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2005年9月 9日 (金)

フランス・アニメの傑作「ベルヴィル・ランデブー」

2002年 フランス=カナダ=ベルギー 2004年12月公開tuki-siro
原題:Triplettes de Belleville, Les
【スタッフ】
製作:ディディエ・ブリュネール
脚本:シルヴァン・ショメ
監督:シルヴァン・ショメ
音楽:ブノワ・シャレスト
美術:エフゲニ・トモフ

 日本製アニメは確かに世界でも最高の水準にある。日本の漫画やアニメに慣れた目から見ると、ディズニーでさえも絵の下手さにあきれることがある。確かに絵の見た目のきれいさは日本アニメが最高だろう。しかし、一見下手に見えるがまた独特の味わいを持った絵柄というのもある。「ベルヴィル・ランデブー」もそういうアニメのひとつだ。その絵の味は、「木を植えた男」(1987)のような素朴な味わいを持つアニメともまた違う。ソ連の「チェブラーシカ」ほどメルヘンチックでもない。絵の感じはフランスの古典的アニメ「やぶにらみの暴君」(1952)にむしろ近い。

  エンキ・ビラルの未来・SF志向とは反対に戦後のフランスを舞台にしたどこか懐かしさを感じる物語。最初にフレッド・アステアやジョゼフィン・ベーカーのパロディ/カリカチュアも出てくる。しかし実に独特のアニメだ。極端にデフォルメされた人体。主人公のおばあちゃんの目とメガネは頭のてっぺんにある。自転車選手の息子は体の太い部分と細い部分が極端に強調されている。背景描写は凝っているがこれもデフォルメされている。どう見てもうまい絵ではないし、きれいな絵でもない。しかし不思議な魅力がある。例えば船が出てくるが、これがありえないほど幅が狭く(まるでまな板の長いほうの辺を下にして立てたような形だ)、喫水線が極端に低い(ほんのわずかしか水に沈んでいない)。これではすぐに横倒しになってしまう。しかし現実にはありえない形だからこそ却って新鮮でインパクトがあるわけだ。

  絵の動きのスムーズさや顔の美しさ、あるいは派手な展開よりも、素朴だがシュールでひねりのあるストーリー展開やキャラクターの奇抜な個性に重きが置かれているアニメである。せりふが少ないのも特徴のひとつだ。宮崎駿ともアメリカの「モンスターズ・インク」や「シュレック」とも違う。どちらかというとイギリスの「ウォレスとグルミット」シリーズやチェコのイジー・トルンカなどに近い味わいである。またベルヴィルという街は明らかにアメリカのカリカチュアだが、風刺的味付けはまたヨーロッパ的だ。同じフランスのミッシェル・オスロ監督(「キリクと魔女」「プリンス&プリンセス」)ともまた違う。こうしてみてくると世界にはいろんなタイプのアニメがある事が分かる。

 この映画の主人公は一人のおばあちゃんだ。孫のシャンピオンはまるで機械のようで、感情を持たない感じである。顔の表情も変わらない。シャンピオンは自転車が好きで、それを見抜いたおばあちゃんがツール・ド・フランスに出場させようと特訓を始める。その成果があって孫はツール・ド・フランスに出場するが、途中で棄権してしまう。しかもその直後に謎の黒服の男たちに連れ去られてしまう。それに気付いたおばあちゃんが息子を取り戻そうと大活躍する。なにしろ息子たちは例の不思議な形の船に乗せられベルヴィルに連れてゆかれるのだが、その船をおばあちゃんはよく湖などにある足こぎボートで追いかける。何と大西洋を足こぎボートで漕ぎ渡ってしまうのだ!!いやはや、彼女こそツール・ド・フランスに出場すべきだった。
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  ベルヴィルの街は明らかにパロディ化されたアメリカである。ベルヴィルを通してアメリカそのものが風刺されている。特にアメリカ映画・アニメがカリカチュアの対象だ。自由の女神は太ったおばちゃんになっている。例のなんとも奇妙な黒服の男たちはアメリカのギャングのパロディ。またベルヴィルでおばあちゃんは年取った三人姉妹と出会うが、彼女たちを通してアメリカのショービジネスがパロディ化されている。彼女たちはアニメの最初に登場している。まだ現役の若い頃で、テレビのショーに出演している。かなり売れっ子だったのだろうが、今は年老いて貧乏暮らしをしている。彼女たちが食べているものがすごい。池で蛙を取ってきて食べているのだ。しかも蛙の取り方がまた荒っぽい。手りゅう弾を池に投げ込んで、吹き飛ばされた蛙を網で拾い上げる。この蛙料理にはさすがのおばあちゃんも一瞬たじろぐ。おばあちゃんはこの三人姉妹と協力して孫を救い出すのである。この三人姉妹は実に魅力的だ(決して悪意がこめられたパロディではない)。おばあちゃんも十分すごいが、やはり彼女だけでは魅力に欠けると考えたのだろう。おばあちゃんのペットの犬(列車を見ると必ずほえるのが可笑しい)も含めて、登場するキャラクターがみんな魅力的なのがすごい。

  黒服の男たちは自転車選手を誘拐して、無理やり自転車を焦がせて客たちに賭けをさせている。自転車は、健康器具として使われる自転車のように固定されていて動かない。前にスクリーンが付いていて、そこにツール・ド・フランスのコースと思われる道が映し出される。よくゲームセンターにある、コースから外れないように自動車を走らせるゲームの様な画面だと思えばいい。最後は動かないはずのこの自転車が台ごと動き出して、おばあちゃんたちはそれに乗って逃げる。それを自動車に乗った黒服の男たちが追跡する。アメリカ映画お得意のカー・チェイスのパロディだ。

 アニメは漫画と違って絵が動く上に音も出せるので、格段にリアリティが増す。漫画の方が表現手段として下位にあると言っているのではない。制限があるからこそ工夫が生まれるのである。スーパーマンがなぜマントをつけているかご存知だろうか。あのマント自体は何の実用性もない。にもかかわらずマントを付けているのは、空を飛んでいる場面を描く時にマントがひらめいていると風を切って飛んでいる感じが視覚的に伝わってくるからだ。マントがなければただ体が横になっているだけである。それはともかく、話を元にもどすと、アニメは漫画よりリアリティが増すが、にもかかわらずリアリズムのアニメは極めて少ない。現実ではなく、むしろ現実にはありえないものを描くのに適している。したがって相当に荒唐無稽なストーリーでもさほど抵抗なくすんなり受け入れられる。それがアニメの強みだ。

  「ベルヴィル・ランデブー」はカリカチュアやパロディといった風刺の伝統とつながっている。ヨーロッパには長いカリカチュアの伝統がある。金権腐敗にみちた十九世紀のパリを辛辣に風刺したドーミエやイギリスの『パンチ』誌を思い起こせばよい。風刺画、風刺漫画、漫画は本来毒があるものなのだ。「ベルヴィル・ランデブー」はこの伝統を受け継いでいる。残念ながら日本の漫画・アニメにはこの毒がほとんどない。その意味でももっと日本で知られていいアニメだと思う。

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