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2005年9月11日 - 2005年9月17日

2005年9月11日 (日)

山田洋次監督「家族」

1970年(松竹)  tenkiyuki
監督:山田洋次  
脚本:山田洋次、宮崎晃   
撮影:高羽哲夫  
出演:倍賞千恵子、井川比佐志、笠智衆、前田吟
    春川ますみ、花沢徳衛、森川信、ハナ肇
        渥美清、木下剛志

 ある家族が長崎の南端に浮かぶ伊王島から北海道の中標津にある開拓村まで3000キロの旅をする過程を描いた映画だ。風見精一(井川比佐志)は炭鉱で働いていたが、給料が安く、また人に使われるのがいやで、同じ村の出身者がいる北海道の開拓村に入植することを決断した。出発したときは夫婦2人、子供2人、祖父1人の5人だったが、着いた時は4人になっていた。1歳の娘は東京で体調を崩し回復することなく死んでしまう。北海道に着いた時は骨壷に入っていた。そして着いた翌日の歓迎会の夜、祖父が布団の中で冷たくなっていた。結局この家族は3人になってしまった。

  今なら飛行機を使えば1日で行ける。当時も当然飛行機はあったが恐らくかなり料金が高かったはずだ。庶民がめったに乗れるものではなかったと思う。だから電車を乗り継いで2、3日がかりで北海道まで行く計画を立てたのだ。既に新幹線は大阪まで通っていたから、大阪から新幹線に乗る。これがなかったらとんでもない時間がかかっただろう。彼らが大阪に着いた時、ちょうど万博が開催されていた。人類の調和と進歩を謳う祭典が行われている陰で、3000キロの距離を電車と船を乗り継いで旅する貧しい一家がいたのだ。電車代すら30000円の借金をしてやっと出せたのである。旅の途中風見精一はいつも財布を覗いてはため息をついていた。5人分の旅費だから決して安いものではなかったはずである。

 この映画は一種のロード・ムーヴィーである。ロード・ムーヴィーは「ピカレスク小説」の系統につながる。ピカレスク小説の主人公は社会のアウトローである。既存の社会からはみ出した主人公は各地を放浪する。小説の関心は主人公にはなく、彼が出会った人々や彼らが行く先々で起こった出来事にある。われわれはピカロ(ピカレスク小説の主人公)の旅を通して社会を観察するのである。

 「家族」の観客は風見一家の旅を通して、高度成長期の総仕上げ、その象徴ともなった大阪万博(EXPO70という言葉が懐かしい)の時代の日本社会を彼らとともに垣間見る。時代は重厚長大の時代だった(後に80年代の初め頃か、これが軽薄短小という言葉に取って代わられる)。公害問題が深刻だった頃だ。九州で見た八幡製鉄所のすすけて灰色の工場群、大阪を出た後も同じような灰色の工場群が立ち並ぶ街を通る。大阪で初めて経験する怒涛の様な人並み。見ていてこっちまで疲れる。東京の人々は他人に冷たい。子供が病気だから早く病院へと叫んでも、タクシーの運転手は振り向きもしないし、一言も口をきかない。やっと開いている病院を見つけたときは手遅れだった。

 東京を出ると一転して延々と続く田園風景。出発した時伊王島では桜が咲き始めていたというのに、北海道はまだ大量に雪が残っている。あの頃日本の街(町)はまだそれぞれの顔と雰囲気を持っていた。今はどこの土地に行っても同じようなプレハブ住宅が建ち並び、街(町)は個性を失ってしまった。この映画はそんな時代の日本を点々と記録してゆく。

 二人の人物が亡くなるが、この映画は決して重苦しい映画ではない。子供が死ぬあたりもさらりと流していて、お涙頂戴調の描き方をしていない。もちろん子供が死んだ直後は一家そろって暗く沈んだ気分になっているが、山田監督はそこに渥美清を登場させる。明るい気分をそれとなく挟み込んでゆく。にくい演出だ。北海道に着いた頃には妻の民子(倍賞千恵子)の顔には笑顔が浮かんでいた。

 やっと知stationり合いの家に着いたときには、全員疲れきっていて玄関口から一歩も動けず、その場でみんな倒れこんでしまう。しかし映画は北海道に着いたところで終わるのではない。雪が解け、春が来てやがて牧場が緑の草に覆われる頃、牧場で1頭の子牛が生まれる。その時民子のお腹にも新しい生命が宿っていた。山田洋次監督の映画だから最後は明るく終わる。未来の希望の象徴として子供の誕生を使うのは常套手段だが、悲惨な旅の後だけに正直ほっとする。見終わった時はすがすがしい気分になっている。

 もちろんこの映画はただ日本各地の風景や風俗を映し出すだけの映画ではない。中心には家族のドラマがある。ロード・ムーヴィーはたいがい旅をするのは一人かせいぜい2、3人で、それに旅の途中で知り合った仲間が加わることもある。「家族」は家族5人がまとまって移動するというところがユニークな点だ。彼らは一旦広島の福山で下車する。風見精一の弟(前田吟)がそこに住んでおり、老いた父(笠智衆)をそこに置いてゆくつもりだったからだ。しかしせまい家に暮らす弟一家に父を迎える余裕などないとわかる。やむなく父も一緒に北海道に行くこととなった。老いた親の世話を誰が見るかというテーマがここに織り込まれている。夫精一はいつも不機嫌で怒鳴ってばかりいる。炭鉱で働いていた教養のない男なので、人を説得する術を持たない。怒鳴るしかないのだ。その精一をここぞというときにたしなめるのが祖父だ。笠智衆は実に存在感があって素晴らしい。幼い娘が死んですっかり予定が狂ってしまい、その上出費がかさんでパニックになっている息子に、「これを使え」と密かに溜めていた金を渡すのも彼である。

 妻役の倍賞千恵子も実に印象的だ。娘を亡くしたときはさすがに泣いてばかりいて「こんなことなら島に残っていた方がよかった」と愚痴をこぼすが、芯は強く一番早く立ち直ったのは彼女かもしれない。彼女がやっと微笑んだとき見ているこちらもほっとせずにはおれない。家族それぞれがつらい体験をし、それぞれにそれを乗りこえてゆく。劇的な展開のあるドラマではないが、「故郷」と並ぶ山田洋次監督の初期の傑作と言っていいだろう。

 笠智衆、渥美清、前田吟、森川信、三崎千恵子など「寅さん一家」が総出演。クレージー・キャッツの面々も顔を出している。ミニ・スカート全盛時代とあって倍賞千恵子も短いスカートをはいていて、しょっちゅうスカートを膝まで引っ張り下ろしているしぐさをする。なかなかきれいな脚だった。

 映画とは関係ないが、万博には幾つか思い出がある。会場でおじさんに時間を聞かれた。まだ時計を身につけて間もない頃だったので時間を読み間違ってしまった。正確な時間は覚えていないが、5時50分とかそんな時間だった。すると短針は6に近いわけで、思わず6時50分と言ってしまった。そのおじさんは「えっ、もうそんな時間ですか、そろそろ帰らなくては」とあわてて去っていった。あの時のおじさん、ごめんなさい。僕のせいで1時間損させてしまいました。

 もう一つよく覚えていることがある。デジタル式の時計を万博会場で初めて見たのだ。デジタルといっても、テニスの点数表みたいにパタパタとパネルが倒れて数字が変わってゆく方式だった。それでも仰天したものである。時計というのは長針と短針であらわすものだとそれまで思い込んでいたからだ。確かに時間は4時35分のように数字で言っていたが、時間そのものを数字で表すなんて考えもしなかった。今考えると誰でも思いつきそうな簡単なことなのだが、当時は時計の針以外に時間の表示の仕方があるなんて全く考えたことすらなかった。発想の転換というのはそういうものである。思いもよらぬことを思いつく人が世の中にはいるのだ。その時は非常に感心して、いつかそのうちこれは実用化されるだろうと思った。それがほんの数年のうちにデジタル式腕時計が発売され一気に広まったのである。時代は想像を超えた速さで変化していたのだ。

サイドウェイ

gurasu2004年 アメリカ
監督:アレクサンダー・ペイン
脚本:アレクサンダー・ペイン、ジム・テイラー
撮影:フェドン・パパマイケル
出演:ポール・ジアマッティ、トーマス・ヘイデン・チャーチ
                      ヴァージニア・マドセン、サンドラ・オー

 久々に見たアメリカ映画。とにかく久しぶりに何かアメリカ映画を観てみようと意識して探していたから目に付いたのである。監督は「アバウト・シュミット」のアレクサンダー・ペイン。彼の作品だということが選んだ決め手だった。ちょっと見にはこれといった魅力のない映画だ。中年の男二人のロード・ムービー。ワイナリーめぐりの旅といっても大して興味はそそられない。アカデミー賞の脚色賞を取った映画だが、地味な部門なのでさほど話題にはならなかったと思う。しかしこれが意外な収穫だった。

 アメリカ人は移動を好む国民なのでロード・ムービーはたくさん作られてきたが、この作品は数あるロード・ムービーの中でも傑作の部類に入るだろう。主人公は小説家志望でワイン好きの高校教師マイルス(ポール・ジアマッティ)とTV俳優のジャック(トーマス・ヘイデン・チャーチ)。マイルスは頭も禿げかけたさえない小太りの男。2年前に離婚を経験し、以来女性が苦手である。やっと小説を書き上げ、出版社に送って結果を待っているところだ。一方のジャックは対照的なプレイボーイ。結婚を1週間後に控えて、独身最後の自由な時間を過ごそうとマイルスを誘って二人でワイナリーをめぐる旅に出る。

 二人は大学の寮で同室となって以来の友人同士である。どこでももてもてのプレイボーイとさえないまじめ男というでこぼこコンビだ。この取り合わせがいい。監督自身も大好きだというワインの薀蓄をたれながらの珍道中。しかしまったくのドタバタ喜劇ではない。映画の視点はどちらかといえばマイルスに向けられている。彼はまじめな男だからあまりはめをはずさない。女性には臆病になっているので、マヤ(行きつけのレストランのウェイトレス/ヴァージニア・マドセン)という好きな女性がいるが、積極的には近づこうとはしない。問題はいつもジャックが起こす。無節操なジャック(彼の本当の目的は女とやりまくることだと本人がマイルスに打ち明けている)の行動に顔をしかめながら、結局彼がジャックの尻拭いをする。その典型が財布事件。ジャックは例によって初対面の女にちょっかいを出し、まんまと彼女の家にしけこむ。しかし明け方素っ裸で逃げ戻ってくる。彼女の夫が予想外に早く家に戻ってきたからだ。素っ裸で5キロ歩いてきたという。ところが彼女の部屋に大事な財布を忘れてきたので戻って取りにゆくといってきかない。結局マイルスがその家に忍び込んで、ベッドで取り込み中の二人の横の棚にある財布を取って逃げてくる。今度はその家のだんなが素っ裸で二人を追ってくるという展開。このあたりはドタバタ調だ。

 マイルスは小説が不採用になったときなど時々切れて暴れることもあるが、普段は憂鬱な情けない顔をしている。ジャックの無節操な行動にさんざん振り回され、小説が認められないと落ち込み、マヤには惹かれているがどうせ俺なんか相手にされないとまた落ち込む。前の妻との離婚の傷が癒えずなかなか一歩が踏み出せないのだ。そこにまたジャックからことあるごとに早くマヤをものにしろとせっつかれるので、イライラがつのる。それでもなんとかマヤとうまく行きかけるが、またまたジャックのせいで大きな亀裂が入ってしまう。ジャックはステファニー(サンドラ・オー)と深い仲になっていたが、彼は自分が近く結婚することを隠していた。マイルスがうっかり口を滑らせてマヤにそのことを教えてしまったためステファニーは激怒し、マイルスもマヤから同じ穴のムジナだとばかりにはねつけられてしまう。

 まあ、こんな調子で話が進んでゆく。ジャックが前面に出るとドタバタ調になり、マイルスが前面に出ると、悩める中年男のちょっと滑稽な愛の彷徨話となる。このあたりの切り替えや織り込み方が絶妙だ。最後はマヤの誤解も解け、マイルスがマヤの家を訪ねてゆくところで終わる。その時マイルスの小説が重要な役割を果たす。マイルスはマヤと小説への自信を同時に取り戻すのだ。

 山田洋次の「家族」の感想を書いた時に「われわれはピカロ(ピカレスク小説の主人公)の旅を通して社会を観察するのである。」と書いたが、「サイドウェイ」の場合、観察眼はむしろ主人公たち、特にマイルスに向けられている。その意味で同じロード・ムービーでも「サイドウェイ」は「家族」や「モーターサイクル・ダイアリーズ」などとやや性質を異にする。視点が主人公の他に向けられたとしても、それは社会というよりも他の人間(特にマヤ)、つまり人間関係(とりわけ恋愛関係)に向けられているのである。ロード・ムービーといっても主人公二人があまりあちこちの土地を旅しないのは、個人的な人間関係(マヤとステファニーとの関係)に縛られているからである。

 主演の二人の男優がともに好演。マヤ役のヴァージニア・マドセンも色気たっぷりで実に魅力的だ。ステファニーを演じた韓国系女優のサンドラ・オーはアレクサンダー・ペイン監督の奥さんだそうである。

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