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2011年2月6日 - 2011年2月12日

2011年2月 6日 (日)

オーケストラ!

2009年 フランス 2010年4月公開
原題:LE CONCERT
評価:★★★★☆
監督:ラデュ・ミヘイレアニュ
製作:アラン・アタル
原案:エクトル・カベロ・レイエス、ティエリー・デグランディ
脚本:ラデュ・ミヘイレアニュ、アラン=ミシェル・ブラン、マシュー・ロビンス
撮影:ローラン・ダイヤン
音楽:アルマン・アマール
出演:アレクセイ・グシュコフ、メラニー・ロラン、フランソワ・ベルレアン
   ミュウ=ミュウ、ドミトリー・ナザロフ、ヴァレリー・バリノフ
   アンナ・カメンコヴァ、リオネル・アベランスキ、アレクサンドル・コミサロフ
   ラムジー・ベディア

  協奏曲を表す英語concertoは同じつづりのイタリア語からきているが、さらに遡ってその語源はラテン語のconcert(「結びつく」とか「参加する」とか「編み上げる」という意味)から来ているようだ。「オーケストラ!」のフランス語の原題は「コンサート」である。協奏曲(コンチェルト)とコンサートはつづりが似ていることからも想像できるように、恐らく共通の語源を持っているのだ。実際英語のコンサートには調和や協定という意味もある。つまり協奏曲もコンサートも共にハーモニーに通じる。差別を乗り越えた時、真の連帯感が生まれ、そこからハーモニーが生まれ、すぐれた協奏曲の演奏に結実する。この映画はそういうことを描いているのである。concert=concerto=harmony=solidarityという図式になっている。

 監督は「約束の旅路」のラデュ・ミヘイレアニュ。「約束の旅路」は2007年公開映画マイ・ベスト10の6位に入れた堂々たる傑作である。「オーケストラ!」は「約束の旅路」にはさすがに及ばないが、実に痛快な映画だった。

  「約束の旅路」は親子の絆を描いた作品だが、差別されてきた民ユダヤ人の国イスラエルの中にも差別があることをリアルに描いた作品でもあった。しかし「オーケストラ!」はソ連におけるユダヤ人差別を作品の根底に据えながらも、話の展開はほとんどファンタジー並で、大胆なほどリアリティを無視している。コンサートの招聘に応じてやって来たのは偽の楽団だった。実際にあったことを元にしているとはいえ、このありえないような話をリアルに展開してゆけば前半の展開が説明調になると危惧したのかもしれない。また、ソリストに若手スターであるアンヌ=マリー・ジャケ(メラニー・ロラン)を指名することが作品の根幹部分と繋がっているのだが、リアルな展開のままでその要望がすんなり実現するあたりの経緯を無理なく説明するのも難しいだろう。

  前半から中盤にかけてコミカルにかつ軽快なテンポで展開することを選んだ背後には、そのような判断があったのかもしれない。同時に巧妙に伏線を敷いておき、終盤のコンサート場面で一気に観客を引き込んでゆくという展開にしたのだ。リハーサルなしでいきなり本番、長年のブランクで演奏もままならない団員達が、アンヌ=マリー・ジャケの演奏にある音色を聞き分けた途端に突然演奏が引き締まり、見るみる熱が入りめくるめくハーモニーの渦の中に突入してゆく。こんなあり得ない展開であるにもかかわらず、観客が思わず引き込まれてしまうのは、前半からのコミカルな演出が基調にあり、また巧妙な伏線に観客がうまく乗せられてしまうからである。チャイコフスキーのヴァイオリン交響曲の調べにのって観客の心も一気に飛翔してしまう。そのあたりの小気味よい展開は心憎いばかりだ。

 もちろん演奏も素晴らしいのだが、それ以上にその演奏の盛り上がりを根底で支えている人間的連帯感に観客が共感してしまうからだということを忘れるべきではない。ソリストのアンヌ=マリー・ジャケの演奏は、かつて指揮者アンドレイ(アレクセイ・グシュコフ)の楽団の一員でありながら、ユダヤ人であるゆえに楽団から排斥されシベリア収容所に送られたレアというヴァイオリニストが残した楽譜に基づくものだった。彼女をかばったため、楽団自体も解散させられたのである。演奏が進むうちにアンヌ=マリー・ジャケにレアの魂が乗り移ってゆく。そこに連帯感が生まれ、究極のハーモニーが生まれる。同時に団員たち失われた人間性を取り戻してゆくのだ。

 久々に終結した団員たちはそれぞれに個性豊かな人たちだった。ジプシー音楽を奏でるものがいたりして、その音楽性も様々だ。それが「レアのために戻れ!」の一言で再び「結びつき」、共通の舞台に「参加し」、様々な個性と音楽性を束ねて協奏曲を「編み上げる」。われわれが感動するのは一旦ばらばらになった人々が人間的絆を取り戻してゆくその過程なのである。「オーケストラは一つの社会なのだ」というアンドレイのことば、そして「私が撮りたいのは美しいコンサートではなく、人間のつながりを描くことなのだ」という監督の言葉は、そういう文脈の中で解釈すべきなのだ。

 しかしコミカルな演出でとんとん拍子に事が運んでゆくが、そのようにことを推し進めて行くアンドレイやサシャ・グロスマン(ドミトリー・ナザロフ)、さらには元ボリショイ劇場の支配人でアンドレイたちを追放したイワン(ヴァレリー・バリノフ)たちのバイタリティを見過ごしてはならない。この落ちぶれてよれよれの服を着た冴えないロシアのおっさんたちたちが、洗練された服をパリッと着こなしたパリの興行師たちを手玉にとっていいように引きまわすという展開がまた痛快なのだ。ラデュ・ミヘイレアニュという監督はなかなか懐が深い。展開にやや無理がある分物足りない面もあるが、この人の次の監督作品を早く観たいと思わせるだけの力量は十分発揮している。

■音楽映画マイ・ベスト20(2000年以降)
「オーケストラ!」(09、ラデュ・ミヘイレアニュ監督、仏)
「ヤング@ハート」(07、スティーヴン・ウォーカー監督、英)
「エディット・ピアフ 愛の讃歌」(07、オリヴィエ・ダアン監督、英・仏・チェコ)
「僕のピアノコンチェルト」(07、フレディ・M・ムーラー監督、スイス)
「ONCE ダブリンの街角で」(06、ジョン・カーニー監督、アイルランド)
「今宵、フィッツジェラルド劇場で」(06、ロバート・アルトマン監督、米)
「ドリームガールズ」(06、ビル・コンドン監督、米)
「ジプシー・キャラバン」(06、ジャスミン・デラル監督、米)
「ノー・ディレクション・ホーム」(05、マーティン・スコセッシ監督、米)
「風の前奏曲」(04、イッティスーントーン・ウィチャイラック監督、タイ)
「Ray/レイ」(04、テイラー・ハックフォード監督、アメリカ)
「ビヨンドtheシー」(04、ケビン・スペイシー監督、米・英・独)
「スウィング・ガールズ」(04、矢口史靖監督、日本)
「コーラス」(04、クリストフ・バラティエ監督、仏・独・スイス)
「この世の外へ クラブ進駐軍」(03、阪本順治監督、日本)
「アマンドラ!希望の歌」(02、リー・ハーシュ監督、南アフリカ、アメリカ)
「北京ヴァイオリン」(02、チェン・カイコー監督、中国)
「僕のスウィング」(02、トニー・ガトリフ監督、フランス・日本)
「SUPER8」(01、エミール・クストリッツァ監督、イタリア・ドイツ)
「歌え!フィッシャーマン」(01、クヌート・エーリク・イエンセン監督、ノルウェー)
次点「リンダ リンダ リンダ」(05、山下敦弘監督、日本)

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