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2007年1月28日 - 2007年2月3日

2007年2月 3日 (土)

Golden Tomato Awards発表 その2

アクション/アドヴェンチャー部門 
1位 「007/カジノ・ロワイヤル」  
  マーティン・キャンベル監督、ダニエル・クレイグ、エヴァ・グリーン主演
2位 「スーパーマンリターンズ」
 ブライアン・シンガー監督、ブランドン・ラウス 、ケイト・ボスワース主演
3位 「Vフォー・ヴェンデッタ」
 ジェームズ・マクティーグ監督、ナタリー・ポートマン、ヒューゴ・ウィーヴィング主演

アニメ部門
1位 「カーズ」
 ジョン・ラセター監督、(声)オーウェン・ウィルソン、ポール・ニューマン
2位 「ハッピー・フィート」 3月17日公開予定
 ジョージ・ミラー監督、(声)イライジャ・ウッド、ヒュー・ジャックマン Bwwhstr01
 南極を舞台に、歌って踊れる皇帝ペンギンのコメディ・アドベンチャー。フランスのドキュメンタリー映画「皇帝ペンギン」の真似かと思ったら、ペンギンを主人公にしたミュージカル。皇帝ペンギンというくらいだからペンギンの帝国がある。しかしそこは歌えて何ぼの世界。タップダンス(!)はうまいが歌はへたくそなマンブル、父のメンフィスに「それじゃペンギンではない」と言われてしまう。母のノーマ・ジーンはそんなマンブルを可愛いと思っていたが・・・。とまあ、なかなか設定が優れている。これは楽しみだ。
3位 Flushed Away
 デイヴィッド・バウワーズ監督、(声)ケイト・ウィンスレット、ヒュー・ジャクソン
 Flushed Awayとはトイレの水を流すこと。その名の通り、ロンドンの地下に広がる下水道を舞台にしたCGアニメ映画。ドリームワークスとアードマンスタジオの共作だから興味津々。ねずみたちを主人公にしたウォレスとグルミットの世界といったところか。クライム・ムービーとはまた違ったロンドンのアンダーグラウンド世界が観られそう。

コメディー部門
1位 Borat
 ラリー・チャールズ監督、サシャ・バロン・コーエン、パメラ・アンダーソン主演
2位 「リトル・ミス・サンシャイン」  
 ジョナサン・デイトン、ヴァレリー・ファリス監督、トニ・コレット、スティーヴ・カレル主演
3位 Tristram Shandy: A Cock and Bull Story
  マイケル・ウィンターボトム監督、スティーヴ・クーガン、ロブ・ブライドン主演

ドキュメンタリー部門
1位 Wordplay
  パトリック・クリードン監督、マイク・ムシーナ、ウィル・ショーツ主演
2位 「不都合な真実」  
  デイヴィス・グッゲンハイム監督、アル・ゴア主演
3位 「ブロック・パーティー」
  ミシェル・ゴンドリー監督、デイヴ・シャペル、ローリン・ヒル主演

ドラマ部門
1位 The Queen
  スティーヴン・フリアーズ監督、ヘレン・ミレン、マイケル・シーン主演
2位 「ユナイテッド93」
  ポール・グリーングラス監督、コーリイ・ジョンソン 、デニー・ディロン他出演
3位 Half Nelson
  ライアン・フレック監督、ライアン・ゴズリング、シャリーカ・エプス主演

外国語映画部門
1位 Pan's Labyrinth
  ギレルモ・デル・トロ監督、セルジ・ロペス、アリアドナ・ギル主演
2位 ボルベール<帰郷>
  ペドロ・アルモドヴァル監督、ペネロペ・クルス、カルメン・マウラ主演
3位 「硫黄島からの手紙」
 クリント・イーストウッド監督、渡辺謙、二宮和也

ホラー部門
1位 「ディセント」
  ニール・マーシャル監督、シャウナ・マクドナルド、ナタリー・メンドーサ主演
2位 Slither
  ジェームズ・ガン監督、ネイサン・フィリオン、エリザベス・バンクス主演
3位 「ホステル」
 イーライ・ロス監督、ジェイ・ヘルナンデス、デレク・リチャードソン主演

キッズ/ファミリー部門
1位 「名犬ラッシー」
  チャールズ・スターリッジ監督、ピーター・オトゥール、サマンサ・モートン主演
2位 「シャーロットのおくりもの」
 ゲイリー・ウィニック監督、ダコタ・ファニング主演、(声)ジュリア・ロバーツ
3位 「ナニー・マクフィーの魔法のステッキ」
 カーク・ジョーンズ監督、エマ・トンプソン 、 コリン・ファース主演

ロマンス部門
1位 「恋愛睡眠のすすめ 」 GW公開 予定
 ミシェル・ゴンドリー監督、ガエル・ガルシア・ベルナル、シャルロット・ゲンズブール主演
 「エターナル・サンシャイン」のミシェル・ゴンドリーが同じように「睡眠」をテーマに描いたラブ・ロマンス。引っ込み思案でシャイなステファンはクールで知的なステファニーを好きになるが、なかなか自分の気持ちを相手に伝えられない。しかし夢の中ではステファニーとの恋愛はどんどんうまく行く。やがてステファンは夢と現実の区別がつかなくなっていく。アニメーションや他の視覚的効果を多用し、言葉も英語とフランス語とスペイン語が飛び交う。奇想天外なゴンドリー・マジックの世界。
2位 Something New

 サナー・ハムリ監督、サナー・レイサン、サイモン・ベイカー主演Kmtkm001
 人種問題と人種間の関係を真摯に追及したブラック・ムービーのようだ。ヒロインのケニヤの「理想の男性」は「金持ちで、教養があり、ハンサムな」黒人男性だが、ブラインド・デートで知り合ったのは「金持ちで、教養があり、ハンサムな」白人男性だった・・・。男女と人種の組み合わせはスタンリー・クレイマーの名作「招かれざる客」と逆だが、40年後の本作はどんな描かれ方になっているのか。興味をひかれる映画だ。
3位 The Boynton Beach Club
 スーザン・サイデルマン監督、ジョセフ・ボローニャ、ダイアン・キャノン
 フロリダのボイントン・ビーチに住む老人たちを主人公にしたシットコム。夫や妻をなくした老人たちのコミュニティ。誰も自分たちを年寄りだとは認めたくない。いい味の恋愛コメディの可能性あり。

SF/ファンタジー部門
1位 「トゥモロー・ワールド」
  アルフォンソ・キュアロン監督、クライヴ・オーウェン、ジュリアン・ムーア主演
2位 The Fountain
 ダレン・アロノフスキー監督、ヒュー・ジャクソン、レイチェル・ワイズ主演
3位  「ローズ・イン・タイドランド」
 テリー・ギリアム監督、ジェフ・ブリッジス、ジョデル・ファーランド

スリラー部門
1位 「ディパーテッド」  
  マーティン・スコセッシ監督、レオナルド・ディカプリオ、マット・デイモン主演
2位 「インサイド・マン」
  スパイク・リー監督、クライヴ・オーウェン、デンゼル・ワシントン主演
3位 The Last King of Scotland
 ケヴィン・マクドナルド監督、フォレスト・ウィッテカー、ジェームズ・マカヴォイ主演
 原作はジャイルズ・フォーデンの小説『スコットランドの黒い王様』(新潮クレスト・ブックス)。もう何年も前に買ったきり忘れていた。フォレスト・ウィッテカーがあのウガンダのアミン大統領に扮しているという。そこにスコットランドの若者がやってきて彼の主治医になる。有名なウガンダの大虐殺が描かれる政治的スリラー。

2007年2月 2日 (金)

Golden Tomato Awards発表

Snow_200_01  アメリカの有名な映画批評サイトRotten Tomatoesが2006年の映画ランキングを発表した(サイドバーの「お気に入りホームページ」にリンクがあります)。全米の500館を越える劇場で公開された映画を対象とするWide Release部門、500館以下のLimited Release部門、これが主要2部門である。それぞれにベスト50が挙げられている。ヒット作とそうでないものに分けるあたりはいかにもアメリカらしい。この他にジャンル別(アクション、アニメ、コメディー、ドキュメンタリー、外国語映画、ドラマ、ホラー、ファミリー、ロマンス、SF、スリラー)ベスト10もある。とても全部は紹介しきれないので主要2部門はベスト10まで、ジャンル別はベスト3まで紹介しよう。
  今回は Wide Release部門とLimited Release部門を取り上げる。

Wide Release部門
1位 「007/カジノ・ロワイヤル」  
  マーティン・キャンベル監督、ダニエル・クレイグ、エヴァ・グリーン主演
2位 「ディパーテッド」  
  マーティン・スコセッシ監督、レオナルド・ディカプリオ、マット・デイモン主演
3位 Borat
 ラリー・チャールズ監督、サシャ・バロン・コーエン、パメラ・アンダーソン主演
 イギリス人コメディアン、サシャ・バロン・コーエンがカザフスタン人TVレポーターに扮し、アメリカでドキュメンタリーをとるという設定。彼のインタビューは行く先々でアメリカ人の激烈な反応を誘い、アメリカの恥部をさらけ出させてゆく。一種の挑発的「ショックメンタリー」映画であり、単なるおバカムービーではないと見た。
4位 「ユナイテッド93」
  ポール・グリーングラス監督、コーリイ・ジョンソン 、デニー・ディロン他出演
5位 「インサイド・マン」
  スパイク・リー監督、クライヴ・オーウェン、デンゼル・ワシントン主演
6位 「ブロック・パーティー」
  ミシェル・ゴンドリー監督、デイヴ・シャペル、ローリン・ヒル主演
  ブルックリンで開催された無料のシークレット・ライブのドキュメンタリー。カニエ・ウエスト、モス・デフ、フュージーズ、ローリン・ヒルなどブラック・ヒップホップ・ミュージシャンが総出演。観たいです。
7位 「ディセント」
  ニール・マーシャル監督、シャウナ・マクドナルド、ナタリー・メンドーサ主演
8位 Slither
  ジェームズ・ガン監督、ネイサン・フィリオン、エリザベス・バンクス主演
  「ドーン・オブ・ザ・デッド」の脚本家ジェームズ・ガンが初めてメガホンを取った低予算B級ホラー。ヌルヌル、ベトベトのナメクジ映画。お好きな方はどうぞ。
9位 Akeelah and the Bee
 ダグ・アチソン監督、ローレンス・フィッシュバーン、アンジェラ・バセット主演
 Spelling beeと呼ばれるスペリング・コンテストを通じて成長してゆく黒人の女の子を描く感動編。型どおりのストーリーだが、ヒロインに共感を禁じえないファミリー・ドラマとの評判。
10位 「今宵、フィッツジェラルド劇場で」 3月3日公開予定
  ロバート・アルトマン監督、ウディ・ハレルソン、ジョン・C・ライリー主演
  ロバート・アルトマン監督の遺作。アメリカを代表するラジオ番組「プレイリー・ホーム・コンパニオン」最後のオンエアの一夜における出演者の人生模様を、ちょっぴり辛口なウィットと粋なユーモアで包んだ別れと再生の物語。これまたアルトマンお得意の群像劇。

Limited Release部門
1位 The Queen
  スティーヴン・フリアーズ監督、ヘレン・ミレン、マイケル・シーン主演
  イギリス映画の傑作。ダイアナ妃事故死直後のイギリス王室の舞台裏を描く内幕物。ヘレン・ミレンが女王エリザベス2世を演じ、マイケル・シーンがブレア首相に扮している。二人の名演はヴェネチア映画祭など各地で絶賛されている。これは必見!
2位 「リトル・ミス・サンシャイン」
  ジョナサン・デイトン、ヴァレリー・ファリス監督、トニ・コレット、スティーヴ・カレル主演
3位 「トゥモロー・ワールド」
  アルフォンソ・キュアロン監督、クライヴ・オーウェン、ジュリアン・ムーア主演
4位 Wordplay
  パトリック・クリードン監督、マイク・ムシーナ、ウィル・ショーツ主演
  クロスワードパズルをテーマにしたドキュメンタリー映画。「ニューヨーク・タイムズ」のクロスワードパズル編集者ウィル・ショーツはその筋ではカリスマ的存在。彼には多くの信奉者がいるらしい。眉間にしわを寄せて新聞のパズルを食い入るように見つめているパズル・ファンの姿はまさにオタクの世界。毎年行われるクロスワードパズルのトーナメント大会があるなんて知らなかった。スペリング・コンテストを描いたAkeelah and the Beeといい、アメリカ人はコンテストが好きだ。
5位 「不都合な真実」
  デイヴィス・グッゲンハイム監督、アル・ゴア主演
6位 Pan's Labyrinth
  ギレルモ・デル・トロ監督、セルジ・ロペス、アリアドナ・ギル主演
  英語のタイトルを直訳すれば「牧羊神の迷宮」。1人の少女の眼を通して、彼女の想像の世界を描くダーク・ファンタジー。悪夢のような彼女の想像世界には怪異な生き物が棲息している。大人向けの「不思議の国のアリス」といった感じの作品。その恐怖の世界はファンタジー的であるが、同時に彼女が第2次世界大戦中のスペインで経験した恐怖のアレゴリーでもあるらしい。非常に心を惹かれる作品。
7位 Half Nelson
  ライアン・フレック監督、ライアン・ゴズリング、シャリーカ・エプス主演
  人生の岐路に立った孤独な人々をセンチメンタルになることなく描いた作品。内なる悪魔と葛藤している白人の教師とイノセンスを失いかけている黒人の少女。ライアン・ゴズリングとシャリーカ・エプスの演技が心に沁みる映画のようだ。
8位 ボルベール<帰郷>
  ペドロ・アルモドヴァル監督、ペネロペ・クルス、カルメン・マウラ主演
  「オール・アバウト・マイ・マザー」のペドロ・アルモドヴァル監督がペネロペ・クルスと組んだ悲喜劇。ペネロペ・クルスは失業中の夫と幼い娘を抱えていくつも仕事を掛け持ちしている若い主婦を演じている。伯母の死をきっかけに故郷を訪れた彼女はそこに亡き母の面影を感じる。祖母・母・娘三世代の人生を綴ったドラマ。これも期待大!
9位 Deliver Us From Evil
  エイミー・バーグ監督
  ロサンゼルス映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞を受賞した作品。小児愛の性癖を持った元聖職者オリヴァー・オグレイディと彼を守ろうとするカソリック教会の隠蔽体質を暴露したドキュメンタリー。タブーに挑んだショッキングな作品。最近のドキュメンタリーの勢いは今や奔流となって否応なくわれわれを巻き込んでゆく。これも必見だ。
10位 Tristram Shandy: A Cock and Bull Story
  マイケル・ウィンターボトム監督、スティーヴ・クーガン、ロブ・ブライドン主演
  な、な、何と、あの英文学の古典、ロレンス・スターンの『トリストラム・シャンディ』をマイケル・ウィンターボトム監督が映画化した!18世紀に書かれた奇書ともいえる破格の小説をどう映像化したのか?解説によると映画の製作過程を映画にするという方法を採ったようだ。カルロス・サウラが名作「カルメン」で採った方法である。ポストモダン的大はしゃぎ映画。う~ん観たい。

2007年1月31日 (水)

レイヤー・ケーキ

2004年 イギリス 2006年7月公開 Sdcabirth02_1
評価:★★★★
原題:Layer Cake
監督:マシュー・ヴォーン
原作:J・J・コノリー 『レイヤー・ケーキ』(角川文庫刊)
脚本:J・J・コノリー
撮影:ベン・デイヴィス
出演:ダニエル・クレイグ、コルム・ミーニイ、ケネス・クラナム
    ジョージ・ハリス、 ジェイミー・フォアマン、シエナ・ミラー
    マイケル・ガンボン、マーセル・ユーレス、 トム・ハーディ
    テイマー・ハッサン、ベン・ウィショー、バーン・ゴーマン
    サリー・ホーキンス、ナタリー・ルンギ、フランシス・マギー、ジェイソン・フレミング

  イギリスは80年代のサッチャー首相時代に政治・社会の大変動を経験する。サッチャーはイギリスを「揺りかごから墓場まで」と言われた社会福祉国家からアメリカ型の競争社会に変えた。その結果イギリスは表面上確かに豊かになったが、その一方でアメリカ的な消費生活が急速に拡大し、金の有無だけがその人間関係を決定する社会に変貌していった。経済は好転したが、極端な上昇志向や拝金主義が蔓延し、弱者は切り捨てられることになった。這い上がる余地のない失業者や社会の最底辺にいる者たちは、出口のない閉塞した社会の中に捕らわれて抜け出せない。社会が人々を外から蝕み、酒とドラッグが中からむしばんでゆく。

  社会の変化に伴ってイギリス映画も変貌を遂げた。失業、ストライキ、麻薬、アル中、犯罪は90年代イギリス映画の新しいキーワードになった。失業、ストライキ、麻薬などは、かつてのイギリス映画がほとんど描かなかったものだ。かくして、イギリスにもアメリカ映画を思わせる犯罪映画が登場する。「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」、「バタフライ・キス」、「ザ・クリミナル」、「ロンドン・ドッグズ」、「ダブリン上等!」(アイルランドが舞台だがイギリスも製作に参加)等々。失業者を主人公にした映画やクライム・ムービーは確実にイギリス映画の一角を占めるようになった。「レイヤー・ケーキ」は明らかにこのクライム・ムービーの系統に属する映画である。

 名前のない主人公を演じたダニエル・クレイグは新ボンド役としてばかり意識されているが、彼がここで演じた役柄はちょっと前ならロバート・カーライルが演じていた役柄である。彼を単なるアクション俳優と捉えたのでは彼の役者としての幅の広さを捕らえそこなう。僕が彼を初めて意識したのは1999年の「ザ・トレンチ 塹壕」という映画である。第1次大戦で大量の戦死者を出したことで有名なソンムの塹壕戦を描いた映画。ほとんど戦闘場面もなく、だらだらと塹壕の中の兵士たちの日常を描くだけの、実に退屈でつまらない映画だった。しかしその退屈な映画の中でウィンター軍曹を演じたダニエル・クレイグが1人光っていた。それまで聞いたことのない名前だったが、なんてうまい俳優だろうと感心したものだ(最後の最後に出てくる突撃場面で、塹壕を飛び出たとたんにあっけなく撃たれて死んでしまうが)。その後しばらく忘れていたが、「シルヴィア」で詩人テッド・ヒューズに扮し、「ミュンヘン」で車輌のスペシャリスト、スティーヴを演じていた。その延長線上にジェームズ・ボンド役があるわけだ。

Gun3500   007の新作はまだ観ていないが、「レイヤー・ケーキ」はダニエル・クレイグが初めて彼の真価を全面的に発揮した映画である。「ザ・トレンチ 塹壕」同様、ここでも彼はアンチ・ヒーローである。アメリカ映画の主人公のように不死身ではなく、銃の使い手でもない。颯爽とはしていても喧嘩が強いわけではない。この映画の売りは複雑に入り組んだ人間関係と先の見えない話の展開、皮肉とブラック・ユーモアに満ちた会話、(派手なドンパチではなく)互いに出し抜きあう頭脳戦にある。

  ダニエル・クレイグ演じる麻薬のディーラーは一見普通のサラリーマン風。実際彼の表の顔は不動産業者だ。彼の座右の銘「ゴールデン・ルール」が可笑しい。欲張りすぎるな。取引は紹介された人物とだけしろ。計画をたて、それに従え。敵を知り、尊重しろ。法律をバカにする奴は、本当のバカだけだ。好調なうちに引退しろ、等々。サラリーマン処世訓としても通じる。麻薬のディーラーというやくざな商売だが、彼はそれをビジネスとして割り切っていた。決して危ない橋は渡らず、「正当に」取引して小金をためた。ある意味では、不二家よりよほどまともだ。真面目なサラリーマンがちょっと道を踏み外し、やばいほど儲けは大きいと新商売に手を出した感じ。根っからの悪党ではない。だから、冒頭のナレーションでもう十分稼いだからそろそろ足を洗おうと語るわけだ。登場した時は颯爽とした渋い男前。麻薬ディーラーなのにビジネス・スーツが似合うから面白い。スーパーの陳列棚の前を彼が通ると、棚の商品が次々に麻薬に変わって行く視覚的効果もなかなか優れた演出だった。

  しかし簡単に足を洗えないのがこの業界。これが最後と思って引退前に引き受けた仕事は簡単に片付くはずだった。大ボス、エディ・テンプル(マイケル・ガンボン)の麻薬中毒の娘を捜し出す事と、ギャングのデュークが手に入れた大量の”エクスタシー”を売りさばく事。だがこれは罠だった。”レイヤー・ケーキ”というタイトルがここで生きてくる。イギリスは徹底した階級社会。裏社会も同じこと。何層にも重なる闇社会の階層(レイヤー)の中では彼も小者。下積みの悲哀をいやと言うほど味わわされる。

  危ない橋を渡ったことがないだけに、いざという時007のように冷静沈着に行動できない。ボスのジミー・プライス(ケネス・クラナム)を銃で撃ち殺す場面が出てくるが、初めて銃で人を撃った感じだ。そのジミーの右腕だったジーン(コルム・ミーニー)からは顔中血だらけになるほど痛めつけられる。あまつさえ、マネーロンダリングを任せていたインド人会計士には預けていた金をごっそり持ち逃げされる。ヒーローには程遠い、このあたふたしたところが逆に魅力だ。このあたりはイギリス映画らしい味わいがあって実によろしい。

 二つの仕事を請け負ってからの展開は実にめまぐるしい。いくつものグループが絡んできてストーリー展開も複雑である。この展開は「ダブリン上等!」を連想させる。どこか群像劇にも似た複雑な人間関係。その上にスピーディな展開だから観終わってしばらくするとどんな話だったかよく思い出せない。そういう映画だ。上に挙げたイギリス製クライム・ムービーはほとんどどれもそんな感じ。疾走感はあるがドラマ性が薄いために後には残らない。いくつもの思惑が絡み合い、手違いや裏切りや失敗で話はねじれにねじれ、こんがらかり、もたつき、どんでん返しの繰り返し。群像劇といっても人間関係を複雑かつ重層的にして重厚なドラマにしようというタイプではなく、意外なストーリー展開自体に重きを置くタイプなので、まあこのドタバタを楽しめばいい。

 これに加えてイギリス映画らしい独特のひねったユーモアが会話に練りこまれている。Xmas200512071 ダニエル・クレイグはセルビアのマフィアが放った殺し屋から身を守るために殺し屋を雇うが、これがまるでセールスマンみたいで少しも凄みがなく、ちっとも殺し屋に見えないのが可笑しい。とにかくわけのわからぬ依頼にさんざん振り回され、二転三転したあげく、気が付いたらダニエル・クレイグはかつてのボス、ジミー・プライスの後釜に納まっていた。そして今度こそ引退しようと思った矢先に撃たれて死んでしまう。いかにもイギリスらしい皮肉な結末。

  アメリカ映画のような正義と悪という単純な二分法ではない。そもそもギャングやマフィアしか登場しないのだから正義のヒーローなどいようはずもない。そんな中でダニエル・クレイグが銀行員並の堅実な仕事ぶりで一財産築いているのが愉快だ。しかし、彼も最後は欲に目がくらんで引退を遅らせたのがあだとなって惨めに死んでゆく。

  それなりに楽しめるのだが、展開がめまぐるしすぎて味わいがやや薄い。登場人物も多すぎてダニエル・クレイグ以外はいまひとつ印象が薄い。大ボスに扮したマイケル・ガンボンはあの大きな顔で凄みを見せていたが、やや物足りない。「ミニミニ大作戦」に出てきたギャングの大ボス(ノエル・カワード)は獄中にいるのになぜかまるで自分の大邸宅にいるように豪勢な生活をしていた。これぐらいどぎつく描かないと、これだけめまぐるしい展開の中では埋もれてしまう。ダニエル・クレイグの上役を演じたコルム・ミーニーはいい味を出していたが、「ウェールズの山」で演じた、「好色モーガン」というあだ名ながらも人情味のある宿屋の親父役には及ばない。

 監督のマシュー・ヴォーンは、「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」、「スナッチ」のプロデューサー。なるほどよく似たタッチなわけだ。

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2007年1月29日 (月)

ちょっと一息

  このところまた忙しくなりブログの更新もままなりません。昨日の日曜日も出張で、先ほFruits_1 どやっと家に戻ってきました。今週も予定が一杯で今度いつ更新できるやら。3日の土曜日はようやく休みが取れるのですが、4日の日曜日に東京で研究会があるのでその準備をしなければなりません。観た映画のレビューも書けないし、新たに映画を観る時間も取れるかどうか。ああ「グエムル 漢江の怪物」が観たい。「ローズ・イン・タイドランド」や「トランスアメリカ」も観たい。予約注文で手に入れた「フープ・ドリームス」も観たい。昨年はブログを頑張りすぎて体を壊してしまいましたが、今度はブログが書けなくてストレスがたまりそうです。

 いや、申し訳ありません。つい嘆き節になってしまいました。嘆いていても仕方がないので、この間観た映画の報告をしておきましょう。レンタルしていた「レイヤー・ケーキ」と「恋人たちの食卓」を返却日ぎりぎりに観終えました。忙しいと言いつつ、期限を切られると人間頑張るものです。久々に両方とも満足しました。評価は以下の通り。

 「レイヤー・ケーキ」★★★★  
 「恋人たちの食卓」★★★★☆

  「レイヤー・ケーキ」はイギリス流クライム・ムービー。アメリカ映画のように不死身のヒーローがかっこよく立ち回り、派手なドンパチで相手をばたばたなぎ倒したりはしません。むしろ主人公はアンチ・ヒーロー的で、イギリス映画らしい皮肉っぽい語り口がピリッと利いている。さらにブラックなユーモアがふんだんに盛り込まれています。登場人物が多彩で、ちょっとした群像劇のような作りになっているところも面白い。「トレインスポッティング」や「ロック・ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」などが好きな人にはおすすめです。

  「恋人たちの食卓」は期待に違わぬ傑作でした。名優ラン・シャンを起用した、アン・リー監督の「老父」シリーズ3作目。1作目の「推手」もそうですが、ラン・シャンは小津映画の笠智衆のように枯れてはいない。息子や娘たちに振り回されながらも、老父はラストで第2の人生に踏み出してゆく。「推手」同様味わい深い作品でした。第2作の「ウェディング・バンケット」も早く観たい。

  「レイヤー・ケーキ」は短評で、「恋人たちの食卓」は本格的なレビューを書きたいと思っていますが、何せ忙しいのでいつのことになるやら予定が立ちません。どうか気長にお待ちください。

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