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2005年12月24日 (土)

ビヨンドtheシー

2004年 アメリカ・ドイツ・イギリス bara
製作、監督:ケヴィン・スペイシー
脚本:ケヴィン・スペイシー、ルイス・コリック
撮影:エドゥアルド・セラ
音楽プロデュース:フィル・ラモーン
美術:アンドリュー・ローズ
衣装:ルース・マイヤーズ
出演:ケヴィン・スペイシー、ケイト・ボスワース、ジョン・グッドマン
    ボブ・ホスキンス 、ブレンダ・ブレッシン、グレタ・スカッキ
       キャロライン・アーロン、 ウィリアム・ウルリッチ、マイケル・バーン

 この映画を観て、ボビー・ダーリンについて全く何も知らなかったことに気付いた。もちろん名前は知っていた。しかしボビー・ダーリンと聞いてすぐ思い浮かんだのが「ほほにかかる涙」だった。情けない、それはボビー・ソロだろ。大体カンツォーネじゃないか(汗)。映画を通して、聞き覚えのある曲はタイトルになっている有名な「ビヨンド・ザ・シー」だけだった。いや、それどころかもっとショックだったことがある。「ビヨンド・ザ・シー」が流れたすぐ後にシャルル・トレネの「ラ・メール」が流れていた。DVDを観終わった後タバコを吸いながら「ラ・メール」を口ずさんでいた時、メロディが「ビヨンド・ザ・シー」と似ていることにはっと気付いた。タイトルも「ラ・メール」と「ビヨンド・ザ・シー」、ひょっとして・・・。そう、そんなことも知らなかった。まあ、僕が洋楽を聴き始めたのは1970年以降だから、その時既に過去の人で全く関心がなかったわけだ。何しろ当時はビートルズですら過去のものだと思っていたくらいだからね。というわけで、「ビヨンドtheシー」はボビー・ダーリンについて全く予備知識なしで観た。当然思い入れもない。

 それにしても最近のアメリカ映画は有名人(特にミュージシャン)の伝記映画がやけに多い。「五線譜のラブレター」「アビエイター」、「RAY」、共同製作だが「モディリアーニ真実の愛」「モーターサイクル・ダイアリーズ」など。ヒット作の続編、外国映画の焼き直しばかり作っていると思っていたら、今度は有名人の伝記映画か。これもオリジナル脚本を作れなくなってきた兆候の一つなのか?少なくとも誰でも知っている人物の映画なら客も入るだろうという打算はあっただろう。志は低いが映画の完成度はおおむね高い。得意の分野だからだ。有名な映画だけを拾っても、「ゾラの生涯」、「ジョルスン物語」、「炎の人ゴッホ」、「打撃王」、「翼よ!あれが巴里の灯だ」、「赤い風車」、「グレン・ミラー物語」、「ベニイ・グッドマン物語」、「愛情物語」、「五つの銅貨」、「奇跡の人」、「ウディ・ガスリーわが心のふるさと」、「ビリー・ホリデイ物語」、「アマデウス」、「ハメット」、「マルコムX」、「バード」、「ドアーズ」等々、山のようにある。やはり音楽家が多い。映画として華があるからだろう。

  また、今年の10月24日92歳で亡くなったローザ・パークス女史(有名なモンゴメリーのバス・ボイコット運動のきっかけとなった人)本人の伝記映画ではないが、バス・ボイコット運動を描いた「ロング・ウォーク・ホーム」という佳作もある。アンジェラ・バセット主演の「ローザ・パークス物語」というテレビ・ドラマも作られた。ついでにもう一つ挙げておくと、逆に黒人がバスに乗る映画「ゲット・オン・ザ・バス」というのもある。これは95年にワシントンで行われた「百万人の行進」に参加するためにバスに乗った人々を描いた映画である。キング牧師の演説で有名な63年の「ワシントン大行進」を意識した映画で、スパイク・リーの隠れた傑作である。

  いつもながら前置きが長くなってしまった。「ビヨンドtheシー」はそこそこ楽しめた。「五線譜のラブレター」と似た構成。最初に本人が自分の伝記映画を作っているところから始まる。ただ、「五線譜のラブレター」の場合こうすることによって主人公を相対化し、美化することを避け、ある程度対象を客観視できる効果があったが、「ビヨンドtheシー」の場合どこに狙いがあったのか今ひとつはっきりせず、そのため効果も弱い。ましてや苦節10年、ついにやったぞ的思い入れたっぷりで、ケヴィン・スペイシー自身がボビー・ダーリンになりきり、歌まで歌ってしまうというのでは相対化のしようがない。描かれているのはボビー・ダーリンではなくケビン・スペイシーであるとか、「ケビン・スペイシーのワンマンショー」といった評が出てくるのも無理からぬことだ。

  50年代の終わりに「スプリッシュ・スプラッシュ」というロックン・ロールをヒットさせ、一躍ティーンのアイドルとなったが、彼はどうしてもフランク・シナトラのような歌手になりたかった。プロデューサーと廊下でそのことでやりあうシーンは印象的だ。そんなものを歌わなくても君は既にスターだというプロデューサーに対して、ボビーはたまたま通りかかった配達員に自分を知っているかと聞く。配達員は知らないといって立ち去る。勝ち誇ったようにボビーは言う。「配達員に知られたら真のスターさ。」こうして彼はスタンダード・シンガーへの道を歩みだす。この後は順風満帆、文字通り真のスターになるが (もっとも夫婦の間の葛藤はあった)、やがて彼の歌は時代遅れになり、売れなくなる。このあたりの苦悩が今ひとつ伝わってこない。どうもドラマとしてみた場合やや平板でメリハリに欠ける。もっとミュージシャンとしての葛藤が描かれていてもよかったと思う。一時音楽から離れ、ロバート・ケネディを応援するが、彼が暗殺されてからまた音楽の世界に戻り、反戦歌を歌ったりすることは描かれている。だがこれらは単なるエピソードの寄せ集めになっていて十分掘り下げられているとはいえない。ナイトクラブでの前座に黒人コメディアンを起用しようと頑張るシーンもあるが、思想的側面には深入りしていない。トレーラーハウスで作曲に力を入れているシーンも短く描かれるが、彼が時代や音楽シーンの変化に直面してどのように葛藤したのかほとんど描かれない。"Simple Song of Freedom"を歌うシーンをラストのクライマックスに持ってくるのだったら、このあたりをもっと描くべきだった。

  「アビエイター」でも指摘したことだが、もっと焦点を絞った方がよかったのではないか。たとえ37歳で夭折した人であっても、一人の人間の人生を2時間ですべて描くことはそもそも無理なのだ。しかもレイ・チャールズのような波乱の人生を送ったわけではないのだから、切るべきところは切り、焦点を当てるところはじっくり描かないと平板になってしまう。一番問題なのはステージの上以外の彼の人生を描く時に、サンドラ・ディーとの恋愛と結婚を中心piano1にしてしまったことだ。正直ほとんど記憶に残っていない女優だ。しかもサンドラ・ディー役のケイト・ボスワースも本人によく似ているのだが、あまり魅力を感じなかった。まあそれは個人の好みだが。ただこの部分を救っているのは彼女の母親を演じているグレタ・スカッキである。どうせ結婚するなら「ロック・ハドソンと結婚してほしかったわ!」と平然と言い放つ女性だ。そりゃ美男子だがね。やや日本のテレビドラマみたいなステレオタイプ化された人物像だが、彼女が演じると妙にはまる。しかし結婚後はグレタ・スカッキもあまり登場しない。結婚後の描写はかなりありふれたものになっている。かつらの話は面白いが、それだけでは彼の人間的苦悩を十分描いたとはいえない。ゴールド・レコードを前にかつらを脱ぐシーンは印象的ではあるが。

  ところでこの映画は何を描きたかったのか。昔は伝記映画といえばそれこそ偉人伝だった。そこには伝えるべき教訓があった。今はそれでは成り立たない。だから音楽家にしてもクラシックではなくポピュラーのミュージシャンが対象になり、教訓ではなくエンターテインメントとして、まるで昔のミュージカル映画を楽しむような作りになる。昔のミュージカルを再現しても時代に合わない、それならミュージシャン本人を取り上げ、歌やダンスも楽しめながら人間ドラマとしても楽しめる作りにしよう。そういうことだろう。

 ショーの部分は確かによく出来ている。これはアメリカ映画お得意の分野だし、才人ケヴィン・スペイシーが本領発揮できる部分だから、悪かろうはずはない。なにしろ子供の頃からタップを習っており、ミュージカル経験もあるそうだ。物まねは名人級。ただそんなに苦労して似せる必要もなかったように思うが。ほとんど忘れ去られた人なのだから似ていようが似ていまいがどうでもいいことだ。そっくりショーを見に行ったわけではない。それらしさが出ていればそれでいいではないか。それにそんなに似せたところで、ボビー・ダーリンの歌自体が古臭いのだからこちらは心底楽しめるわけではない。そもそもフランク・シナトラからして少しもいいとは思わない。確かに歌は抜群にうまいのだが、聞いていて面白くない。むしろ思い切って現代風にアレンジしてしまって、ケビン・スペイシー以外の人にも歌わせた方がよかったのではないかと思う。飲みに行った店で誰かが彼の歌を歌っているとか、BGMで流すとか。『五線譜のラブレター』の方が現役のエンターテイナーが多数出演しており、ショーを楽しむという点ではこちらの方がずっと上である。まあ、さすがに歌がうまいから飽きることはなかったしそれなりに楽しめたから、その点はむしろ評価してもいいと思う。

  歌われた曲の中では、最後に歌った"Simple Song of Freedom"が一番いい歌だと思った。文字通りシンプルだがぐっと胸に迫る素晴らしい曲で、ここが一番感動的なシーンだ。僕は60、70年代のフォークで育った世代だから素直に入ってくる(逆にスタンダードが好きな人は違和感があるかもしれないが)。最初のうちは観客からブーイングを受けるが、同じ歌をいつもの盛装で歌うと、観客から熱烈な反響が返ってくるという展開も悪くない。「人は見た目で聞く。」格好だけ若者に合わせても馬鹿にされるだけ。ちゃんと盛装すれば客は聞いてくれる。変革の時代だったが、まだそういうところも残っていたのである。"

  それに比べると泣かせどころとして用意された彼の出生の秘密が明かされる場面、そしてそれを公衆の前で公表する場面はいかにもお涙頂戴調である。かつらの話といい、どうしても伝記映画というと知られざる事柄を描いて観客をあっといわせるという展開になりがちだ。それよりも子どもの頃をもっと描いた方がよかったと思う。ボビー・ダーリンは、リューマチ熱のために心臓を悪くして、よくて15歳までしか生きられないと宣告された。そんな彼が「15歳以上生きてやる!」と思うようになったのは音楽と出会ったからであり、そう仕向けたのは母親である。母親と共に音楽の才能を伸ばしてゆくシーンを前半のメインにしたらいいシーンがたくさん作れたのではないか。そうしなかったのは、子ども時代はケヴィン・スペイシーに演じられないからである。

  子役の位置づけにも疑問がある。子役のウィリアム・ウルリッチには子ども時代のボビーそのものを演じさせるべきだった。ボビーが製作している「自伝映画」の中でボビーの子ども時代を演じる子役ではなく。「ビヨンドtheシー」の冒頭で子役がボビーに意見するあたりはいかにも不自然だ。「自伝映画」の子役が必要だったのは後の方で子役とボビーが一緒に踊るシーンを撮りたかったからだと思われる。大人のボビーと子供時代のボビーが一緒に踊ることは現実には不可能だからだ。だが、現実には無理でも夢想や幻想の中でなら可能だ。死の床でボビーが自分の人生を振り返り、子ども時代の自分と一緒に踊る幻想的なシーンが流れる、という方がずっとよかったと思う。

  脇役にジョン・グッドマン、ボブ・ ホプキンス、ブレンダ・ブレッシンなどのイギリス人俳優を配したことが劇に厚みを加えている。撮影監督は「鳩の翼」と「真珠の耳飾の少女」でアカデミー賞を取った名手エドゥアルド・セラ。

 1967年にボビーと離婚したサンドラ・ディーは、2005年2月20日に62歳で亡くなった。

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