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2005年12月 3日 (土)

アマンドラ!希望の歌

2002年 南アフリカ・アメリカ 053303
原題:Amandla! A Revolution in Four Part Harmony
監督:リー・ハーシュ
出演:ネルソン・マンデラ、ヒュー・マセケラ、バシレ・ミニ
    アブドゥラ・イブラヒム、ミリアム・マケバ、クリス・ハニ
    フランシス・バード、ゴールデン・ネスィスゥイ
    ジェレミー・クローニン、アルバート・ルトュリ

  アフリカ映画と聞いて思いつく映画はどれほどあるだろうか。世界中の映画が入ってきている今日でもアフリカ映画は未だに知られざる世界である。僕がまず思いつくのは「エミタイ」(71年、ウスマン・センベーヌ監督、セネガル)、「チェド」(76年、ウスマン・センベーヌ監督、セネガル)、「アモク!」(81年、スウヘイル・ベン=バルカ監督、モロッコ・ギニア・セネガル)の3本だ。他にはせいぜい「アルジェの戦い」(66年、ジッロ・ポンテコルヴォ監督、イタリア・アルジェリア)、エジプトのユーセフ・シャヒーン監督による「放蕩息子の帰還」(76年)と「アレキサンドリアWHY?」(79年)程度。ただ、製作はアフリカ以外の国だが、南アフリカのアパルトヘイトを告発した重要な作品が3本ある。リチャード・アッテンボロー監督のイギリス映画「遠い夜明け」(87年)、クリス・メンゲス監督の同じくイギリス映画「ワールド・アパート」(87年)、そして「マルチニックの少年」のユーザン・パルシーが監督したアメリカ映画「白く渇いた季節」(89年)。いずれも傑作である。この3本に新たな傑作が加わった。「アマンドラ!希望の歌」。アメリカ人監督による記録映画である。

  「アマンドラ」という言葉はマイルス・デイヴィスのアルバム・タイトルとして記憶している人も多いだろう。「力を」という意味で、誰かが「アマンドラ」と言うと、みんなが「アウェイトゥ」(人々の手に)と答える。「力を人々の手に」(power to the people)そういう意味になる。マイケル・ムーアを始め、最近ドキュメンタリーの手法を生かした力作が目立つ。しかしノンフィクションの力が注目されるのは今に始まったことではない。世の中には信じられないような出来事が現実に起こっている。ドキュメンタリーやルポルタージュの力に圧倒された経験は誰しもあるだろう。下手なフィクションよりもドキュメンタリーの方がはるかに優れていると思うことは珍しいことではない。僕は80年代頃にフィクションはノンフィクションを超えられるのか、リアリズムとノンフィクションはどういう関係にあるのかという問題を真剣に考えていた時期がある。結局深く追求できずに終わってしまったが、その問いは今でも有効である。例えば、アルフレッド・ランシング著「エンデュアランス号漂流」(新潮社)を超える冒険物語が存在するだろうか?小説だけではなく、いろんな分野でこの問いかけは出来るだろう。

  南アフリカのアパルトヘイトを告発した上記の3本を「アマンドラ!希望の歌」が超えているかどうかはまた別問題である。ドキュメンタリーにも出来、不出来はあるからだ。しかし「アマンドラ!希望の歌」に劇映画にはない迫力がある事は確かである。というより、南アフリカで現実に起こったこと自体が信じられない事なのである。あれほど押さえつけられ、権利を剥奪されていたアフリカ人たちが、白人の政府を現実にひっくり返してしまったのだから。94年の選挙でアフリカ人たちが勝利し、ネルソン・マンデラが大統領になったのは現実なのである。

   アメリカで奴隷制が廃止されたのはもう150年も前のことである。アパルトヘイトはあからさまな人種差別制度だったにもかかわらず20世紀末まで残っていたのである。その隔離政策には何の合理的根拠もない。例えば、原住民問題担当大臣がアパルトヘイトを「良き隣人関係政策」と言い換えているニュース映像が最初の頃に出てくる。これには何の説得力もないし、滑稽ですらある。しかし滑稽だと笑ってはいられない。彼らの政策によって多くの血が流されたのだ。冒頭に、南ア史上屈指の作曲家で絞死刑にされたウィシレ・ミニの死体が掘り起こされる場面が出てくる。無造作に穴に埋められている。ほとんど犬並みの扱いだ。

  しかし、「アマンドラ!希望の歌」はアパルトヘイトの非道さを告発するだけの映画ではない。この映画のユニークさは、いかに歌が抵抗する民衆に力を与えていたかを描き出したことにある。映画はシャープヴィル事件や有名なソウェト蜂起などの映像をたくみに織り込みながら、歌によって革命を起こした民衆の姿を映し出してゆく。アフリカを代表するミュージシャンや活動家が何人もインタビューを受けている。ミリアム・マケバ(アフリカのディーヴァ、「アモク!」にも出演している)やアブドゥラ・イブラヒム(「アフリカン・ピアノ」で知られるstainedglass4nジャズ・ピアニスト)などもインタビューに答えている。アブドゥラ・イブラヒムが語った言葉は印象的だ。「追放されてつらいのは夢を見ること、故郷にいる夢をね。夢では故郷にいるのに目が覚めると帰れない」。「南アフリカの革命は唯一音楽で実現した革命だ。他に類を見ない」。

  とにかく全編歌があふれている。コンサートの場面やインタビューを受けた人たちが歌いだす場面もあるが、ほとんどは名もないアフリカ人たちが踊りながら歌っている実際の映像である。「戦いのどの局面にも必ず歌があった」。これが圧倒的だ。歌は民衆のものだった!彼らの持つリズム感は天性のものだ。列車の中でもリズムをとっている。歌うとき必ず体全体で歌う。大人も子供も。彼らは体で歌を覚えたのである。それらの歌、フリーダム・ソングには抵抗の精神と「俺たちこそ本当のアフリカ人だ」という誇りがこめられている。
 「歌は一つが消えるとまた次が生まれる。そうやって多くの歌が生まれた。表現したいことを数人の友と歌い、その輪が次々と広がり新しい歌になる」。それらの歌を「ラジオ・フリーダム」が流し、歌はさらに民衆の中に入ってゆく。かつてルイ・アラゴンが『フランスの起床ラッパ』で、民衆の口から口へと伝わるうちに詩はさらに付け加えられ豊かになってゆくと歌ったが、それが現実に起こっていたのだ!

  民衆の中から様々な歌が生まれた。「神よ アフリカに祝福を」。国歌代わりとして集会の冒頭などで歌われた。「あの歌は抑圧の隙間から染み出てきた」。ある人がインタビューに答えていった言葉だが、この歌の本質を見事に表現している。70年代誰もが歌った歌、「われわれが何をした、唯一の罪は黒人であること・・・」と何度も繰り返す歌。そして、ラストあたりで女性アーティストが歌う祖先を称えた歌、これはまさに至上のゴスペル、例えようもなく美しい(その歌の間に殺された著名活動家の写真が多数映し出される、その中には「遠い夜明け」で描かれたスティーブン・ビーコの写真もあった)。

  アフリカ人がネルソン・マンデラに捧げる敬意が並大抵のものではないこともよく分かる。「獄中のマンデラは神話の中の人だった」。中でもヒュー・マセケラの思い出は感動的だ。「83年の誕生日、ボツワナにいた私はマンデラからバースデーカードをもらった。20年も投獄されている彼が私を励ましてくれた。『君を誇りに思う アフリカの神の祝福を』と。そして私の姪や妻や友人を気遣う言葉もね。まるで私が監獄にいるみたいだったよ。カードを読み終え横になったら涙がこぼれた。その時曲が浮かんだんだ」。ただ、マンデラに対する尊敬が個人崇拝に結びつかないか少々気にならないでもない。個人崇拝は腐敗につながるからだ。

  1990年2月11日。ネルソン・マンデラ釈放。「皆テレビの前に釘付けよ。私はひざまづいてテレビの前で泣いたわ」(ミリアム・マケバ)。94年、南アフリカの歴史上初の投票に無数のアフリカ人が出かけた。一人の男性が語った言葉が胸を打つ。最後にその言葉を引用して終わろう。「僕が票を入れたとき、母のためにと思った。祖父と曽祖父のための投票だとね。彼らに機会はなかったのだから」。

 

「中川敬のシネマは自由をめざす!」というサイトにこの映画の素晴らしい解説/レビューが載っています。こちらもぜひご覧ください。

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コメント

ETCマンツーマン英会話さん

 旧作品のBD化はまだまだですが、DVD化はかなり進んできました。ただDVDはあっても身近なレンタル店などで置いてあるかどうかはまた別の問題です。アマゾンなどで注文すればかなりのものは手に入ると思いますが、これも手ごろな値段かどうか、買ってまで手に入れるべきものかどうかという問題が伴いますね。
 まあ、時間はかかるでしょうが、少しずつ機会があれば観てゆくという気長な姿勢で良いと思います。

ゴブリンさん、お返事有難うございました。

>アフリカ関連映画については「ゴブリンのこれがおすすめ 36」にまとめてあります。

見ました!物凄い数の作品ですね。まだ、4分の一くらいしか見たことがありませんでした。しばらくアフリカ映画を観続けることができそうでうれしいです。でも、古い作品はDVD化されておらず見るのが難しそうですね。

アフリカに関する映画の歴史が、かなり遅れながらですが、アフリカが抱える問題の姿を伝えてくれているのがわかり、とても興味深いです。

ETCマンツーマン英会話さん

 コメントありがとうございます。「エミタイ」、「チェド、「アモク!」、「アレキサンドリアWHY?」は恐らくDVDが出ていないのではないでしょうか。ただ、歴史的名作である「アルジェの戦い」は比較的手に入りやすいと思われます。
 アフリカ関連映画については「ゴブリンのこれがおすすめ 36」にまとめてあります。左上の「アーカイブ」に入口がありますのでそちらからお入りください。
 リストに「おじいさんと草原の小学校」を追加しました。これはお勧めですので、ぜひご覧になってください。
 もう1本。アフリカとは関係ありませんが、広田奈津子監督の「カンタ!ティモール」というドキュメンタリー映画も機会があったらぜひご覧になることをお勧めします。インドネシア軍による大虐殺があった東ティモールで、やはり音楽が民衆の心を励ます役割を果たしていたことを描いた作品です。その意味で「アマンドラ!希望の歌」と深い関連があります。この映画を見た時、「アマンドラ!希望の歌」に匹敵する傑作だと思ったものです。

アフリカの映画を中心に観ています。「遠い夜明け」、「ワールド・アパート」「白く渇いた季節」を見た後に、「アマンドラ!希望の歌」に出会ったので、それらの映画の中で何度も耳にした歌の意味をしることがでてきました。

「エミタイ」、「チェド、「アモク!」、「アルジェの戦い」、「アレキサンドリアWHY?」は、まだ観ていないので、探してぜひ観てみたいと思います。

ご紹介に感謝です。

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