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2007年7月25日 (水)

「今宵、フィッツジェラルド劇場で」短評

2006年 アメリカ 2007年3月公開
評価:★★★★★
監督:ロバート・アルトマン
出演:ウディ・ハレルソン 、メリル・ストリープ 、ケヴィン・クライン
    ギャリソン・キーラー、リンジー・ローハン 、ヴァージニア・マドセン
    トミー・リー・ジョーンズ、ジョン・C・ライリー、マーヤ・ルドルフ
    リリー・トムリン、L.Q.ジョーンズ、ジャーリン・スティール
    ティム・ラッセル、メアリ・ルイス・バーク、スー・スコット
    ロビン&リンダ・ウィリアムズ、プルーデンス・ジョンソン

  さすがロバート・アルトマン。文句なしの傑作だった。彼の作品の中では90年代以降のBuil6 ものが特に好きだが(というか初期のものはほとんど忘れている)、「今宵、フィッツジェラルド劇場で」は、「ゴスフォード・パーク」 (2001)や「ザ・プレイヤー」 (1992)と並ぶ晩年の傑作である。彼の代表作の一つとなるだろう。彼の得意とするいわゆる群像劇だ。とにかく人生があふれている。

  夜のミネソタ州セントポール。Mickey’s Dining Carというダイナー(食堂車をそのままレストランに改造して使っている)が最初に映し出され、フィッツジェラルド劇場の警備を担当しているガイ・ノワール(ケヴィン・クライン)がそこから出てくる。ガイの声で「人生という謎の答えを探している」とのナレーションが入る。もうここからすでに引き込まれてしまっている。しかし、ガイ・ノワールが主人公というわけではなく、出だしは夜のシーンだが「ノワール」な映画というわけでもない。

  ガイが向かうフィッツジェラルド劇場では「プレーリー・ホーム・コンパニオン」というラジオショウの最後の公開録音が行われようとしている。30年以上続いたショウだが、ラジオ局がテキサスの大企業に買収され、その日最後の夜を迎える。劇場も再開発のため取り壊される運命にあった。映画はその最後の1日を描いている。しかしそれでいて、憂いに沈んだ物悲しい雰囲気は漂っていない。むしろ軽快なカントリー・ミュージックに乗って、ドラマは明るい調子でテンポ良く進んでゆく。人生の最期を迎えつつあったアルトマン監督が、人生を達観したような、あるいは諦念に沈んだ映画ではなく、このような乾いた明るい映画を作ったことにまず拍手。

 そう、「今宵、フィッツジェラルド劇場で」はショウの司会者であるギャリソン・キーラー(同名の実在するショウの司会者兼脚本家)と出演するミュージシャンを中心とした音楽映画でもある。その意味で「五線譜のラブレター」、「RAY」、「ビヨンドtheシー」の系譜につながる映画だ。カントリー・ミュージックをたっぷり楽しめる映画としては、シシー・スペイセク主演の「歌え!ロレッタ愛のために」(1980)と並ぶ傑作だと言っていい。

 しかしそのキャストの豪華なこと!メリル・ストリープ、リリー・トムソン、リンジー・ローハン、ヴァージニア・マドセン、ウディ・ハレルソン、ジョン・C・ライリー、L.Q.ジョーンズ、マヤ・ルドルフ、そしてケヴィン・クラインとトミー・リー・ジョーンズ。みんな歌がうまい。ジャーソン・スティール(堂々とした体格の黒人女性歌手)やロビン&リンダ・ウィリアムズ(バック・アンド・コーラス)などの本物の歌手も出演している。メアリ・ルイス・バーグ、スー・スコット、ティム・ラッセルなど、脇役にもいい俳優をそろえている。まさにアルトマン監督の最後を飾るにふさわしい豪華版だ。

 群像劇でも、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の「アモーレス・ペロス」と「21グラム」のようなどろどろに絡まりもつれ合った人間劇ではなく、「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」、「スナッチ」、「ダブリン上等!」などのような出し抜き出し抜かれる疾走感あふれる犯罪アクション映画タイプでもない。「幻の女」を想わせる、謎めいた白いコートの女が現れるが、サスペンス映画というのでもない。ある偶然のきっかけで見知らぬ者同士の人生が交錯するというのでもない。いつものようにミュージシャンが集まり、にぎやかにおしゃべりをし、楽屋であるいはステージで歌を歌う。最後の夜だが、最後らしさを感じさせない日常の風景。それでいて面白くて仕方がない。「人生という謎の答えを探している」という冒頭の台詞にもかかわらず、深みを感じさせる台詞などほとんどない。それでいて画面の隅々にまで人生があふれている。

  「今宵、フィッツジェラルド劇場で」はそういう稀有な映画である。淡々とスポンサーの宣伝を読み上げ、コマーシャルソングを歌う司会者のキーラー。お下劣なコミックソングを歌うダスティとレフティのコンビ(ウディ・ハレルソンとジョン・C・ライリー)、メーキャップをしながら亡き父と母のことを話すヨランダとロンダのジョンソン・ガールズ(メリル・ストリープとリリー・トムソン)、その横で作詞に余念のない娘のローラ(リンジー・ローハン)、1曲だけ歌い楽屋に引き上げ、下着姿で密かに息を引き取っていたチャック・エイカーズ(L.Q.ジョーンズ)。歌うことがそのまま人生である人たち。白いコートを着た女性の幽霊(ヴァージニア・マドセン、文字通りファントム・レディだ)にも語るべき人生があった。

 そして何といってもカントリー・ミュージックの魅力。これほど素晴らしい音楽がどうして日本では人気がないのか。この映画の魅力の半分以上はカントリー・ミュージックの魅力である。そしてその音楽世界を支えているのは司会者であるギャリソン・キーラーその人の才能である。驚くほど多才な人だ。実際の番組「プレーリー・ホーム・コンパニオン」の司会と脚本を務め、エッセイや評論や短編小説までものするという。「今宵、フィッツジェラルド劇場で」の原案と脚本を作り、出演して歌まで披露している。彼の才能がなければこの映画の成功はなかった。そう言い切ってもいい。

 カントリー・ミュージック、「幻の女」そしてスコット・フィッツジェラルド。夜のセントポールにひときわ輝く劇場に集まった歌う蝶たち。われわれはただ歌と人生の饗宴に酔いしれればいい。

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映画」カテゴリの記事

コメント

ほんやら堂さん TB&コメントありがとうございます。
本当に音楽が素晴らしかったですね。アメリカにおける音楽の多様性、層の厚さを感じさせる映画でした。
すっかり爺さんのようになってしまった高田渡の近年の演奏はほとんど聞いたことはないのですが、あのかれた味わいは得がたいものでしたね。
昨年は「ONCE ダブリンの街角で」、「エディット・ピアフ 愛の讃歌」、「ドリームガールズ」、「ヘンダーソン夫人の贈り物」、「トランシルヴァニア」、「フランシスコの2人の息子」など、素晴らしい音楽映画がありました。今年もまた素晴らしい音楽映画と出会いたいですね。

ゴブリン様

TB&コメントありがとうございます.
フォークとカントリーのこういう公開録音,一度聞いてみたいものです.
中学から高校にかけて耳に馴染んだあのコード進行とハーモニー.今の日本で耳にすることはめっきり少なくなった様に思います.
そういえば高田渡もこういう系統の数少ない歌手でしたっけ.

真紅さん TB&コメントありがとうございます。
アルトマンの作品は見応えのある作品が多いですよ。6、70年代の初期作品もぜひご覧になってください。
「ドリームガールズ」もそうですが、アメリカ人はショーとなると力が入ります。演じる方も見る方も。そういう国民性なのですね。
この映画の登場人物はすべてこのショーの世界に生きる人たち。人生はショーであり、ショーは彼らの人生です。最後のショーであっても、普段の日と同じようにその一晩を切り取って行く。最後でありながら日常性を維持している(多少の動揺やハプニングはあるけれども)。
表の舞台で繰り広げられる華やかなショーと、舞台裏で交わされる日常の会話。ショーでありながら日常でもある。亡くなる人もあれば生まれくる命もある。そこに人生を感じるのでしょうね。

ゴブリンさま、こんにちは。
アルトマンの遺作、やっと観ました。素晴らしかったです。
群像劇でも、複雑に入り組んだ人間関係が最後につながる式のものではなく、物凄く単純な構成でしたね。
それでも、まさに「人生があふれている」とは言い得て妙です。歌がそのまま人生なんですね。
私はアルトマンの監督作はほとんど未見ですので、これから少しづつ観ていきたいと思っています。
ではでは、失礼します。

kimion20002000さん コメントありがとうございます。
だいぶご無沙汰しておりました。やっと忙しい時期を抜け、一息ついているところです。
アメリカという国は多様すぎてとても一括りにはできませんね。国の政治的姿勢には僕も批判的ですが、文化的には優れたものも生み出しています。その多様性こそアメリカの特徴だと言ってもいいかもしれません。
ロバート・アルトマンは駄作の少ない人だと思います。初期の作品はだいぶ忘れてしまいましたので、観直さないといけません。また見直してみる価値のある作品だと思います。
この遺作も彼の代表作の一つになるでしょうね。晩年に優れた作品を残す人が少なからずいます。意欲を持ち続けることは大切ですね。

本当に、僕はいつもアメリカの悪口ばかり言ってますが、こういう映画に描かれるアメリカは、なんて素敵なんでしょう!
アルトマン、本当に愛されたインディーズの監督でした。

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