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2006年3月26日 (日)

タンポポ

kamuro1 1985年 日本
脚本:伊丹十三
監督:伊丹十三
撮影:田村正毅
音楽:村井邦彦
美術:木村威夫
出演:山崎努、宮本信子、役所広司、渡辺謙、桜金造
    安岡力也、加藤嘉、大滝秀治、 黒田福美、村井邦彦
    松本明子、大友柳太朗、池内万平、野口元夫
    嵯峨善兵、 成田次穂、田中明夫、高橋長英
    橋爪功、岡田茉莉子、久保晶、 里木佐甫良、MARIO ABE
    加藤賢崇、高木均、二見忠男、洞口依子、藤田敏八、篠井世津子
    横山あきお、原泉、津川雅彦、中村伸郎、井川比佐志

  「お葬式」に続く伊丹十三の監督2作目。タンクローリーの運転手が、さびれたラーメン屋を立て直し、町一番の店にしてまた去ってゆくまでを描いている。タンポポとは店の女主人の名前であり、またそこから取った店の名前でもある(元は「来々軒」というありがちな名前だった)。ふらりと現れた風来坊が店の再生に一肌脱ぎ、また去ってゆく。併せて淡い女主人との恋がつづられる。まるで「シェーン」のような展開だ。伊丹十三の言葉を借りれば「ラーメン・ウェスタン」。公開当時結構評判になったのでこの程度は知っていた。しかしタイトルがあまり魅力的ではなかったのか、「タンポポ」は今まで観ていなかった。

  「お葬式」(1984年)、「タンポポ」(1985年)、「マルサの女」(1987年)、「マルサの女2」(1988年)、「あげまん」(1990年)、「ミンボーの女」(1992年)、「大病人」(1993年)、「静かな生活」(1995年)、「スーパーの女」(1996年)、「マルタイの女」(1997年)。「静かな生活」以外はすべて観た。どれもエンターテインメントとしてよくできている。こう並べてみると挑発的なタイトルが多く、「タンポポ」だけが確かに地味である。今頃「タンポポ」を観たくなったのは、友人が伊丹十三作品では「タンポポ」が一番いいと言ったからだが、それ以上に『ヨーロッパ退屈日記』(「パニのベランダで伊丹十三を読みながら」参照)、『女たちよ!』 、『再び女たちよ!』の3冊のエッセイ集を読んだからである。とにかく彼のエッセイは面白い。彼がとんでもないこだわり人間、薀蓄人間であることを知ったのはこれらのエッセイを読んでからである。日本人には使いにくいダンディという形容詞が似合う人で、料理もうまい。その彼が作った「ラーメン映画」なら面白いはずだ。そう思ってしばらく前から借りてくる機会をうかがっていたのである。どちらかというと「マルサの女」や「ミンボーの女」のドスの利いた宮本信子が好きなのだが、この映画もよかった。

  ついでに予告をしておくと、ちょうど今観たい新作DVDがなくなったので(「NANA」はいつもレンタル中)、4月までは自前のライブラリーから懐かしい作品を中心に選んで観ようと考えている。「黒いオルフェ」、「本当のジャクリーヌ・デュ・プレ」、「子供たちの王様」(チェン・カイコー監督)、「ザ・フロント」、「パッション・フィッシュ」、「ミツバチのささやき」、「山の郵便配達」、「わが心のボルチモア」辺りが現在の候補。「日曜日には鼠を殺せ」はその第1弾だった。もっとも、どれを観るかはそのときの気分しだいなので、どうなるか分からない。

  先のことはともかく、「タンポポ」はまず納得の行く出来。楽しめた。意外だったのは主筋に関係のない様々な食べ物に関するエピソードが挿入されていたこと。最後に全員ラーメンを食べに来るのかと思っていたが、まったく最後まで関係のないまま。昨今は複数の筋が互いに絡まりあう展開の映画が多いので、逆に新鮮だった。伊丹十三らしい遊び心。ラーメンの具のようにそれぞれのエピソードが自分の味を主張しあっている。それを麺とツユに当たるメイン・ストーリーと一緒にご賞味下さい、ちゃんと一つに解け合って絶妙な味になっています、ということか。

  何と言っても伊丹十三の持ち味はその軽妙さにある。意外にも薀蓄はそれほど傾けていない。メイン・ストーリーに絡む登場人物は、ラーメン屋の女主人タンポポ(宮本信子)、タンクローリーの運転手ゴロー(山崎努)とガン(渡辺謙)、お助け隊のショーヘイ(桜金造)、ピスケン(安岡力也)、センセイ(加藤嘉)。「シェーン」で言えば、山崎努がアラン・ラッドの役で宮本信子がジーン・アーサーに当たる。ブランドン・デ・ウィルデに当たるターボー(池内万平)という子役もいる。ただジーン・アーサーの夫ヴァン・ヘフリンに相当する役はない(すでに亡くなっているという設定)。ライカー一味が雇った殺し屋ジャック・パランスに当たるのが安岡力也なのだろうが、こちらは大喧嘩をして逆に仲良くなってしまうという「静かなる男」(ジョン・フォード監督)のパターン。ヴィクター・マクラグレンと同じ大男なので、案外意識した配役かも。最後に去ってゆくゴローとガンを見送るのはタンポポではなくこのピスケン。ただし野太い声で「ゴロー、カムバ~ック」と叫んだりはしない。タンポポを助ける助っ人がだんだん集まってくるあたりは「七人の侍」のパロディか。他にも色々パロディを忍ばせているのだろうが、そんな詮索はマニアに任せておけばいい。そんなことを知らなくたって十分楽しめる。

  「ラーメン・ウェスタン」を標榜しているが、基本的にはコメディ映画である。メインのストーリーはあるが、全体にエピソードの寄せ集め、積み重ねで構成されている。タンポポの味修行は意外にあっさりとしか描かれない。体力づくりと称して水を入れた大なべを何度も運ばせたり、マラソンしたり、なんだか「ロッキー」みたいだ(笑)。味そのものは他の店から盗んでくる。特に愉快なのはスープのだしを盗むシーン。金で買い取ろうとするがとんでもない額039195 を吹っかけられる。同じ店の男が安い値段でいいからと声をかけたので承知すると、なんと連れて行かれたのが隣の店。どんどん店の奥に入って行き、暗がりに入って行くのでタンポポが不安になって逃げ出そうとすると、男は小さな隙間を指差し、ここから覗けと言う。見るとラーメン屋の主人が出汁を作っているところだ。まあ、こんな感じで、味修行といってもほとんど他の有名店を食べ歩くのが主。時々策略を弄してコツを聞き出す程度。味にうるさいオヤジを助っ人として集めたといっても特に調理の指導をするわけではない。実際にやったのは店の改装とタンポポの衣装や髪型を変えた程度。結局はタンポポ自身がいい味を引き出せるようになるしかないというわけだ。

  もちろん伊丹十三のことだ、いくらでも蘊蓄をテンコ盛りにできただろう。そうしたい誘惑もあったに違いない。それをあえて抑え、蘊蓄の代わりに一口コントのようなエピソードを寄せ集めたのが成功したといえる。見事な味付けのさじ加減だった。『ヨーロッパ退屈日記』に現地で拾ってきたたくさんの小話が出てくる。まさにそういう感じ。奇想天外な展開である。一番すごいのは大滝秀治がぜんざいのもちをのどに詰まらせるところ。すかさずタンポポが電気掃除機を持ち出し、ホースを口に突っ込んでもちを吸い出す!「そこまでやるか?!」というくらいとんでもない映像だった。

  だから、面白いのはむしろ脇筋の方だ。中でも中心になり何度も出てくるのは白服の男とその愛人のエピソード(役所広司、黒田福美)。二人で卵の黄身を何度も口移しにするシーン、あるいは洞口依子(まだ子どもだ!)が取ってきた牡蠣を役所広司が食べるシーン(貝で唇を切って血が出る)などは実にエロティックである。開いた牡蠣の上に赤い血が一滴したたるところは強烈な映像だった。最後に銃で撃たれ血まみれになって死んでゆくが、死ぬ前に食べ物のことを口にするところが可笑しい。

  他にも、映画館でガサガサ音を立ててポテトチップスを食べるアベック(死語、懐かしい響きだ)のエピソード(村井邦彦、松本明子)、ラーメンの食べ方の本を朗読させ、そのイメージを思い描いている場面(大友柳太朗)、フランス料理のレストランでの接待(橋爪功、加藤賢崇)、焼肉屋の詐欺師(中村伸郎)、レストランでの食事マナー講習会でズルズルと音を立てて麺を食べる話(岡田茉莉子)、歯痛に悩む男(藤田敏八)、スーパーでやたらと商品を突つく老婆(原泉、津川雅彦)、グルメの乞食集団(加藤嘉)、臨終の妻が炒飯を作って死ぬ話(井川比佐志)、そして先ほど触れたもちをのどに詰まらせる老人の話(大滝秀治 桜金造)。エピソードも配役も実に多彩である。特にグルメの浮浪者が調理場に忍び込み、そこですごくうまそうなオムライスを子供に作ってやる場面は傑作だ。鮮やかな手つきでオムライスを作り、不審に思った警備員が覗きに来たときには間一髪逃げ出す。手際のよさと抜群のタイミングは「独裁者」で床屋のチャップリンが「ハンガリー狂詩曲」に合わせて独裁者の髪を刈るシーンを思い出した。曲に合わせて手を動かし、曲が終わると同時に髪を切り終わる。神業だった。「タンポポ」も伊丹監督自らフライパンを握ったところに芸人魂を見た。確かあのオムライスの作り方はエッセイのどれかに書いてあったと思う。

  井川比佐志と妻の話も傑作だ。なぜか井川比佐志が必死に走っている。家に飛び込むと妻が臨終を迎えていた。井川比佐志が妻に「しっかりしろ!そうだ、何か食事を作れ」と呼びかけたら、奥さんがいきなりむっくりと起き上がり、チャーハンを作り始める。作り終えるとばたんと倒れて死んでしまう。ワーワーと泣く子どもを叱りながら親子でチャーハンを鍋からよそって食べる。シュールな話なので泣けはしないが、非常に印象的だった。

  しかしまあ、みんな若いこと。特に役所広司と橋爪功の若いのには驚く。黒田福美も「ロード88」ではすっかりおばさんになっていたが、こちらは若すぎて分からなかった。逆に大滝秀治が変わらないのも仰天もの。また小津映画の常連中村伸郎がすっかり皺だらけの爺さんになって出てきたのにも驚いた。声と話し方は変わらないのですぐ分かった。

  変形オムニバスのような映画だが、まとまりは不思議とよい。食という生活の基本をテーマにすえた映画は意外と少ない。いわゆるラーメンブームはこの後のはずだ。とにかく楽しませることに徹した映画。伊丹十三が映画を作りながら自分でも楽しんでいたであろう事がよく伝わってくる。俳優から監督に転向して成功した人は少なくないが、日本ではまだそれほどいない。父親が伊丹万作という日本映画黎明期の大監督だったという血も感じさせる(作風はだいぶ違うが)。若い母親が赤ん坊に授乳しているシーンをエンディングに持ってきたことにも伊丹十三のセンスを感じさせる。母乳は誰もが最初に味わう「お袋の味」である。食に対する伊丹十三のこだわりが明示されたエンディング。これがまた一つのエピソードになっていると感じられるのがすごい。

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コメント

カゴメさん TB&コメントありがとうございます。

この映画のレビューが実に少なくTBを一つも送っていませんでした。当然TBが返ってくることもなくさびしい記事になっていたのですが、ドドーンと届いた4人分くらいの特大コメントヽ(^O^;)ノ

申し訳ない、カゴメさんのレビューを見落としていました。まさか常連さんでこの映画のレビューを最近書いている人がいるとは思ってもいませんでしたよ。僕自身レンタル店で突然思い出して借りてきたくらいですから。
カゴメさんもご指摘の通り、脇筋が実に面白い。伊丹監督自身も楽しんで作っていたんでしょうなあ。大物役者から変な曲者役者まで揃い踏み。

僕もたっぷり堪能しましたよ。「静かな生活」も観なくっちゃね。

「タンポポ」、初めてご覧になったんですね!きっと堪能された事と思います。
この作品、本当に不思議な味わいの作品ですよね。
のっけから異様な出だしで、
ずーーっと摩訶不思議なエピソードが展開しますが、
絶妙な構成力できちっとまとめられてますね。
オムニバスでもないし、こういうの何と言うんでしょうね?

>今頃「タンポポ」を観たくなったのは、友人が伊丹十三作品では「タンポポ」が一番いいと言ったからだが、

カゴメも、「一番面白くて、何度観ても飽きない」のはこの作品だと思います。
一番印象に残っているのは「静かな生活」ですが(あれは良い作品です。大江らしい臭みがあるけど)・・・。

>こちらは大喧嘩をして逆に仲良くなってしまうという「静かなる男」(ジョン・フォード監督)のパターン。

予想通りのベタな展開が最高ですね(笑)。
カゴメの若い頃の喧嘩はあれが標準でした。やった後は必ず仲直り。それが暗黙の了解でした(当時のアニメやドラマの影響ですね)。

>映画館でガサガサ音を立ててポテトチップスを食べるアベック(死語、懐かしい響きだ)のエピソード(村井邦彦、松本明子)、

んがぁぁー、あれが松本明子だったですか!?
気がつかなかったっ!

>手際のよさと抜群のタイミングは「独裁者」で床屋のチャップリンが「ハンガリー狂詩曲」に合わせて独裁者の髪を刈るシーンを思い出した。

あの役者さんは、「できるかな」の“ノッポさん”、高見映さんです。
流石に年季の入った挙動ですね(笑)。スムーズです。

>一番すごいのは大滝秀治がぜんざいのもちをのどに詰まらせるところ。

あの詰まらせる手前までの一人芝居がまた絶妙であります。

>また小津映画の常連中村伸郎がすっかり皺だらけの爺さんになって出てきたのにも驚いた。

あの口を、い汚なくすぼめて北京ダックを頬張る表情(笑)。
小津さんが観たらなんと言ったでしょうねぇぇ(笑)。

ほんに見所満載のオモロイ作品であります…。

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