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2006年3月31日 (金)

亀は意外と速く泳ぐ

Cupgreap 2005年 日本
脚本・監督:三木聡
製作:橋本直樹
撮影:小林元(JS.C)
出演:上野樹里、蒼井優、岩松了、ふせえり、松重豊
     村松利史、緋田康人、要潤、森下能幸
    松岡俊介、水橋研二、温水洋一、岡本信人
    嶋田久作、伊武雅刀、播田美保、柿嶋孝雄
     池田稔、田中聡元、清田正浩、真鍋誠志、松崎貴司

  ブログが不調で散々振り回された。疲れ切って前に予告した映画を観る気力もなかった。そんな時に友人からたまたま借りたのがこの映画。前から1週間レンタルになったら借りようと思っていた作品だ。軽そうだから疲れて気力がないときにはいいだろうと思って観た。

  「イン・ザ・プール」に続く三木聡監督の長編2作目。「イン・ザ・プール」も気にはなっていたがまだ観ていない。したがってこの2作目が三木聡監督初体験。「亀は意外と速く泳ぐ」は「これまでに全くなかった“脱力系”エンターテインメント」が売り。ふ~ん、本当にそうか?TVでやっていることを映画でやっただけじゃないのか?これが正直な感想だ。個性的な出演者をそろえた割には映画に出てくるラーメン同様「そこそこ」の出来。小ネタを並べただけ。同じ「豪華」キャストでも「タンポポ」にとうてい及ばない。

  この映画の「ゆるさ」がたまらなく合うという人もいるようだ。確かにただくすくす笑ってぼけ~っと時間をすごすにはいいかもしれない。それ以上のものではない。そもそも外国のスパイという設定がばかげている。最後は秘密のミッション遂行のためにスパイたちが地下に降りてゆくが、もうシュールというよりバカバカしいだけ。まあ完全に作り物のコメディだからうるさいことを言ってもしょうがないが、もっとしっかり作って欲しい。メインのストーリーは取ってつけたようなものでしかなく、ショートコントの積み重ねでつないでゆくだけ。よく、泣くのを目的に映画館に行く人たちがいるが、これはそれと同じで笑うことを目的に映画館に行く人たち向けの映画。

  確かに舞台出身の芸達者たちはみな悪くない。岩松了とふせえりのスパイ夫婦を始め、温水洋一、松重豊、村松利史、嶋田久作、伊武雅刀などそれぞれいい味を出している。特にラーメン屋のオヤジ松重豊のエピソードはよくできている。行列ができるうまいラーメンも作れる腕を持ちながら、目立ってはいけないスパイの宿命で「そこそこ」の味のラーメンしか作れない男の悲哀感がよく出ている。その曲者ぞろいの脇役以上に魅力的なのは主人公片倉スズメを演じる上野樹里と彼女の幼馴染の扇谷クジャクを演じる蒼井優である。とにかく上野樹里がかわいい。蒼井優のはちゃめちゃさも魅力的だ。

  にもかかわらず映画全体としてはそこそこの出来なのだ。全体の構成がズルズルだからである。役者は芸をしているのに監督に芸がない。蒼井優が感電してアフロのようなチリチリ頭になるのはお定まりのギャグで平凡。「あずきパンダちゃん」などのつまらない小道具をやたらと使って受けを狙うというのも情けない。テーマなどそっちのけで、小道具などどうでもいい細かいことにばかり興味を持つ趣味的映画ファン向けに作られている。そんな感じの映画だ。

  つまり、テレビと同じ感覚で作られ、同じ感覚で観るための映画なのだ。タイトルの「亀は意外と速く泳ぐ」が象徴的である。これは映画の中に出てくる「研究用の危険な細菌は、車だと万が一の事故がこわいので、普通のおばさんが電車で運んでる」、「“止まれ”の標識の中にたまに“止れま”がある」などと同じもの、すなわち、スパイ活動を通じて片倉スズメが発見した「日常の裏側に隠れていた意外な事実」である。要するに「トリビアの泉」なのだ。「亀は意外と速く泳ぐ」は三木聡がテレビで書いてきた「ダウンダウンのごっつええ感じ」、「笑う犬の生活」、「トリビアの泉」なとの延長線上にある映画なのである。言い方を替えればテレビと同じ程度の映画にすぎないのだ。最近著しくレベルが上がってきた日本映画の秀作群と比べるとどうしても見劣りしてしまう。

  ただ、少なくとも上野樹里と蒼井優は十分魅力を発揮している。この二人の魅力を楽しむつもりで観ればそれなりに満足できるかも。

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