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2005年11月28日 (月)

カーサ・エスペランサ

2003年 アメリカ・メキシコ
tenkiyuki脚本:ジョン・セイルズ
監督:ジョン・セイルズ
音楽:メイソン・ダーリング
撮影:マウリチオ・ルビンシュタイン
出演:マギー・ギレンホール、ダリル・ハンナ
    マーシャ・ゲイ・ハーデン、スーザン・リンチ
   メアリー・スティーンバーゲン、リリ・テイラー
    リタ・モレノ、 ヴァネッサ・マルティネス

 インディーズの大物として知られているジョン・セイルズ監督の作品。僕の好きな監督の一人だ。今のところ「パッション・フィッシュ」(92年)がもっとも優れた作品だと思うが、「メイトワン1920」(87年)と「フィオナの海」(94年)も傑作である。91年の「希望の街」は「再会の街」、「シティ・オブ・ジョイ」と3本いっぺんに観たので、記憶が入り混じってよく覚えていない。何であんな馬鹿なことをしたのか(後悔の涙)。

 それはともかく、ジョン・セイルズ監督作品ということで期待して観た。非常に変わった群像劇である。とある南米の国に赤ん坊を養子にもらおうとやってきた6人のアメリカ女性たち。スキッパー(ダリル・ハンナ)、ナンシー(マーシャ・ゲイ・ハーディン)、ゲイル(メアリー・スティンバーゲン)、ジェニファー(マギー・ギレンホール)、レスリー(リリ・テイラー)、アイリーン(スーザン・リンチ)。それぞれにいろんな事情を抱えている。ラテン系の国のこと、養子縁組の手続きがなかなか進まない。時間をもてあました彼女たちは買い物をしたり、観光をしたり、互いに語り合ったりして時間を過ごす。

  しかし、彼女たちばかりにスポットライトが当てられているわけではない。失業して何とかアメリカに密入国をしようとする現地の男、アメリカ人が泊まっているホテルの女性オーナー(なんとリタ・モレノ!すっかり年を取り、加賀まりこそっくりになっている)、左翼思想を持つその息子、そのホテルで働く女性メイド、町の浮浪少年たち、子供を身ごもり母親から養子に出せと強制されている女性。ここまで徹底した群像劇も珍しい。様々な人たちの人生が交差する南米の町。様々な理由で子供がなく養子を取ろうとするアメリカ人の女性たちと、子供を手放すしかない貧しい現地の女たち。養子になるには年を取りすぎてしまったストリート・チルドレンたち。アメリカに憧れる者、アメリカを批判する者。失業男は偽造パスポートを手に入れようとするが、金が足りない。くじで当てようとするが、逆に金を全部すってしまう。越えたくても越えられない国境線。難なく国境を越えられるのは養子にもらわれた赤ん坊だけであるという皮肉。

 全編ほとんど会話で埋め尽くされている。登場人物が多く、会話の組み合わせも多様なので、観客の意識は会話の内容に深くとどまらない。それは意図された演出だろう。アメリカ人女性たちもたまたま現地で一緒になっただけ。アメリカ人と現地の人との接点も一時的なもの。どこにも深い人間関係はない。たまたま居合わせた人たち。やがて養子縁組が決まり女たちは別れてゆく。はっきり養子が決まったと分かるナンシーとアイリーン以外はどうなったのかさえ分からない。突然終わってしまう。

 ホテルのメイド・アスンシオン(ヴァネッサ・マルティネス)とアイリーンの会話が印象的だ。互いに言葉が分からない。アイリーンは娘を持った自分を想像し、それを一方的にベッド・メイキングしているアスンシオンに話して聞かせる。最初は言葉が分からないので相槌もうたずただ聞いていただけのアスンシオンだが、今度は逆に自分の子供が北(アメリカ)にもらわれていったことを話して聞かせる。言葉が通じないのに互いに自分の思いを語りかける二人の女性。それなのに何かが通じ合っている。ラストで養子縁組が決まったアイリーンが娘の名前はエスメラルダにするとつぶやく。エスメラルダとはアメリカに養子に出したアスンシオンの娘の名前だ。ここにかすかな人間的つながりが示されている。いささか唐突な終わり方だが、アイリーンのつぶやきに余韻がある。

 ジョン・セイルズは何が言いたかったのか。豊かな国と貧しい国、その対比なのか。それもあるだろう。生みの親が育てるよりアメリカ人に引き取ってもらう方が幸せになれるという期待。「カーサ・エスペランサ」とは、「希望の家」という意味である。この期待は「幻想」なのか。そういう問いかけも映画に含まれている。豊かな国と貧しい国の関係とは、例えば、貧しい国の人々が食料にならないコーヒー豆を育て、飽食した国の人たちがそれを嗜好品として飲んでいる関係、飢えた国の人たちが生きるために自分の血を売り、その血は豊かな国の人たちに輸血される関係である。一方で飢餓に瀕した人々がおり、一方でダイエットに血道を上げている人たちがいる関係でもある。「北」は本当に幸せな人々が住む国なのか。そういう問いかけもある。赤ん坊を求めてきた6人のアメリカ人女性は皆幸せなのか。アメリカは徹底した競争社会だ。キャリア優先で後ろも見ずにひたすら走ってきた女性たち、離婚率が高まり家庭崩壊寸前の女性たち、何らかの理由で不妊になった女性たち、等々。心の隙間を抱えた女性が少なからずいるという現実。女性ばかりではない。独身の女性もいるが、結婚している女性でもその夫は出てこない。夫(男)の不在。これまた暗示的だ。

 赤ん坊を里子に出す母親も仕事を求める失業男も北に憧れる2204snowmanwreath4。名作「エル・ノルテ 約束の地」はグァテマラからアメリカに密入国した兄妹の話だが、「約束の地」で待っていたのはやはり過酷な現実だった。養子になった赤ん坊たちは容易に国境を越えられるが、幸せな人生が待っているのか。アメリカ人の女性たちは一緒に話しているときは楽しそうでも、皆一人になると寂しそうな一面を見せる。豊かな暮らしをしながら「何か足りない」人生。その足りないものを補おうと赤ん坊をもらいに南にやってきた女性たち。彼女たちが望んだのは赤ん坊そのものではなかったのかもしれない。心の空隙を埋めてくれる何物か。それぞれの空隙は一人ひとり違うだろうが、赤ん坊だけで埋められるものではないだろう。

 一方貧しい国の人々。こちらにも様々な理由がある。赤ん坊は決して売られてゆくのではない。何とかいい生活をしてほしいという願いも込められている。ストリート・チルドレンを見ているとそう願う気持ちも理解できなくはない。彼らは大人になってやはり偽造パスポートを持って「北」へ行こうとするのだろうか。かつて程の貧困はないのかもしれないが、貧しいことに違いはない。かつて日本の農村でも借金を作った親が娘を売るということは珍しくなかった。姥捨ての伝説もある。木下恵介の名作「楢山節考」には、なまじ歯があるから飯を食うのだと老婆が石臼に口を打ち付けて歯を全部折ってしまう凄絶な場面が出てくる(働けなくなった老人は文字通り「ごくつぶし」なのだ)。

 ベッドの中の赤ん坊は無邪気に眠っている。この子たちにどんな未来が待っているのか。観ていていろんな思いに駆られる。それは映画の狙いでもある。最初から最後までしゃべり倒すこの映画は観客に考える余裕を与えない。かといってジェットコースター・ムービーと同じではない。こちらは別に考えなくてもいいように作られている。「カーサ・エスペランサ」は考えるべき問題がむしろあふれかえっている。アメリカ人の女性たちばかりではない、ホテルのメイドも、家のない子供たちも、失業した男もそれぞれに問題をかかえている。彼ら個人を越えた大きな社会的、政治的問題もある。むしろ問題を詰め込みすぎて消化不良になっているともいえるくらいだ。6人のアメリカ人女性だけでもそれぞれ深刻な問題をかかえているのだが、あっと言う間に会話は流れてゆくので十分記憶に残らない。心に深くしみこむ前に話は次に進んでいる。戸惑っているうちにふっと映画は終わってしまう。問題をざあっとぶちまけ、深く追求することもなく突然終わってしまう。観客は後で自分でゆっくり考え直さなければならない。そういう狙いなのだろう。どこかドキュメンタリー的なタッチも意識的に取り入れているのかもしれない。様々な人生のひとこまを切り取り、無造作に観客に投げかける。そんな映画だ。だからエンディングらしいエンディングはない。赤ん坊を引き取ったところで人生は終わらない。そこからまた始まるのだ。人生は続くのである。

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コメント

コメント&TBありがとう。

「赤ちゃん」だけが、国境線をとがめられず渡っていくという皮肉・・・その指摘は、面白いですね。

おっしゃるように、独特の映画のつくりかたですね。
大きなドラマを期待する人には、退屈な映画かもしれません。

僕はこの監督の昔の作品あまり見ていないので、探し出して見るようにします。

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