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2007年4月23日 (月)

「母たちの村」を観ました

  先日「ゴブリンのこれがおすすめ 36」でアフリカ関連映画を取り上げたのは「母たちのFan3_2 村」を観る予定だったからである。それを書いた直後に白石顕二著『アフリカ映画紀行』(2000年、つげ書房新社)を手に入れた。まだきちんと読んでいないが、そこに取り上げられている映画の数には驚く。50本取り上げられているが、僕が知っているのは「チェド」1本である。これほどアフリカ映画を観ている人は世界でも珍しいのではないか。何しろアフリカに住んでいる人たちでさえアフリカ映画を観る機会は少ないのである。アフリカでは大都市の映画館ですら欧米、インド、エジプトの映画で占められているらしい。では彼はどこでアフリカ映画を観たのか。アフリカを始め各地の映画祭で観たのである。なるほどこれは名案だ。特にフランスではアフリカ映画祭が盛んらしい。日本でも白石氏自身がかかわってきた「東京アフリカ映画祭」や各地の上映会なども開催されるようになり、アフリカ映画はわずかながらも認知されるようになって来た。

  しかし映画祭が開かれているとはいえ、広く劇場公開される作品はほとんどない。アフリカ映画が岩波ホール以外で長期上映されることは滅多にないと言っていいだろう。「母たちの村」もやはり岩波ホールで上映された作品である。これまで観た「エミタイ」、「チェド」、「アモク!」はどれも悪くないが、傑作だと思うものはなかった。しかし「母たちの村」は期待をはるかに上回る傑作だった。僕は戦う映画が大好きだが、「母たちの村」は戦う女の映画として「スタンドアップ」に勝るとも劣らない出来である。傑作、力作ぞろいだった昨年の洋画の中でも上位に入ることになるだろう。

  アフリカにおける女性器の切除手術はだいぶ前から日本でも知られていた。まあ当時はアフリカの奇習という扱いだったと思う。性器を縫い付けてしまうとはなんて野蛮な習慣だと仰天したものだ。ユダヤ教などで行われる男性の割礼は宗教的意味合いが強いと思われるが、女性器割礼は女性の性欲を減退させるため、つまり男性への服従を強いる意味合いが強いと感じる。当然フェミニズムの標的になるわけで、1995年に翻訳が出たアリス・ウォーカー(スピルバーグの「カラー・パープル」の原作者)の『喜びの秘密』でこの問題が扱われ、当時話題になった。

  女性器割礼があることは知っていても、それがどのように行われ、女性たちはそれをどう受け入れていたのか、それにどのような意味合いがあるのかは分からない。「母たちの村」はそれらを具体的に描き出してゆく。その点で「それでもボクはやってない」に通じるものがある。具体的に描かれてこそ伝わるのである。手術の結果命を落とすものが少なからずいること、手術を恐れて逃げ出す子供がいること、割礼師たちのおどろおどろしい姿(何度か独特の仮面をかぶった映像が差し挟まれるが、その恐ろしさは「なまはげ」など比ではない)、ビラコロ(割礼を受けていないもの)に対する差別、手術を受ける子供たちの悲鳴、男性に絶対服従の父権制的社会(主人や目上の男性を女性は跪いて迎える)、等々。

  とにかくアフリカ独特の風俗、風習、習慣が強烈なインパクトと共に目に飛び込んでくる。中でも色彩が強烈である。大胆に使われた原色が目に鮮やかだ。独特の衣装とそのデザインのユニークさ。褐色の肌に原色が似合う。日本では考えられない色使い。形の美しさ。女性ならずとも目を引かれる。

Gen1_2   しかし、「母たちの村」は「それでもボクはやってない」のようにただ戸惑い翻弄されるだけではない。「母たちの村」は戦う映画である。その点では「スタンドアップ」により近い。実際、どちらも似た展開になる。共に1人の女性が男たちの不当な扱いに抗議して立ち上がり、次第に仲間の協力を得て覆してゆくという展開である。「スタンドアップ」のシャーリーズ・セロン同様、主演のファトゥマタ・クリバリが圧倒的な存在感を示している。「スタンドアップ」ではあからさまなセクハラ攻撃が描かれるが、「母たちの村」ではあからさまと言うよりは昔から続いてきた当然のことという現れ方をする。男たちはただ「割礼は大昔から伝えられたイスラムの定めだ」と決め付けるばかり。

  直接圧力をかけてくるのは村の女たちである。赤い衣装に身を包み、峻厳な表情で立ちはだかる割礼師たちの不気味さ。「スタンドアップ」同様、女たち自身が「伝統の儀式」を当然のこととして受け入れてきたのだ。割礼は「神の定めた伝統」という目に見えない圧力で締め付けてくる。宗教的盲目性が迷信のような考え方と結びつき、テレビやラジオを女性から取り上げるという行動に出る。女性から楽しみを奪う、外の世界の知識が入り込むことを断ち切るというのは性的支配の論理である。しかし手術が元で死ぬ子供や身投げをして自殺する子供が後を絶たず、女性たちはヒロインのコレを支持する側に回り、男たちに立ち向かう。強い視線で男をにらみ、堂々と村の長老たちに言い返すコレに深い共感を覚えずにいられない。ラストのクライマックスで、コレの「ワッサー、ワッサー」という叫び声に応えて、女たちは歌い始め、踊り出す。「アマンドラ 希望の歌」を思い起こさせる感動的なシーンだ。アフリカの人々は心を奮い立たせる時、体全体を使ってリズムを取り歌いだすのである。「女性たちは素晴らしい 女性たちは生命を産む。」

  映画全体から映像とドラマの持つ力強さがはじけだしてくる。特定の地域の特定の儀式を超えて、深く人間的感情に訴えてくる。日本ではじめて公開されたアフリカ映画「エミタイ」の上映から22年。ついにアフリカから世界でも最高水準の傑作が出現した。

 「母たちの村」 ★★★★★

「母たちの村」のレビュー

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コメント

YOSHIYU機さん TB&コメントありがとうございます。
アフリカを題材にした力作が最近増えていますが、やはりアフリカ人自身がアフリカを描いた作品がもっと日本でも見られるようになると良いですね。
女性器切除やモーラーデなどは日本ではあまりなじみのないものですが、そういう文化や習慣、考え方の違いを超えて心の奥深くに強く訴えてくる映画でした。すばらしい作品でしたね。

こんばんは。
遅くなりましたが、コメント有難うございました。
風習、色使い、アフリカ独特の世界観を持った映画でしたね。
遠い世界の話ですが、映画だと身近に感じれますね。
これからのアフリカ映画界が楽しみになる作品でした。

kimion20002000さん コメントありがとうございます。
これほど素晴らしい映画だとは予想していませんでした。もっといろんなアフリカ映画を観たいという気持ちになりますね。
この映画は何とかレビューを書きたいと思っていますので、その時に改めてTBとコメントをいたします。

こんにちは。
この作品、僕もとても感銘を受けましたね。
アフリカ、侮るべからず!という感じで。
普通の小さな村の出来事に焦点をあてて、ちゃんと、世界の断片にまで、思いを馳せられようにつくられています。
で、単純な社会派ドキュメントではなく、アフリカのとくに女たちが持っている美しさ、たくましさ、率直さのようなものが感じられました。

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