しかも大成功を収めてしまう。「グリーン・フィンガーズ」や「リトル・ダンサー」のノリだ。
そもそものきっかけがアニー(ジュリー・ウォルターズ)の夫ジョンが白血病で亡くなったことだが、彼が入院していた病院の硬いソファの代わりに新しいソファを寄付しようという趣旨から始まった企画だ。そのあたりも素朴でいい。ヌード・カレンダーはイギリスで成功し、それがアメリカまで飛び火する。ついにはVIP待遇でハリウッドに招かれる。石鹸会社のスポンサーがついたからだ。しかしそこでまたヌードにさせられる羽目になる。中心になってみんなを引っ張ってきたクリス(ヘレン・ミレン)は家庭問題をかかえていてハリウッドに来れなかった。しかし夫が新聞記者にだまされて暴露記事を書かれたのをきっかけに、後からハリウッドに追いかけて行く。クリスはアニーの親友だったが、アニーは夫と息子を新聞記者の餌食にしたままハリウッドに逃げてきたのかとクリスを非難する。このあたりに破綻の予感がやや漂う。しかしイギリスに帰ってみると夫が優しくクリスを迎えてくれた。クリスはまたアニーと仲直りする。
ヨークシャーが舞台だが、その絵の様な美しさが際立っている。これほどイギリスの風土の美しさを写し取ったイギリス映画は今までなかったのではないか。またヌード・カレンダーもなかなかの出来だ。芸術的で、いやらしさは微塵もない。アニーの亡くなった夫ジョンが妻に残した言葉が作品の基調になっている。婦人会の会合で朗読されるその詩は感動的だ。ひまわりを謳った詩だが、「盛りを過ぎても見事に咲き誇る」という言葉が女性たちに重なってくる。
ヨークシャーの花は女性に似ている
成長ごとに美しさを増し
盛りを過ぎても見事に咲き誇る
あっと言う間に枯れていくが
戸惑いながらも写真に写った彼女たちは美しく輝いている。その前向きの志向は「フル・モンティ」に通じるが、年配の人たち(と言ったら失礼だが)が元気にがんばるという点では「コクーン」にも通じる。年を取ると家に引っ込んでしまう日本では考えられない話だ。それだけに強い共感を覚える映画だ。しばらく不振が続いていたイギリス映画界だが、この映画で勢いを盛り返してほしい。
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