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2006年1月 9日 (月)

海の牙

1946年(日本公開1948年) フランス deep-blue01-5
監督:ルネ・クレマン
脚本:ジャック・コンパネーズ、ヴィクトル・アレクザンドロフ
脚色:ルネ・クレマン、ジャック・レミー
撮影:アンリ・アルカン
音楽:イヴ・ボードリエ
出演:ポール・ベルナール、アンリ・ヴィダル 、ヨー・デスト
    フロランス・マリー、クローネ・フォルト、マルセル・ダリオ
    フォスコ・ジャケッティ、ミシェル・オークレール
    アンヌ・カンピオン、ジャン・ディディエ

 「海の牙」は「鉄路の闘い」(45)、「禁じられた遊び」(52)、「居酒屋」(56)、「太陽がいっぱい」(60)、「パリは燃えているか」(66)などと並ぶルネ・クレマンの代表作である。ドイツの潜水艦Uボートを舞台とした映画だが、「眼下の敵」や「Uボート」、比較的最近のものでは「レッド・オクトーバーを追え!」、「クリムゾン・タイド」、「U-571」、「ユリョン」などとは全く違うタイプの映画である。駆逐艦から爆雷攻撃を受ける場面も最初の方に一度だけ出てくるが、戦闘場面はそれだけである。よくある潜水艦同士の戦いや駆逐艦との死闘を描く映画ではない。潜水艦の内部という外部のない限定された空間内で展開される人間ドラマである。

  時は第二次大戦終了間際。ノルウェーのオスロからドイツの高官たちを乗せた潜水艦が出航する。乗船しているのはハウザー将軍(クローネ・フォルト)、ゲシュタポの幹部フォスター(ヨー・デスト)、イタリアの実業家ガロージ(フォスコ・ジャケッティ)、ガロージの妻で実はハウザー将軍の愛人であるヒルダ(フロランス・マリー)、対独協力者であるフランス人新聞記者クーチュリエ(ポール・ベルナール)、ハウザー将軍の男色相手であるチンピラのウィリー(ミシェル・オークレール)。他にスカンジナビア人父娘(父親が科学者)も乗っている。この父娘を見て記者のクーチュリエは「他にフランス人、イタリア人、ドイツ人、まるでノアの箱舟だ」とつぶやく。しかしこの箱舟は洪水から逃れるのではなく、逆に「洪水」の中に飲み込まれてゆく。その「洪水」とはナチスドイツの崩壊という渦巻きである。第三帝国の崩壊と運命を共にするかのように潜水艦の中の人間関係も崩壊してゆく。Uボート自体もその乗組員を救ったドイツ軍の補給船も渦巻きの中に飲み込まれ沈んでゆく。「海の牙」は冷徹な視線でその狂気に満ちた断末魔の地獄絵図を映し出してゆく。フランス語の原題は「呪われた人々」、あるいは「地獄に堕ちた人々」という意味である。

 映画の視点はフランス人の医師ギベール(アンリ・ヴィダル)の視点である。彼はUボートが駆逐艦に爆雷攻撃を受けた時にヒルダが怪我をしたため、フランスの沿岸の町ロワイアンから拉致されてきた。軍医が乗っていなかったのである。

 ドイツは既に敗戦寸前であり、ハウザー将軍たちに与えられた使命は南米に脱出しそこで再起を図ることである。登場人物の中ではハウザー将軍を演じるクローネ・フォルトとゲシュタポのフォスターを演じるヨー・デストの存在感が抜群である。特にヨー・デストのぞっとするような凄みは特筆ものだ。30年ほど前にテレビで観たときも、淀長さんが彼の不気味さをとりわけ強調していたのを覚えている。

 もうひとり印象深いのはハウザー将軍の愛人ヒルダに扮したフロランス・マリーである。ミシェル・モルガンと見間違うほど似ている。夫の実業家ガロージが彼女と将軍の関係に悩んで自殺した後、あからさまに将軍にまとわりつく。相手にされないとなるとチンピラのウィリーに色目を使い出す。妖艶というほどではないが、男ばかりの潜水艦の中で一際人目を惹く存在となっている。その人間関係を見事に表しているシーンがある。ハウザー将軍とフォスターが四角いテーブルを挟んでチェスをしている。空いている2面にヒルダとウィリー058785が向かい合わせで座っている。チェス盤に夢中になっている将軍とフォスターの横でヒルダは向かいのウィリーに色目を使う。4人がチェス盤を囲み、視線が交錯する。ねじれた人間関係の危うさを示す見事なシーンである。

  航行中にベルリンが陥落しヒトラーが死んだとの連絡が入る。目的を失い困惑するハウザー将軍とあくまで当初の使命を遂行すべしと迫るフォスター。最初はハウザー将軍が指揮を取っていたのだが、進退窮まって彼が迷った時フォスターが代わりに指揮を取る。ドイツの敗戦が決定的になり、乗り込んでいる人々にあせりと不安が広がる。フォスターはあくまで南米行きを強行するが、次々に脱落者が出てゆく。先に自殺した実業家ガロージに続いて、フランス人新聞記者クーチュリエはボートに乗って脱出しようと試みるが、フォスターに見つかり銃で撃たれる。甲板に残された彼の服をフォスターが靴でける。服の下からクーチュリエが自殺用に持っていた薬物を入れた丸いブリキ缶が転がり出る。缶のふたがはずれて薬が飛び出る。この薬をいつ飲むかが問題だと彼は生前言っていたが、皮肉にも薬を使わずに地獄に堕ちていった。このような細かい描写が実に効果的である。拉致された医師ギベールもゴムボートを使って脱出しようとするが、何とスカンジナビア人の科学者に先を越されてしまう。彼は脱出に成功したが、娘は置いてきぼりだ。船が沈没する前にネズミが逃げ出すというたとえの通り、このようにして崩壊状態が進んでゆく。

 南米近くまで来たとき、現地の様子を伺うためにスパイである商人(マルセル・ダリオ)に連絡を取るが返事がない。フォスターが上陸して乗り込むとスパイは逃げてしまう。結局チンピラのウィリーに殺されてしまうが、コーヒー豆倉庫での追跡シーンとスパイが殺される場面(特に、追い詰められたスパイが机の横を走り抜けた時そこに置いてあったナイフの先端に触れ、ナイフがくるくると回転する場面は映像効果として秀逸である)は有名である。もはやスパイさえも寝返っている。

  燃料が残り少なくなった潜水艦は見方の補給船を呼ぶ。燃料を補給している間に、既に士気の統制がきかなくなった乗組員たちはなだれを打って補給船に乗り移る。その時フォスターはほとんど狂気とも思える挙に出る。ここに至って一気にカタストロフィが訪れる。詳しくは実際に観てもらうとして、結局Uボートに医師ギベールがたった一人取り残される。何日間も漂流する間に彼は一切の顛末を手記として記録する(要するにこのために彼が必要だったのである)。彼は最後にアメリカの魚雷艇に救出される。誰もいなくなったUボートは魚雷艇の魚雷によって沈められる。

 「海の牙」は極限状況における人間模様を描いたドラマであると同時に、崩壊してゆく第三帝国の象徴劇でもある。戦闘場面のほとんどない潜水艦映画。第二次世界大戦終結の1年後に作られたこの映画はいまだに唯一無二の作品である。前作「鉄路の闘い」(第二次世界大戦中におけるフランスの鉄道労働者によるレジスタンス活動を描いた映画)に続いて作られたこの映画によって、ルネ・クレマンは巨匠としての名声を確立した。

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