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2007年10月14日 (日)

「夕凪の街 桜の国」を観てきました

 今日の午後、電気館で「夕凪の街 桜の国」を観てきた(悲しいことに観客はたったの4Fukigen3 人)。映画化の話題が出始めたころから期待していた映画だ。あの素晴らしい原作をどんなふうに映画にするのか楽しみにしていた。佐々部清監督作品はこれまでに「チルソクの夏」、「半落ち」、「カーテンコール」の3本を観た。いずれも評価すべき点を持ってはいるが傑作とは言えなかった。この「夕凪の街 桜の国」で彼はやっと傑作を生んだ。それが映画を観終わった後の率直な感想だった。

 こうの史代の原作漫画を読んだのは「そら日記」(フリーソフト)によると2005年2月21日。感想は「評判どおりの傑作だった。単純な絵だがストーリーが優れている。余韻が残る」とだけしか書いてないが、非常に感動した記憶がある。その後彼女の漫画を何冊か買ったが、やはり『夕凪の街 桜の国』が一番すぐれていると思う。彼女の作品は、だいぶ前にたまたま中古マンガ専門店で見つけて買った三好銀の『三好さんとこの日曜日』(小学館)とよくタッチが似ていると感じた。もっとも僕が持っている女性漫画はこうの史代のものと『三好さんとこの日曜日』で全部なので、この比較が的を射ているのかどうか分からないが。

 原爆を描いた映画はこれまで新藤兼人監督の「原爆の子」(52)、ピアース&ケヴィン・ラファティ監督の「アトミック・カフェ」(82)、今村昌平監督の「黒い雨」(89)、黒木和雄監督の「TOMORROW/明日」(88)と「父と暮らせば」(04)などを観てきた。中沢啓治の『はだしのゲン』もそれが置いてある食堂に通い詰めて読み切った(食事に行ったのか『はだしのゲン』を読みに行ったのか分からないくらい夢中で読みふけった)。ほとんど観てはいないがアニメにも原爆関連の作品は多い。途切れることなく広島と長崎の惨禍は描き続けられてきた。偶然なのか、日系3世監督スティーヴン・オカザキの「ヒロシマナガサキ」も今年公開され評判になった。「夕凪の街 桜の国」はこれらの系譜に新たに付け加えられた傑作の1本である。

 映画は原作の持ち味と香りをかなり丁寧に再現していた。原作は広島の原爆を扱った作品としては実にユニークだった。前半の「夕凪の街」編は被爆の体験も語られるが、悲惨さを前面に出さずヒロインの皆実の明るく軽やかな性格とその日常を中心に描いている。この軽やかさが新鮮だった。キャラクターとしてはかなり現代的な女性像が入り込んでいた。当時を知らない若い世代である作者の女性観が入り込んでいるが、それでいてリアリティに欠けるという感じを与えなかった。頑張らずにさらっと生きている姿になぜか引き込Yukatabijin1 まれた。もちろん焼け野原に転がる死体の上を歩いた経験なども描かれているが、全体に重苦しく悲痛な描き方というのではない。それでいて決して原爆の問題を避けて通ってはいない。むしろ皆実の心の中に隠された葛藤に焦点を当てることで正面から向き合っていた。映画では麻生久美子が幸薄い皆実を見事に演じていた。麻生久美子の顔はしばしばまるでガラスでできているように見えた。普段は陽気で明るく体が震えそうなほど美しいが、過去を振り返る時の彼女は無表情になる。今にも壊れそうなもろいガラスの仮面を付けているように見える。触れれば折れてしまいそうな危うさ。そんな皆実の軽やかさとはかなさを麻生久美子は見事に表現していた。彼女の代表作になるだろう。

 後半の「桜の国」のパートは現代を描いている。主人公の七波は皆実の弟である旭の娘。彼女の代になるとまったく原爆のことなど意識していない。そんな彼女が不審な行動をとる父親を尾行することから、彼女の過去への旅が始まる。皆実に比べれば何の屈託もなく現代を生きている七波が、父と一緒に過去への旅をすることで自分の家族の歴史と原爆との関係を知ってゆく。そういう描き方が実に秀逸だった。21世紀に生きるわれわれにとって、その方がずっとリアルなのだ。広島の旅で七波は初めて父親やその家族の過去を知る。しかし決して深刻にも悲痛にもならない。さらっと描いている。電車で東京に戻る七波に重苦しさや暗い影はない。しかし確かに彼女の中の何かが変わった。

 皆実の葛藤は「父と暮らせば」の美津江の「うしろめたさ」に通じるものがあった。彼女の父の「わしの分まで生きてちょんだいよー。」という言葉に彼女は前を向いて生きてゆく力を得た。同じような言葉が『夕凪の街 桜の国』にも出てくる。皆実の姉である霞が死に際に言った「皆実ちゃん長生きしいね」という言葉(映画では妹の翠のせりふになっている)。打越が皆実に言った「生きとってくれてありがとうな」という言葉。皆実はこの言葉を受け止めようとするが、その時すでに病魔は彼女の体を深く蝕んでいた。しかしその言葉はむなしく消え去りはしなかった。何十年かという時間のはざまを越えて、皆実の姪である七波にその言葉は伝わった。「父と暮らせば」では美津江という一人の女性を通して描かれていたものが、『夕凪の街 桜の国』そしてその映画化作品では皆実と七波という二人の女性を通して描かれているのである。

 麻生久美子の存在感に比べるとどうしても引けをとるが、田中麗奈もさわやかだった。皆実の母を演じた藤村志保はさすがのうまさ。堺正章はやや物足りなかったが、中越典子が意外に良かった。

 久しぶりに映画館で映画を観た。今年はまだ「リトル・ミス・サンシャイン」、「それでもボクはやってない」、「ドリームガールズ」と今回の「夕凪の街 桜の国」の4本だけ。ただ、10月20日から「ミス・ポター」と「天然コケッコー」の上映が予定されている。また11月の10日、11日には「うえだ城下町映画祭」が開催される。「あかね空」、「関の弥太っぺ」、「夢千代日記」はぜひ観たいと思っている。ようやく忙しい時期を過ぎ、少し余裕が持てるようになってきた。ここしばらく本格レビューを書いていない。そろそろ本格的に始動するか。

* * * * * * * * * *

 この間「ぼくの国、パパの国」と「ボビー」を観た。「ぼくの国、パパの国」は6年ぶりに観たが、記憶していた以上に素晴らしい作品だった。「ボビー」は期待をはるかに上回る力作だった。途中までは退屈に感じる部分もあったが、暗殺直後の大混乱を映しだす画面にロバート・ケネディの演説をかぶせるラストはまさに圧巻。あの演説はキング牧師の有名な演説と並ぶ20世紀の名演説の一つである。言葉が力を持っていた時代、そして暴力が言葉を押しのけていった時代。60年代を描きながら実に今日的映画だった。

「夕凪の街 桜の国」 ★★★★☆
「ぼくの国、パパの国」 ★★★★☆
「ボビー」 ★★★★☆

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コメント

kimion20002000さん コメントありがとうございます。
原作の漫画も映画もソフトなタッチですが、原爆で死んでいった人たちの気持ちを受け止めようとする真摯な姿勢が心を打ちます。
麻生久美子の存在感は圧倒的でしたね。美しさともろさが見事に表現されていました。

こんにちは。

>麻生久美子の顔はしばしばまるでガラスでできているように見えた。

そうですね。僕もこの作品での麻生さんの演技をとても高く評価しています。
こうの史代は、原爆体験者ではないのですが、登場人物の名前に、被爆にあった当時の広島の町名をあてはめています。
声高ではなく、だけど、私がこの人たちの思いの幾分かを受け継がないと、という真摯さがみてとれます。

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