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2009年5月 2日 (土)

変貌著しい世界の映画

080518_59  ケンブリッジ大学現代社会国際研究所編『ヴィジュアル・データ百科《現代の世界》』(原書房)に、2006年現在の世界の映画製作本数比較が載っている。そのリストの1位に挙げられている国の名前と製作本数を見たら、まず映画通を自認する人でもほとんどが仰天するだろう。ほんの数年前まではインドがダントツで1位だった。ところがそのインドを抜き、年間2000本も映画を製作している国が出現したのである。何と1位はナイジェリアである。映画製作国としてこれまでまったくと言ってよいほど無名だった国だ。しかも年間2000本という数はインドのほぼ2倍である。そう考えるといかに途方もない数か分かるだろう。ちなみに、映画製作本数ベストテンは次の通り。

ナイジェリア 2000本
インド     1041本
アメリカ    699本
日本      417本
中国      330本
フランス    203本
ドイツ      174本
スペイン    150本
イタリア    117本
韓国      108本

 以下、カナダ80本、イギリス78本、アルゼンチン74本、ブラジル70本などと続く。ナイジェリアが急激に映画製作本数を伸ばしているのはオイル・マネーのおかげらしい。もちろん製作本数の多さは作品の質と比例しているとは限らない。それはともかく、一体どんな作品を作っているのか。それを知る手がかりとなる記事が昨年朝日新聞に載った(08年10月15日付「等身大『ノリウッド』映画」という記事)。インドのボリウッドは今や有名になったが、今度は「ノリウッド」(言うまでもなく、ハリウッドの頭文字HをナイジェリアのNに替えたわけだ)が伸してきたという記事だ。その記事によると、ノリウッド映画は「恋愛や家族愛、部族間の争い、立身出世物語、汚職など、ナイジェリアの日常が題材」だという。どうやら家庭用ビデオカメラを片手に、どこでも誰でも撮っているということのようだ。ナイジェリアでは60年代から映画が作られていたが、映画館でかかるのはほとんどが外国映画だった。しかし90年代に家庭用のビデオカメラなどが普及し始めると一気に広まったらしい。今では政府もノリウッドに雇用の創出や観光業の起爆剤として期待しており、だいぶてこ入れをしているらしい。技術者を養成する民間の専門学校も増えてきているという。

 2位から6位まではほぼ予想通り。意外だったのは韓国をドイツ、スペイン、イタリアが上回っていたこと。ドイツやスペイン映画は本数こそ少ないが優れた作品が日本に入ってきていた。しかしレンタル店の棚に作品が溢れている韓国映画よりも製作本数が多いとは正直驚いた。もっと意外だったのはイタリア。かつてアメリカ、ソ連、フランスなどと並んで世界の映画界に君臨していたイタリア映画も90年代以降はすっかり影が薄くなっていた。朝日新聞社などが主催するイタリア映画祭が2001年から開催されてはいるが、日本で劇場公開される作品は年間10本そこそこではなかろうか。これだけ本国で作られているならば、知られざる傑作がたくさん埋もれてはいやしないか。そんな期待を抱かせる本数である。

 製作本数に比して日本での公開本数が少なすぎると一番感じるのは中国映画だ。年間300本以上作られているのなら、少なくとも今の2、3倍の公開本数があってもいいはず。この間観た中国映画の質の高さをみれば、まだまだ埋もれた傑作があるに違いない。ちなみに、香港映画について触れておくと、「東洋のハリウッド」と呼ばれ70年代から90年代初めにかけて年間250本を製作していた香港映画は、現在50本程度に製作本数が落ち込んでいるようだ(08年11月18日付朝日新聞「歴史を歩く 東洋のハリウッド」)。97年に中国に返還されて以来香港映画の製作本数は減り続け、今や中華映画の重心は大陸に移っている。浙江省の横店村に中国最大の映画撮影基地が作られ、今ではそこが「中国のハリウッド」と呼ばれている。大陸の映画は大きく変貌をとげているようだ。もっと多くの中国映画を観たいという思いがますますつのる。しかし日本で公開される中国映画の数はさほど伸びているようには思えない。まだまだ日本で公開される映画はアメリカに偏っているのが現状だ。

 しかし、そのアメリカ映画も今は深刻な状況にある。世界的な金融危機のあおりで映画の製作資金ががた減りになっているのである。09年1月1日付の朝日新聞に載った「陰るハリウッド カネも客も集まらない」という記事が参考になる。資金難の一例として、フランスの投資銀行ソシエテジェネラルが昨年の10月末に映画への投資から手を引いたことを挙げている。他にも、ドリームワークスはインド金融の資金で映画を撮ることに決め、ワーナー・ブラザーズはアート系映画を作る子会社を相次いで閉鎖したという。

090307_20  アメリカ映画界の苦境はそれだけではない。アメコミの映画化や過去の名作のリメーク、ヒット作の続編などばかり作り続けてきた付けがここに来て回ってきたというのだ。有名スターを起用しCGなどを駆使した大作路線(記事では「打ち上げ花火」的と表現している)が観客に飽きられてきたのだ。そんな安易な大作を尻目にアカデミー賞を受賞したのはインドのスラム街を舞台にしたダニー・ボイル監督の「スラムドッグ・ミリオネア」だったと記事は冒頭に皮肉っぽく書いている。「次もインドで撮りたいね。米国は、熱気にあふれる映画を作るエネルギーを失ってしまったから」というダニー・ボイル監督の言葉を添えて。

 そんなアメリカ映画を相変わらず大量に公開している日本。当然アメリカ映画不審の影響は日本にも及んでいる。昨年の日本における映画興行収入その他をまとめると次のようになる。邦画の興行収入は前年比22.4%増で過去最高となった。一方、洋画の興行収入は前年比23.9%の大幅減だった。洋画と邦画の合計は前年比1.8%減。年間公開本数は洋画で前年より15本少ない388本、邦画は11本多い418本。映画館数は138スクリーン増えて3359スクリーン。しかし入場者数は延べ約1億6049万人で前年より1.7%減。

 洋画が落ち込んだのはアメリカ映画が不振だったからである(上記2つの原因の他に脚本家組合によるストの影響もあったと考えられる)。作品の質的な問題以外に、観客数が減っている背景には経済危機があると思われる。特にそれが目立って表れたのは若者の映画離れという現象である。雇用不安が蔓延し先行きに不安を抱える若者が増えていることを考えれば、映画館から若者の足が遠のいてゆくのはある意味で当然かもしれない。映画は映画館ではなくDVDで、あるいはインターネットで観るという傾向が強まっている。消費不況が映画興行にも大きな影響を与えているのである。

 もうひとつ深刻なのはアート系映画の不振である。朝日新聞08年12月20日付の「アート系映画、真冬の次には」という記事によると、いわゆるミニシアター系映画には02年以降目立った大ヒットが表れていないそうである。ミニシアターはここ数年どこも観客数が落ち込んでいるらしい。この傾向が続くようなら、アート系映画は短期間上映の映画祭等でしか観られない時代が遠からず来るかもしれない。そんな不安を感じさせる。ただし、大手配給会社がアート系映画の買い付けから撤退したため、結果的に買い付け価格がだいぶ安くなったようだ。そこに一縷の望みをたくせると最後を結んでいる。

 このように映画をめぐる昨今の状況は大きく変わってきている。日本映画も過去最高の興行収入だったと喜んでばかりはいられない。大ヒットした映画はほとんど例外なく大手企業の配給作品である。その一方で制作費を回収できていない作品が続出している。それに追い討ちをかけるように、国による09年度の映画製作への公的助成はさらに削られることになった。作品の質という観点から見ても、06年を頂点に07年以降は下降気味にあると感じる。

 アメリカ映画界も日本以上に先行き不透明である。アカデミー賞開催前に開かれていたパーティーの自粛、大手映画会社の人員削減など、様々な所に経済破綻の影響が現れてきている。アメリカ国内においても映画製作に対する基本的姿勢を変える必要があるし、日本においてもアメリカ一辺倒の映画輸入形態を変える必用がある。05年10月のユネスコ第33回総会で、「文化の多様性」条約(文化的表現の多様性の保護および促進に関する条約)が提案され、アメリカの激しい抵抗を押し切って、07年3月に正式に発効した。日本は世界中の様々な国の多様な文化を積極的に輸入するという点では世界で最も進んでいる国かもしれない。書物で言えば、日本の翻訳文化は世界に冠たるものだろう。実に様々な国の書物を翻訳で読めるのだ。映画に関しても、これほど様々な国の映画を自国語の字幕や吹き替えで観られるところは他にないかもしれない。このブログで取り上げてきた作品を見ればそれがよく分かるはずだ。それでもまだまだ偏りがある。さらにもっと多様な国の映画に門戸を開くべきだ。

 もちろん映画は文化であると同時に興行でもある。観客動員をあまり見込めない映画を上映することには当然ためらいがあるだろう。しかし興行的観点からばかり映画を見る姿勢はもうそろそろ改めるべきだと思う。儲けばかり追及するのではなく、映画の文化的側面をもっと重視すべきだ。派手なばかりで中身のない大作をテレビや雑誌でベタ褒めして観客動員をあおる姿勢はもう改めよう。よい映画はよい観客が作る。よい観客はよい映画が作る。もっとこういう姿勢にたって映画を作り、映画を宣伝し、上映すべきだ。最後にこのことを強調しておきたい。

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コメント

kimion2000200さん 
 コメントありがとうございます。こちらこそすっかりご無沙汰しております。
 僕は切り抜き魔なので、上の文章で触れた新聞記事はいつかまとめたいと思っていました。発作的に一気に書き上げたものなので、充分練られていない部分もあります。
 ナイジェリアの勢いには驚きますね。ちょっと信じがたい数字です。アメリカ映画はまだまだ底力はありますが、今大きな転換点に来ているのかもしれません。
 日本映画も製作本数こそ多いですが、優れた映画となるとほんの一握りです。テレビなどで大量に宣伝した映画がヒット作の上位を占めているという現状を考えると、鑑賞する側の受身的姿勢に危機感を覚えます。
 今後も状況はどんどん変わって行くでしょう。いい方向に「チェンジ」することになればいいのですが。

お久しぶりです。
とっても考えさせられるレポートですね。
僕は現在の邦画の、東宝やテレビ会社に牽引されての製作体制には、ほぼ絶望的な感じを持っています。
映像作家の新しい世代含めての出現からいうと、アジア各国に完全に遅れをとっていると思います。
アメリカ映画に関しては、エネルギーがなくなってきていると思いますし、リメイクは節操がないですね。
でも、たとえばマーク・フォスターの「君のためにも千回でも」などがドリームワークス制作と言う事を知ると、まだまだ底力はあるような気がします。
インド映画も質が変わってきているんでしょうし、ご指摘のナイジェリア映画の量産は驚きました。
ナイジェリアは石油大国でもあり、ちょっと他のアフリカ諸国とことなるかもしれないし、アフリカ人の半分以上は、ナイジェリア系の民族分布伴っています。
実は仕事の関係で、ナイジャエリアに一緒に行ってくれと要望されているのですが、「嫌だよ、ライオンに襲われそうで」などと偏見に満ちた返答をしていますが、もし行くことになったら、ちょっと映画事情をチェックしてきたいなあ、と思うようになりました(笑)

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