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2008年4月6日 - 2008年4月12日

2008年4月 9日 (水)

「パンズ・ラビリンス」を観ました

Huymgm01_2  これは期待にたがわぬ傑作だった。一見「ロード・オブ・ザ・リング」のようなファンタジー映画に思えるが、むしろテリー・ギリアム監督の「ローズ・イン・タイドランド」のようなダーク・ファンタジーに近い。しかしこの映画にファンタジーに対する皮肉な視線はない。この映画の特異性は、独裁政権下の抵抗運動を描くシリアスなリアリズムと地下の魔法の王国を治める王女様が少女の姿を借りてよみがえるという典型的なファンタジーがいささかの違和感もなく結びついている点にある。本当にダークなのはファンタジーの世界ではなく現実の世界の方なのである。その点をはっきりと認識しておくべきだ。その意味で「パンズ・ラビリンス」は内戦の悲痛な現実や「内戦の影」を描く作品の系統に属するのである。

 時代は1944年。既に内戦(1936-39)は終り、フランコとファランヘ党による独裁政治が始まっていた。ファシズムがスペインを支配していた時期なのである。反政府ゲリラたち(人民戦線側の生き残りと思われる)は山に立てこもり抵抗を続けていた。彼らを掃討するためにヴィダル大尉率いる軍隊が派遣される。リアリズム部分はヴィダル大尉の残虐な行為とそれに抵抗するゲリラたちとの戦闘、秘かにゲリラを支援する村人たちの抵抗を描く。これはまさにレジスタンス映画である。

 フランコの独裁は彼が死ぬ75年まで続いた。その間のスペイン映画の歴史は検閲との戦いの歴史であった。その厳しい条件下にあって、ルイス・ガルシア・ベルランガ、ファン・アントニオ・バルデム、カルロス・サウラ、ルイス・ブニュエルなどの巨匠たちが少なくない傑作を生み出していたことは特筆に価する。しかしスペイン映画が真の充実期を迎えるのは言うまでもなく独裁者フランコの死後である。まるで封印を解かれたごとく、次々とスペイン映画は傑作を生み出し、世界各国の映画祭で賞を取った。

 スペイン映画ルネッサンスと言うべき70年代後半から80年代前半にかけて作られた作品には「内戦の影」を引きずっているものが多かった。内戦によって引き裂かれた世代を描いた「黄昏の恋」(ホセ・ルイス・ガルシ監督、アカデミー賞を受賞した最初のスペイン映画)や「エル・スール」(ビクトル・エリセ監督)、「バレンチナ物語」(アントニオ・ベタンコル監督)などがその代表作である。内戦時にファランヘ党員により銃殺され、独裁政権下では口にすることもはばかられたフェデリコ・ガルシア・ロルカ原作の「ベルナルダ・アルバの家」(マリオ・カムス監督)や「血の婚礼」(カルロス・サウラ監督)も映画化されるようになった。「ベルナルダ・アルバの家」の重苦しい抑圧的な雰囲気は明らかにフランコ時代とオーバーラップしている。

 ピカソはその遺言の中でスペインに再び真の民主主義が確立されるまで「ゲルニカ」をスペインに引き渡してはならないと言い残した。その「ゲルニカ」がスペインに返還されたのは1981年である。「ゲルニカ」の帰還と相前後してスペイン映画に黄金時代が到来したのである。

 80年代後半以降はペドロ・アルモドバルやアレハンドロ・アメナバールなど新しい世代が台頭してきて、スペイン映画の質も大きく変化してくる。しかしそんな中でも、「蝶の舌」(ホセ・ルイス・クエルダ監督)や「キャロルの初恋」(イマノル・ウリベ監督、知られざる傑作!)などが作られている。30年以上続いたフランコの独裁時代は、スペイン人にとって、中国人にとっての文革時代以上に悪夢の時代だったのである。

Rashinban1  監督のギレルモ・デル・トロはメキシコ人だが、2001年の「デビルズ・バックボーン」(未見)でもスペイン内戦の傷痕を描いている。僕は「パンズ・ラビリンス」以外では「ミミック」しか見ていないが、スペイン内戦を主題にしたこの2作が彼のもっとも評価されている作品のようだ。彼がなぜスペイン内戦を二度も描いているのかは分からない。彼にスペイン人の血が流れているのかも知れないが、インターネットで調べても彼の両親についてほとんど全く情報が見つからないので確認ができない。しかしビクトル・エリセ監督の「ミツバチのささやき」に何らかの影響を受けているのかもしれない。ギレルモ・デル・トロ監督はあるインタビューで、自分は「モンスター」に惹かれると言っている。「ミツバチのささやき」もモンスターに少女が惹かれる映画である。時代も1940年頃のスペインで近い。

 彼はまた別のインタビューでアーサー・マッケン(『パンの大神』の著者)、ロード・ダンセイニ、クラーク・アシュトン・スミス、H.P.ラヴクラフト、ホルヘ・ルイス・ボルヘスに影響を受けたといっている。妖精物語、怪奇小説、マジック・リアリズム。昆虫やモンスターや暗がり、時計仕掛け、産まれなかった者への偏愛はどうやら彼の個人的嗜好や性癖から来るらしい。互いに深い関連を持った2本の兄妹映画(監督は「デビルズ・バックボーン」を”the brother movie”「 パンズ・ラビリンス」を”the sister movie”と呼んでいる)におけるスペイン内戦は、しかし、単なる恐怖を生み出す恐ろしい舞台装置として持ち出されているのだろうか。この点は十分吟味してみる価値がある。

 最近のニュースによると、ギレルモ・デル・トロ監督はトールキン原作の「ホビットの冒険」を撮ることになるようだ。イギリス・ファンタジーの金字塔『指輪物語』の原型となった作品を彼がどのように映画化するのか。本当に楽しみだ。

<付記>
 この作品については近い内に本格レビューを書きます。なお、本館ホームページ「緑の杜のゴブリン」の「miscellany」コーナーに「スペイン映画作品年表」を掲載しました。タイトルが並んでいるだけのそっけないリストですが、何かの参考にしていただければ幸いです。

「パンズ・ラビリンス」のレビュー

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