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2008年12月29日 (月)

「トゥヤーの結婚」を観ました

 12月11日に「トゥヤーの結婚」を観た。「白い馬の季節」も12月22日に鑑賞。そして、現在「雲南の少女ルオマの初恋」をレンタル中である。このところ映画を観る本数が著しく減っている。その前の貯金があるので何とか今年観た映画の総数は100本を越えたが、どうもこのところ映画の方に気持ちが向かない。

 そんな中でもやはり気になるのは中国映画である。もう何年も前からアメリカと並ぶ世界映画界の横綱として認めてきた。西の横綱アメリカ映画は今年になってその落ち込みが顕著になってきた。しかし東の横綱中国映画は、公開本数こそ相変わらず多いとはいえないが、確実に質の高い作品を送ってきている。

080202  その中国映画のDVDが9月以降相次いで出ている。「トゥヤーの結婚」(ワン・チュアンアン監督)、「マイ・ブルーベリー・ナイツ」(ウォン・カーウァイ監督)、「ラスト・コーション」(アン・リー監督)、「ようこそ、羊さま」(リウ・ハオ監督)、「白い馬の季節」(ニンツァイ監督)、「雲南の少女ルオマの初恋」(チアン・チアルイ監督)。カザフスタン・ロシア・他製作の「モンゴル」(セルゲイ・ボドロフ監督)も10月に出ている。年が明けて1月には「胡同愛歌」(アン・ザンジュン監督)、「胡同の理髪師」(ハスチョロー監督)、「草原の女」(ハスチョロー監督)、「紅い鞄 チベット、秘境モォトゥオへ」(ハスチョロー監督)、「雲南の花嫁」(チアン・チアルイ監督)が出る予定。

 漢民族以外の映画人が台頭し、映画の舞台や登場人物も民族色豊かである。しかし中国は元々多民族国家。少数民族が描かれたり、とんでもない僻地が舞台になるのは珍しいことではない。ざっと思いつくものをあげれば、「山の郵便配達」、「小さな中国のお針子」、「野山」、「子供たちの王様」「思い出の夏」「ココシリ」「天上の恋人」、「あの子を探して」、「黄色い大地」「最後の冬」等々といくつもある。

 「トゥヤーの結婚」と「白い馬の季節」は共に中国の内モンゴルを舞台にしている。モンゴルの草原を舞台にした映画といえば、真っ先に思い浮かぶのはニキータ・ミハルコフ監督の「ウルガ」(91年)とビャンバスレン・ダバー監督の「天空の草原のナンサ」(05年、ドイツ製作だが実質的にモンゴル映画)という2本の傑作だ。それともう1本ある。椎名誠監督の「白い馬」(95年)。調べてみると内モンゴルで撮影された中国映画「天上草原」(03年)やモンゴル人とベルギー人が監督した「ステイト・オブ・ドッグス」(98年)というモンゴル・ベルギー映画もある(この2本は観ていない)。

 僕は過去に3回中国に出張したことがあるが、内2回はフフホトへも行った。フフホトは内モンゴル自治区の省都で人口258万人(04年現在)。日本の感覚では大都市だが、中国では一地方都市に過ぎない。2回とも草原を見に行かないかと現地の人たちに誘われたが、時間に余裕がなかったので断った。草原を見られなかったのは今でも残念だ。

Yuhi  「トゥヤーの結婚」は「ウルガ」や「天空の草原のナンサ」と比べても遜色ない優れた作品だった。「白い馬の季節」もなかなかの力作だ。中国映画の魅力、それは生活をリアルに描けることである。その生活の苛烈さの象徴として出てくるのが井戸掘りと水汲みである。文字通り井戸掘りがテーマである「古井戸」が思い浮かぶ。他にも「黄色い大地」など僻地を舞台にした映画には水汲みの大変さがしばしば描かれる。10キロ以上離れた井戸まで往復何時間もかけて水汲みに行くことなど水が豊かな日本では考えにくいが、そんな日本映画にも新藤兼人監督の名作「裸の島」がある。水がなければ人は生きてゆけない。生活が成り立たない。遊牧民族の生活の場である草原が年々砂漠化している。水と牧草の不足、その悪条件の中でも必死で生きようとする人々。タイトルにもかかわらず、「トゥヤーの結婚」が描いているのは結婚そのものではなく、生きるための必死の努力、生活のための闘いである。

  フランス映画「サン・ジャックへの道」で描かれた旅はいらないものを捨ててゆく旅だった。その旅の果てに兄弟や家族の絆を見出してゆく。その意味で「リトル・ミス・サンシャイン」に通じる主題を持った映画だった。「トゥヤーの結婚」は最初から余分なものは何も持っていなかった。しかし、水は枯れ、草原は荒れ果て、頼みの夫は井戸掘りの際の事故で半身不随に。トゥヤーたちは最低限必要なものすら失おうとしている。彼女はぎりぎりのところまで追い詰められ、苦悩した挙句夫婦の絆を守りつつ、人間的な生活も手に入れようとしたのだ。

 最初と最後に二度出てくるトゥヤーが涙を流すシーン(冒頭のシーンが二度出てくるという展開はイギリス映画の名作「逢びき」が有名だが、「本当のジャクリーヌ・デュ・プレ」でも少しひねった使い方をされている)。様々な思いが交錯していたに違いない。しかしそれはなんといっても元夫のバータルのために流した涙だろう。トゥヤーが望んでいたのは元夫も含めた家族を養ってくれる男の働き手だった(自殺を図った元夫をトゥヤーが「家族は誰も死なせない」と怒鳴りつけた。別れても彼は「家族」だったのである)。愛する夫のために別の男と結婚せざるを得ないむごい現実。子連れどころか、元夫まで連れた結婚。奇想天外な発想ながら。そこには生きるためにはどんなことでもしようという人間の、虚飾をすべて投げ捨てた姿がある。生へのむき出しの執念。非現実的な設定ながら、これほどリアルな生の現実を描いた作品は他にほとんど思い当たらない。

 下半身不随になった元夫のバータル。彼は草原の文化が消え去って行くことの象徴である。草原が豊かだったころ、モンゴル相撲も盛んに行われていたはずだ(彼はかつてそのチャンピオンだった)。しかしこの作品の優れたところは、決して重苦しくその現実を描いてはいないことだ。働き者で面倒見のよいトゥヤーが再婚相手を求めていると聞いて夫候補が次々と現れるあたりは実に滑稽ですらある。結局トゥヤーは「お隣さん」(といっても日本の感覚の「隣り」ではない)のセンゲーと再婚することになるが、このセンゲーという男がなんとも魅力的なのだ。おっちょこちょいだが憎めない性格。そう、「北の国から」で岩城滉一が演じた草太のような男なのだ。

 ワン・チュアンアン監督の母親は内モンゴルで生まれたそうである。失われてゆく草原での生活に対する愛着と喪失感が強いのはそのためである。彼はあるインタビューで「私はモンゴル文化が大好きです。だからこそ、この消え行く文化を映像に残したいと思いました」と語っている。まさに「天空の草原のナンサ」を撮ったビャンバスレン・ダバー監督と同じ思いだ。あるいは三峡ダムに沈み行く町と人々を描いた「長江哀歌」にも通じる。

Green_hill  だからといって「トゥヤーの結婚」はノスタルジーに包まれた甘い映画ではない。コミカルでファンタジーのような要素すら持ってはいるが、基本的にはリアリスティックな映画である。遊牧民たちが住む場所を追われてゆく過程のリアルさは「白い馬の季節」の方が上だが、反面そちらには「トゥヤーの結婚」のような、突き抜けた明るさと力強さはない。「トゥヤーの結婚」はコミカルでファンタスティックな味付けとリアリティーのバランスが絶妙なのである。しかもコミカルな要素を加えつつも、容赦のない現実の圧力も充分描きえている。子供を主人公にして、草原で生きる人々の生活に根ざした智恵やその独特の風習をファンタスティックに描いた「天空の草原のナンサ」よりもずっと苦い現実が描きこまれている。「天空の草原のナンサ」は遊牧民への賛歌だったが、「トゥヤーの結婚」は遊牧民への挽歌である。

 もう1本、あの壮絶な傑作「ココシリ」と比べてみるのもいいだろう。「ココシリ」はチベットカモシカの密猟グループを執拗に追い続ける民間パトロール隊を描いた映画だ。ココシリも昔は放牧が盛んだったが、ここでも草原が砂漠化し、生きる手段を失った遊牧民たちが密猟グループに皮剥ぎ職人として雇われているという現実がある。95分の作品が130分はあるかと感じさせるほどの息詰まる追跡劇。その95分の中にチベットの現実がたっぷり詰め込まれている。それはなんとも苦い現実だ。資本主義の冷徹な論理がパトロール隊の執念をねじ伏せてゆく現実。

 パトロール隊の隊長も精悍だったが、トゥヤーも凛とした強さを持っている。押しとどめがたい現実に押しひしがれながらも何とか踏みとどまろうと努力した。その姿に感銘を受けるのだ。しかしそれでも現実を押しとどめることは出来なかった。トゥヤーは何とか再婚を果たしたが、いずれ遠からぬうちに草原を去らざるを得なくなるだろう。結局個人の生活を守るので精一杯なのだ。個人や民間グループの力では押しとどめようのない大きな力。その冷徹な現実のメカニズムを「ココシリ」は明確に抉り出した。「トゥヤーの結婚」はより個人の問題に焦点を当てている。

 トゥヤーという魅力的なヒロインを生み出したことがこの作品を成功させたと言っていい。「キムチを売る女」のスンヒ、「ボルベール<帰郷>」のライムンダ、「母たちの村」のコレ、「スパングリッシュ」のフロール、「スタンドアップ」のジョージー、そして「銀馬将軍は来なかった」のオルレ。トゥヤーは自分で道を切り開いてゆくこれらの魅力的なヒロインたちの系譜に属する。「ククーシュカ ラップランドの妖精」のアンニのような超自然的な力は持たないが、大地の母という言葉は二人ともよく似合う。

 最後に余談を一つ。自分が観た映画を記録するのに使っているフリーソフト「映画日記」で調べたら、監督のワン・チュアンアンという名前は既に登録されていた。「おはよう北京」(チャン・ヌアンシン監督、1990)でマー・シャオチンと共に主演した俳優の名前もワン・チュアンアン(王全安)なのである。漢字も同じ。同一人物だろうか?一部のサイトにはワン・チュアンアンの作品として「おはよう北京」(出演)と「トゥヤーの結婚」(監督)が並んで載っているが、ワン・チュアンアン監督の紹介記事やプロフィール記事には「おはよう北京」のことは全く出てこない。英語のサイトを調べてやっと同一人物だということが確認できた。日本の映画情報サイトや映画データベースには有名俳優や監督などのどうでもいいつまらない話が山のように載っているが、こういう基本的なリサーチがおざなりにされている。

  それはともかく、「おはよう北京」は95年1月31日にビデオで観ているが、どんな映画だったか全く覚えていない。観たことすら忘れていた。アマゾンで調べるとビデオは700~800円台で出ているが、果たして買うほどの作品なのかどうか。

「トゥヤーの結婚」(ワン・チュアンアン監督、2006年、中国)★★★★☆

<追記>
 「トゥヤーの結婚」はぜひ本格レビューを書きたいと思っています。しかし今の調子では本当に書けるかどうかおぼつかないので、一応この記事に基本的な評価を書いておきました。

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コメント

kimion20002000さん
 明けましておめでとうございます。こちらこそご無沙汰しておりました。
 写真日記の方も見ていただいていたとは感激です。こちらの方も滞っているのですが、順次アップして行くつもりです。
 「トゥヤーの結婚」はこのところ次々と傑作を生んでいる女性映画としてみることも可能ですね。それくらいヒロインのトゥヤーの存在感が大きいということでしょう。それに様々な社会的時代的背景が絡んでいる。困難を乗り越えてゆくトゥヤーのたくましさに共感せずにいられない映画でした。

ゴブリンさん。
お久しぶりです。
写真のほうのサイトもときどき覗かせていただいてます。

「トゥヤーの結婚」の女性も、ちゃんと大地に立って、逆境に立ち向かっていく姿勢が凛々しいですね。
男性は、どうしても一度挫折の人になってしまうか、急に方向転換して金儲けにいそしんだりということが多いようです。

中国のモンゴル地域とか、高地とかでは指摘されているように「水」の問題が大きいですね。
そこに、漢民族(共産党政権)主導の政策と少数民族問題が大きく影響してきているように思います。

ともあれ、今年も見る本数は限られており、中国映画は優先的に見ていきたいと思います。
このレヴューを通じてのご示唆を本年もよろしくお願いします。

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