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2005年8月30日 (火)

ションヤンの酒家

gurasu2002年 中国映画
監督:フォ・ジェンチイ
出演:タオ・ホン、タオ・ザール、パン・ユエミン、チャン・シーホン

 監督は「山の郵便配達」のフォ・ジェンチイ。期待にそぐわぬ傑作だった。何といってもこの映画の魅力を支えているのは主演のタオ・ホンだ。なかなかの美人で、しなを作るしぐさが堂に入っている。足が太いのが玉に瑕だが。大都会重慶で酒と鴨の首を売る屋台を出している。やり手でもあるし彼女自身の魅力も売り物にして店は繁盛している。夜の屋台村の猥雑な感じが実にうまくとらえられている。しかし家族の問題が何重にも彼女を苦しめている。わがままな女房に頭が上がらない兄。女房が株の講習会に行くというので無理やりションヤンに息子を預けてしまう。弟はミュージシャンになる夢が破れて麻薬におぼれ、今は矯正施設に入れられている。家は他人に取られている。しかしションヤンはそれらから逃げずに何とか解決の方法を見出そうと前向きに努力する。時には強引な手も使う。家の権利を取り戻すために役人に取り入り、その精神を病んだ息子と店の手伝いの女の子(麻薬中毒の弟に思いを寄せいていたのを無理やりあきらめさせて)を結婚させてしまう。

 そんな彼女の店に毎日のように通い詰め、酒を飲みながらじっと彼女の顔を見つめる初老の男がいる。いつしか話をするようになり、彼女を家まで送ったりする仲になる。人がよさそうな男だ。ションヤンも少しずつ彼に気持ちが傾いてゆく。ついに男は彼女を口説くが、ションヤンは以前学生と結婚して離婚するという経験があり、男の申し出を断る。ある雨の日ついに彼女は彼に体を任せた。しかしションヤンがベッドの中で結婚に話を向けると、男は今のままでいいと答える。結局男は自分を愛人にしたかっただけだと悟り、男の車を降りて雨の中を歩み去る。

 屋台を出している地域が再開発されることになり屋台村も立ち退きを迫られている。何とその開発を手がけているのは彼女を口説いた男の会社だった。つかみかけた幸せも消え去ってしまった。すっかり屋台の数も減り賑わいもうせた通りでいつもと同じ様に店を出している彼女に、若い男が彼女の絵を描かせてくれと声をかける。彼女はOKした。いつもの屋台に座る彼女とその顔を描く男を映して幕。最後の場面は幸福を暗示しているのだろうか。 「山の郵便配達」には劣るがいい作品である。何があってもめげないションヤンの姿勢がいい。

  作品を観終わった後、付録映像を観た。ションヤンを演じたタオ・ホンのインタビューを観て仰天した。素顔はションヤンとはまったく違う。何も知らずに見たら別人だと思うだろう。髪形が違うのだが、それだけではない。目つきが違うのだ。コケティッシュなところや小悪魔的なところは微塵も感じさせない。それがまったく違うタイプのションヤンになりきってしまうとは大変な役者だ。役作りにはかなり努力したというが、顔つきがまったく変わってしまうのはすごい。

 もう一つ実に珍妙で面白かったのは重慶やその周辺の観光名所を紹介している案内ビデオだ。日本人向けに中国で作ったものだろう。日本語がよく出来る中国人がナレーションの原稿を作り、それを日本語がよく話せる中国人女性が読んでいるのだが、日本語の表現がところどころ不自然である上にナレーターの発音もやや中国語なまりがあるので、何とも珍妙な感じになっている。せりふは十分理解できるし発音も十分聞き取れるのだが、どこかおかしい。美しい中国の映像にこのナレーションがかぶさると何とも不思議で珍妙な味わいになる。その意味で面白い。みんなに紹介したい気持ちになる。そうか、その意味ではこのビデオの目的は達成されていると言えるのかも。

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