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2005年10月10日 (月)

海を飛ぶ夢

SD-memb-012004年 スペイン・フランス・イタリア
【スタッフ】
製作:フェルナンド・ボバイラ
脚本:アレハンドロ・アメナーバル、マテオ・ヒル
監督:アレハンドロ・アメナーバル
音楽:アレハンドロ・アメナーバル
撮影:ハビエル・アギ-レサロベ
【出演】
ハビエル・バルデム、ベレン・ルエダ、ロラ・ドゥエニャス
マベル・リベラ セルソ・ブガーリョ、クララ・セグラ、タマル・ノバス

  「アザーズ」(2001)「オープン・ユア・アイズ」(1997)で知られるアレハンドロ・アメナーバル監督の作品。多才な人で「オープン・ユア・アイズ」の再映画化作品「バニラ・スカイ」(2001)と「蝶の舌」(1999)、そして本作で音楽も担当している。スペイン映画はこのところ好調で、「死ぬまでにしたい10のこと」(2002)、「トーク・トゥ・ハー」(2002)、「靴に恋して」(2002)と傑作が続いている。アレハンドロ・アメナーバル監督はこの「海を飛ぶ夢」でペドロ・アルモドバルと並ぶ現代スペイン映画の2大巨匠になったと感じた。 参考までにこれまでに観たスペイン映画のマイ・ベスト10を次に挙げておく。

「ミツバチのささやき」(1973) ヴィクトル・エリセ監督
「黄昏の恋」(1982) ホセ・ルイス・ガルシ監督
「エル・スール」(1983) ヴィクトル・エリセ監督
「カルメン」(1983) カルロス・サウラ監督
「蝶の舌」(1999) ホセ・ルイス・クエルダ監督
「オール・アバウト・マイ・マザー」(1999)  ペドロ・アルモドバル監督
「死ぬまでにしたい10のこと」(2002) イザベル・コヘット監督
「トーク・トゥ・ハー」(2002) ペドロ・アルモドバル監督
「靴に恋して」(2002) ラモン・サラサール監督
「海を飛ぶ夢」(2004) アレハンドロ・アメナーバル監督

  次点は、ガルシア・ロルカ原作の「ベルナルダ・アルバの家」(1987、マリオ・カムス監督)。暗く地味な映画だが秀作である。リストからは外したが、80年代末に話題になったチリのミゲル・リティン監督作品「戒厳令下チリ潜入記」(1988)も名義上はスペイン映画である。

  「海を飛ぶ夢」は実話を基にしている。若い頃引き潮に気付かず浅瀬に飛び込んで首を打ち、その後20数年間寝たきりになっている男が主人公である。寝たきり状態の人物が主人公であり、生と死がテーマとなっている点では「トーク・トゥ・ハー」や「ジョニーは戦場へ行った」(1971)にも通じる作品である。後者は第一次大戦で両手両足をもぎ取られ「芋虫」のようになった若き兵士ジョー・ボナムの話で、公開当時世界中に強烈な衝撃を与えた。彼は声も出せず、目も見えず、耳も聞こえず、匂いもかげない。顔のほとんども吹き飛んでいたのだ。看護婦はジョーの腹に指で字を書き何とか言葉を伝えようとする。なかなか理解できず、やっとそれが「メリー・クリスマス」と書いている事が分かって、ジョーが頭を上下に振って分かったことを伝える場面はかつてない深い感動を覚えた。

  「海を飛ぶ夢」の主人公ラモン・サンペドロ(ハビエル・バルデム)は見ることも聞くことも話すこともできるし、手足もある。しかし20年以上もの間寝たきりの生活が続き、彼はついに尊厳死を選択する。しかし裁判で敗れ、最後はほとんど自殺の様な形で自らの命を絶つ。映画は彼の最後の日々を描いている。彼が訪問者に向ける顔はいつも笑顔である。なんとも素敵な笑顔だ。だが自分でそれは「他人の助けに頼って生きるしかないと、自然に覚える」のだと話す。どんなに笑顔でいてもその底には深い絶望がある。映画では描かれなかった20数年の間、ずっと彼はその絶望と共に生きてきたのだ。しかし観ているものにとって彼の笑顔は正直救いである。絶望に沈んだ顔を見るのはつらい。

  彼の元に女性弁護士フリア(ベレン・ルエダ)がやってくる。彼とのインタビューを通じ、まSD-moonship03た彼が書いた詩を読むうちに彼女は彼に心を引かれてゆく。ラモンも彼女に引かれてゆく。自然、観ているわれわれは彼に生きる意欲が湧いてくることを望む。しかしフリアとの愛も彼の死への思いを断ち切ることは出来なかった。彼にとってその愛もまた重荷だったのだろう。愛されていても、その愛に応えられないつらさ。その立場になって見なければ分からない。彼はただ空想の世界でのみ彼女を抱けるのだ。

  観た人は誰でも言及するのだが、確かに空想の中で空を飛ぶ場面は素晴らしい。ベッドで寝たきりの彼が突然むくむくとベッドから起き上がり、助走をつけて窓から飛び出す。一瞬自殺するのかと思うと、次の瞬間彼は空を飛んでいる。緑の丘を越えぐっと上昇して目の前に空がいっぱいに広がる。突然動きが止まりカメラが下にパンするとそこには海があった。海岸をラモンとフリアが歩いており、二人は抱き合いキスをする。現実にはかなえられない夢であるだけに感動的であり、またなんとも切ない場面である。

  この映画が優れているのは、彼一人に焦点を合わせるのではなく、家族や彼を支援する人々との関係をきちんと描いているところだ。彼を支援する弁護士のフリア(彼女自身も脳欠陥性痴呆症を患っている)、彼の世話をする支援組織のジェネ(クララ・セグラ)、ラモンに心を寄せるロサ(ロラ・ドゥエニャス)、ひたすら親身になってラモンの世話をする兄嫁のマヌエラ(マベル・リベラ)、弟に生きていてほしいからこそ激しい口調で尊厳死を認めないと本気で怒鳴る兄ホセ(セルソ・ブガーリョ)、ペンを口にくわえて書いたラモンの文章をパソコンに打ち込んだり車椅子の改造をしたりと何かと世話を焼いている甥のハビ(タマル・ノバス)、死を選んだ息子をとめることも出来ずつらい気持ちを抱いている父のホアキン(ホアン・ダルマウ)。ラモンの死を認める、認めないにかかわらず、それぞれの人物の気持ちが理解できる。この複眼的な描き方がどれほどこの映画にふくらみを与えていることか。ラモンを説得しに来た神父は全くの場違いな男として描かれているが、あくまで弟の死に反対する兄ホセの気持ちは真摯なものとして描かれている。それぞれの思いが交錯し、それぞれに悩みながら生きている。死を決意したラモンの周りで生が続いている。支援組織のジェネは子供を身ごもり出産する。フリアは自分の病と闘いながらラモンの詩集を出版することに奔走する。二人の子供を持つロサは生活に疲れ、ラモンへの愛に新たなる生きがいを見出す。

  しかし周りの人たちの思いにかかわらず、ラモンの決意は揺るがない。「生きることは『権利』のはずですが、私には『義務』でした。このつらい状況に耐え続けました。28年4ヶ月と数日もの間です。」ロサと共に家を出たラモンは、特定の支援者に害が及ばないように工夫して青酸カリを用意し、据付のビデオカメラの前でそれを飲み干す。彼は若い頃船乗りとして世界中を旅した。彼の魂は海へと旅立って行ったのだろうか。

  ラモンを演じたハビエル・バルデムはまだ30代の若さだが、20歳も年上の主人公を見事に演じた。観ていて全く自然であった。特殊メークだけの成果ではない。話し方、声、身のこなし、目の表情、すべてが伴わなければこれほど自然には演じられない。単なる暑苦しいラテン系のセックス・シンボル男優でないことを世界中に示した。すごい俳優が出てきたものだ。

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映画」カテゴリの記事

コメント

 るるる@fabさん コメントありがとうございます。
 色男はどうでもいいです(笑)むしろアナ・トレントの方が気になりますね。好き嫌いがあるというのも意味深ですね。かえって興味を魅かれてしまいました。それにしてもレンタル店でまだ「テシス」が見つからないのですよ。一体どこに埋もれてるんだ?
 それはともかく、「海を飛ぶ夢」は色々考えさせられますから、どうしてもレビューが長くなってしまいますね(もっとも普段から長いか)。尊厳死とは?人生とは?生きる権利とは?論じるに足るテーマに事欠きません。論じる人の考え方も出てしまいますね。興味深い意見を見つけたら教えてください。

ゴブリンさん、こんにちわ。
この映画、観た人に色んな事を語らせていて感想を読むのもとても興味深いです、そういう意味でも私にはとても大切な作品になりました。
私もこの中に出てくる登場人物の役割がそれぞれに色々とあってそこが非常に面白く感じました。ラモンがあくまで揺らがない精神の持ち主である故に、周囲の人間にバラエティを持たせてるような。
それぞれに共感できるので誰の事も責められない、でもラモンの気持ちもやっぱりわかるんですよ、もちろん彼の思っている事は全て理解できているはずないんですが。
ハビエル・バルデムは素晴らしい俳優であると思います、これからも色んな役を演じて欲しい1人です。
あ「テシス」はちょっと好き嫌いあるかもしれません(笑)「ノボ」という作品などに出ていたエドゥアルド・ノリエガと最近では「バッド・エデュケーション」にも出ていたフェレ・マルティネスという二大色男!?が出ています。

 きのこスパさん コメントありがとうございます。
 残念ながら僕はまだ「テシス/次に私が殺される」を見ていません。「アザーズ」と「オープン・ユア・アイズ」は見たのですが。よく名前が出てくるので是非見たいと思っています。どうやらサスペンス映画のようですね。でも、近所のレンタル店に置いてあったかなあ?

TB&コメント、どうもです。

『海を飛ぶ夢』については、
ボクのブログの記事よりも詳しく書いてあるので
省略させていただきます(笑)。
一つだけ、A・アメナーバルについて。
ボクは、処女作の『テシス/次に私が殺される』を
観た時から、彼が只のサスペンス監督だけで終わるのは
勿体無いと思っていたので、
今回の『海を飛ぶ夢』での新境地は嬉しかったです。

最後に、スペイン映画のベスト10は
大変興味深く拝見させてもらいました。
ボクが選ぶとしたら、カルロス・サウラの『カルメン』が1位かな。
実は、最近ワイフがフラメンコを習い始めて
カルロス・サウラの『カルメン』を見せたいのだが
見つからない。素晴らしい映画なのに
何故ビデオ屋さんに置いてないのだろう‥残念。
すでに廃盤みたいだし、ヤフオクで買うしかないのかな(笑)。

はじめまして。
僕もスペイン映画大好きなので、ベスト10興味深く拝見しました。
今後とも、よろしく。
tbもさせていただきました。

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華流、韓流の嵐の中で、僕は西班牙流です(笑) なんせ、生涯5000本近く、映画館やねっころがったりしながら、観たと思うんですけど、そのベスト1が「ミツバチのささやき」(1973・ビクトル・エリセ監督)ですからね。 「なんだ、ハッスルカンフーを激賞しておきながら、結局、アート派か。ケッ!」 なんていわれそうですが、好きなものはしょうがないです。ハイ。 アメナードル監督。96年の「次に私が�... [続きを読む]

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