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2006年12月31日 (日)

ユナイテッド93

2006年 英米 2006年8月公開
評価:★★★☆
原題:UNITED 93
監督・製作・脚本:ポール・グリーングラス
脚本:ポール・グリーングラス
撮影:バリー・アクロイド
出演:コーリイ・ジョンソン 、デニー・ディロン、タラ・ヒューゴ 、サイモン・ポーランド
    デヴィッド・ラッシュ、ハリド・アブダラ、ポリー・アダムス、オパル・アラディン

 「アメリカ、家族のいる風景」のレビューを書いたとき、その時点ではまだ観ていなかった「ワールド・トレード・センター」と「ユナイテッド93」について次のように書いた。「限定された状況をどのように描いたか気になる。現場の混乱や緊張感に焦点を絞ればサスペンスや臨場感は盛り上がるが、その分広い社会的視野がスクリーンの外に追いやられる。単なるサスペンス映画、アクション映画に終わっていなければいいが。」結論から言えば「ユナイテッド93」は懸念したとおりの作品だった。

  純粋にサスペンス映画として観れば、結構よくできている。テロリストたちの点描、ごく普通の空港の様子から始まり、予定より30分以上も離陸が遅れている間に、他の2機の飛行機がワールド・トレード・センターに激突、さらにはペンタゴンにも1機が墜落、一方でハイジャックの可能性に気づいた管制塔や軍は必死で情報を集めようとするが事態を掴みきれず大混乱に陥っている。ようやく離陸したユナイテッド航空93便では乗客たちが新聞を広げ、携帯をかけ、食事をしている。やがて爆弾を手に持ったテロリストたちが93便をハイジャックする・・・。

  非常にリアリティのあるドキュメンタリー・タッチで、ハラハラしながら画面に見入ることにDeep_blue_moon3_1 なる。管制センターの巨大スクリーンにはもう何度も見慣れたあの黒煙を上げるワールド・トレード・センターが映し出されている。管制官や軍の関係者たちはあわただしく走り回り、モニター画面を見つめて何度も大声で呼びかけ、緊張した面持ちで打ち合わせをしている。電話を掛けまくり、舌打ちをし、命令を発し、また電話をかける。同時間に数千機もの飛行機が飛んでいて全体を把握しきれないあせり。膨大な量の情報が入ってきていながら肝心なことがつかめない焦燥感。軍との連絡もうまく取れない。軍は軍で戦闘機を飛ばそうにも手配に手間取る。攻撃許可を得ようとしても、判断を下す肝心な高官たちがつかまらない。誰もが混乱していた。映画の特に前半までのドキュメンタリー・タッチの生々しさはかなりの出来ばえである。前編をほぼリアルタイムで描いたことも迫真性を盛り上げる上で効果的だった。また、有名俳優を一人も使わなかったことも功を奏している。特定の人物を英雄的視するのではなく、その場の状況全体に眼を向けられるからである(同時に安上がりでもあるが)。

  しかしこれだけ現場に密着していながら、いや密着しているがゆえに、大状況が何も見えてこない。テロリストが祈りを上げている場面から始まるが、何故に彼らがこのような行動に打って出たのか、なぜかくも多くの一般人が犠牲にならなければならなかったのか、それこそ肝心なことは何も語られない。ただ行動とその推移だけが臨場感たっぷりに映し出される。9・11テロはアメリカばかりかその後の世界情勢を大きく変えてしまった。アフガン、イラクと続いたアメリカのテロ報復攻撃。それに追随したイギリスを始めとする多くの国々。政治面ばかりではない。映画の分野でも昨年から今年にかけて9・11後を反映したシリアスな作品が多数公開された。その中で「ワールド・トレード・センター」(こちらは未見)と「ユナイテッド93」は9・11そのものを描いたという点でユニークな存在である。しかしあれから5年もたつというのに単なる再現ドラマを作るというのはどういうことか。もちろんあの日起こったことは忘れてはならないことである。いや、忘れようにもあの信じがたい映像は今でも眼に焼きついている。だが、9・11を描くのなら、なぜアメリカがそれほどまで憎まれるのかというそれ以前の状況についても、さらには、アフガン、イラク侵攻と続いたその後の状況と混乱も視野に入れるべきだろう。

  犠牲者への鎮魂という意味はあったかもしれない。しかし製作側の意図が何であったにせよ、結果的にはむしろテロへの反撃を助長する映画になっているという見方すら可能である。あの日93便の中で何が起こっていたのか。今となっては誰にも分からない(戦闘機に撃墜されたという説もある)。生存者は一人もいなかった。当然映画の後半は想像である。ドキュメンタリーを観ているようなリアリティは後半薄れる。代わって別のリアリティが現われてくる。想像によって作られたドラマの迫真性である。前半のドキュメンタリーは後半になってドラマに変わる。乗客がテロリストたちに襲いかかるあたりが一番作り物めいている。そのドラマが描いたのは何か。テロリストに対する乗客の反撃である。いつの間にか気づかないうちに典型的なアメリカ映画になってしまっている。この映画が批判したのはいたずらに混乱するばかりで的確に事態を把握できないテロ対応体制の不十分さである。「93便が墜落して4分後に、ハイジャックされたということが判明した」という最後の字幕がそれを示している。テロは許されるべきではないし、それへの充分な対策も必要だ。しかしテロへの反撃と対応策を強調するだけならアフガンやイラクへの侵略行為を追認することになる。

 もちろん、この映画が犠牲者をだしにして単なる娯楽映画を作ったとまで言うつもりはない。理不尽なテロにあったときに、自衛のために反撃する権利は誰にでもある。当然誰もが生き延びようとしただろう。しかし大状況が一切描かれていないために、9・11後の文脈においてみると上記の様な観方が可能になってしまうのである。優れた演出力を示していただけに、現場の臨場感作りに終始したことが惜しまれる。

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