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2006年5月17日 (水)

ニワトリはハダシだ

2003年 日本 2004年11月公開 043205_1
監督:森崎東
脚本:森崎東、近藤昭二
撮影:浜田毅
音楽:宇崎竜童
音楽プロデューサー:佐々木次彦
出演:原田芳雄、肘井美佳、浜上竜也、倍賞美津子
    守山玲愛、加瀬亮、塩見三省、余貴美子
    石橋蓮司、岸部一徳、笑福亭松之助、柄本明

  これまで森崎東監督の作品は「男はつらいよ フーテンの寅」(1970)と「女咲かせます」(1987)の2本しか観ていなかった。「ニワトリはハダシだ」が3本目となる。『キネマ旬報』の2004年ベストテンで8位にランクされた作品なので前から気になっていたが、ようやく今年の3月末にDVD化された。

  様々な社会問題を取り込みながら全体としてコメディに仕立て上げている。かなりの力業である。深刻なテーマをコメディ・タッチで描くという作風は「この素晴らしき世界」「ライフ・イズ・ミラクル」を連想させるが、印象はだいぶ違う。出来もかなり落ちる。庶民的感覚があふれているところや、登場人物たちが真剣に走り回っているのだがどこかこっけいだという作りは「ライフ・イズ・ミラクル」に似ている。ではどこが違うのか。「ライフ・イズ・ミラクル」が戦争という「状態」を背景に主人公たちの人間模様を描いているのに対し、「ニワトリはハダシだ」は検察と警察がからむ汚職事件がメインのストーリーを形成しており、それを中心に展開してゆく。「ライフ・イズ・ミラクル」では戦争は間接的にしか描かれない。その分登場人物たちの人間関係を十分描けた。「ニワトリはハダシだ」ではメインの汚職事件に加えて、さらに警察や検察内の体制派・反体制派の確執、警察と暴力団の癒着、知的障害者の問題(冤罪も含む)、在日コリアンの問題、外国人労働者などの問題が絡み合っている。さまざまな問題が絡み合うメインのストーリーと交錯するようにして家族の絆(夫婦、親子)というテーマが展開されている。正直言って、あまりに内容を盛り込みすぎて消化不良になっていると言わざるを得ない。ごった煮状態になってしまった分、それぞれの問題の追求も家族のテーマの掘り下げもみな中途半端になってしまった。

  「ライフ・イズ・ミラクル」もさまざまな要素(ブラック・ユーモア、皮肉、辛辣さ、隠喩や寓意、不条理さ、寓話性とメルヘン、等々)がごった煮的にぶち込まれている。だがテーマ自体は単純であり、それをさまざまな角度や味付けで描いた。だから一貫したストーリー展開など捨てているが、そこには人生があふれかえっていた。「ニワトリはハダシだ」では問題を沢山抱え込みすぎている上に、警察とやくざと主人公の家族が追いかけっこをするというストーリーが展開の中心にあるため、めまぐるしいドタバタ的展開に追われてそれぞれの踏み込みが浅いという印象を受けるのである。勇壮な火祭り、吉原万灯篭などの観光的な映像までこれでもかと盛り込まれているのだが、ただ背景の風物として描かれているだけでテーマとは何の関係もない。

  挑戦的かつ大胆なテーマとか現代社会が抱えるタブーへの切り込みが評価されてきた森崎監督だが、その割には「ニワトリはハダシだ」の切り込みの深さをほめる人はあまりいない。在日コリアンの問題などちょっと触れられた程度で、「GO」や「チルソクの夏」「パッチギ!」などとは比べるべくもない。賄賂事件そのものもテレビドラマに出てくる程度のもので、いわばお決まりのパターンの域を出ない。しかも真相は最初から見えているようなものなので、やくざと主人公たちのドタバタ調追いかけっこが焦点になってしまう。中心となる親子のドラマもそのせいで薄められてしまっていることは否めない。だから、この映画をほめる人でも、むしろそこで展開されるドタバタの生み出すエネルギッシュな活力、痛快さ、ユーモアあふれる人間的な温かみ、ちょい役ながら次々と出てくる大物俳優の強烈な印象を与える個性の強さや新人俳優たちのさわやかさをほめている。

  要するに、別に汚職事件でなくても良かったのだ。庶民のヴァイタリティーと温かさを笑いとエネルギーを交えて描きたかったということだろう。その点では「ライフ・イズ・ミラクル」にも通じるものがある。舞台となった舞鶴の海の美しさ、田舎らしいのどかな風景も共通するものがある。都会派のスマートなコメディではない。

  「ライフ・イズ・ミラクル」と「ニワトリはハダシだ」のもうひとつの共通点は、ともに子供を奪われた親が子供を取り戻そうと努力する点だ。もっとも前者の場合は息子と引き換えにする敵側の女性捕虜と父親が恋愛関係になってしまうという展開になる。後者の場合はむしろ親子愛、ないしは家族愛がテーマになる。前者の場合は戦争のさなかに、それも息子が敵側の捕虜になっているというのに、親父が能天気に恋愛にふけっているという力の抜けようが戦争を無力化し、笑いを生んでいた。たとえ戦争が迫っていようが、彼らは力強く人生を楽しんでいたのである。後者はドタバタ調ながら息子サム(浜上竜也)を救おうと必死で走り回るチチ(原田芳雄)とハハ(倍賞美津子)、そして養護学校の直子先生(肘井美Photo 佳)の姿に惹かれる。中途半端な汚職問題に比べればこの部分は確かによくできている。おたおたすることなく、警察だろうがやくざだろうがひるまず立ち向かう。この部分はハードボイルドなタッチも入り込んでいて、ハハが包丁を差し出してやくざに立ち向かうシーンも出てくる。ただ展開のめまぐるしさに追われて、じっくりと家族愛が描けていないところが物足りない。原田芳雄と倍賞美津子という存在感のある役者を使っていい味を出しているのだが、どうも散漫になっている。「ライフ・イズ・ミラクル」のように、様々な要素が重複的にメイン・テーマを補強しているという展開ではない。

  印象的なシーンはいくつもある。サムを匿うために渡った島の平和なたたずまい、そこで語られたチチとハハの結婚した時のエピソード。在日であるハハが「チョンでもええのん?」と心配して聞くと、チチは「あほう。何人だって構へん、ニワトシはハダシじゃー!」と答えたという。海から上がって濡れて震えている夫の体を自分のスカートで拭きながら、「ニワトリはハダシ、ええ文句や、バタバタせんとドーンと構えときなはれ」と励ます。なかなかいいエピソードだ。

  直子先生の母が娘を励まして言う「布袋さんはな、時々知恵の薄い人のふりをしてこの世に出てきはるねん」というせりふも印象に残る。聞いているわれわれは自然と知的障害を持つサムに布袋さんのイメージをかぶせる。ここには庶民的な知恵がうまく取り入れられている。「親方日の丸が無くならない限り、この国からいじめは無くならない」というお定まりのせりふよりずっと気が利いている。

  この作品が放つインパクトは役者たちの力量に負うところが大きい。「美しい夏、キリシマ」や「父と暮らせば」 などに引き続いて観た原田芳雄はさすがの存在感。別居中の妻を演じた倍賞美津子もいい(森崎東監督の「生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言」〔未見〕でも原田芳雄とコンビを組んでいた)。石橋蓮司、余貴美子、岸辺一徳、柄本明、笑福亭松之助(暴力団組長役がはまること)などのベテランたちもしっかり脇を支えている。だが、出色だったのは直子先生を演じた肘井美佳。この作品がデビューであるが、いきなり出だしから養護学校の生徒たちに囲まれてコサック・ダンスを披露して一気に観客をひきつけてしまう。張り切りすぎて何度もひっくり返ったりするところがまたご愛嬌。田中美佐子そっくりの顔で、目が印象的。まじないと称して寄り目にしたり、くるくると回してみたり、大粒の涙を浮かべてみたり、とにかく目が雄弁だ。そして何といっても、その目に宿るひたむきさがいい。この映画の後さほど活躍していないのは残念だ。

  サムを演じた浜上竜也は曲者ぞろいの大人たちに囲まれてどうしても印象は薄いが、唸りを上げて相手をにらみつけるときの噛み付かんばかりの目つきがすごい。なかなか自然に演じていて好感が持てる。妹のチャルこと千春役の守山玲愛もまたなんともかわいい。サムは障害を持っているという設定だが、記憶力が抜群なのを除けば一見普通の子供に見える。それはあまりリアルに演じすぎるとかえって差別感が助長されるとの判断が森崎監督にあったからだ。彼は「アイ・アム・サム」を観て始まって10分で嫌になってしまったとインタビューで語っている。だからサムを演じる浜上竜也に森﨑監督は「素でいい」と言ったそうである。障害者の描き方を考える上で実に興味深いエピソ-ドだ(名前が同じサムであることに何か含意があるのだろうか?)。

  「ニワトリはハダシだ」というタイトルは、監督によれば、東北に古くから伝わる民謡「おこさ節」の一節にある言葉だそうである。「当たり前のことが当たり前でなくなってきていることへの違和感」をこめてタイトルにしたとのこと。しかしいろいろな意味をこめているようだ。最初に出てきたときは、初めて潜水をするサムの不安を吹き飛ばす意味で、舟をこぐ時に掛け声に使っていた。冬でもハダシでいるニワトリを思えばこんなことはどうってことないという意味だろう。妻のチンジャに言ったときも「わかりきったことを聞くな。お前が朝鮮人だろうと俺はそんなことどうでもいい」という意味で使っている。京都府の舞鶴は終戦直後の大陸からの引き揚げ者を迎えた港として有名だが、かつての軍港だから今でも在日コリアンや外国人労働者が多く住んでいるそうだ。舞台設定としてはぴったりである。そういえば、汚職事件の鍵を握るベンツを盗んで、外国に売り飛ばそうとしていた外国人窃盗団なども出てきた。

  「レインマン」、「アイ・アム・サム」あるいは韓国映画「オアシス」など知的障害者を扱った外国映画は結構あるが、日本ではかなり微妙な問題だ。森崎監督はある知的障害児の母親が言った「この子を隠そうとは思わない。むしろ、うちの子は面白いんだって見せて回りたいぐらい」っていう言葉に突き動かされたとインタビューで語っている。そこから構想が膨らみ、サムが警察に犯人扱いされるストーリーを考え出したそうである。実際、知的障害者が警察の思い込み捜査で冤罪になった実例は少なくないのである。森崎監督は自らの作品を悲劇でも喜劇でもない「怒劇」と呼んでいるが、確かにこの映画にはヒューマンな要素やコミカルな要素に怒りが混じっている。しかし社会批判としては成功しているとはいえない。また、権力を笑い飛ばすにも汚職事件ではありきたりすぎる。結局社会的に弱い立場の人間の喜びや悲しみをヒューマンに描いたところが一番印象に残る。そんな映画である。

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