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2005年9月 5日 (月)

ピエロの赤い鼻

2003年  フランス映画
原題:EFFROYABLES JARDINS
原作:ミシェル・カン、”EFFROYABLES JARDINS”(恐るべき庭)
【スタッフ】
 脚本:ジャン・ベッケル、ジャン・コスモ、ギョーム・ローランtomato
 監督:ジャン・ベッケル
 音楽:ズビグニエフ・プレイスネル
 撮影:ジャン=マリー・ドルージュ
【出演】
 ジャック・ヴィユレ、アンドレ・デュソリエ、ティエリー・レルミット
 ブノワ・マジメル、 シュザンヌ・フロン

 「ピエロの赤い鼻」は「イブラヒムおじさんとコーランの花たち」より出気がいいと思った。「ピエロの赤い鼻」の大体の話は分かっていたが、肝心な部分はかなり予想外の展開だった。大枠はピエロを演じる父親を恥ずかしく思っている息子に、父親の親友がなぜ父親がピエロを演じるかを話して聞かせるというものである。父親のジャック(ジャック・ヴィユレ)は友人のアンドレ(アンドレ・デュソリエ)とレジスタンスの真似事をして鉄道のポイント切り替え所を爆破する。ドイツ軍は犯人を見つけるために人質を4人選び、犯人が名乗り出なければこの4人を殺すと脅した。このあたりの展開はだいたい予想したとおりだった。

 しかしその4人の中にジャックとアンドレが選ばれてしまう。彼らは大きな穴の中に突き落とされる。もろい土である上に雨が降っているのでぬるぬるして這い上がることができない。4人の人質たちは雨と泥まみれになって不安な時間を過ごす。こういう展開になるとは思ってもいなかった。当然監獄の様なところに押し込められるのだろうと思っていた。恐らく配給会社は意識してこのあたりの展開を隠していたのだろう。穴の中の4人はどうやったら穴から抜け出せるか色々やってみるが、結局あきらめる。まるで安部公房の「砂の女」だ。そのうち食い物(フランスの郷土料理カスレ)の話をしたり、誰が彼ら4人を指名したのか犯人当てをしたりし始める。このあたりの展開が滑稽で、翌日には処刑されるという絶体絶命の窮地にあるにもかかわらず、どこかファンタスティックな感覚さえ覚える。さっぱり切実感も緊迫感もない4人の状態が彼らの置かれた深刻な状況と妙に齟齬をきたすために、全体としてどこかシュールな雰囲気が漂いだす。実に秀逸な演出である。

 やがてそこに一人のドイツ兵が現れ、滑稽なしぐさをして彼らを笑わせる。穴の上と穴の中。4人の男たちは下からドイツ兵を見上げている。ドイツ兵のピエロが彼らを慰める展開になることは前もって知っていたが、まさかこういう形で彼らが会うとは思わなかった。翌日彼らは銃殺されることになるが、例のドイツ兵が銃を構えなかったので指揮官に撃ち殺されてしまう。このあたりからシュールな感覚はなくなり、ぐっとリアルな演出になる。

 彼らは銃殺直前に「真」犯人が名乗り出たため助かる。実は、ジャックとアンドレが爆破した建物の中にはそこで働くフランス人がいた。彼は爆破で大怪我をして入院していた。自分が助からないと覚悟した彼は、どうせ死ぬのだからと自分が犯人だと名乗り出るよう妻に頼んだのだ。

 映画の最も感動的な部分はその後だ。やがてフランスは開放されジャックたちは平和に暮らart-pure2001awしている。ある日二人は死んだフランス人の妻に会いに行く。自分たちが犯人だったと告白するつもりだった。しかし言えずに一旦引き下がる。だが途中で思い直し、また引き返す。戻ってきた二人に、死んだ男の妻は二人がやったことは知っていたと話す。呆然とする二人。彼女の夫は爆破の直前に顔を見ていたのだ。彼女は二人が戻ってきて打ち明けたことを褒め、もうこのことは誰にも話さないよう告げる。ここは実に感動的な場面であった。毅然とした老婦人の態度に胸を打たれる。ジャックがピエロになることを決意したのはこの時である。

 この話を聞いて息子の父親に対する認識が一変する。このあたりはまあ予想通りだ。事前にある程度の予備知識を持っていれば、全体の枠組みは予想通りで意外性は全くない。しかしこの作品の価値はその枠組みの間に挟まれた部分、回想の部分にある。この部分は普通なら苦痛を伴うリアリスティックな描写になるはずだ。しかしこの作品は敢えてそうはしなかった。ジャックとアンドレアが登場したときから滑稽なムードが流れる。のっぽとちびの文字通りのでこぼこコンビである。その二人が共に恋心を寄せる女性ルイーズにいいところを見せたいばかりにレジスタンスの真似事に走る。ジャックとアンドレの滑稽なやり取りを見ていると、爆破事件さえも本当にあったことではなく冗談なのではないかというどこか非現実的な雰囲気がかもし出される。だから絶体絶命の穴の中でも、この非常時にカスレが手に入るわけはない、などとどうでもいいようなことを本気で論じ合うような場面が自然に描けるのである。

 笑いで不安や恐怖をやわらげるというのではない。もっとねじれていてシュールな状況になっている。日本人ならあんな場面は描けない。それでいて彼らの味わった恐怖や殺しあうことのむなしさ、さらには夫の意思を正面から受け入れ夫が銃殺される場面を目撃しても、なおレジスタンスの行為に走った二人を許す夫人の毅然とした態度を十分観るものに伝え得ている。たとえシュールに見えてもそれは現実逃避ではない。監督はあるインタビューに答えて「彼らのように、絶望の分だけ希望を持つことが人生には大切なんだ。」と語っている。フランス人の「笑い」はかくも強靭であり、また柔軟である。

 この演出方法はまかり間違えば大失敗につながる。戦争を笑いものにしていると勘違いされかねない。しかしジャン・ベッケルの演出は笑いとリアリズムのつぼをしっかりと押さえていた。冷酷なドイツ軍将校とピエロのドイツ兵を描き分けたように。命令に従わなかったドイツ兵(ピエロを演じた男)を何のためらいもなく撃ち殺すドイツ軍指揮官の冷酷さはステレオタイプ的だが、後の死体処理を命じられた下士官(?)の戸惑ったような表情はリアルだった。ドイツ軍といえども人間である。

 穴の場面を作り出したことによってこの映画は傑作となった。「笑ってごらん、幸せになれるから」という「イブラヒムおじさん」のキャッチフレーズはむしろこの作品にこそふさわしい。

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» 「ピエロの赤い鼻」(仏/ジャン・ベッケル監督) [サーカスな日々]
1960年代の牧歌的なフランスの片田舎。教師であるジャックは人気者だが、週末はピエロを演じることをやめない。息子である少年リシュアンは、ピエロ姿の父を恥ずかしく思う。ジャックの親友アンドレは、劇場でふて腐れるリシュアンに「父」の秘密を打ち明ける----------。 この映画で職人監督であるジャンベッケルは、「父」と「子」の愛情と恥じらいをひとつの主題にかかげているわけだが、自分自身の「父」と「子」の気持ちのつながりを背�... [続きを読む]

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