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2005年12月22日 (木)

ロード88

2004年 日本 SD-glass05-09
監督:中村幻児
脚本:梅村真也・中村幻児
撮影:高間賢治
音楽:遠藤浩二
原作:山名兌二
製作総指揮:大里洋吉
出演:村川絵梨、小倉久寛、須藤理彩、津田寛治
    小園崇、黒田福美、川上麻衣子、ニコラス・ペタス
    高松英郎、長谷川初範、神山繁、富田靖子
    三宅裕司、岸谷五朗、寺脇康文、新藤晴一

  いまどき珍しいほどストレートな映画である。しかも、いわゆる難病もの。いかにもという作りなのだが結構素直に感動できる。この映画の魅力の大半は主演の村川絵梨の魅力だといっていいだろう。帽子とバンダナがやけに似合うし、スケボーに乗っている姿がまたなかなか様になっている。そして何といってもけなげでかわいい。奥山佳恵を若くした感じの顔で、好きなタイプだ。彼女はNHK朝の連ドラ「風のハルカ」のヒロインなので、ご存知の方は多いだろう。演技力はまだまだ未熟だが、とにかくひたむきに頑張る彼女のけなげさに惹きつけられた。

  タイトル「ロード88」の「88」とは四国88カ所霊場巡りのことを指している。主人公の槙村明日香(村川絵梨)がスケボーでお遍路さんをするというストーリーなのである。その意味でこれは一種のロードムービーである。明日香は骨髄性白血病に冒されている。ドナーも見つからないため、いつまで生きられるかも分からない不安な状態に置かれている。彼女は思うところがあってスケボーと携帯だけを持って四国88ヶ所・お遍路巡りに旅立つ。映画は彼女が最後の寺まで行き着く過程をずっと追ってゆく。

  もちろんそれだけでは話が単調になるので、旅の途中で出会った人たちを絡ませてゆく。同じお遍路巡りをしている人たちなので、つかず離れずほぼ同じペースで巡ってゆく。「旅の仲間」の一人は売れないお笑い芸人佐藤勇太(小倉久寛)。彼の旅はかなり悲惨である。テレビ番組の収録のために自転車でお遍路巡りをしているのだが、スタート時に財布を取り上げられ、所持金はゼロ。旅の費用は道々お笑い芸で稼ぐしかない。だがコンビの相方に見捨てられた売れない芸人の芸では稼ぎはさっぱり。飯代もろくに稼げず、旅館にも泊まれない。佐藤勇太は準主役と言ってもいいくらいの重要な役割を振り当てられている。一緒に回っているディレクターの小園崇(津田寛治)とADの真中涼子(須藤理彩)との関係も描きこまれてゆく。

  もう一人の「旅の仲間」は、ある理由で警察と怪しげな組織に追われている伴野一郎(長谷川初範)。死んだ娘にそっくりな明日香に引かれ、途中から彼女と一緒に旅をする。娘に何もしてやれなかったことが心の傷になっている。勇太も伴野も明日香のひたむきさによって生きる勇気を与えられる。

  映画の出来は決してよくはない。全く型どおりの映画である。あまりにストレートすぎるので、途中で先の展開がある程度読めてしまう。お遍路の意味や各寺の来歴も語られず、寺は単なる通過点に過ぎない。四国の風景も美しく撮られているが、これも単なる背景に過ぎない。この映画は骨髄バンクのドナー登録者を増やすためのキャンペーン映画として作られた。そのことが映画の完成度を低めていると思われる。どうしても一種の「プロパガンダ映画」になってしまうからだ。ドナー提供者が現れずに明日香が死んでゆくか、提供者が現れて助かるか、結論はどちらかにほぼ決まってしまう。そこからストーリーを作ってゆけば、当然途中で先が読めてしまう。まあ、そういうことだったのではないか。ユニークな「旅の仲間」をひねり出したりしていろいろと工夫はしているが、もう一つ、二つ工夫が足りないということだ。ラストだって明日香がその後どうなったのか結論を出さずに終わらせる事だって出来ただろう。彼女は助かったのか?結論を与えるのではなく、観客に考えさせることで関心を持たせる。そうすれば途中のエピソードだって必ずしもラストに向かって直線的に収斂していかなくてもいい。まあ、実際は口で言うほど簡単ではないのだろうが。

  ただ、完成度が高くないといっても、観終わった後はさわやかで、それなりに感動も出来る。逆に言えば、それほど村川絵梨が魅力的だということである。煎じ詰めると村川絵梨の魅力がすべてなのである。「ヒーリング・ロード・ムービー」というのがキャッチコピーのようだが、映画のテーマよりも彼女の姿そのものがヒーリングなのである。骨髄バンクのドナー登録者を増やすためのキャンペーン映画、あるいは四国4県オールロケによる四国宣伝映画を作ったつもりが、皮肉なことに村川絵梨のプロモーション映画になってしまった。おかげで彼女は朝ドラのヒロインにもなれたし、ひょっとするとものすごい大器なのかも知れない。「臭く」なりがちなテーマだが、彼女の魅力がその臭さをかなり消してしまった。出来は「深呼吸の必要」ほどではないが、同じように若者のひたむきさをストレートに描いた数少ない日本映画である。斜に構えた映画が横行する中で、ほどよいさわやかさを感じたことを率直に認めておくべきだろう。

  古瀬陽子の挿入歌「夢は夢のままで」は非常にいい曲だった。BOYSTYLE(村川絵梨もメンバーの一人)の歌う主題歌「Tomorrow~風の道標~」も悪くない。

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» 『ロード88』(byえいwithフォーン) [ラムの大通り]
----変わったタイトルだね。 国道88号線だったら「ルート」とかになりそうだけど? 「そうなんだよ。ぼくも最初は1988年の話かと思ってた。 でも、これってお遍路で知られる四国の88ヶ所の霊場のこと。 白血病の女の子が死の不安を抱きながら、 スケボーを走らせ、この88ヶ所を回る。 最初は『へぇ〜っ、歩きじゃなくてもいいんだ』なんて のんびり構えながら見てたんだけど、 いつしか引きずり込まれていったね」。 ----と言うと? 「主人公の女... [続きを読む]

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